サムスンのAIグラス、12月中旬に米韓発売と報道 Geminiの保存設定も確認点に
2026年11月3日 11:21
サムスンのスマートグラス「インテリジェントアイウェア」が、2026年12月中旬に米国と韓国で発売されると、韓国の朝鮮ビズが10月30日に報じた。11月発売とする先行報道より遅い時期となり、日本、欧州、中国は初回販売の対象から外れるという。
Android XRとGoogleのGeminiを採用する、画面を持たない音声中心の製品だ。購入を検討する際は、スマートフォンとの連携機能に加え、録画を知らせる仕組みや、Geminiのアクティビティ保存設定も確認点となる。
■発売は12月中旬との報道、日本向け日程は未発表
サムスンとGoogleは5月のGoogle I/O 2026で製品を披露し、一部市場で同年秋に発売する方針を示していた。サムスンは7月22日、ロンドンで開催したGalaxy Unpackedでも、新たなフレームと機能を紹介した。
The Korea Heraldは10月1日、サムスン関係者の話として11月発売を報じていた。その後、朝鮮ビズが電子業界関係者への取材に基づき、12月中旬の米韓先行販売を報道した。GSMArenaも10月31日、この朝鮮ビズの記事を参照して発売時期を伝えている。
朝鮮ビズによると、サムスンは米韓での初期需要や利用者の反応を見ながら、販売地域を広げる方針だという。11月2日時点で、正確な発売日、正式な販売価格、市場別の全ラインアップは未発表だ。日本向けの発売日や価格も公表されていない。
■画面を見ずにGeminiへ話しかける
インテリジェントアイウェアは、カメラ、マイク、スピーカーを眼鏡のフレームに収めた製品だ。レンズ内に情報を表示するディスプレイは搭載せず、音声で質問し、スピーカーから回答を聞く。通常の眼鏡に近い外観と、ハンズフリーの操作を組み合わせる構成はRay-Ban Metaと共通する。
Googleが紹介した用途には、目の前の看板やメニューについての質問、道案内、通話やメッセージの操作、写真・動画の撮影、会話や文字のリアルタイム翻訳がある。サムスンも、撮影したホワイトボードや会議の内容を、Galaxyスマートフォンのノートアプリで整理する機能を説明している。
Tom’s Guideの7月の取材記事では、Gemini Liveを使った対話に加え、Gmail、Googleカレンダー、Googleマップとの連携が紹介された。サムスンによると、翻訳や案内などの利用条件は、対応端末、アプリ、言語、地域、通信環境によって異なる。
画面を省くことは、重量や消費電力を抑えるための設計上の選択肢となる。9to5Googleによると、サムスンのJay Kim氏は3月のMWCでのCNBCの取材に対し、画面が必要ならスマートフォンやスマートウォッチを使えると説明していた。眼鏡では、周囲を見ながら必要な情報を音声で受け取る使い方を重視する。
■眼鏡とスマートフォンで処理を分担
搭載チップはQualcommのSnapdragon AR1 Gen 1だ。Qualcommによると、同社初のスマートグラス向けSnapdragon XRプラットフォームで、写真・動画向けのデュアルISP(画像信号プロセッサ)や、画像・音声処理を支援する端末内AI機能を備える。
サムスンは、眼鏡と接続したGalaxyスマートフォンの間で処理を分担する「スプリットコンピューティング」を採用すると説明している。カメラやマイクで得た情報を使い、スマートフォンとの連携を通じてAIの支援を受ける構成だ。機器ごとに処理を分けることは、装着する側の軽量化や電力・発熱の管理にもつながる。
Qualcommは2025年6月、後継のSnapdragon AR1+ Gen 1を発表した。同社によると、こちらは小規模言語モデルを眼鏡上で実行できる点が特徴だ。スマートグラスの端末内AIには、画像や音声の処理から言語モデルの実行まで、異なる種類の処理が含まれる。
操作は音声やフレームへのタッチ、物理ボタンを使う。Tom’s Guideは、撮影やGeminiの起動に使うボタンと、つるの内側の電源スイッチを確認した。サムスンの公式説明ではGalaxy Watchとの連携も用意され、手首のジェスチャー操作はGalaxy Watch9が対象となる。
