Gemini 4 Argon、日本のPro・Ultra利用者に提供 性能評価と利用条件を整理
2026年10月16日 11:59
Googleは2026年10月13日、AIモデル「Gemini 4 Argon」の提供を世界で順次始めた。日本のGoogle公式発表でも、Google AI ProとGoogle AI Ultraの利用者がGeminiアプリとGoogle検索のAIモードで使えると案内している。独立機関による性能評価を読む際は、評価に使われた推論設定にも目を向けたい。
■サイバー防御向けの先行提供から一般向けへ
Googleは9月30日、Google DeepMindのKoray Kavukcuoglu氏の発表を通じてArgonを披露した。複雑なソフトウェア開発、法務・財務の業務、サイバー防御などを対象とするモデルで、当初は審査を受けた組織が参加するFairwind Programを通じて、サイバーセキュリティ担当者への提供を進めた。
Fairwindの参加組織には、防御や研究を目的として、一般向けとは異なるサイバー分野の利用条件が設けられている。Google DeepMindによると、参加組織はArgonを脆弱性の発見や修正に利用できる。10月の一般向け展開により、ProとUltraの利用者にもArgonへのアクセスが広がった。
Googleの日本語発表は、一般利用者向けの提供先としてGeminiアプリと検索のAIモードを挙げる。開発者は有料枠のGemini APIを利用でき、企業向けにも提供が始まった。モデルの展開は段階的に進められる。
■性能評価は推論設定と測定項目を確認
Googleの発表では、長期的なソフトウェア開発作業を測るDeepSWE v1.1で77.9%、脆弱性修正を測るCWE-bench v1で68.0%を記録した。同社の比較表では、端末を使った開発作業を評価するTerminal-Bench 4.0のスコアは57.4%で、GPT-6 Astraなどが上回る項目もある。これらはGoogleが公表した評価結果だ。
独立評価機関Artificial Analysisが2026年10月時点で公開するIntelligence Indexでは、Argonの高推論設定が53、GPT-6 Astraの最大推論設定が53、Claude Sonnet 5.5の最大設定が56、Claude Opus 5.5の最大設定が58となっている。同指数は知識、推論、コーディングなど複数の試験をまとめた指標で、個別の業務すべてに同じ順位が当てはまるものではない。
Artificial AnalysisのAA-Omniscienceでは、Argonの高推論設定について、誤答を控える傾向を示す「ハルシネーション率」が約15%、正答率が約50%と報告されている。この率は全回答に占める誤答の割合ではなく、正答しなかった問題のうち誤答した割合を示す。GPT-6 Astraの最大推論設定では、それぞれ約51%、約63%だった。
ArgonのAPIにはlow、medium、highの3段階の思考レベルがあり、Googleの開発者向け資料ではmediumが既定値とされる。Artificial Analysisが示すArgonの指数はhighでの測定結果だ。アプリでの利用体験や開発時の性能を比べるには、使う環境と推論設定をそろえて評価する必要がある。
■100万トークン枠と長い出力の仕組み
ArgonのGemini APIでは、入力、内部の推論、利用者に見える出力が、合計104万8576トークンの枠を共有する。入力や推論に使った分だけ、同じ処理で出力に割り当てられる残りは減る。従来のGeminiモデルで入力と出力に別々の上限を設けていた方式から変わった点だ。
通常の同期処理で指定される出力上限は6万5536トークンで、ストリーミングを使わない直接のREST呼び出しでは3万2768トークンとなる。長い出力には「long decode」を使い、継続情報を受け渡しながら処理をつなぐ。Googleの新しいSDKは継続を自動処理でき、Interactions APIではバックグラウンド実行を利用できる。
Googleの資料では、推論に使うトークンも出力上限と料金の計算に含まれる。長文生成や難しい開発作業では、入力の長さ、思考レベル、出力上限を合わせて設定することが、処理量と費用の見積もりに関わる。比較対象となるOpenAIのGPT-6 Astraは、公式API仕様でコンテキスト枠が105万トークン、最大出力が12万8000トークンとされている。
■アプリのタスク機能と開発者向けの提供
Geminiアプリには、会話からタスクへ切り替える操作が加わった。Googleによると、利用者が端末の前にいない間も、接続したGoogleのサービスなどを使って作業を進められる。Instacart、OpenTable、Adobe、Shopifyを含む40超のアプリとの連携も案内している。
GoogleはmacOS版GeminiアプリからGoogle Antigravityのコーディング機能へ移れるようにした。Argonを使うAntigravityの提供について、10月13日のGoogleの案内はGoogle AI Ultraと対象の企業契約を挙げている。開発者向けには、Gemini APIの有料枠も利用先となる。
Google I/O 2026で同社が示した、質問への回答から利用者に代わる作業へとAIの役割を広げる方針は、今回のタスク機能にも表れている。Concentric AIは、こうした機能を企業で使う際、接続先のデータ権限が重要になると指摘する。GoogleはArgonについて、外部評価や不正な指示への対策を含む安全性の取り組みを公表している。
■API料金と今後の展開
Googleが公表したArgonの導入料金は、2026年11月30日まで入力100万トークン当たり2ドル、出力100万トークン当たり10ドルだ。12月1日からは、それぞれ4ドルと20ドルになる。Googleの開発者向け資料は、内部の思考トークンにも出力料金を適用すると明記している。
Artificial Analysisは導入料金を基に、Intelligence Indexの評価タスク当たり費用をArgonで約1.99ドル、GPT-6 Astraで約3.26ドルと算出している。Argonの料金が2倍になる12月以降、同じトークン使用量を前提にすれば約3.98ドルとなる。実際の費用は、タスクごとの入力、推論、出力の量で変わる。
GoogleはArgonをロボティクス分野に使う事例も10月13日に公表した。動画やロボットのカメラ映像からシミュレーション環境を作る「Real2Sim」などを紹介しており、ソフトウェア開発に加えて物理的な作業への応用も進めている。
競争の背景には、各社によるAI基盤への投資拡大がある。Alphabetは2026年7月、同年の設備投資見通しを1950億~2050億ドルに引き上げた。Googleが5月のI/Oで予告したGemini 3.5 Proは、その後の提供計画に遅れが報じられており、Argonは上位モデルの展開としても注目される。
元記事: Gemini 4 Argon Rolls Out: Benchmark Scores Reflect High Mode, Not Subscriber Default