Garmin、インドで心電図アプリ提供開始 fēnix 9などで30秒の心房細動チェック

2026年11月5日 12:40

Garminは2026年11月3日、インドで対応スマートウォッチ向けに心電図(ECG)アプリの提供を開始した。発表ではfēnix 9、Venu 4、Forerunner 970などを挙げており、利用者は30秒間の心電図を記録し、心房細動(AFib)の兆候を確認できる。

記録結果はウォッチで確認でき、Garmin Connectアプリとの同期によって履歴の閲覧や医師に共有するレポートの作成も可能だ。日本では、同社が2025年4月23日から「心電図アプリ」として提供している。

■対応ウォッチを更新し、Garmin Connectで設定

インドで利用するには、対応ウォッチのソフトウェアとスマートフォンのGarmin Connectを最新にする必要がある。対応状況は機種と地域によって異なるため、Garminが公開する対応一覧で確認する。

初回設定はウェブサイト上ではなく、Garmin Connectで行う。対象デバイスを選び、「設定の完了」から「心電図アプリの設定」に進んで画面の指示に従うと、ウォッチで記録できるようになる。対象年齢は22歳以上だ。

記録時は、設定で選択した手首にウォッチをぴったりと装着する。楽に座って腕と手首をテーブルに置き、反対の手の親指と人差し指を文字盤周囲の金属リングに触れさせ、30秒間静止する。

Garminのコンシューマーセールス&マーケティング担当バイスプレジデント、Susan Lyman氏は、インドの利用者が健康状態を把握するための新たな手段になるとしている。必要なときに記録し、その結果を後から医師と共有できる点も説明した。

対応ウォッチの価格帯は機種によって異なる。Tom’s Guideによると、fēnix 9の米国発売時の価格は999ドル(約15万8000円)からだった。Forerunner 970はインドで2025年8月に発売され、Gadgets 360が2026年9月11日時点で掲載した価格は9万990ルピーだ。日本ではForerunner 970が2025年6月5日に発売され、2026年11月4日時点の公式掲載価格は12万1800円(税込)となっている。

■2つの接点から心臓の電気信号を記録

心電図は、心臓の拍動に伴う電気活動を皮膚表面から記録するものだ。手首で測るタイプでは、装着した腕と反対側の手の指を通じて2つの電極に接触し、その間の微小な電位差を捉える。

Garminの心電図アプリが作成するのは、標準的な心電図の第I誘導に類似する単一誘導の波形だ。臨床で用いる12誘導心電図は、複数の方向から心臓の電気活動を捉える。手首の心電図では、1つの方向の記録を心拍リズムの確認に利用する。

一般に、心電図の微弱な信号は増幅やノイズ除去、デジタル化を経て解析される。体の動きや電極と皮膚の接触状態は波形に影響するため、腕を支え、指を動かさずに記録することが重要になる。

心房細動では、心房が無秩序に興奮し、心室の拍動間隔も不規則になることが多い。心電図では、正常な心房の興奮を示すP波の消失や、心室の興奮に対応するR波どうしの間隔の不規則性が代表的な所見となる。アプリは記録を解析し、心房細動や洞調律の兆候などを分類する。

■性能値を読む際は「分類可能な記録」という条件に注目

Garminの心電図アプリは、2023年1月12日に米食品医薬品局(FDA)の510(k)クリアランスを取得した。登録番号はK221774で、処方箋なしで利用する心電図ソフトウェアに分類される。

FDA公開資料に掲載された同社の臨床検証では、約590人を対象に、アプリの分類結果を心臓専門医による12誘導心電図の分類と比較した。分類できた記録について、心房細動を正しく識別した割合は99.5%、洞調律を正しく識別した割合は100%だった。

Garminによると、この試験では記録の11.5%が判定不能となり、その中には解析に必要な品質を満たさない記録も含まれた。判定不能を含めた場合、心房細動の被験者に心房細動の結果を返した割合は86.5%、洞調律の被験者に洞調律の結果を返した割合は91.1%だった。同社は、実際の使用では判定不能や低品質の記録が増える可能性も示している。

結果表示には、洞調律、心房細動、心拍数が高すぎる・低すぎる、判定不能がある。判定不能の場合は装着状態や姿勢を整えて再記録し、繰り返す場合や体調が優れない場合は医師に相談する。