■最大9時間駆動、重量やカメラの詳細は報道情報
サムスンの7月の発表では、1回の充電で最大9時間使用でき、充電ケースでさらに最大7回のフル充電が可能とされる。いずれも同社の公表値で、実際の駆動時間は、使用する機能やアプリ、通信環境、設定などによって変わる。
重量については、SammyGuruが10月12日、標準レンズ装着時で約41gと報じた。度付きレンズを選ぶと重量が増え、モデルによっても異なるという。同媒体は1200万画素カメラと、耳をふさがない2基のスピーカーも報じている。
カメラのセンサーについては、Tom’s Guideが4月、Android Headlinesのリーク情報としてSony IMX681を伝えていた。レンズにはクリアや着色タイプに加え、周囲の明るさに応じて濃さが変わる調光タイプも紹介されている。度付きレンズも想定されており、日常の眼鏡としての使いやすさが製品選びの要素となる。
無線接続では、Droid Lifeが9月30日、米連邦通信委員会(FCC)の認証資料からSM-O200JとSM-O200Pのモデル群を報告した。VR.orgによる資料の分析では、派生型を含めた計11のモデルコードがあり、Bluetoothに加えてWi-Fi接続も記載されている。
■Gentle MonsterとWarby Parkerがデザイン
フレームはGentle MonsterとWarby Parkerとの協業で開発された。サムスンがハードウェア、GoogleがAI技術を提供し、アイウェアブランドが日常的に身に着ける製品としてのデザインを担う。
韓国のGentle Monsterは、大胆な造形や個性的な店舗演出で知られるブランドだ。一方、米国のWarby Parkerは、クラシックな眼鏡を直接販売する事業を展開する。同社の通常の度付き眼鏡は、2026年11月時点の米国公式サイトで95ドル(約1万5000円)から販売されている。
SammyGuruは10月、Gentle Monsterについて6種類のフレーム形状・16仕様、Warby Parkerについて「Alden」「Reid」「Wren」の3種類・10仕様を報じた。これらは発売前の報道情報であり、正式な販売ラインアップは今後の発表を待つ。色、形、レンズを選べることは、技術製品としての性能に加え、普段の装いに合う眼鏡を選ぶうえでも重要になる。
■録画を知らせるLEDと装着検知
サムスンの公式説明では、周囲の人に向けたLEDと装着者側のLEDが、録画中であることを知らせる。外向きLEDが覆われると録画を停止し、眼鏡を外した場合も装着検知によって録画を無効にする。
Tom’s Guideの取材で、サムスンのXR開発責任者James Choi氏は、プライバシーを開発当初から重視したと説明した。同氏によると、LEDが物理的に破壊された場合も検出でき、保護機能を回避する行為への対策も研究しているという。Metaも公式に、録画を知らせるLEDが覆われたり無効化されたりすると、カメラが停止すると説明している。
こうした機器を巡り、欧州データ保護会議(EDPB)は10月13日、スマートグラスのデータ保護に関する声明を発表した。明るいLEDや音などを例に、周囲の人が撮影に気付きやすく、見過ごしにくい通知の必要性を示している。
米ニューヨーク州の統一裁判所制度は7月20日から、録画・録音機能を備えた眼鏡などの施設内への持ち込みを禁止した。韓国ではThe Korea Heraldによると、個人情報保護委員会が7月下旬にサムスンと撮影・録音時の通知について協議し、科学技術情報通信部が9月に安全な利用のための指針策定に着手した。
■Geminiの保存期間は設定によって変わる
クラウドサービスと連携するAIグラスでは、撮影時の通知に加え、サービス側でのデータの扱いも確認点となる。Googleの日本語版「Gemini アプリのプライバシー ハブ」では、アクティビティの保存がオンの場合、チャットや共有した内容などがアカウントに保存されると説明している。
2026年10月更新の説明では、自動削除の標準設定は18カ月だ。利用者は3カ月または36カ月に変更でき、自動削除を行わない設定や、保存のオフ、履歴の確認・削除も選べる。保存をオフにした場合のチャットや一時チャットは、応答の提供や安全性の確保などのため、72時間保持される。
