SpaceX、Boost Mobile買収や回線利用を協議か 米携帯市場への参入探る
2026年11月4日 23:39
SpaceXが、米携帯通信ブランドBoost Mobileを傘下に持つEchoStarと、買収や既存の回線契約の利用について協議していると、米紙Washington Postが2026年11月2日に報じた。衛星通信サービスStarlinkを展開するSpaceXにとって、一般利用者向けの携帯通信事業へ参入する足掛かりとなる可能性がある。
■Boost Mobileを通じた独自サービスを模索
Washington Postによると、協議はここ数カ月にわたって行われてきた。選択肢にはBoost Mobileの買収のほか、同ブランドがAT&TとT-Mobileから借りているネットワークを利用し、SpaceX独自の携帯通信サービスを提供する案が含まれるという。
Boost Mobileは、他社の無線回線を使って利用者に携帯サービスを提供している。既存事業の買収は、SpaceXが顧客向けのブランドや販売網を確保し、地上回線を活用する道になり得る。
実現に向けた焦点は、回線を提供する通信大手との契約だ。Washington Postは、Boost Mobileの既存の回線契約を新たな所有者へ引き継ぐには、AT&TとT-Mobileの同意が必要になる可能性があると報じている。
通信専門メディアLight Readingによると、AT&T、T-Mobile、Verizonは、SpaceXに地上回線を貸し出す仮想移動体通信事業者(MVNO)契約に否定的な姿勢を示している。Boost Mobileを利用する構想でも、回線提供会社との調整が重要になる。
■170億ドル(約2兆6900億円)の契約に26億ドル(約4110億円)分の周波数を追加
SpaceXは、携帯通信事業の基盤となる周波数の確保も進めている。同社は2026年10月、米国で主要な携帯通信事業者になる目標を掲げ、衛星と地上設備を組み合わせる構想を示した。
EchoStarとの大型取引は、2025年9月8日に発表された。AWS-4とH-blockの周波数免許を約170億ドル(約2兆6900億円)でSpaceXに売却する契約で、対価は最大85億ドル(約1兆3400億円)の現金と最大85億ドル(約1兆3400億円)相当のSpaceX株式で構成する。SpaceXが2027年11月までのEchoStarの債務利払い約20億ドル(約3160億円)を負担する条項も盛り込まれた。
続く2025年11月6日、EchoStarは契約を改定し、対になる周波数帯を持たないAWS-3の免許を約26億ドル(約4110億円)相当のSpaceX株式と引き換えに追加すると発表した。対象は1695~1710MHzの15MHz幅で、AWS-4、H-blockとともに次世代の衛星・スマートフォン直接通信網に活用する計画だ。
EchoStarの2026年11月3日付の開示によると、米連邦通信委員会(FCC)は同年5月12日に取引を承認した。5月22日には対象免許を信託へ移す第1段階が完了しており、SpaceXによる取得完了は、所定の条件を満たすことを前提に2027年11月30日を目標としている。
■Boost加入者向け衛星通信とEchoStarの事業転換
周波数取引に伴い、両社はBoost Mobile加入者がSpaceXの次世代Starlink Direct to Cellを利用できるようにする長期の商業契約も発表した。Direct to Cellは衛星と対応スマートフォンを直接つなぐ仕組みで、地上の基地局が届かない場所の通信を補う。
2025年9月の発表で、SpaceX社長兼最高執行責任者(COO)のグウィン・ショットウェル氏は、この取引が世界中のモバイル通信の不感地帯をなくすという同社の使命を前進させると述べた。取得する周波数を使って次世代衛星を開発し、通信エリアの拡充を目指すとしている。
EchoStarはAT&Tにも周波数を売却している。AT&Tの発表によると、約230億ドル(約3兆6300億円)の取引は2026年7月28日に完了し、全国規模の3.45GHz帯約30MHz幅と600MHz帯約20MHz幅が同社に移った。EchoStarは、自社の5GコアネットワークとAT&Tの基地局を組み合わせ、Boost Mobileのサービスを継続する方針を示している。
こうした事業転換の背景には、周波数利用を巡る規制当局の調査もあった。EchoStarの開示によると、FCCは2025年5月、同社の5Gサービス整備義務や衛星通信用周波数の利用状況について調査を開始した。同年9月8日には、FCC委員長が職員に調査の終結を指示したと同社に通知した。
周波数取得の発表時には、通信大手の株価も下落した。Dow Jones Newswiresによると、2025年9月8日午前10時13分(米東部時間)の報道時点で、T-Mobileは5.3%、Verizonは2.5%、AT&Tは3.7%下落していた。SpaceXによる周波数確保と携帯市場への参入構想は、既存事業者の競争環境を考えるうえでも注目される動きとなっている。
元記事: SpaceX Plans Buy Boost Mobile to Expand Its Cellular Network to the Public, As Per Reports