Apple Intelligence、中国本土で11月4日からテスト Qwen連携と提供機能を発表
2026年11月3日 11:21
Appleは10月31日、中国本土向けApple Intelligenceの初期機能を、2026年11月4日から最新のiOS開発者ベータ版でテストできるようにすると発表した。一般提供は12月のiOS 27.3正式公開に合わせて予定しており、翻訳、文章作成支援、写真編集などに加え、AlibabaのQwen(通義千問)と連携する機能が利用可能になる。
■提供日程と対応するiPhone
今回の提供対象はiPhoneである。対応機種はiPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Max、iPhone 16以降のモデル、iPhone Air、iPhone Duoで、端末とSiriの言語を英語または中国語の簡体字に設定する必要がある。
11月4日に始まるのは、開発者ベータ版でのテストだ。一般ユーザー向けの提供は12月に予定されており、Appleは他のプラットフォームについて、必要な承認を取得した後に対応すると説明している。
Qwenとの連携には地域に関する利用条件もある。中国のテクノロジーメディアIT之家が伝えたAlibabaの発表によると、中国で購入したApple Intelligence対応iPhoneの利用者、または端末の所在地とApple Accountの国・地域の両方が中国である利用者が対象となる。
Apple Intelligenceは2024年6月のWWDCで発表され、同年10月28日にiOS 18.1などで初期機能の提供が始まった。中国本土では規制対応が続いており、今回の発表でiPhone向けの具体的な提供日程が示された。
■翻訳、作文、写真編集などを提供
ライブ翻訳はメッセージ、FaceTime、電話に組み込まれる。対応する言語間で、メッセージのやり取りや通話中のコミュニケーションを支援する機能だ。
AirPodsによる対面でのライブ翻訳にも対応する。中国向け発表が挙げる対象はAirPods 5、アクティブノイズキャンセリング搭載AirPods 4、AirPods Pro 2以降、AirPods Max 2で、最新のファームウェアとApple Intelligenceを有効にしたiPhoneとのペアリングが必要となる。
作文ツールでは、アプリ内で入力した文章を書き直したり、校正・要約したりできる。ビジュアルインテリジェンスでは、iPhoneのカメラを通して、目の前にある物や場所について調べられる。
写真アプリには、写り込んだ不要な対象を取り除くクリーンアップ、文章による写真・動画の検索、説明を入力してメモリームービーを作成する機能が加わる。文字で説明して独自の絵文字を生成するジェン文字も利用できる。
メールでは、重要なメールの優先表示や、メール本文・長いやり取りの要約に対応する。メールとメッセージには返信候補を生成するスマートリプライが入り、通知の要約、優先通知、すぐに対応が必要な通知を選んで届ける集中モードも提供される。
メモと電話では、録音した音声の文字起こしをもとに要約を作成できる。Siriにはタイプ入力で話しかけられ、言いよどみを含む依頼の理解や、続く質問で文脈を引き継ぐ機能も用意される。
■Qwen連携は利用者が選択、送信前に同意を確認
Appleは、中国向けApple Intelligenceを自社が構築した生成モデルで動かし、その一部の体験にQwenを組み込むと説明している。連携する入口はSiri、作文ツール、ビジュアルインテリジェンスで、文章や画像の理解、コンテンツ生成などにQwenを利用する。
Siriでは、特定の依頼についてQwenの知識を使って回答できる。利用者が選んだ写真や、PDF・プレゼンテーションを含む文書について質問することも可能だ。作文ツールの作成機能では、テーマに沿ったオリジナルのコンテンツを生成できる。
IT之家によると、AlibabaはQwen連携を有効にするかどうかを利用者が選べると説明している。質問、文書、画像をQwenへ送信する前には同意を求め、利用者がいつQwenを使い、どの情報を共有するかを決められる仕組みだ。
利用にはQwenのアカウント、または「Appleでサインイン」を使う。同じ発表でAlibabaは、この連携を通じた利用者のリクエストと生成された回答を、モデルの学習には使用しないとしている。
Apple Intelligenceは、端末上の処理に加えて、外部のAIサービスとも連携する構成を採る。ChatGPTとの連携が提供されている地域では、Siriや作文ツールから外部モデルを呼び出せる。中国向けのQwen連携も、普段使うアプリの中から外部の知識や生成機能にアクセスする入口となる。
Appleは自社のクラウド処理基盤として、プライベートクラウドコンピューティング(PCC)を開発してきた。同社によると、PCCは処理したデータを保存せず、リクエストへの対応に限定して使用する設計で、公開されたソフトウェアや検証の仕組みにより、セキュリティ研究者が保護措置を確認できるようにしている。