人によるレビュー済みのチャットは、Googleアカウントから切り離した状態で最長3年間保存される。アクティビティを削除した後も、この保存対象となる。一方、Googleは音声やGemini Liveの動画・画面共有について、標準ではサービス改善に使用しないと説明している。
Gentle Monsterの日本語公式ページでは、AndroidとiOSの両方への対応を案内している。機能の提供状況や利用条件は国・地域などによって異なるため、購入時には、使用するスマートフォンで利用できる連携機能と、アカウントの保存設定を併せて確認することになる。
■価格とMeta製品との比較
サムスンの正式価格は11月2日時点で未発表だ。SammyGuruの製品情報まとめでは、米国価格について349〜499ドル(約5万5100~7万8800円)という噂が紹介されている。4月のAndroid Headlinesの情報を紹介したTom’s Guideは、379〜499ドル(約5万9900~7万8800円)という予想価格帯を伝えていた。
比較対象となるRay-Ban Meta(Gen 3)は、Metaが9月23日に発表した米国価格で449ドル(約7万900円)からだ。サムスンが379ドル(約5万9900円)なら70ドル(約1万1100円)安く、499ドル(約7万8800円)なら50ドル(約7900円)高い計算になる。Metaはカメラを省いたRay-Ban Meta Audioも投入し、発表時の米国価格は349ドル(約5万5100円)から、出荷開始日は10月13日としている。
MetaとEssilorLuxotticaには、既存製品の販売実績と眼鏡店を含む流通網がある。EssilorLuxotticaによると、Ray-Ban MetaとOakley Metaを合わせたAIグラスの2025年販売台数は700万台を超えた。サムスンはGalaxy機器との連携、Gemini、2つの眼鏡ブランドのデザインを組み合わせて、この市場に参入する。
■成長する市場、表示付きモデルの開発も
Counterpoint Researchによると、2026年上半期の世界のAIグラス出荷台数は前年同期比263%増で、ディスプレイ非搭載モデルが96%を占めた。同社の集計では、Metaはディスプレイ非搭載AIグラスの出荷台数の94%を占める。
IDCの2026年第2四半期の集計は、XRヘッドセットとグラスを含む市場を対象としており、Metaのシェアは68.7%だった。RayNeoが3.6%、Alibaba Groupが2.6%、XREALが2.5%、Xiaomiが2.3%で続く。集計対象は異なるものの、両社の調査はMetaの大きな存在感を示している。
市場予測では、Omdiaが2025年9月時点で、AIグラスの出荷台数は2026年に1000万台を超え、2030年には3500万台に達すると見込んだ。Smart Analytics Globalは2026年5月の予測で、同年のAIスマートグラス出荷の91%を音声型が占めるとしている。
サムスンは表示機能付きグラスの開発も進めている。Android Headlinesの情報を紹介したAndroid Authorityによると、画面なしモデルのコードネームは「Jinju」で、マイクロLEDディスプレイを備える「Haean」は2027年向けとされ、予想価格は600〜900ドル(約9万4800~14万2000円)だという。
眼鏡ブランドとAI基盤の組み合わせは、さらに広がる可能性がある。Reutersによると、Gucciを傘下に持つKeringのLuca de Meo最高経営責任者は4月、Googleと協業するGucciブランドのスマートグラスについて、2027年の投入を目指すと述べた。サムスンの製品でも、価格、装着感、連携機能の使いやすさ、小売店での展開が、日常の眼鏡として選ばれるかを左右する要素となる。
元記事: Samsung Smart Glasses Slip to December: Google Keeps Gemini Conversations 18 Months