『ランタンズ』シーズン2の判断は2026年内へ マンハンターの物語から考えるAIと選択
2026年10月16日 22:39
HBOのドラマ『ランタンズ』では、第2シーズンを見据えた物語の構想が進んでいる。DCスタジオ共同代表のピーター・サフランは、第1シーズンにふさわしい続編を描けるかが制作判断の基準だと述べ、2026年内に判断を示す見通しを明らかにした。第1シーズンが描いた指輪の力とマンハンターの物語には、現実の研究と発想を重ねられる部分もある。
■続編の構想と日本での配信
『ランタンズ』は、ベテランのハル・ジョーダンと新人のジョン・スチュワートが、米国中西部の殺人事件を追う全8話のドラマだ。ハルをカイル・チャンドラー、ジョンをアーロン・ピエールが演じ、クリス・マンディ、デイモン・リンデロフ、トム・キングが共同で企画・脚本を手がけた。米国では2026年8月16日から10月4日までHBOとHBO Maxで放送・配信された。
日本では8月17日にU-NEXTで配信が始まり、10月1日からはHuluとPrime VideoのHBO Maxサブスクリプションでも視聴できる。Huluは月額会員向けに追加料金なしで提供し、Prime Videoでは別途HBO Maxへの加入が必要だ。
サフランはColliderの取材で、第2シーズンを制作するかどうかは「愛され、優れた第1シーズンにふさわしい後継作」を見いだせるかにかかると説明した。The Hollywood Reporterの取材では、ショーランナーのマンディがクリストファー・キャントウェルとともに続編の物語を組み立てていると語っている。マンディは、親しまれた登場人物を生かしながら、語り方を少し変える考えも示した。
視聴規模についてTheWrapは、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの内部集計などに基づき、2026年10月時点の世界平均視聴者数を1話当たり1930万人と報じた。10月4日の最終話は、公開後3日間で世界1050万人が視聴したという。平均値と最終話の数値は集計期間が異なる。
■マンハンターが問いかける、命令と判断の関係
劇中のマンハンターは、宇宙の守護者たちがグリーン・ランタン・コァに先立って作った機械の法執行者だ。その歴史には、多くの命を奪った破局がある。第1シーズンでは、地球の住民に紛れた存在を追う捜査を通じ、作り手が定めた使命と、その存在が実際に選ぶ行動との緊張が描かれる。
この構図を考える手掛かりの一つが、哲学者ニック・ボストロムの「直交性テーゼ」だ。これは、知能の高さと追求する最終目標は原理上別の問題であり、高い能力だけでは目標の望ましさは決まらないという議論である。強い能力を与えられた仕組みに何を求め、結果をどう監督するかという問いは、マンハンターの設定にも通じる。
2026年のACM FAccT会議に掲載された論文「The Alignment Target Problem」は、AIを合わせる先として想定する人間の道徳的判断が、人や設計者によって異なることを検討した。マンハンターをめぐる物語も、命令を作る側が何を大切にし、想定外の場面で誰が判断を引き受けるのかを考える補助線になる。
とりわけ終盤のノア・マコンは、この問いを人物の選択として見せる。DCの公式解説によると、マンハンターとしてのプログラムに葛藤を抱えるノアは、母を守るために行動する。ジョンはその姿を見て、ノアを血筋やプログラムだけで判断せず、彼自身が選ぶ道を認める。作品の焦点は、定められた役割を前にした二人の選択にもある。
■パワーリングと、意図を形にする研究
グリーン・ランタンのパワーリングは、使い手の意志によって盾や道具などを生み出す。現実のブレイン・コンピューター・インターフェース研究には、神経活動から使用者の意図を読み取り、画面上のカーソルや外部機器の動作へ変換するものがある。入力を解読して出力へつなぐという情報処理の構造は、指輪の演出を読み解く補助線になる。
光を扱う研究にも、作品の映像表現を連想させる例がある。ハーバード大学とMITなどの研究チームは2013年、極低温のルビジウム原子の雲を通過する光子が対になって振る舞う現象を報告した。2018年には、同様の媒質で3個の光子による束縛状態を観測した。原子との相互作用を利用して光子同士の振る舞いを変える研究だ。
2026年にŠumaracらが公表したプレプリントは、原子集団中のリュードベリ・ポラリトンと隣接する原子の相互作用を調べ、遮断やコヒーレントな交換などの状態を報告した。ポラリトンは、光と物質の性質が結びついた状態を指す。これらの実験は、特殊な媒質の中で光の相互作用を制御するという点で、緑色の造形物を描く映像に科学的なイメージを重ねられる。
■恐怖を受け入れるジョンの選択
作中では緑が意志、黄色が恐怖、赤が怒りなど、色が異なる感情の力を表す。シネストロの黄色い力は、恐怖がジョンの歩む道にどう関わるかを際立たせる。DCの制作陣による最終話の解説では、ジョンが新たに唱える誓いには、恐怖を受け入れるという考えが込められている。
自己制御や目標に沿った行動には、前頭前野を含む脳の複数の領域が関わる。色と感情の結びつきについても文化を横断した研究があるが、関連の仕方は色や文化、調べ方によって変わる。作品の色分けは、意志と恐怖をどう扱うかという人物の違いを視覚的に伝えている。
最終話でジョンが選ぶのは、守護者たちの指示にそのまま従う立場とは異なる道だ。DCの公式解説によると、彼はノアがプログラムに向き合う姿にも触発され、自分の判断で活動するグリーン・ランタンになる。指輪の力よりも、それを使って何を選ぶかが物語の結末を形づくる。
■変身と二つの時間軸が支える謎
第1話では、ネブラスカ州の住民として現れたウェイロン・サンダースの正体が、地球外の存在だと明らかになる。人の姿をした存在をどう見分けるかという謎は、その後のマンハンター捜査にもつながる。現実の頭足類には皮膚の色や質感を素早く変えるものがあり、外見が変わるという発想を考える身近な手掛かりとなる。
本人確認の分野では、外見だけに頼らず、暗号鍵や認証情報を使って身元を確かめる方法が研究・利用されている。ゼロ知識証明も、秘密そのものを明かさずに条件を満たすことを示す暗号技術だ。劇中の変身者を追う捜査は、「誰に見えるか」と「何を確かめられるか」の違いを意識させる。
物語は、2016年にハルがジョンを導く出来事と、2026年にジョンがハルの死をめぐる謎を追う出来事を行き来する。二つの時代を見比べる観客は、過去に示された選択が後の人物関係や事件とどうつながるのかを考える。時間を隔てて明かされる情報が、ハルとジョンの関係の見え方を変えていく。
マンハンターの歴史や、怒りを力とするレッドランタンのアトロシタスなど、DC作品にはさらに異なる感情と責任を扱う設定がある。第2シーズンの構想がどの人物や題材を選ぶかは、今後の発表を待つ段階だ。第1シーズンは、能力や使命を与えられた者が、それをどう使うかという問いをジョンの選択で締めくくった。
元記事: Lanterns HBO Season 2 Writers’ Room Confirmed: Manhunters Encode Bostrom’s Orthogonality Thesis