Moonshot AI、欧州でBlackwell利用を協議と報道 8000基以上のGPUも対象に

2026年11月7日 21:41

Kimiモデルを開発する北京のMoonshot AIが、欧州のクラウド事業者とNVIDIA Blackwellの計算能力を借りる協議を行ったと、CNBCが2026年11月5日に報じた。協議には8000基以上のGPUで構成するクラスターも含まれていたという。大規模な推論需要を支える設備の確保とともに、NVIDIAがパートナーに伝えたとされる顧客構成の方針や、米国の遠隔アクセス規制法案が焦点となる。

■欧州のGPUクラスターを推論向けに確保する協議

CNBCは事情に詳しい4人の話として、Moonshot AIが欧州でGPUの計算能力を提供するネオクラウド事業者と協議したと伝えた。ネオクラウドとは、AIの学習や推論などに使うGPU計算資源の提供に特化したクラウド事業者を指す。8000基以上というクラスターの規模は、取材源の1人が説明した内容だ。

取材源2人によると、Moonshot AIは主に推論向けの欧州クラスターに関心を示していた。推論は、学習済みモデルを使って利用者への回答などを生成する処理である。取材源の1人は、モデルの学習用計算能力への関心も把握していたという。報道が伝えているのは、こうした設備を利用するための協議段階の動きだ。

Kimiでは、2026年7月のK3公開時にも計算資源の確保が課題となった。AI Insidersによると、Kimiは7月19日、直前48時間の需要が利用可能なGPU容量の限界に近づいたとして、新規サブスクリプションの受け付けを一時停止し、既存契約者への提供を優先すると説明した。

Tom's Hardwareも7月29日の報道で、Moonshot AIが推論に中国市場向けのNVIDIA H20を利用していると伝えた。同記事は当時、サブスクリプションに順番待ちが生じていたとも報じている。利用者に継続して回答を提供するには、モデルの開発に加え、日々の処理を担う計算資源が必要になる。

■NVIDIAが伝えたとされる「非中国顧客51%以上」

Financial Timesは11月3日、事情に詳しい5人の話として、NVIDIAがデータセンターのパートナーに対し、サービスの少なくとも51%を非中国企業向けに販売するよう求めたと報じた。対象は今後の新規契約で、既存の契約には適用されないという。

同紙によると、この方針は営業担当者や地域チームを通じて口頭で伝えられた。一方、The Informationは、顧客構成の多様化を促す任意の指針だと報じている。事業者にとっては、中国企業からの需要を取り込む際に、ほかの顧客との組み合わせも意識する必要が生じる可能性がある。

AFPによると、NVIDIAは報道への回答で、米国製チップを使うデータセンターやクラウドが、米国のモデル・アプリ開発企業の世界展開を支える基盤になると説明した。同社は、米国がAI競争に勝つには米国のAIインフラが世界で普及する必要があるとの立場を示した。

ネオクラウドは、GPUを購入して顧客に計算能力を提供するため、設備の調達とサービスの販売の両方を継続する必要がある。NVIDIAとの取引条件や顧客構成に関する方針は、Moonshot AIのような利用企業への提供条件にも影響し得る。

■前払いを30〜50%増やす案と設備投資の回収

CNBCの取材源の1人によると、Moonshot AIが非中国顧客より30〜50%多く前払いする案も提示された。これは同じ計算能力を借りる場合の前払い額を比較したものだ。具体的な契約総額や期間、前払いが総額に占める割合は示されていない。

前払いは、設備を先に用意するクラウド事業者の資金繰りを支える。将来の規制変更でサービス提供が中断される可能性を考慮すれば、契約の早い段階で資金を回収する条件は、貸し手がリスクを調整する手段となる。

設備投資と融資の関係は、米ネオクラウド大手CoreWeaveの開示にも表れている。同社の2025年年次報告書によると、2025年12月31日時点の遅延引出型タームローンの借入残高は97億ドル(約1兆5300億円)だった。これらの融資では、顧客契約に対応する設備などの資産と、契約から生じるキャッシュフローが担保となっている。

設備費を何年で回収するかも事業計画を左右する。CoreWeaveは2025年年次報告書で技術設備の会計上の耐用年数を6年としている。一方、Data Center Dynamicsが2025年に取材したScalewayのダミアン・リュカCEOは、同社がGPUについて3年での減価償却を想定していると説明した。事業者ごとに、設備の更新や費用回収の前提は異なる。

■海外クラウドの利用と米国の輸出管理

米国では、先端GPUの中国向け輸出と、国外に設置されたGPUへの遠隔アクセスが、異なる形で扱われてきた。法律事務所Latham & Watkinsの2026年3月の解説によると、中国などへのチップの物理的な輸出が制限される一方、輸出許可を要しない国にあるGPUへの遠隔アクセスは、一般にはその制限の対象外だった。個々の取引では、設備の輸出先や利用者、用途に応じた規則の確認が必要となる。

