Metaが「Muse Spark Open」公開、M5 Ultra搭載Mac Studio 2台でローカル推論

2026年10月17日 14:16

Metaは2026年10月15日、オープンウェイトAIモデル「Muse Spark Open」の重みを公開した。総パラメータ数8160億のモデルで、AppleのM5 Ultra搭載Mac Studioを2台接続し、クラウドを使わずに推論を実行する構成も示している。

■8160億パラメータのモデルを公開

Muse Spark Openは、トークンごとに一部の専門家ネットワークを選んで使う専門家混合モデル(MoE)だ。Metaによると、総パラメータ数は8160億で、推論時に有効になるのは約420億パラメータ。計算には選ばれた部分を使う一方、モデル全体の重みを保持するために大きなメモリ容量が要る。

最大コンテキスト長は104万8576トークン。テキスト、画像、動画、音声を入力し、テキストを出力する。Metaはプログラミングや複数の手順にわたる作業向けに開発したと説明している。

Metaが公表したローカルでの検証例には、オープンソースのMastodonクライアント「Ice Cubes」のiOSアプリの修正や、DaVinci Resolveを操作する動画編集作業がある。モデルの重みはMuse Model Licenseに基づいて公開され、商用利用には条件が付く。

■Mac Studioのメモリを分散推論に活用

Metaが示す構成は、512GBのユニファイドメモリを備えるM5 Ultra搭載Mac Studioを2台使うものだ。256GBモデルを4台使う構成も案内している。いずれも合計メモリ容量は1TBで、Mac同士をThunderbolt 5で直接接続する。

M5 Ultra搭載Mac Studioは、1台当たり最大512GBのユニファイドメモリと毎秒1.2TBのメモリ帯域幅を備える。モデルの重みを低精度で保存するNVFP4形式を使い、各Macが重みの一部を保持する。Metaの説明では、各層の計算も機器間で分担し、処理の途中で生じるデータをやり取りする。

通信にはThunderbolt 5経由のリモート・ダイレクト・メモリー・アクセス(RDMA)を使う。Appleによると、macOS 26.2以降が対応し、機器間のデータ転送に伴うCPUとOSの処理負荷を抑えられる。Thunderbolt 5の帯域幅は最大120Gb/sだ。

Appleは2026年の開発者会議WWDCで、M3 Ultra搭載Mac Studioを4台つなぐ分散推論を紹介した。270億パラメータの「Qwen3.6」を使った実演では、1台の場合と比べてトークン生成が約3倍速かった。AppleはM5 Ultra搭載Mac Studioの発表でも、複数台を接続した分散推論の性能を訴えている。

■MLXとJACCLが機器間の処理を支える

Appleのオープンソース機械学習フレームワーク「MLX」が、Mac Studio間の分散処理を担う。Metaが公開した実行手順では、MLXのテンソル並列を用い、モデルの各層を複数のMacに分割する。重みは各機器に置いたまま、推論に必要な中間データを機器間で交換する。

通信には、Appleが開発した集合通信ライブラリ「JACCL」を利用する。JACCLはThunderbolt 5経由のRDMAを使い、機器間のデータ転送や計算結果の集約を受け持つ。開発者は各MacでRDMAを有効にして接続と実行環境を設定し、MLXの起動ツールから分散推論を始められる。

AppleのWWDCの説明では、MLXはテンソル並列のほか、モデルの層を機器ごとに割り当てるパイプライン並列にも対応する。どちらを使うかによって機器間の通信の仕方が変わる。Muse Spark Open向けにMetaが案内しているのはテンソル並列の構成だ。

■協業の背景と導入コスト

両社はプライバシーや広告事業を巡って対立してきた。Axiosによると、今回の取り組みでは数カ月にわたって協力し、Appleで機械学習部門の責任者を務めた経歴を持つMetaのDaniel Gross氏が、両社をつなぐ役割を果たしたという。MetaのAlexandr Wang氏もAxiosの取材で、Gross氏の貢献に言及した。

MetaのMark Zuckerberg最高経営責任者(CEO)は、Mac Studioでモデルを動かす取り組みをXで紹介した。Appleのジョン・ターナスCEOも、デスク上で大規模モデルを実行できる点について投稿している。両社にとって、Metaのモデルを広く提供し、AppleのハードウェアでローカルAIを動かす事例となる。

導入には高い初期費用がかかる。Appleが公表した日本でのM5 Ultra搭載Mac Studioの価格は94万9800円からで、必要なメモリ構成に応じて価格が上がる。512GBモデルは2026年10月後半に追加予定と案内されている。2台構成を検討する場合は、その販売条件と価格の確認が必要だ。

ローカル推論では、入力したデータを外部の推論サービスへ送らずに処理できる。利用量に応じたAPI料金も発生しないが、機器の購入費や運用費は必要になる。大量の機密データを扱う組織にとっては、データを処理する場所を管理できる点が選択理由になり得る。

過去の分散推論例として、Creative Strategiesは2025年12月、M3 Ultra搭載Mac Studioを4台接続し、「Kimi K2 Thinking」を毎秒約25トークンで動かしたと報告した。構成は合計1.5TBのメモリを備え、測定した消費電力のピークは450W未満だった。大規模モデルを複数のMacで動かす取り組みは、今回の公開以前から進んでいた。

■重みとホステッドAPIの提供先

Muse Spark Openの重みはHugging Faceで入手できる。MetaはAmazon SageMaker AI、Google Cloud Model Garden、Microsoft Foundry Modelsでも提供すると案内している。Mac Studioでの実行手順も公開されている。

必要な機器を持たない開発者向けには、Baseten、Fireworks AI、Groq、Modal、Nebius、OpenRouter、Together AIなどがホステッドAPIを提供する。自社環境での実行とAPI経由の利用では、機器の要件、費用のかかり方、入力データの送信先が異なる。商用利用を予定する場合は、Muse Model Licenseの条件も確認する必要がある。

元記事: Muse Spark Open Runs on Two Mac Studios: Meta Breaks Data Center Barrier

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