Sentinel-3Cが初画像を公開 海洋色観測を支えるCollection-4の更新内容
2026年10月16日 22:37
欧州の地球観測衛星Sentinel-3Cが2026年9月15日に打ち上げられ、9月下旬に取得した初期観測画像が公開された。衛星は機器を点検するコミッショニング段階にある。一方、欧州気象衛星開発機構(EUMETSAT)は同年2月、先行するSentinel-3A・3Bの海洋色データ処理を「Collection-4」に更新した。
海洋色の観測では、海から届く微弱な光を、大気が散乱した光から取り出す必要がある。この大気補正の精度は、植物プランクトンや沿岸の水質を調べるデータの品質を左右する。
■海の色を測るために必要な大気補正
可視光で海を観測すると、衛星に届く光の大部分には大気の影響が含まれる。海面から出た光が観測信号に占める割合は、典型的には1割に満たない。大気中の分子やエアロゾルによる散乱などを推定し、海に由来する成分を求める処理が大気補正だ。
得られた海洋色データからは、植物プランクトン量の指標となるクロロフィルa濃度や、懸濁物質、有色溶存有機物に関する情報を推定できる。クロロフィルaは海洋の一次生産を調べる手掛かりにもなる。大気補正で生じた誤差は、こうした推定値に影響する。
米国海洋大気庁(NOAA)の国立沿岸海洋科学センターは、Sentinel-3の海洋陸域色観測装置「OLCI」のデータを有害藻類ブルームの監視に利用している。同センターは2026年、監視対象を米国北東部の沿岸域と五大湖の新たな地域へ広げた。衛星画像はブルームの分布を把握する材料となり、現場観測などと併せて利用される。
■濁った沿岸域で難しくなる観測
海洋色の大気補正には、海水が光を強く吸収する近赤外域の観測値を使い、大気中のエアロゾルの影響を見積もる手法がある。澄んだ外洋では、近赤外域で海から出る光が小さいという前提を利用しやすい。
河口や浅い沿岸域では、浮遊土砂や植物プランクトンなどによって近赤外域でも水からの光が無視できなくなる。この成分を大気由来として扱うと、可視光域の補正に誤差が生じる。濁った水域に対応する処理や、現場での測定値との照合が重要になる理由だ。
短波赤外域の約1.6µmと約2.2µmでは、近赤外域より海水による吸収が強い。この波長帯の観測を大気補正に役立てる研究が進められている。Sentinel-3には、400~1020nmの21波長帯を観測するOLCIに加え、短波赤外域も観測する海面・地表面温度観測装置「SLSTR」が搭載されている。
■Collection-4で更新された処理
EUMETSATは2026年2月26日、Sentinel-3A・3BのOLCIによる水域向けレベル2製品をCollection-4へ切り替えた。更新には、標準大気補正「OC-SAC」、クロロフィルa推定アルゴリズム、植物プランクトンの蛍光に関する製品の導入が含まれる。
OC-SACでは、エアロゾルのモデルを見直し、OLCIの酸素吸収帯などを使ってエアロゾル層の高度も評価する。エアロゾルの種類や光学的厚さを推定する際には、OLCIが観測する近赤外側の複数の波長帯を利用する。従来の処理系にみられた空間的なノイズや、吸収性エアロゾルへの対応が改良の対象となった。
製品の値は、水の反射率を表す従来の形式からリモートセンシング反射率「Rrs」に変更された。太陽と衛星の観測角度による見え方の違いを補正するO25モデルも採用した。クロロフィルaの新たな推定法には、水の光学特性に応じた分類を用いる。
2025年12月の国際海洋色科学会議では、EUMETSATがバルト海のクロロフィルa推定結果を暫定的な例として示した。同機関の2026年の製品通知によると、Collection-4の水域製品には、バルト海など有色溶存物質の影響が強い水域で、なお大きな不確かさが残る。利用者には、品質を示す画素ごとのフラグを適用するよう勧めている。
■2つの観測装置を組み合わせる研究
OLCIとSLSTRの観測を組み合わせ、SLSTRの短波赤外データを海洋色の大気補正に生かす手法も研究されている。両装置では画素の大きさや観測角度が異なるため、データを対応付け、各装置の観測条件を考慮する必要がある。
OLCIとSLSTRを組み合わせた既存の「SY_2_AOD」は、大気中のエアロゾルの光学的厚さを示す製品だ。2022年に学術誌「Atmospheric Measurement Techniques」に掲載された検証研究では、海上の参照観測との一致度が評価された。ただし、同研究で説明されたSY_2_AODの海上におけるエアロゾル推定には、SLSTRの観測波長帯が使われている。
EUMETSATと欧州宇宙機関(ESA)が進める短波赤外を使った海洋色大気補正の研究は、次世代の観測装置に求める性能の検討にもつながる。現在運用されているCollection-4の製品通知が対象とするのは、Sentinel-3A・3BのOLCIによる水域製品だ。
■Sentinel-3Cの初期観測と今後
ESAが10月8日に公開したSentinel-3Cの初期観測には、OLCIが9月29日に撮影したカリブ海と、30日に撮影したイタリアやカナダ北極諸島の画像が含まれる。合成開口レーダー高度計は、グリーンランド氷床の表面高度や海面高度も測定した。Sentinel-3CはOLCI、SLSTR、高度計、マイクロ波放射計を備える。
ESAによると、コミッショニングは軌道投入後の約5カ月にわたる。完了後はEUMETSATが衛星の運用を担い、Sentinel-3CはSentinel-3Aを引き継いで、Sentinel-3Bとの2衛星体制を支える計画だ。この体制では、OLCIによる海洋観測の再訪間隔はおおむね2日となる。
後続のSentinel-3Dも、観測を継続するために計画されている。さらに、2030年代半ばを視野に入れた次世代のSentinel-3光学ミッションでは、より細かな波長・空間分解能と、観測装置の連携が検討されている。EUMETSATは、2024年に打ち上げられた米航空宇宙局(NASA)のPACE衛星を、その要件を考える上で重要な先行例に挙げる。PACEの海洋色観測装置OCIは、340~895nmを約5nmの波長分解能で観測する。
植物プランクトンは海の食物網と一次生産を支え、NASAによると地球の酸素生産のおよそ半分を担う。衛星は広い海域の分布を継続して捉える手段となる。Sentinel-3Cによる観測の継続と、海洋色データの処理・検証の進展は、沿岸から外洋までの変化を追う基盤になる。
元記事: Sentinel-3C in Orbit: EUMETSAT’s New Algorithm Fixes Decades of Coastal Ocean Color Errors