尿による簡便ながん検査に向け日立が実証試験を開始

2018年4月18日 02:42

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実証実験のスキーム。(画像: 日立製作所の発表資料より)

実証実験のスキーム。(画像: 日立製作所の発表資料より)[写真拡大]

 日立製作所は16日、尿検体を用いたがん検査の実用化に向け、体外診断分野では初めてとなる実証試験を、4月から開始したと発表した。

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 今回の実証試験では、臨床情報(がんの有無)付き尿検体の回収から、検体搬送時の温度のトレースや時間の管理、液体クロマトグラフ・質量分析計によるバイオマーカーの定量分析、さらに、がん検査モデルの構築とそれに基づくがんのリスク判別など、一連の解析フローを半年間、繰り返し実施する。同社は、今回の実証試験を通じて、種々のデータを取得して技術課題を洗い出し、尿中代謝物によるがん検査の実用化に向けた研究を加速することにしている。

 現在、日本におけるがんの疾病費用は、検査・治療の直接費用に、間接費まで含めると、約10兆円と巨額になっている。また、厚生労働省は2017年度に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」に基づき、がんの早期発見・早期治療につながる、がん検査の受診率向上を推進している。そのため、従来の診断法の高度化だけでなく、がんを早期に発見できる簡便で、しかも高精度の新しい検査法の開発が求められている。

 日立では、こうした国の要請を踏まえ、尿中代謝物を用いたがん検査の研究を2015年から開始し、2016年6月には、尿検体による健常者とがん患者の識別に成功した。しかし、実用化に向けては、健常者の代謝物と比較した際に、わずかに存在量が増減する、がんに関するバイオマーカー候補を、効率的に抽出する方法の確立が課題となっていた。

 今回、日立は、尿中代謝物からバイオマーカー候補を効率的に抽出できる新しいがん検査モデルの開発に成功、実証試験のスキームを構築した。(記事:南条 誠・記事一覧を見る

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