NYの視点:2018年のテーマ、インフレ加速

2018年2月9日 07:37

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記事提供元:フィスコ


*07:37JST NYの視点:2018年のテーマ、インフレ加速
2017年は、欧州中央銀行(ECB)や連邦準備制度理事会(FRB)がこぞって、インフレがなかなか上昇しないと疑問を投げかけた。米FRBのイエレン前議長を含めFOMCメンバーも労働市場の改善がインフレにつながらないことに疑問をいだいていた。米国は利上げに転じたにも関わらず、米国の長期債は低水準にとどまった。

しかし、2018年に入ると同時に突然、インフレ過熱への脅威が広がった。ヘッジファンド運用のポールチューダージョーンズ氏は、インフレが猛烈な勢いで出現する可能性を警告。米労働省が発表した1月雇用統計で、雇用の伸びが予想を上回っただけでなく、賃金の伸びも予想を上回り、労働市場のひっ迫が証明された。

また、米労働省が8日に発表した最新週次新規失業保険申請件数は22.1万件と、増加予想に反して前回から減少し、45年ぶり低水準近辺となった。また、変動が少ない4週平均は1973年以降45年ぶり低水準。失業保険継続受給者数も192.3万人と、予想を下回ったほか、前回から減少した。この結果も労働市場がひっ迫している証拠となった。

加えて、英国中央銀行は金融政策決定会合で、市場の予想通り金融政策を据え置いたが、インフレ報告の中で、成長見通しを引き上げ。カーニー総裁はインフレに対処するための利上げが「想定より早期かつ大幅になる」と、早期利上げの必要性を指摘した。金利先物市場では5月の利上げ確率が50%に跳ね上がった。

投資家のインフレや金利の急伸への脅威が一段と高まり、株式相場は大幅に下落。ただ、金利上昇は市場の変動率を引き上げる一因となるものの、経済の一段の成長が株式相場にマイナスに影響するとは考えにくい。NY連銀のダドリー総裁も、最近の株式相場の下落が大したことはなく、経済への意味はないと指摘。米ダラス連銀のカプラン総裁も「株価の下落は健全」としている。2008年のように金融危機、景気後退などの非常事態時の株安と違い、経済の成長が上振れるリスクがある中、インフレが生まれるのはむしろ好感材料と思われる。株式市場の下落も、カプラン米ダラス連銀総裁が指摘しているとおり、むしろ「健全な調整」と見られる。《CS》

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