米オラクル、株式と社債で3.1兆円調達へ―AI投資とキャッシュフロー改善が焦点
2026年11月4日 15:06
米Oracleは2026年11月2日、普通株式と社債で計200億ドル(約3兆1600億円)を調達するための発行条件を決定した。10月28日の投資家説明会で示した、2030年度までの追加資金調達枠に相当する。AI向けクラウド設備の拡充を進める同社にとって、大型契約を売上とキャッシュフローへ転換する時期が焦点となる。
■株式と社債で各100億ドル(約1兆5800億円)を調達へ
Oracleは普通株式8620万6897株を1株116ドルで発行し、約100億ドル(約1兆5800億円)を調達する。社債も総額100億ドル(約1兆5800億円)を発行する予定で、両案件は通常の完了条件を満たすことを前提に、11月4日の完了を見込む。それぞれ独立して実施される。
株式の発行価格は、10月30日の終値130.67ドルを約11.2%下回る。9月7日時点の発行済み普通株式30億2373万6000株に対し、新株の数は約2.85%に相当する。この株数だけを加えて計算すると、既存株主の持ち分比率は約2.77%低下する。
社債は5本の固定利付債で構成される。2029年満期が20億ドル(約3160億円)で利率7.000%、2031年満期が17億5000万ドル(約2770億円)で7.450%、2033年満期が22億5000万ドル(約3560億円)で7.850%、2037年満期が25億ドル(約3950億円)で8.000%、2046年満期が15億ドル(約2370億円)で8.650%となった。
Oracleによると、手数料などを差し引いた手取り額は株式が約99億ドル、社債が約100億ドル(約1兆5800億円)となる見込みだ。資金は設備投資、債務返済、将来の投資や買収、配当、自社株買いなど、一般的な企業目的に充てる。
■2030年度までの投資計画を支える資金
10月28日にラスベガスで開かれた投資家説明会には、共同CEOのクレイ・マグワーク氏とマイク・シシリア氏、最高財務責任者のヒラリー・マクソン氏が登壇した。同社は2027年度から2030年度の投資サイクルについて、既存債務の借り換えを除く追加の資本市場調達を200億ドル(約3兆1600億円)に抑える方針を示した。
想定する内訳は株式100億ドル(約1兆5800億円)と借入総額100億ドル(約1兆5800億円)で、今回の発行額と一致する。この枠は、2027年度第1四半期に完了した200億ドル(約3兆1600億円)の市場価格での随時売却型株式プログラムとは別枠である。マクソン氏は説明会で、市場環境を見ながら早ければ2026暦年中に調達を実施する考えも示していた。
Oracleは設備投資が2027年度と2028年度にピークを迎え、2029年度に減少すると予想する。フリーキャッシュフローは2028年度後半に黒字化し、2029年度には年間300億ドル以上を確保する目標だ。2030年度の売上高は2250億ドル以上を見込む。
同社は、機器供給企業による融資、顧客が提供するハードウェア、顧客からの前払いを活用し、初期の現金支出を抑えるとしている。設備投資に先行資金を確保しつつ、契約に基づく収入と営業活動から生む現金で、その後の成長を支える計画である。
■株価下落と債務負担への視線
10月28日のOracle株終値は前日比10.7%高の144.54ドルだった。ロイターによると、11月2日は前営業日比8.8%安の119.22ドルで終了した。10月28日の終値からの下落率は約17.5%となる。
9月7日時点の発行済み普通株式数を一定として計算すると、この間の時価総額減少は約766億ドルとなる。また、119.22ドルは2025年9月につけた取引時間中の最高値345.72ドルを約65.5%下回る水準だ。
ロイターによると、2026年8月31日時点のOracleの社債などの借入残高は1253億4000万ドル(約19兆8000億円)だった。英専門メディアComputingは、S&Pグローバル・レーティングが7月9日に、債務増加と大幅なキャッシュフロー赤字を背景に長期格付けをBBBからBBB-へ引き下げたと報じている。
BBB-は投資適格級の最下位で、その1段階下のBB+は投機的格付けとなる。投資適格級から投機的格付けに下がった発行体や債券は「フォールン・エンジェル」と呼ばれる。運用方針で投資対象を制限する投資家の売却につながる可能性があり、借り換えや新規調達の条件にも影響する。
ロイターが8月に報じたところでは、モルガン・スタンレーのクレジットアナリスト、リンジー・タイラー氏は、年末までにOracleが二つの格付けでBBB帯の低位に位置する可能性を指摘した。同氏は投機的格付けへの移行を、投資計画の実行と収益化に左右される中期的なリスクと捉えている。Bloombergも7月、DWS Americasの債券部門責任者ジョージ・カトランボーン氏が、同社の資金調達と信用力維持の難しさを指摘したと報じた。
■拡大するクラウド事業と先行投資
Oracleの2026年度通期売上高は673億5700万ドル(約10兆6000億円)だった。設備投資は前年度比約162%増の556億6300万ドル(約8兆7900億円)となり、営業キャッシュフロー319億7700万ドル(約5兆500億円)を上回った。フリーキャッシュフローは236億8600万ドル(約3兆7400億円)の赤字だった。
