Google、AI検索のリンク表示を強化 パブリッシャーへの流入減を巡る議論も続く
2026年10月17日 14:16
Googleは10月15日、検索の「AI による概要」と「AI モード」で、ウェブサイトへのリンクを見つけやすくする更新を発表した。回答文中のリンク、ニュース記事の表示、動画投稿者のプロフィールへの導線など、5項目にわたる。日本でも両機能が提供されており、記事を公開する側にとっては、リンクの見せ方が読者の訪問にどう影響するかが関心事となる。
■AI検索で変わる5つのリンク表示
Googleによると、AIが生成した回答文中の語句に埋め込むリンクを増やし、回答のより上部にも表示する。行政手続きなどで参照先となる公式ページが少数に絞られる場合には、回答の冒頭に専用のリンク欄を設け、そのページが役立つ理由を添える表示を試す。
新しい記事を示すカルーセルは、対象地域と言語を広げて順次展開する。利用者が「Preferred Sources」に登録したサイトの記事も目立たせる。一部のAI回答の末尾に置く関連記事リンクには、画像のサムネイルを加え、記事を選びやすい表示にする。
5つ目は、AI モードの動画検索結果で、クリエイターや発行元の名前から検索プロフィールへ移動できるようにする試験だ。プロフィールでは、その発信者のほかの作品や活動を確認できる。各機能には提供拡大中のものと試験中のものがあり、すべての検索で同じ表示になるという発表ではない。
■出版社への流入を調べたデータ
AI モードでは、質問を複数の小さな検索に分け、関連する情報を集めて回答にまとめる「クエリ・ファンアウト」が使われる。情報源へのリンクが示されても、利用者は回答を読んだ段階で調べものを終える場合がある。リンクの表示改善とともに、実際にサイトへ移動する利用者の動きを見る必要がある。
米Pew Research Centerが2025年3月の検索行動を分析したところ、AI要約が表示された検索結果ページでは、通常の検索結果のリンクがクリックされた割合は8%だった。AI要約が表示されなかったページでは15%で、要約内のリンクがクリックされた割合は1%だった。対象は同調査で観測した検索であり、出版社全体の流入減少率を示す数字ではない。
Ahrefsが2026年2月に公表した調査では、2025年12月時点の情報系検索語を比較すると、AI による概要がある検索では、最上位ページの平均クリック率が、概要のない検索より58%低かった。研究者のSaharsh Agarwal氏とAnanya Sen氏による2026年の無作為化実験では、概要が表示される条件下で外部サイトへの自然検索クリックが39.8%減った。後者は調査対象の検索における相対的な減少率で、39.8ポイントの減少ではない。
報道機関への影響を示す事例もある。Press Gazetteによると、TechRadarやTom's Guideを傘下に持つFutureは2026年10月、同年2度目の編集部門の人員削減を進めた。同社最高経営責任者のKevin Li Ying氏は社内文書で、検索経由の流入減少を業界の変化として挙げた。同媒体の集計では、両サイトの英国での月間利用者数は2024年7月と比べ、2026年8月にそれぞれ35%、55%減った。
Growtikaの推計では、Digital Trendsの米国からの月間自然検索訪問数は、2024年3月の約850万から2026年1月の約26万5000へ減少した。ChartbeatがAxiosに提供したデータでは、1日当たりのページ閲覧数が1000~1万の小規模出版社への検索エンジン経由の流入は、2年間で60%減った。いずれも個別の媒体や調査対象における変化である。
英国の出版団体Association of Online Publishersが委託した分析では、参加した出版グループ8社へのGoogle自然検索からの流入は、2025年第1四半期から第2四半期に7.1%減った。Adweekが2024年に報じた業界関係者の予測には、AI検索によって出版社の自然検索流入が20~60%減り得るとの見方がある。広告収益の損失が業界全体で年間最大20億ドル(約3160億円)に達するとの数字も、当時のSearch Generative Experienceを前提としたRaptive幹部の推計だ。
■米国の訴訟が示した争点
米連邦地裁のAmit P. Mehta判事は9月30日、CheggとPenske Media CorporationがGoogleを相手取って起こした訴訟で、反トラスト法に基づく請求を退けた。裁判所は、出版社がコンテンツの登録を認める見返りにGoogleから一定の検索流入を受けるという合意は、訴状で十分に示されていないと判断した。
Penske Mediaが主張した検索とAI による概要の抱き合わせについても、裁判所は、両者を別々の製品とするために必要な需要が十分示されていないと判断した。Mehta判事は同年3月にも、Helena World Chronicleなどが起こした関連訴訟で、出版社側の請求を退けている。
9月30日の判決文は、原告が訴える損害を軽視しないと記したうえで、新技術による経済的な変化への対応には議会や規制当局の検討が関わると述べた。これは提起された請求について、訴状の内容を審査した判断である。Googleの検索結果が各出版社に与えた損害額を認定した判決ではない。
■読者が選ぶ「Preferred Sources」
GoogleのPreferred Sourcesは、利用者が見たいサイトを選び、検索結果の「トップニュース」などでその記事を見つけやすくする機能だ。日本語では2026年5月から利用でき、同月27日にはAI による概要とAI モードにも対象が広がった。登録したサイトのリンクがAI回答に表示される際は、利用者が選んだ情報源だと分かる印が付く。
Googleによると、選ばれた情報源の種類は2025年12月時点の約9万件から、2026年5月下旬に34万5000件超、同年8月20日に60万件超へ増えた。10月15日の発表では、年初からの利用者数が7倍超になったとしている。Googleは、利用者がPreferred Sourcesに追加したサイトをクリックする割合は平均で約2倍になるとも説明する。
Googleは8月20日、出版社が自社ページに設置できる登録ボタンも発表した。読者はボタンからサイトを登録し、閲覧していたページに戻れる。設置方法はGoogle Search Centralが公開しており、利用者による登録を促す手段となる。Search Engine Landによると、10月には一部のサイト所有者に、自社サイトが選ばれた件数を知らせるメールも届き始めた。
■コンテンツ利用と各地の制度
Googleは、AIの回答にコンテンツが寄与した出版社へ支払う「AI contribution pilot」を試している。Digidayによると、参加者にはSearch Console上で収益を示す欄が設けられる。The Informationが参加者の話として報じた支払額には、数カ月で1000ドル(約15万8000円)未満の小規模サイトがある一方、年100万ドル(約1億5800万円)超を得る参加者もいる。複数の中小出版社は、支払額が自社の広告収益の0.1%未満だと説明した。
Alphabetの決算資料によると、Google Searchなどを含む部門の2025年第4四半期の売上高は630億7300万ドル(約9兆9700億円)で、前年同期比17%増だった。出版社への流入を巡る調査とGoogleの事業収益は異なる指標だ。出版社の関心は、リンクの表示や試験的な支払いが、自社の読者数と収益にどう表れるかに向いている。
英国の競争・市場庁は2026年6月、出版社が通常の検索結果での掲載を維持しながら、検索のAI機能でのコンテンツ利用を拒めるよう、Googleに義務を課した。欧州委員会は、出版社やYouTube上のコンテンツをGoogleがAI用途に利用する行為について、EU競争法に基づく調査を進めている。米国では議会による制度上の対応も論点に挙がる一方、Googleのリンク表示の更新が出版社への訪問に与える影響は、今後の利用データで見えてくる。
元記事: Google Adds Publisher Links to AI Search as Court Rules Traffic Crisis Needs Congress