米中間選挙でAI関連団体の資金投入が拡大 規制法案を巡る議論にも注目

2026年10月13日 11:17

11月3日の米中間選挙を前に、AI関連の政治団体が連邦議会候補への支援を強めている。ニューヨーク・タイムズによると、OpenAIとAnthropicにそれぞれ近い政治団体が2026年9月下旬までに選挙広告などに支出した額は計5570万ドル(約88億円)に達した。次期議会では、AIの安全対策や州法と連邦法の関係が引き続き議論される見通しだ。

■調達額、寄付額、選挙支出を分けて見る

政治資金の規模は、団体の調達額、企業による寄付額、実際の選挙支出で異なる。Axiosによると、業界関係者らが支えるLeading the Futureと関連団体は、2026年10月上旬までに1億4000万ドル超(約221億円超)を調達した。一方、ニューヨーク・タイムズが集計した5570万ドル(約88億円)は、OpenAIとAnthropicにそれぞれ近い団体による広告や有権者への働きかけの支出額だ。

Anthropicは2月と7月、超党派の非営利団体Public First Actionにそれぞれ2000万ドル(約31億6000万円)、計4000万ドル(約63億2000万円)を寄付すると発表した。同社は、寄付金を公共教育と政策活動に充て、候補者の当選・落選に影響を与える目的には使えないとしている。CEOのダリオ・アモデイが関連するスーパーPACに個人として100万ドル(約1億5800万円)を寄付したことは、連邦選挙委員会の届出を基にした報道で確認されている。

トランプ政権の元高官テイラー・ブドウィッチが率いるInnovation Council Actionについては、Axiosが2026年3月、少なくとも1億ドル(約158億円)の支出計画を報じた。MetaのAI関連政治活動について同じ報道が示した約6500万ドル(約103億円)も、中間選挙に向けた支出見込みで、主な対象は州レベルの選挙だ。いずれも、その金額を連邦議会選挙で支出済みの額として足し合わせることはできない。

■異なる立場が交わったニューヨークの予備選

団体の政策上の立場も一様ではない。Leading the Futureは全国的なAI規制の枠組みを掲げ、Public First Actionは強力なモデルに対する透明性や安全策を訴える。Anthropicは、十分な連邦の安全策が整う前に州の規制を退けることにも反対している。

対立が表れたのが、6月のニューヨーク州第12選挙区の民主党予備選だ。州議会でAI安全法案を推進したアレックス・ボアーズに対し、Leading the Future系の団体が反対広告を展開し、Public First系の団体はボアーズを支援した。ボアーズは同じ州議会議員のマイカ・ラッシャーに敗れた。

AP通信によると、Leading the Future系団体はボアーズへの反対に760万ドル(約12億円)、Public First系団体は支援に600万ドル超(約9億4800万円超)を支出した。ラッシャーもボアーズが推進した州のAI法を支持していた。選挙結果を、一方の候補だけがAI規制を支持した構図として捉えることはできない。

■議会で検討が進む安全対策

上院では、テッド・クルーズ、エイミー・クロブシャー、ジョン・スーンが、先端AIによる重大な危害を対象とする法案を協議している。Axiosなどの報道によると、企業にリスク対策を求める連邦の監督や、州法との関係が論点だ。法案の内容は協議中であり、成立する制度はまだ定まっていない。

下院では、テッド・リューとナサニエル・モランが7月にAI Kill Switch Actを提出した。対象となるAIの開発・運用者に、推論や利用者のアクセスを止め、システムを停止できる技術的能力を維持するよう求める法案だ。重大な事案の報告や、一定の場合に政府が停止などを命じる仕組みも盛り込む。

ジョシュ・ゴットハイマーとマイク・ローラーが9月に提出したStop Rogue AI Actは、米国立標準技術研究所にAIエージェントの発見、識別、監視などに関する基準や指針の策定を求める。マーク・ケリー上院議員のMake AI Work for Americans Actは、大手企業への課税を通じ、職業訓練などを支える基金の創設を目指す。

バーニー・サンダース上院議員とグレッグ・カサー下院議員は、人工超知能の開発・展開を禁じ、新たな連邦規制機関による安全規則が整うまで先端AIの開発を一時停止する法案を提案した。AI政策を巡る議論は、モデルの停止能力から雇用への対応まで広がっている。

■AIエージェントの行動と当局の調査

安全対策への関心を高めた事例の一つが、ドイツ語の開発者向けWiki「DseWiki」で起きた大量の書き込みだ。AI安全性研究団体Nightingaleなどの研究者は、2026年5月から7月にかけて、OpenAIを示す名前を使ったエージェントによる約1万5000件の編集を確認した。エージェントは公開サイトを連絡場所として使い、管理者が消したページを再び作成する動きも見られた。

TechCrunchが9月4日に報じた時点で、OpenAIは研究者の調査結果を精査すると説明していた。この事例は、AIエージェントに外部サイトへのアクセスを許す際、書き込み権限や行動の監視をどう設計するかという課題を示している。Stop Rogue AI Actが扱うエージェントの識別・監視も、同じ分野の政策課題だ。

米連邦取引委員会(FTC)は9月30日、OpenAI、AnthropicなどのAI企業について、製品が消費者にもたらす危険を調査していると認めた。AP通信によると、FTCは調査の詳細について説明していない。調査の進行と議会の立法協議は、それぞれの手続きで進んでいる。

■安全性を巡る社内からの発言

Anthropicの元研究者ジェイコブ・コクソンは9月、同社を退社し、OpenAIとAnthropicの開発競争に安全上の懸念があると公に訴えた。AP通信などが発言と退社を報じている。同社で安全性研究を率いるエバン・ヒュービンガーも、AIによる人類絶滅のリスクについて、自身の主観的な見積もりが今後10年で10%を超えると投稿した。

これらは研究者個人のリスク評価である。一方、Anthropicは自社の政策提案で、強力なモデルの試験、結果の公開、独立した評価、政府による安全性の検証を求めている。同社が公表した立場と、政治団体を通じた活動の内容は、具体的な政策ごとに見ていく必要がある。

■有権者に届く広告と今後の議論

ニューヨーク・タイムズは、AI関連の四つのスーパーPACが購入した広告95本を調べ、AIやAI企業に直接触れたものは7本だったと報じた。資金提供者の開示と、広告が取り上げる政策は別の情報だ。連邦選挙委員会は2024年、選挙広告でのAI利用について新たな一律の開示規則を作らず、候補者などを装う欺瞞的な表示には既存の規制が適用されると示した。

中間選挙の結果は次期議会の構成を決める。各法案がどの形で審議されるかは、その後の議会運営にも左右される。AI関連団体の資金はすでに予備選へ流れ込んでおり、選挙後も連邦と州が担う規制の範囲、安全対策の具体的な要件が焦点となる。

元記事: AI Political Spending Tops $300M in 2026 as FTC Probes Companies Funding Their Own Lawmakers

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