テレサット「Lightspeed」、全球サービスを2028年半ばへ Falcon 9で15回の配備計画

2026年10月31日 17:50

カナダの衛星通信事業者テレサットは2026年10月29日の決算説明会で、低軌道衛星通信網「Telesat Lightspeed」の全球サービス開始目標を、2028年第1四半期末から同年第2四半期末へ約3カ月延期すると明らかにした。衛星の配備順序を変更し、カナダ軍の北極圏向け通信と北部地域のブロードバンドについては、2028年第1四半期末の開始目標を維持する。

試験衛星2機は2027年6月ごろの相乗り打ち上げ、量産衛星の専用打ち上げは同年9月ごろの開始を目指す。一方、従来の静止軌道衛星(GEO)事業では2026年12月から大型の債務償還が始まり、同社は衛星網の構築と借り換え交渉を並行して進めている。

■試験衛星を相乗り便で打ち上げ、約2カ月検証

最初に打ち上げるのは、MDA Spaceが製造する試験衛星「パスファインダー」2機だ。MDA Spaceの衛星プラットフォーム「AURORA」を使い、衛星本体と地上設備などを含む通信網全体の性能を軌道上で検証する。

従来は2026年12月の打ち上げを予定していた。ダン・ゴールドバーグCEOは今回の説明会で、打ち上げ需要が逼迫するなか、確保したFalcon 9の専用便を2機だけに使うことを避け、他の顧客の打ち上げに相乗りする方法を詰めていると説明した。

同CEOによると、2機は説明会時点で製造中で、2027年6月ごろの打ち上げに間に合わせる見込みだ。その後、約60日間の軌道上試験を行い、約3カ月後の9月ごろから量産衛星の打ち上げに移る計画となっている。

専用便には1回当たり15機を搭載する。Falcon 9は14回分が契約済みで、15回目についてもSpaceXと合意に達しており、契約の最終手続きを進めている。

宇宙産業専門メディアのSpace Intel Reportは、専用便15回を約45週間で実施する計画と報じた。ゴールドバーグCEOは約3週間に1回の打ち上げを想定し、2028年末までに225機すべてを軌道へ投入する方針を示している。一部の衛星は、その後も軌道上昇や通信網への組み込み作業を続ける可能性がある。

高緯度地域の初期サービスには、約45機、専用便3回分の衛星が必要になるという。全球サービスの開始後も衛星を追加し、通信容量を拡充する段階的な展開となる。

■半導体の開発と衛星製造を進めるMDA Space

AURORAは、通信エリアや帯域の配分をソフトウェアで変更できる衛星プラットフォームだ。MDA Spaceによると、デジタルビームフォーミングによって多数のビームの方向を電子的に制御し、顧客の需要に応じて通信容量を振り向けられる。

その構成要素の一つが、特定用途向け集積回路(ASIC)の「Prime 2.0」だ。MDA Spaceの説明では、送受信アンテナに組み込む複数のチップが信号をデジタル処理し、数百のビームを同時に形成・制御する。2026年4月23日には、製造・試験を予定する1万個超のチップのうち、最初の製品の出荷を始めたと発表した。

MDA Spaceは2025年7月2日、イスラエルの衛星通信向け半導体企業SatixFyの買収を完了した。買収時の株式価値は約2億8000万米ドルだった。ゴールドバーグCEOは2026年3月、衛星の搭載プロセッサーやフェーズドアレイアンテナを支えるSatixFyのASICの準備状況が、当時のサービス開始延期の要因になったと説明していた。

同CEOは、衛星製造の主契約企業であるMDA SpaceがSatixFyを傘下に収めたことで、より大きな資金・技術資源を開発に投入できる点を評価していた。半導体の開発に加え、衛星への組み込みやハードウェア、制御ソフトウェアの検証も、打ち上げまでの重要な工程となる。

MDA Spaceは2026年5月8日、モントリオールの衛星量産施設を開所した。18万5000平方フィートの増床によって製造床面積を倍増し、同社によると年間最大400機の生産に対応する設計だ。自動化設備、拡張現実による作業支援、独自の試験技術を導入し、衛星の生産を進めている。

■製造企業の変更を経て225機へ拡大

Lightspeedにつながる低軌道通信網の構想は2010年代半ばから進められてきた。2021年時点では、全球サービスの開始を2024年に見込んでいた。その後、テレサットが説明する新型コロナウイルス禍の供給網混乱やインフレの影響を受け、計画を見直した。

テレサットは衛星製造の主契約企業をThales Alenia SpaceからMDA Spaceへ切り替え、2023年8月に198機を対象とする約21億カナダドルの契約を発表した。当時は2026年に打ち上げを始め、2027年後半にサービスを開始する計画だった。198機のうち、当初の資金で整備する対象は156機だった。

計画を拡大させたのが、2026年8月4日に発表したカナダ国防投資庁との契約だ。カナダ軍に北極圏の軍用Ka帯(Mil-Ka)通信を提供する「Enhanced Satellite Communications Project–Polar(ESCP-P)」の一環で、基本契約額は23億カナダドル(約2600億円)となる。5年間の延長オプション2回を含めると、最大15年間、約27億カナダドルとなり、同社の約60年の歴史で最大の契約だ。

この契約に伴い、資金を確保した衛星の数は156機から69機増え、225機となった。MDA Spaceの製造契約では、従来の198機から27機を追加する。契約額の増額分4億7400万カナダドル(約536億円)には、追加衛星のほか、既存の製造対象への軍用Ka帯の導入や長納期品なども含まれる。