同社は2027年度の売上高を約900億ドル(約14兆2000億円)と見込む。一方、米投資情報サイトThe Motley Foolが7月に報じたS&Pの予測では、同年度のフリー営業キャッシュフロー赤字は約420億ドルへ拡大する見通しだった。売上拡大と並行して、設備建設に伴う資金負担が続く構図だ。
Oracleの発表によると、2026年度第1四半期のクラウドインフラ売上高は前年同期比55%増の33億ドル(約5210億円)で、クラウド全体は72億ドル(約1兆1400億円)だった。第4四半期のインフラ売上高は同93%増の58億ドル(約9160億円)へ拡大した。さらに2027年度第1四半期には、同121%増の74億ドル(約1兆1700億円)となった。
契約済みで今後売上として認識する残余履行義務(RPO)は、2025年8月末の4550億ドル(約71兆9000億円)から2026年5月末に6380億ドル(約101兆円)、同年8月末には6640億ドル(約105兆円)へ増えた。Oracleは8月末のRPOの約13%を、その後12カ月間に売上として認識すると見込む。設備の引き渡しとサービス提供が、契約残高を売上へ変える重要な工程となる。
ロイターによると、Jefferiesは2月の資金調達計画について、AI事業拡大に向けた時間を確保する一方、短期的な利益率を圧迫し、フリーキャッシュフローの黒字化は2029年度になると予測していた。その後Oracleは、10月の説明会で2028年度後半の黒字化を目標に掲げている。
■大型顧客とデータセンター建設
Oracleは2月の資金調達計画で、設備拡充の対象となる主要なOracle Cloud Infrastructure(OCI)顧客として、AMD、Meta、NVIDIA、OpenAI、TikTok、xAIを挙げた。契約済みの需要を満たす追加容量を整備するための資金調達だと説明している。
ロイターによると、OpenAIとの契約は5年間で3000億ドル(約47兆4000億円)規模に上る。単純平均では年600億ドル(約9兆4800億円)に相当し、Oracleの2024年度のクラウドサービス売上高197億7400万ドル(約3兆1200億円)を上回る規模だ。実際の売上計上は、サービスの提供時期と契約条件に沿って進む。
OpenAIの日本語公式発表によると、Oracleとの2025年7月の合意は、米国内でStargate向けのデータセンター容量を4.5ギガワット追加するものだった。Stargateにはソフトバンクグループも参加する。4.5ギガワットは、米開拓局が示すフーバーダム発電所の設備容量約2.08ギガワットの約2.2倍に相当する。
OpenAIは、テキサス州アビリーンの拠点でNVIDIA GB200ラックの導入と初期の学習・推論処理を開始したと公表している。専門メディアData Center Dynamicsによると、同拠点全体の計画電力容量は1.2ギガワットである。こうした施設では、建屋や電力設備、計算機器を整備し、順次サービスを提供していく。
■社債市場の需要と情報開示の課題
Oracleは2026年2月にも250億ドル(約3兆9500億円)の社債を8本に分けて発行した。満期は3年から40年に及ぶ。運用会社TwentyFour Asset Managementによると、注文はピーク時に約1290億ドル(約20兆4000億円)に達し、当時の企業の社債発行として過去最大となった。
同社によると、2025年9月の180億ドル(約2兆8400億円)の起債にも約900億ドル(約14兆2000億円)の注文が集まった。一方、Bloombergは2026年7月時点で、Oracleが同社の米投資適格社債指数における最大の非金融発行体だったと報じている。大型の起債が続く中、投資家は今後の発行規模や信用力の変化も見極めている。
情報開示を巡る訴訟もある。ロイターによると、オハイオ州大工年金基金を中心とする債券保有者は2026年1月14日、ニューヨーク州裁判所で集団訴訟を提起した。2025年9月25日の180億ドル(約2兆8400億円)の起債時に、追加の多額の借入計画が十分に開示されなかったと主張している。
訴状では、その約7週間後にテキサス州とウィスコンシン州のOpenAI向けデータセンターを支える380億ドル(約6兆円)の融資調達が進められたことが問題視されている。被告にはOracle、ラリー・エリソン会長、前CEOのサフラ・キャッツ氏、最高会計責任者のマリア・スミス氏、引受銀行16行が含まれる。ロイターの1月の取材に対し、Oracleはコメントを控えた。
今回の資金調達で、Oracleは2030年度までの投資計画を支える追加資金の確保を具体化した。今後はデータセンターの稼働、顧客への容量提供、代金回収が計画通りに進み、設備投資の負担を上回る現金を生み出せるかが、財務目標の達成を左右する。
元記事: Oracle Burns Entire Four-Year Capital Promise in One Week, Shares Shed $60B