ボストン・ダイナミクス、人型ロボット「Atlas」の試作組み立てを約1日に 2027年には約1時間を目標
2026年10月16日 11:59
ボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)は2026年10月14日、人型ロボット「Atlas」の製造現場を紹介する動画を公開した。米マサチューセッツ州ウォルサムの試作現場では、現在、1台を約1日で組み立てられるという。同社は2027年に約1時間、その先には数分へ短縮することを目指している。
■設計変更を同じ週に試せる製造現場
約6分の動画「Machine, Assemble, Repair: How We Build Atlas」では、部品の機械加工から組み立て、修理までを担うチームの仕事を紹介している。説明役のシニア・テクニカル・プログラム・マネージャー、Katie Conner氏によると、約1年前には1台の製作に数日かかっていた。
現場では歯車など精度を要する部品を社内で加工する。設計者と加工担当者が直接相談でき、変更した部品を当日か翌日に試せるという。月曜日に出た案を同じ週のうちに実機へ反映できることも、動画で紹介された。
組み立ての一部にはロボットアームを使う。加工、組み立て、修理を近い場所で進める体制は、部品の変更や不具合への対応を速め、設計を繰り返し確かめるのに役立つ。
Boston Dynamicsは10月、Atlas向けの新しい4指の手も公開した。同社によると、13自由度を持つ設計で、器用さに加えて強度、コスト、製造のしやすさを考慮した。試作現場での素早い改良は、こうした設計上の選択を実機で確かめる機会になる。
■各社が示す製造速度、その数字の意味
Atlasの「約1日」は、試作現場で1台を組み立てる所要時間を指す。一方、Figure AIは2026年4月、米サンノゼの製造施設「BotQ」で「Figure 03」の生産ペースを1日1台から毎時1台に引き上げたと発表した。こちらはライン全体から完成品が出る間隔を示す数字で、1台の組み立て所要時間とは測定対象が異なる。
Figure AIによると、BotQの当初の設計能力は年間最大1万2000台である。ラインが毎時1台を送り出していても、複数の機体が別々の工程を同時に進むため、各機体の完成までの時間が1時間という意味にはならない。
Teslaの「Optimus」については、The Informationが、2026年8月には週に数百台が製造されていたと報じた。報道では、その多くが社内での試験、訓練、データ収集に充てられている。中国のAGIBOTは9月24日、累計2万台目のロボットを出荷したと公表した。この累計には複数の製品系列が含まれる。
価格も競争上の重要な要素だ。Boston Globeが伝えたSamsung Securitiesのアナリストの説明では、Boston Dynamicsが示したAtlasの当初の販売価格の想定は13万~14万ドル(約2054万~2212万円、1ドル=158円換算)で、導入後2年以内の投資回収を見込むものだった。一方、Teslaのイーロン・マスク氏はOptimusの将来価格として2万~3万ドル(約316万~474万円、同)を挙げている。いずれも2026年10月時点の一般向け確定価格ではない。
■試作の速さを量産につなげるには
Figure AIはFigure 03の設計で、試作に使っていた切削加工中心の部品製造から、射出成形、ダイカスト、金属粉末射出成形、プレス加工などへ移った。同社によると、以前は切削加工に1週間以上かかった部品を、金型を使って20秒未満で製造できるようになった。BotQでは将来、同社のAI「Helix」で動くロボットを部品の組み立てや工程間の搬送にも使う計画だ。
Boston Dynamicsが示した約1時間という目標にも、組み立て工程や設備の改良が関わる。現時点で同社は、目標に至る具体的な工程表を公表していない。約1日という現在の数字は、設計変更を素早く試すための現場で得られたものだ。
Atlasは2024年、従来の油圧式から全電動式へ移行した。部品を作り、組み立て、動作を確認し、修理で得た知見を次の設計へ戻す取り組みは、製造しやすさと運用時の信頼性の両方を高める手掛かりになる。
■2028年の工場導入へ
Boston Dynamicsは2026年1月のCESで製品版Atlasを発表し、製造を始めたと公表した。同年分の配備先は現代自動車グループとGoogle DeepMindに割り当て済みである。Google DeepMindとは、ロボット向けAI基盤モデル「Gemini Robotics」を活用した研究で協力する。
現代自動車グループは、2028年までにロボットを年間3万台製造できる体制を整える目標を掲げる。この数字はグループが目指す生産能力であり、Atlasの現在の生産台数ではない。同グループは米ジョージア州の工場で、2028年から部品を工程順にそろえる作業にAtlasを導入し、2030年までに部品組み立てへ用途を広げる計画だ。
Boston DynamicsのAtlas事業責任者Zack Jackowski氏はCESで、製品版を同社がこれまで設計した中で「最も量産に適したロボット」と表現した。経営面では、2026年2月にRobert Playter氏がCEOを退き、CFOのAmanda McMaster氏が暫定CEOを務めた後、10月7日に元AmazonのRohit Prasad氏がCEOに就任した。
市場への期待も高まっている。Goldman Sachsは2026年8月、人型ロボット市場の2035年予測を従来の約380億ドルから1380億ドルへ引き上げた。Morgan Stanleyも2025年5月の分析で、関連する供給網や保守サービスを含む市場が2050年に5兆ドルを超える可能性を示した。各社の予測が示す成長を事業につなげるには、ロボットの能力とともに、製造を拡大できるかが問われる。
元記事: Inside Atlas’s Prototype Shop: Boston Dynamics Discloses One-Day Build, Targets One Hour