■次世代のSiri AIは今回の対象外
中国向けの今回の更新には、Siri AIと、WWDC 2026で発表されたその他の次世代Apple Intelligence機能は含まれない。Computerworldによると、画像生成アプリImage Playgroundも今回の提供対象から外れる。
AppleはSiri AIを2026年6月に発表し、9月14日から対応地域で英語のベータ版を提供し始めた。画面上の内容や個人の情報を理解し、メッセージ、メール、写真などから必要な情報を探したり、アプリを横断する操作を実行したりできると説明している。
Appleによると、こうした次世代機能には、GoogleとGeminiモデルを活用して共同開発したApple Foundation Modelsを使用する。モデルは端末上とPCCを使うサーバー上で動作する仕組みだ。中国向けの初期機能は、翻訳、作文支援、写真編集、要約といった日常的な作業を中心に提供される。
■中国の登録手続きと生成AIの安全性評価
中国国家インターネット情報弁公室(CAC)は7月15日、Apple Intelligenceを含む7件のスマートフォン端末向け生成AIサービスの登録情報を公表した。IT之家によると、Apple Intelligenceの登録日は7月8日で、対象となる利用場面はAppleのスマートフォンとされている。
ロイターは7月15日、関係者の話として、AppleのサービスにAlibabaとBaiduのAI技術が組み込まれると報じた。Alibabaも同通信に対し、Qwenを中国のiOS、iPadOS、macOS、visionOS向けApple Intelligenceに統合する方針を説明していた。今回のAppleの発表は、そのうちiPhoneで先行する提供内容を示したものだ。
IT之家によると、9月29日にはApple IntelligenceとAlibabaのAIモデルを含む利用許可も取得した。Alibabaとの協力関係はそれ以前から公表されており、ロイターによると、同社会長のジョセフ・ツァイ氏は2025年2月13日にAppleとの提携を明らかにしていた。
中国では、一般向け生成AIサービスの内容に規制がある。2023年施行の「生成AIサービス管理暫定弁法」は、国家政権の転覆をあおる内容や、民族的な憎悪・差別を助長する内容などの生成を禁じ、提供者に違法な内容への対応を求めている。
国家標準GB/T 45654—2025の参考附属書には、安全性評価のため、31種類のリスクを網羅する2000問以上の生成内容テスト用質問集を整備し、少なくとも月1回更新する方法が示されている。回答を拒むべき質問については別の質問集を設け、300問以上を抽出する試験で拒答率95%以上を確認する。通常回答すべき質問への拒答率も評価する構成だ。
これらは、生成される内容と回答拒否の振る舞いを評価する枠組みである。中国で提供される生成AIには、利用者の依頼に応じる機能とともに、現地の内容規制に対応する運用が求められる。
■データ処理に関わる法律と市場での位置付け
中国の国家情報法第7条は、組織と個人に対し、法律に従って国家情報活動を支持・支援・協力し、知り得た国家情報活動の秘密を守るよう定める。第14条は情報機関が必要な協力を求める権限を、第16条は所定の承認を経て関連資料などを閲覧・取得する権限を規定している。
データ安全法第35条も、国家安全の維持や犯罪捜査のために公安機関・国家安全機関がデータを取得する場合、厳格な承認手続きを経て法律に従って実施し、関係する組織と個人が協力するよう定める。サイバーセキュリティ法には、重要情報インフラ運営者が国内で収集・生成した個人情報と重要データの国内保存や、国外提供時の安全性評価に関する規定がある。
提携を巡っては米国でも懸念が表明されてきた。ニューヨーク・タイムズは2025年5月、ラジャ・クリシュナムルティ米下院議員が、Alibabaによるモデル改良へのデータ利用や、中国のiPhone利用者の権利を巡って懸念を示したと報じた。
Appleにとって、中国は重要な販売地域だ。同社の2025会計年度の決算では、中華圏の売上高は643億7700万ドル(約10兆2000億円)で、全社売上高4161億6100万ドル(約65兆8000億円)の約15.5%を占めた。
9to5Macが紹介したIDCの調査によると、2026年第2四半期の中国本土のスマートフォン出荷台数は前年同期比4.3%減少した一方、Appleは24.4%増加した。Appleの出荷シェアは18.1%で、22.6%のHuaweiに次ぐ2位だった。Huawei、Xiaomi、OPPOも、各社の公式資料で文章生成、要約、写真編集などのAI機能を打ち出している。
上海証券報によると、Alibabaのエディー・ウーCEOは、QwenをAppleのエコシステムに組み込み、中国の利用者に新たなAIサービス体験を届ける方針を示した。11月の開発者テストは、翻訳や作文支援などの使い勝手に加え、Qwenを呼び出す場面や情報共有の操作を実際に確認する機会となる。