UCLAの二足歩行ロボット「PhoneBot」、Androidスマホを活用し機体費用約400ドル

2026年10月17日 14:22

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のRobotics and Mechanisms Laboratory(RoMeLa)は、Androidスマートフォンを中核に使う小型二足歩行ロボット「PhoneBot」を発表した。端末のカメラや慣性計測装置、演算機能を歩行と人物追従に活用する。研究チームは2026年10月6日、設計と実験結果をまとめた査読前論文をarXivに公開した。

■スマートフォンを機体のセンサーと演算装置に

PhoneBotは、スマートフォンのカメラで周囲を捉え、内蔵の慣性計測装置(IMU)で機体の動きを検出する。端末上では歩行制御用の学習済みモデルと画像認識機能が動き、Wi-Fiが機体との通信を担う。画面には状態や操作項目を表示し、スピーカーは音声による応答に使う。

論文によると、スマートフォンを除く機体の費用は約400ドル。比較表に挙げた小型研究用ロボットの価格は、Mini Piが3500ドル(約55万3000円)、ROBOTIS OP3が1万3800ドル(約218万円)である。機種によって機能や公開資料の範囲は異なるが、既製の端末を活用してセンサーや演算装置の調達・組み込みを減らすことが、PhoneBotの設計の要点だ。

論文の著者はRuochen Hou、Quanyou Wang、Daniel Koh、Dennis W. Hongの4氏。公式サイトでは、部品表、機械設計用のCADデータ、3Dプリント用部品、組み立て資料が案内されている。設計資料には非商用利用を対象とするCC BY-NC 4.0ライセンスが適用される。PhoneBotはNew AtlasやInteresting Engineeringなどの海外メディアでも取り上げられた。

■高さ48.3cm、13個の関節を駆動

機体の高さは48.3cm、スマートフォンとバッテリーを含む重量は1.8kg。左右の脚に各6個、胴体の回転用に1個の駆動関節を備え、計13個のDYNAMIXEL XL430-W250-Tサーボモーターを使う。胴体の関節によって、脚の向きを変えずにカメラの向きを調整できる。

スマートフォンは胴体に取り付けられ、モーターとは電気的に直接接続されない。歩行制御の指令をWi-FiのUDP通信で機体内の小型シングルボードコンピューターへ送り、そこから各サーボへ伝える。関節の状態も機体から端末へ送り返す構成で、端末を交換しやすい。

研究チームは、歩行、起き上がり、カメラを人物へ向ける動作を実機で示した。カメラによる人物追従に加え、撮影や移動しながらの遠隔対話も想定している。

■歩行制御はシミュレーションで学習

歩行の制御方策は、物理シミュレーターのMuJoCo/MJXを使い、強化学習で訓練した。指示された速度や旋回への追従、交互に足を運ぶ動作、姿勢の維持を評価し、足の滑りや過大な関節負荷などを抑えるよう学習する。サーボのトルクと速度の制限、ギアの遊びもモデルに取り入れた。

学習には近位方策最適化(PPO)を用いる。学習中の評価役には足の接地状態などシミュレーション固有の情報を与え、実機で動く制御方策には端末のIMUや関節の状態など、実際に取得できる情報を使わせる。サーボの特性には学習中にばらつきを加え、実機との差に対応しやすくした。

学習済みの方策はスマートフォン上でTensorFlow Liteを介して動作し、50Hz、すなわち20ミリ秒ごとに13関節の目標位置を出力する。起き上がりとカメラの向きを制御する方策も、同じ通信経路で機体を動かす。

■左右を反転した学習例で歩行の偏りを抑える

研究チームは、歩行の学習例を左右反転して加える「矢状面ミラーリング」も採用した。論文によると、この処理を行わない学習では、片脚を主に支持脚として使う偏った歩き方に収束する場合があった。反転した例を同じ更新に加えることで、左右双方の動作を学ばせる。

論文が報告した条件を固定したシミュレーション評価では、左右の関節角度の対称性誤差は、ミラーリングなしの0.254ラジアンから、ありの場合は0.003ラジアンになった。左右の平均トルクの相対的な差は0.205から0.034、機械的な動力の相対的な差は0.339から0.040に縮まった。これらは学習方法を比較した結果である。

研究チームは、5通りの初期条件で訓練した方策について、ミラーリングを加えた場合に歩行の学習が進みやすく、結果のばらつきも小さかったと報告している。左右対称の機体を対象に、学習時の歩容の偏りを抑える手法として位置付けられる。

■旧型を含むAndroid端末4機種で試験

研究チームは、2017年発売のHonor 9と、moto g 2025、Galaxy A16 5G、moto g 2024の計4機種でアプリを試験した。論文に掲載された2026年9月時点の米国向け通信会社限定の販売価格は、moto g 2025が50ドル(約7900円)、Galaxy A16 5Gが50〜80ドル(約7900~1万2600円)、moto g 2024が50〜90ドル(約7900~1万4200円)。Honor 9は中古端末を使った。

4機種すべてで、IMUによる計測、歩行方策の推論、モーターとの通信、端末上での画像認識が動作した。人物検出などにはML KitとMediaPipeを使う。カメラとIMUを使った自己位置推定・地図作成にはARCoreを利用している。

論文によると、米国でGoogleのサービスを利用できないHonor 9では、ARCoreを使う地図作成機能を試験できなかった。4機種での試験は、古い端末と低価格端末の双方を活用する設計を示すものとなっている。

■スマホを使うロボット研究の流れと今後

スマートフォンをロボットの頭脳に使う先例には、Intel Labsの研究者が2020年に発表した車輪型ロボット「OpenBot」がある。PhoneBotは、端末のセンサーと演算機能を再利用する発想を二足歩行に応用した。歩行中には姿勢を継続的に制御する必要があり、端末で方策を実行して関節の指令を機体へ送る構成が研究の中心となる。

RoMeLaは過去に、小型ヒューマノイド「DARwIn-OP」の開発にも参加した。UCLAによると、研究室の等身大ロボット「ARTEMIS」は、オランダ・アイントホーフェンで開かれたRoboCup 2024のヒューマノイドAdultSize部門で優勝し、研究室にとって6度目の世界制覇となった。創設者のHong教授はロボット研究に関するTED講演も行い、Washington Postから「ロボット界のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と評された。

現在のPhoneBotには腕がなく、歩行方策の学習は平坦な地面を対象としている。論文は今後の研究として、不整地への対応と、物を扱うための軽量な腕の導入を挙げる。低価格サーボのトルク制限は、運べる重量や動作の範囲にも関わる。

対話機能では、スマートフォンが音声を録音し、Wi-Fiで接続したノートPC側で音声認識と言語モデルの処理を行う。生成した応答は端末のスピーカーから再生する。研究チームは、音声指示と視覚情報をロボットの動作につなぐ仕組みや、言語モデルを端末上で動かす方法も今後の検討課題としている。

元記事: UCLA Open-Sources PhoneBot: One Android Phone Replaces Five Humanoid Robot Systems

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