測定の対象となるのは、利用者が記録を開始した30秒間のリズムだ。発作性の心房細動は出現と停止を繰り返すため、記録のタイミングによって結果が変わる。心房細動には自覚症状を伴わない場合もあり、日常の記録と医療機関での評価を組み合わせることが重要になる。

■インドの研究が示す短時間の心房細動

2024年にIndian Heart Journalに掲載された研究では、24時間ホルター心電図を受けたインドの成人患者2万3847人を解析し、4153人、17.4%に心房細動を認めた。心房細動の持続時間の中央値は13分55秒だった。これはホルター検査を受けた患者集団での結果である。

研究者らは、短時間の心房細動は診察時に検出される可能性が低く、医療現場で過小評価されるおそれがあると指摘した。また、この患者集団では心房細動が多く、治療が十分に行われていないと結論づけている。日常生活の中で心電図を記録する機会を増やすことは、受診時以外のリズムを医師に伝える手掛かりになる。

地域住民を対象にした研究もある。2016年に公表されたグジャラート州農村部の研究では、50歳以上の住民にAliveCorの携帯型心電計で繰り返し測定を行い、解析対象235人のうち12人、5.1%に心房細動を認めた。対象者や測定方法が異なる研究から、それぞれの集団における検出状況が報告されている。

心房細動を把握する意義の一つは、脳梗塞の予防につなげることだ。心房内の血流が滞ると血栓が形成され、それが脳の血管を詰まらせることがある。国立循環器病研究センターは、心房細動に伴う血栓の90%以上が、左心房の袋状の部分である左心耳に生じるとしている。

インドでは心血管疾患全体の負担も大きい。2018年にLancet Global Healthに掲載された研究は、当時のWHO推計で世界の心血管疾患死の5分の1超をインドが占め、心血管疾患の発症が高所得国より約10年早いと説明した。ジョージ国際保健研究所の2016~2017年の年次報告も、インドの年間脳卒中発症者を推定160万人としている。

■記録を受診につなげるための機能

Garminは、心電図アプリの用途を心房細動や洞調律の兆候の確認としている。心房細動の結果が表示された場合は医師に相談し、記録を診察時の参考情報として共有する。日本の添付文書も、通知結果に基づいて自己判断で薬を変更・中止することを禁じている。

心筋梗塞はアプリの検出対象外であり、胸痛や息切れなどの急な症状がある場合は、測定結果を待たずに救急医療を求める必要がある。日本で緊急性が疑われる場合は119番に通報する。

心房粗動、心室性期外収縮、上室性頻拍、完全房室ブロックなども、医療機関で評価する不整脈だ。Garminの心電図アプリは、心房細動と洞調律の分類を中心とした機能であり、日本の添付文書では不整脈の診断を受けた人による使用を想定していない。利用に当たっては、地域ごとの使用説明書に従う必要がある。

Garminのグローバルコンシューマーセールス担当バイスプレジデントだったDan Bartel氏は、2023年の米国提供開始時に、心房細動の初期には症状がまれで診察時の検出が難しいことがあると説明した。必要なときに記録を残し、医師に共有できることが、手首の心電図の実用上の特徴となる。

■Apple、Samsungに続きインドで選択肢が拡大

Appleは2019年9月19日、Apple Watch Series 4向けの心電図アプリをインドで提供開始した。watchOS 6を通じた展開で、同社が当時公表した臨床検証では、分類可能な記録で心房細動の感度98.3%、洞調律の特異度99.6%を報告している。

Samsungは2024年1月15日、Galaxy Watch6シリーズ向けの心電図・血圧測定機能をインドで提供すると発表し、Watch4とWatch5にも対応した。発表ではインド中央医薬品標準管理機構(CDSCO)の規制上の認可・認証を取得したとしている。これに先立つ2021年1月には、インドを含まない31カ国への拡大を発表し、同年2月から順次展開した。

Garminは米国で2023年1月24日に提供を開始した後、2025年1月に欧州連合とオーストラリア、同年4月に英国とスイスへ拡大した。Gulf Newsが掲載したGarminの発表によると、2026年6月にはサウジアラビアとアラブ首長国連邦にも提供地域を広げた。

今回のインド展開で、同国ではApple、Samsung、Garminの対応ウォッチを通じて心電図を記録する選択肢がそろった。製品選びでは、価格に加え、利用するスマートフォンとの互換性、地域ごとの対応機種、付随する健康・運動機能を確認することになる。

元記事: Garmin ECG App Hits India for fēnix 9 and Venu 4: Detects AFib but Not Heart Attacks

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