JWST、恒星間彗星3I/ATLASに塵を含む水氷粒子の証拠 太陽系外縁天体と共通点
2026年11月4日 14:59
恒星間彗星アトラス彗星(3I/ATLAS)が放出する物質を、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で調べた研究から、塵を多く含む微小な水氷粒子の存在が示唆された。赤外線スペクトルには、これまで調べられた太陽系の彗星の氷粒子とは異なる特徴があり、海王星より遠くを公転する一部の氷天体との共通点も見つかった。
米サウスウエスト研究所(SwRI)が2026年10月26日に発表した研究成果で、論文は天文学誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。異なる恒星系で惑星の材料となった氷を比較し、その形成環境を探る手掛かりとなる。
■3例目の恒星間天体を追跡
3I/ATLASは2025年7月1日、チリのATLAS望遠鏡によって発見された。2017年のオウムアムア(1I/ʻOumuamua)、2019年のボリソフ彗星(2I/Borisov)に続き、太陽系外から飛来したと確認された3例目の恒星間天体である。
恒星間天体は、別の恒星の周囲で形成され、元の惑星系から放出された天体と考えられている。なかでもガスや塵を放出する恒星間彗星は、その物質を分光観測できるため、太陽系外の惑星形成環境を調べる貴重な機会になる。
今回の観測プログラムを率いるのは、NASAゴダード宇宙飛行センターと米カトリック大学に所属するマーティン・コーディナー氏だ。同氏によると、活動中の恒星間彗星が発見されたらすぐに観測を始め、時間を追って調べられるよう、プログラムを準備していた。
研究チームはJWSTの近赤外線分光器「NIRSpec」で、2025年8月6日、同年12月22日、2026年4月1日の計3回観測した。太陽への最接近の前後、約8カ月にわたるデータから、放出された氷や塵の性質を調べた。
■水氷の吸収帯から粒子の性質を推定
彗星が太陽に温められると、内部から逃げ出すガスが氷や塵の粒子を運び出す。粒子は、彗星の核を取り囲むガスと塵の雲「コマ」に広がる。今回分析したのは、このコマにある粒子のスペクトルだ。
水氷は赤外線の特定の波長を吸収するため、その特徴から存在や性質を調べられる。代表的なのは、波長約3マイクロメートルの強い吸収帯と、約1.5、2マイクロメートルの比較的弱い吸収帯である。1マイクロメートルは100万分の1メートルに当たる。
3I/ATLASでは、約3マイクロメートルの吸収帯が強い一方、約1.5、2マイクロメートルの吸収帯は非常に弱いか、目立たなかった。筆頭著者でSwRIのシルビア・プロトパパ氏は、この組み合わせが、従来の彗星観測とは異なる氷の状態を調べるきっかけになったと説明している。
研究チームは、粒子の大きさや組成を変えた光の散乱モデルと観測結果を比較した。その結果、塵を含む水氷の集合体で、大きさがおおむね1マイクロメートル程度か、それより小さい粒子が、スペクトルをよく再現した。詳細なモデル解析には、2025年8月と2026年4月のデータを用いた。
モデルでは、小さな粒子に塵が混ざることで、光が氷の中を通る実効的な距離が短くなる。これにより約1.5、2マイクロメートルの吸収帯が弱まり、約3マイクロメートルの強い吸収帯が残るという。比較対象となった太陽系の彗星のコマでは、同程度に小さく、比較的純粋な水氷粒子や、塵の割合が小さい粒子が推定されている。
■太陽系外縁の氷天体と共通する特徴
研究チームは、3I/ATLASのスペクトルを、海王星の軌道より外側を公転する太陽系外縁天体(TNO)の表面のスペクトルとも比較した。これらの天体は、初期太陽系の物質や、その後の変化を調べる手掛かりを保っている。
SwRIによると、3I/ATLASの約3マイクロメートルの水氷吸収帯の形は、複数のTNOのグループに似ていた。特に、二酸化炭素氷や有機化合物の特徴を示す天体との類似が見られた。比較の中心となるのは、水氷に関わる吸収帯の形状だ。
こうしたTNOの一部でも、約1.5、2マイクロメートルの水氷吸収帯が目立たない。研究チームは、塵を含む微小な水氷粒子が、これらの天体の約3マイクロメートルの吸収にも寄与している可能性を挙げている。異なる天体で見られるスペクトルを、粒子の大きさと氷への塵の混ざり方という共通の性質から理解する試みである。
3I/ATLASの粒子には、観測時期による変化も示唆された。太陽から遠ざかっていた2026年4月のデータでは、それ以前に推定された粒子に加え、やや大きく氷の割合が高い、マイクロメートル程度の粒子集団を含むモデルが支持された。
研究チームは、この変化の説明として、観測時ごとの加熱条件によって生き残る粒子が変わる可能性や、太陽への接近で表面が削られ、より深い場所の物質が放出された可能性を検討している。粒子の性質の変化を追うことも、彗星内部の物質を読み解く手掛かりになる。
■古い恒星系の惑星形成を探る
彗星は、若い恒星を取り囲むガスと塵の「原始惑星系円盤」で形成された物質を保存していると考えられている。円盤内の微粒子は集まって微惑星となり、さらに大きな天体へ成長する。太陽系の彗星と恒星間彗星を比べることで、異なる恒星の周囲にあった材料の共通点や多様性を調べられる。
3I/ATLASについては、別の研究で古い時代の起源も示唆されている。NASAが2026年6月に紹介したコーディナー氏らの研究では、放出されたガスの炭素同位体組成を銀河の化学進化モデルと比較し、100億〜120億年前に形成された可能性を示した。約46億年前に生まれた太陽系の2倍以上の年齢に相当する推定だ。
今回の氷粒子の研究で焦点となるのは、微惑星の材料となる氷の物理的な性質である。研究チームは、比較的純粋な水氷粒子から塵を多く含む集合体まで、異なる恒星系の氷が共通する幅広い性質を持つ可能性を示している。3I/ATLASは、その中でも塵の割合が高い側に位置すると解釈される。
この共通性が確かめられれば、氷の粒子構造が惑星形成円盤の段階で形づくられ、天体が成長した後にも一部が保存されるという見方を支える。今後、太陽系の彗星や新たな恒星間天体をJWSTで観測することで、こうした性質がどこまで共通しているかを調べていく。
元記事: James Webb Telescope Discovers Interstellar Comet 3I/ATLAS Is Made of Unusual Dusty Ice Grains