2026年カメラ市場、コンパクト出荷は15.4%増 メモリ高騰で各社が価格対応
2026年11月3日 17:02
2026年のカメラ市場では、レンズ交換式の出荷台数が減る一方、コンパクトカメラを含むレンズ一体型の成長が続いている。カメラ映像機器工業会(CIPA)が11月2日に公表した9月統計では、1~9月の総出荷台数は前年同期比4.3%減、出荷金額は2.2%増となった。各社はメモリ価格の高騰や部材不足への対応を進め、価格改定や調達方法の見直しに取り組んでいる。
■9月は前月から回復、累計では台数減・金額増
CIPAによると、9月のデジタルカメラ総出荷台数は74万8169台で、前月比9.8%増、前年同月比12.1%減だった。レンズ交換式は51万605台で、8月の43万6848台から16.9%増加したが、前年同月比では21.2%減となった。
1~9月累計の総出荷台数は645万1681台、出荷金額は約6479億円だった。このうちレンズ交換式は451万9828台で前年同期比10.8%減、出荷金額は約5268億円で0.1%増となり、台数と金額の動きが分かれている。
ミラーレスの累計出荷は417万9988台で7.9%減、出荷金額は約5121億円で1.8%増だった。レンズ交換式に占める割合は台数で約92.5%、金額で約97.2%に達する。一眼レフは33万9840台で35.5%減、出荷金額は37.7%減となった。
交換レンズの9月出荷は84万820本で、前月比17.3%増、前年同月比18.4%減だった。1~9月累計は715万4831本で6.7%減、出荷金額は約3886億円で3.1%増となった。累計のレンズ交換式ボディー1台に対する交換レンズの出荷本数は約1.58本で、台数の減少幅はボディーより小さい。
CIPA統計は、参加企業による海外生産分を含むメーカー出荷を集計したものだ。2026年1月からは集計対象に1社が加わっており、前年比にも対象範囲の変更が反映されている。
■コンパクト需要を支える若い購入者
レンズ一体型カメラの9月出荷台数は23万7564台で、前年同月比16.5%増だった。1~9月累計は193万1853台で15.4%増、出荷金額は約1212億円で13.0%増となった。総出荷台数に占める割合は約3割に達している。
このカテゴリーには、小型のコンパクトカメラのほか、高倍率ズーム搭載機なども含まれる。CIPAによると、2025年のレンズ一体型の出荷台数も前年比29.6%増となっており、携帯性や利便性と画質のバランスを評価する需要が見られた。
キヤノンは2026年の統合報告書で、若者を中心とするSNS利用者の間に、スマートフォンを超える写真・動画撮影機能への需要があると説明した。所有すること自体をファッションとして楽しむ動きにも触れ、PowerShotシリーズなどコンパクトカメラの製品拡充を進める方針を示している。
Digital Camera Worldによると、キヤノンは年初、2026年のコンパクトカメラ生産を前年の1.5倍に増やす計画だった。同社の10月27日の決算発表では、第3四半期のコンパクトカメラ売上高は前年同期比5割以上増加した。一方、部材供給が旺盛な需要に追いつかず、年間の販売計画を引き下げたとしている。
DPReviewが3月に掲載したインタビューでは、OM SYSTEMの幹部もコンパクト市場の成長を注視し、分析していると説明した。レンズ交換式の価格上昇を受け、代わりに高級コンパクトを検討する購入者が増えているとの見方を示している。
■センサーサイズと地域でも動きに差
センサーサイズ別でも出荷の動きは異なる。CIPAの1~9月累計では、35mm判以上のレンズ交換式カメラは149万1722台で前年同期比19.9%減、出荷金額は7.4%減だった。35mm判未満は302万8106台で5.5%減、出荷金額は11.5%増となった。
35mm判以上にはフルサイズや中判、35mm判未満にはAPS-Cやマイクロフォーサーズなどが含まれる。小さいセンサーのカテゴリーが出荷台数の落ち込みを相対的に抑える構図だ。ミラーレス全体の1台当たり平均出荷金額は、1~9月累計で約12万2500円となり、前年同期比で約10.5%上昇した。
地域別のレンズ交換式出荷では、中国向けが前年同期比23.0%減、米州向けが12.7%減、欧州向けが11.2%減だった。一方、日本・中国を除くアジア向けは8.8%増、日本向けは5.5%増となり、仕向け地による差も大きい。
■AI需要がメモリの調達環境を変える
