韓国でテスラFSDの政府試験は未実施、韓国法人は制度整備後の検証に協力意向

2026年10月11日 16:26

韓国の国会国土交通委員会が2026年10月8日に行った国政監査で、テスラの運転支援機能「フル セルフ ドライビング(監督付き、FSD)」の検証体制が議論された。韓国政府はFSDについて独自の道路安全試験を実施していない。テスラコリアの徐永徳代表は、検証の窓口と制度が整えば国土交通部に協力する意向を示した。

■生産国によって異なる利用対象

韓国でFSDを利用できるかどうかは、車両の生産国や装備などによって異なる。米国製の車両には米韓自由貿易協定に基づく安全基準の特例が適用され、Model S、Model X、Cybertruckのほか、条件を満たす米国製Model 3、Model YにもFSDが提供されている。一方、販売台数の多い中国製Model 3、Model Yには、韓国でFSDを有効化するための承認が下りていない。

韓国の自動車データ分析機関カイズユデータ研究所の集計を報じた毎日経済新聞によると、2026年8月時点で国内を走るテスラ車22万9,311台のうち、FSDの利用が可能と分類されたのは4万7,458台、20.7%だった。残る18万1,853台、79.3%は利用対象外とされた。これは車両の利用可能性を分類した数値で、購入者数や実際の利用台数を示すものではない。

10月8日の監査では、張鍾泰議員がテスラコリアから提出を受けた、これより新しい資料も取り上げた。ニュースピムによると、登録車両23万8,968台のうち、米国製の利用可能車両は5万3,477台、中国製Model 3・Model Yの利用対象外車両は18万3,407台だった。集計時点の異なる数字を比べる際には、この違いを踏まえる必要がある。

■政府試験と認証を巡る議論

世界日報が国土交通部から金貞在議員に提出された資料を基に報じたところによると、同省がFSD搭載車について実施した独自の道路安全試験は0件だった。米国製車両は、米韓自由貿易協定に基づき、メーカーによる米国安全基準への適合確認を経て輸入・販売されている。同省は、今後の監視で製造上の欠陥が見つかれば、韓国の自動車管理法に基づいて調査や是正措置を行う方針を示した。

監査で張議員は、外国の安全基準を国土交通部長官が認める場合の特例に触れ、テスラコリアに正式な検証を求める考えを尋ねた。徐代表は、同社がこれまで国土交通部などにFSDの試験を正式に依頼したことはないと説明。そのうえで、国土交通部が窓口と制度を設ければ検証に協力すると答えた。申請日や試験の日程は示していない。

中国製車両での利用を検討するうえでは、適用する安全基準と検証手順の整備が焦点となる。国土交通部の担当者は監査で、FSDの機能と事故時の責任の扱いについて見解を述べ、関連基準を検討する姿勢を示した。張議員は、将来の韓国メーカー製車両にも関わる基準として整備を進めるよう求めた。

テスラは自社資料で、監督付きFSDをSAEレベル2の先進運転支援システムと位置付けている。同社の韓国向け案内も、使用中は運転者が常に注意を払い、必要に応じて操作を引き継ぐとしている。カメラで周囲を捉え、経路に沿った操舵や車線変更などを支援する仕組みだ。

■韓国での利用状況と安全上の論点

世界日報によると、国土交通部の資料では2026年9月時点の韓国におけるFSD利用車両は5,898台だった。内訳は第4世代ハードウェア搭載のModel Xが3,754台、Model Sが1,497台、Cybertruckが647台。さらに、旧世代の第3世代ハードウェア向け「FSD v14 Lite」を利用する米国製Model 3・Model Yが1万6,198台あった。

同紙が報じた資料では、FSD作動中に事故が起き、テスラのサービスセンターに入庫した事例が2件確認されている。また、2022年から2026年8月までに、別の運転支援機能「オートパイロット」に関するリコールの届け出が13件あった。政府による道路試験や事故情報の確認を求める議論には、こうした利用実態も背景にある。

米国では、道路交通安全局(NHTSA)が2026年3月、FSDの調査を工学的分析「EA26002」に進めた。対象は約320万台で、日差しや霧、空中の粉じんなどで視界が悪いとき、システムが検知能力の低下を捉え、運転者に十分早く警告できるかを調べている。NHTSAの文書には、調査対象となった9件の事故と、2023年のアリゾナ州での死亡事故が記載されている。

このアリゾナ州の事故に関する民事訴訟では、テスラが2026年に和解したとブルームバーグが報じた。別の事例として、米自動車メディアのElectrekは、同年3月25日にイリノイ州バタビアで起きた死亡事故について、車両の運転支援システムが作動していたとするテスラの当局提出資料を報じた。米国での調査と韓国で求められている検証は、それぞれの当局が扱う案件だ。

■無断有効化とドア開放の問題

利用対象外の車両でFSDを無断で有効化しようとする事例も報告されている。電子新聞が朴容甲議員室の集計として報じたところによると、2026年4月28日までに85件の試みが確認された。一部では、非公式の外部機器やソフトウェアの変更が使われたという。

韓国の自動車管理法では、安全運行に影響する車両ソフトウェアを無断で変更・追加する行為は処罰対象となり、違反には2年以下の懲役または2,000万ウォン以下の罰金が定められている。電子新聞によると、国土交通部は違反事例について捜査を依頼し、テスラコリアはソフトウェア更新で対応した。

同じ監査では、火災などで電源を失った際のドア開放も議題となった。祖国革新党の黄雲夏議員らは、2024年に京畿道安城市で起きたテスラ車の死亡火災を挙げ、緊急時に手動の開放装置を見つけて操作できるかを問題にした。中国の市場監督管理総局が公表した約293万台のリコールでは、緊急ドア開放装置の表示を追加し、事故後に窓を下げるソフトウェア更新を行うことになっている。

■購入者の訴訟と販売方式の変更

韓国では、FSDオプションを購入しながら長期間利用できなかった車両の所有者が、料金返還を求めている。韓国経済新聞によると、所有者98人が2024年12月にテスラコリアを相手取り、ソウル中央地裁に訴訟を起こした。2025年11月には韓国で米国製車両向けの監督付きFSDの提供が始まり、2026年には米国製Model 3・Model Y向けのv14 Liteも配布されたため、車両ごとの提供状況も争点に関わる。

テスラコリアはFSDの販売方式も変更した。従来の一括購入価格は904万3,000ウォンだったが、ニューシスによると、当初8月10日を予定していた月額制への移行を延期し、2026年8月21日に切り替えた。テスラの韓国向け案内では、同年10月時点の月額料金は基本オートパイロット搭載車が15万ウォン、強化版オートパイロット購入済みの車両が7万5,000ウォンとなっている。

韓国輸入自動車協会の集計を引用したアジア経済によると、テスラの2026年1~9月の韓国における新規登録は8万9,148台で、前年同期比104.4%増だった。輸入車ブランドの月間登録台数で8カ月連続首位となり、9月のシェアは35.5%。徐代表は監査で、9月末までの販売の約9割がModel Yだったと説明した。

徐代表の協力表明を受け、今後は韓国当局が検証制度をどう整え、テスラがどの車両について手続きを進めるかが焦点となる。韓国では国連欧州経済委員会の運転者制御支援システム基準を踏まえた制度整備も議論されている。国会には2026年7月21日、自動運転車の道路運行に関する法案が提出され、審議が続いている。

元記事: Korea Audit: Tesla CEO Vows FSD Certification as Ministry Confirms Zero Road Testing

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