中国企業が国外の計算資源を利用する事例は、日本でも報じられている。Financial Timesは2025年12月、Tencentが第三者を介し、日本企業データセクションの大阪近郊のデータセンターでBlackwellの計算能力を利用していると伝えた。Tencentは同紙に、クラウドサービスの利用は透明で合法的だと説明した。

The Wall Street Journalは2026年3月、ByteDanceが東南アジアのAolani Cloudと協力し、マレーシアで約3万6000基のB200 GPUを使う計画を報じた。Tom's Hardwareの取材に対し、NVIDIAは、クラウドパートナーが製品を受け取る前に同社の現場担当、財務、コンプライアンス部門の審査を受けると説明している。

米当局も国外での利用実態を調べている。Bloombergは2026年8月、米商務省産業安全保障局(BIS)の執行部門が、中国企業による海外のNVIDIAチップへのアクセス方法を調査し、チップの密輸や遠隔利用に関係する国を整理していると報じた。

■大規模モデルの運用を支えるメモリーと通信

Moonshot AIの公式資料によると、Kimi K3は約2兆8000億パラメーターを持つ専門家混合モデル(Mixture of Experts、MoE)である。入力に応じてモデル内の専門家と呼ばれる部分を選び、トークンごとに896の専門家のうち16を有効にする仕組みを採る。

こうした構造は、各トークンの処理に使う計算量を抑えながら、モデル全体を大規模化するための工夫だ。運用時には、多数の専門家の重みを保持するメモリー容量に加え、処理を分担するGPU間の通信も重要になる。Moonshot AIは、高帯域の通信が可能な構成が推論効率にも役立つとして、64基以上のアクセラレーターを備えるスーパーノード構成を推奨している。

NVIDIAのBlackwell世代には、72基のGPUを接続するGB200 NVL72のようなラック単位のシステムがある。また、演算回路はMXFP4やMXFP6などの低精度の浮動小数点形式に対応する。大容量メモリー、GPU間通信、低精度演算は、大規模モデルの推論基盤を検討する際の重要な要素となる。

■米議会は遠隔アクセスを規制する権限拡大を検討

米議会で審議されているRemote Access Security Act(H.R. 2683)は、2018年輸出管理改革法を改正し、規制対象品目への遠隔アクセスを管理する権限を拡大する法案だ。下院通過案は、外国人がネットワーク経由で品目にアクセスし、その利用が米国の国家安全保障または外交政策に深刻なリスクをもたらし得ると商務長官が判断する場合を対象とする。

下院は2026年1月12日、369対22で同法案を可決した。Congress.govの2026年11月6日時点で確認できる審議記録では、最新の手続きは1月13日の上院銀行住宅都市問題委員会への付託となっている。上院ではデイブ・マコーミック議員とロン・ワイデン議員が、2025年12月に関連法案S. 3519を提出した。

先行するH.R. 8152も2024年9月に下院を通過したが、同議会期中の成立には至らなかった。今回の下院法案を提出したマイク・ロウラー議員は、中国共産党側がクラウド経由で輸出制限を回避できることを問題視し、商務省に遠隔アクセスを規制する権限を与える必要があると訴えている。

Latham & Watkinsによると、法案が成立すれば、BISが対象品目や許可要件などを具体化する規則を定めることになる。同事務所は、クラウド事業者と利用企業の双方に影響が及び得るとして、顧客・用途の確認や、アクセス制限に備えた契約条項の検討を挙げている。

■米国製AI基盤の普及とアクセス管理

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは2025年の対談で、中国を世界で2番目に大きいコンピューター市場と呼び、米国が参加しないのは誤りだとの考えを示した。同氏は、世界の開発者が米国の技術を使ってAIを構築することを重視している。

米政府も、米国製AI基盤の海外展開を政策目標に掲げる。Bloombergによると、ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のマイケル・クラツィオス局長は2025年7月、クラウド、チップ、アルゴリズムを含む米国のAI技術基盤を世界に普及させたいと語った。ホワイトハウスが同月公表したAI行動計画も、同盟国・友好国向けにハードウェアやモデル、ソフトウェアをまとめて提供する方針を示している。

一方、Bloombergによると、クラツィオス氏は2026年7月、Moonshot AIがGB300搭載サーバーを取得し、タイでGB300にアクセスしたと主張した。米国製AI基盤を海外に広げる政策と、利用者や用途に応じてアクセスを管理する政策は、並行して進められている。

Moonshot AIの欧州での協議では、必要なGPUの規模に加え、顧客構成、前払い、将来の許可要件が取引条件に影響し得る。設備を保有する事業者と計算能力を利用する企業の双方にとって、長期契約の収益性とサービスの継続性をどう確保するかが重要になる。

元記事: Moonshot AI Sought Nvidia Blackwell Rentals in Europe; Reported 51% Rule, Not US Law, Hits Lessors

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