カメラのコストを押し上げる要因の一つが、メモリの需給逼迫だ。DRAMは撮影画像を一時的に保持するバッファーなどに、NANDフラッシュはSDカードやCFexpressカードなどの記録媒体に使われる。連写では、画像を一時的に蓄えながら記録媒体へ順次書き込むため、メモリが重要な役割を担う。
Micronは2024年3月の決算説明で、AIサーバー向けのHBM、DDR5、データセンター向けSSDの需要拡大が、先端のDRAMとNANDの供給を引き締めていると説明していた。HBMは、多数のメモリチップを積層して広いデータ転送帯域を確保するメモリで、AIアクセラレーターに使われる。
S&P Globalによると、Samsung、SK hynix、Micronは収益性の高いAI関連メモリを重視しており、従来型DRAMの供給にも圧力がかかっている。Wall Street Journalが伝えたTrendForceの推計では、AI用途を含むデータセンター全体が、2026年に生産される高性能メモリチップの70%超を消費する見通しだ。
Silicon Motionのウォレス・コウCEOも、2025年第3四半期の決算説明会で、HDD、DRAM、HBM、NANDなどが2026年に同時に深刻な供給不足に直面するとの見方を示した。キヤノンは2026年第1四半期の決算説明会で、調達数量の確保を優先し、契約価格の2~3倍程度となっていたスポット価格での購入も進めたと説明している。
■富士フイルムは国内の一部製品を値上げ
富士フイルムイメージングシステムズは10月1日、国内のデジタルカメラ、交換レンズ、インスタントカメラ、スマートフォンプリンターの一部製品について出荷価格を引き上げた。理由として、部材費、製造費、物流費の高騰を挙げている。
デジタルカメラの値上げ率は約6~15%で、X100VI、X-E5、X-T50、GFX100 II、GFX100S II、GFX100RFなどが対象となった。交換レンズのXF500mmF5.6 R LM OIS WRは約12%、対象のinstaxカメラは約6~23%、スマートフォンプリンターは約7~12%の改定となった。いずれも同社の出荷価格に対する値上げ率だ。
海外では、Camera Jabberがドイツの販売店告知に基づき、9月1日からの一部機種の価格改定を報じた。告知ではX100VIが1799ユーロ(約31万8000円)から1999ユーロ(約35万4000円)へ200ユーロ(約3万5400円)上がり、GFX100 IIは最大500ユーロ(約8万8500円)の値上げとされた。
富士フイルムホールディングスは8月6日の決算説明で、2027年3月期の半導体メモリやIT関連部材の価格上昇による営業利益への影響を、5月時点の110億円から250億円へ拡大した。このうちイメージング事業は140億円を見込み、価格対策や代替部材の調達で影響を抑える方針を示した。
■キヤノンは2027年もコスト高を想定
キヤノンは第2四半期決算時点で、2026年通期のメモリ価格上昇による全社の営業利益への影響を694億円と見積もった。第1四半期時点の634億円から60億円増やしたものだ。10月の第3四半期決算では、通期の影響額を619億円とし、2026年に必要なメモリは確保済みで、第4四半期の調達単価もおおむね想定した水準で決まったと説明した。
2027年については、メモリや原材料の価格が下がらず、通年でコスト負担になるとの見方を示した。イメージング事業でも、高いコストが翌年も続く場合は値上げによって吸収する方針だ。価格への転嫁は、販売数量への影響と収益性を考慮しながら判断するとしている。
ニコンも5月の決算説明で、DRAMを中心にメモリ価格が前年の第1四半期に比べて数倍に上昇したと説明した。コスト削減を続けながら、状況に応じて価格転嫁を検討する可能性に言及している。
CIPAが2月26日に公表した2026年の年間出荷見通しは、デジタルカメラ全体で959万台、レンズ一体型で277万台、レンズ交換式で682万台だった。レンズ一体型の想定成長率13.6%に対し、1~9月実績は15.4%増となった。レンズ交換式が年間見通しに届くには、第4四半期に約230万台、月平均約76万7000台の出荷が必要となる。
コンパクト需要の拡大、レンズ交換式の台数減、メモリなどのコスト上昇が並行して進む2026年のカメラ市場。購入を検討する際は、撮影に必要な機能に加え、候補機種の国内価格、納期、使用する記録媒体や交換レンズまで含めた費用を確認することが重要になる。
元記事: AI Chip Shortage Split 2026 Camera Market: Buy Compact Now, Wait on Full-Frame Mirrorless