■極地の通信と需要に応じた容量配分

Lightspeedは、高度約1000~1325kmの低軌道を使い、商用Ka帯と軍用Ka帯で通信を提供する計画だ。SpaceQがテレサットに確認したところ、量産衛星225機の設計上の運用寿命は10年で、先行する試験衛星2機はこれより短い。試験衛星も合わせた投入数は227機となる。

光衛星間リンク(ISL)は、衛星同士をレーザーで結び、通信を宇宙空間で中継する仕組みだ。利用者の近くに地上局が少ない海上や極地でも、衛星間でデータを転送し、離れた地上局へ届けられる。複数衛星を結ぶ通信経路は、北極圏を含む広い地域への接続を支える。

デジタルビームフォーミングは、通信需要が生じた場所へ容量を配分する役割を担う。船舶や航空機の移動、政府・防衛分野の任務など、利用場所や必要な帯域が変わる用途に対応しやすい設計となる。

テレサットは、こうした衛星技術に、セキュリティ機能、地上の通信網や5Gとの接続、法人向けのサービス品質保証を組み合わせる方針だ。光ISLやフェーズドアレイアンテナはStarlinkも採用しており、Lightspeedは企業や政府の通信網に組み込むサービス設計を重視している。

■受注を積み上げ、先行する衛星網を追う

テレサットの公表資料によると、2026年9月末までのLightspeedへの累計投資額は約31億カナダドル、LEO事業の受注残は約56億カナダドルだった。カナダ軍向け契約と、北部・地方のブロードバンド向け政府契約が、受注残の過半を占める。

商用分野では、ADN Telecom、Orange、Viasat、Vocusと契約を結んでいる。韓国のHanwha Systemsとは、Lightspeedに対応する端末や衛星通信ソリューションの協業に向け、2026年1月に覚書を締結した。対象市場は通信事業者、企業、政府、航空、海運、防衛分野に広がる。

競争相手の配備は先行している。Space.comは2026年10月23日時点で、Starlinkの稼働衛星が1万1000機を超えたと報じた。Starlinkの公式案内では、2026年10月時点で150を超える国・地域などの市場でサービスを提供している。Amazonも、旧称Project Kuiperから改称した「Amazon Leo(アマゾンレオ)」の衛星配備を進めている。

EutelsatのOneWebも企業・政府向けの通信網を運用しており、同社公表の第1世代衛星群は軌道上に654機ある。Eutelsatは2026年1月までに後継衛星計440機をAirbusへ発注し、9月にはさらに229機を調達する計画を発表した。Lightspeedには、サービス開始に向けた顧客基盤の拡大と、製造・試験・打ち上げをつなぐ工程管理が求められる。

■GEO事業では12月から大型償還

GEO事業では、2026年12月、2027年6月、同年10月に満期を迎えるローンと社債が、2026年9月末時点で約31億カナダドルある。このうち2026年12月に満期を迎える残高は約17億1000万米ドルで、最初の償還期限は12月6日だ。

同事業の2026年1~9月の売上高は前年同期比24%減の約2億4300万カナダドルだった。テレサットは、放送契約の非更新や契約容量の削減、固定ブロードバンド顧客向けサービスの縮小、一部衛星の運用終了などを減収要因に挙げている。

SpaceQが米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとカナダ紙グローブ・アンド・メールの報道を伝えたところによると、債権者側は10月14日、17億米ドル(約2690億円)の株式による資金調達と15億米ドル(約2370億円)の新規借り入れを組み合わせた、総額32億米ドルの第2次提案を提示した。債権者にはSilver Point Capital、GoldenTree Asset Management、Sound Point Capital Managementなどが含まれる。

同報道によると、債権者側は声明で、テレサットに「言葉を行動で裏付ける」よう求めた。両者の間では訴訟も続いている。債権者側は2026年1月、前年9月に行われたLightspeed事業の持ち分62%の移転が、不正な資産移転などに当たるとして提訴し、テレサットは移転が関連契約と法律に従ったものだと反論している。

同社は第3四半期の提出書類でも、GEO事業の満期債務の支払い能力に「重大な疑義」を生じさせる不確実性を記載した。ゴールドバーグCEOは8月の説明会で、米連邦破産法第11章に基づく申請を検討していないと説明し、満期前の借り換えを通じた合意を重視する姿勢を示していた。

法制度にも特有の条件がある。Telesat Canadaを対象とする1991年のカナダ連邦法には、会社の支払能力や清算に関する法律の適用を除外し、清算には議会制定法による承認を必要とする規定がある。債務交渉は、この法的枠組みの下で進む。

■資金と打ち上げ日程を並行管理

Lightspeedには、GEO事業の債務とは分離した資金調達の仕組みがある。2024年9月に締結した政府融資は、カナダ連邦政府の21億4000万カナダドル(約2420億円)とケベック州政府の4億カナダドル(約452億円)で、衛星網の構築を支える。融資期間は15年で、建設中など所定の期間に発生する利息は元本に組み入れる条件だ。

テレサットは2026年10月の決算発表でも、Lightspeedの資金を確保していると説明した。衛星と打ち上げに関する支払い時期を反映し、2026年のLightspeed関連支出予想は従来の13億~15億カナダドル(約1470億~1700億円)から11億~13億カナダドル(約1240億~1470億円)へ引き下げている。

今後の焦点は、試験衛星の相乗り便と15回目の専用便の契約確定、衛星・ソフトウェアの完成、軌道上試験の進捗だ。量産開始後は、MDA Spaceの衛星引き渡しとSpaceXの打ち上げ日程を継続的に合わせる必要がある。テレサットは、GEO事業の借り換え交渉とともに、2028年の段階的なサービス開始に向けた準備を進める。

元記事: Telesat Lightspeed Loses Launch Slot; 15-Falcon-9 Sprint Starts September

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