インテル、韓国でロボット向けAI基盤を披露 Core Ultraシリーズ3で制御と推論を統合
2026年10月16日 11:37
米インテル(Intel)は10月14日、韓国・ソウルのワークショップで、ロボット向けのCore Ultraシリーズ3プロセッサーとソフトウェア群を紹介した。CPU、GPU、NPUを一つのプロセッサーに収め、制御、画像認識、AI推論を組み合わせる構成を訴求する。
同社は、ロボティクス AI スイート、Physical AI Studio、OpenVINO フィジカル AIを、開発から実機への導入までを支えるツールとして位置付ける。ワークショップでは韓国企業による実演も行われた。
■制御とAIを一つのプロセッサーに
ロボットには、決まった時間内に動作を更新する制御と、カメラなどの情報を読み取るAI推論の両方が求められる。IntelはCore Ultraシリーズ3のCPU、GPU、NPUに処理を振り分け、従来は複数の計算装置に分かれていた機能を一つのプロセッサー上で動かす構成を提案している。
Intelのロボット向け資料では、リアルタイム制御とAI処理を並行させるため、制御処理の実行時間を管理する技術や、処理を分離するソフトウェア構成を示している。AIモデルの出力をロボットの動きにつなぐには、応答時間に加え、安全機能も設計に組み込む必要がある。同社の産業・ロボティクス部門を率いるジョン・ヒーリー氏も、ソウルでの説明でリアルタイム制御と機能安全を重視した。
Core Ultraシリーズ3は複数の半導体タイルを一つのパッケージに収めた製品で、Intelの公表値では、上位モデルのAI演算性能はプラットフォーム全体で最大180TOPS、NPUは最大50TOPSとなる。CPUとNPUを含む演算タイルにはIntel 18A製造技術を採用し、GPUにはXe3世代の設計を用いる。
■現場データをモデルとロボットの動作へ
ロボティクス AI スイートは、ロボットの認識、移動、制御などに使う開発用ソフトウェアや参考構成をまとめたものだ。Intel CoreおよびCore Ultra系のプロセッサーを対象とし、ROS 2とOpenVINOを活用する。自律移動ロボット、産業用ロボットアーム、ヒューマノイドなどの開発例が用意されている。
Physical AI Studioは、ロボットの調整、動作データの収集、モデルの学習をつなぐ。視覚情報と指示を受けて動作を出力する視覚・言語・行動モデル(VLAモデル)を、実際に使うロボットや作業環境に合わせて調整するためのツールだ。Intelの公開資料には、Pi0やSmolVLAなどを使う学習手順が示されている。
OpenVINO フィジカル AIは、カメラやセンサー、AIモデル、ロボットの動作をつなぐ開発基盤だ。Intelは、Physical AI StudioやLeRobotで扱うモデルを、PyTorchまたはOpenVINOを用いてIntel製ハードウェアへ導入できるとしている。モデルの量子化は、重みの表現を小さくして推論時に必要な計算量やメモリーを抑える手段の一つとなる。
こうしたツールが扱うのは、学習済みモデルを選ぶ工程だけではない。現場の照明や物体、カメラの位置に合わせたデータ収集と調整を経て、認識結果をロボットの動作へ渡すまでの作業が含まれる。Intelは、異なるモデルや開発環境を利用する開発者にも開かれた構成を競争上の特徴に挙げている。
■導入意向と運用準備の差
Intelが2026年8月に公表した委託調査は、米国、英国、ドイツ、日本、中国、韓国の企業や公的機関などに属する上級職800人を対象とした。回答者の約6割は、自組織が5年以内にロボット群を運用すると予想した一方、人とロボットが共に働く体制について正式な戦略を持つ回答者は40%だった。
同じ調査では、77%がロボットの外観より作業性能を重視すると答えた。Intelはこの調査を、導入規模を広げる際には機器の性能だけでなく、運用方針、人材、安全対策なども必要になるという説明に用いている。
Intelは2026年5月のComputexで、Core Ultraシリーズ3を採用または試験している企業が130社に上ると発表した。これは採用・試験段階の企業数であり、同社が公表した工場での本番稼働件数ではない。
■韓国で示した活用例
ソウルのワークショップでは、韓国企業のMovensys、One AI、CirculusがIntelの技術を用いたロボット関連のソリューションを披露した。韓国の製造企業との協業について、ヒーリー氏は複数社と取り組んでいると説明した。
韓国科学技術院(KAIST)のチャン・ヨンジェ教授は、自身が率いるDaime Researchの構想として、工場内の設備や物流ロボットを連携させる「ダークファクトリー」を紹介した。韓国のMoneyTodayによると、会場で示された映像には、半導体製造装置の異常を検知し、点検ロボットの派遣や部品搬送、生産計画の調整につなぐ流れが含まれていた。
Intelは2026年5月、クライアント事業とフィジカルAIを管轄する組織を設けた。韓国での実演は、プロセッサーと開発ツールを、個々のロボットから工場全体の運用までどう結び付けるかを示す機会となった。
■競合の開発基盤と欧州市場
NVIDIAはIsaac Simによるシミュレーション、Isaac Labによるロボット学習、Isaac ROS、Jetsonによる実機向け計算基盤を提供する。Jetson AGX Orinの公称AI演算性能は最大275TOPSだ。Intelは、既存のモデルを活用できる開発ツールと、制御と推論をまとめるプロセッサー構成を訴求している。
ロボット向けの統合基盤はほかにもある。QualcommはRB3 Gen 2をロボットや産業用途向けに提供し、AMDは2026年7月、CPU、GPU、NPU、FPGAを組み合わせるKria AI Robotics Developer Platformを発表した。各社の公称演算性能だけで、実際のロボットにおける制御、推論、消費電力を一律に比較することは難しい。
欧州向け製品では、安全性と法令対応も設計上の課題となる。2026年7月に発効したEU規則2026/1744により、AI法の附属書IIIに該当する高リスクAIへの主な義務の適用は2027年12月2日、附属書Iに掲げる製品関連法令に該当する高リスクAIへの適用は2028年8月2日となった。ロボット開発者は、製品の用途と適用される法令に応じて要件を確認することになる。
元記事: Intel Unveils Robotics AI Platform Uniting Real-Time Control, AI on One Chip