NASAのCrew-12がISSを離脱、8カ月の滞在を終えカリフォルニア沖へ帰還予定
2026年10月9日 20:37
NASAのSpaceX Crew-12は10月7日、国際宇宙ステーション(ISS)を離脱した。4人を乗せた宇宙船ドラゴン「フリーダム」は、米東部時間8日午前11時34分(日本時間9日午前0時34分)ごろ、カリフォルニア沖の太平洋への着水を目指す。約8カ月の滞在では、宇宙での医療や植物栽培などに関する研究に取り組んだ。
■帰還までの予定
NASAによると、Crew-12は米東部時間10月7日午前8時5分(日本時間同日午後9時5分)、ISSの「ハーモニー」モジュールから離脱した。乗っているのはNASAのジェシカ・メイア船長とジャック・ハサウェイ操縦士、欧州宇宙機関(ESA)のソフィー・アドノー宇宙飛行士、ロスコスモスのアンドレイ・フェジャエフ宇宙飛行士だ。
NASAが事前に公表した予定では、8日午前10時20分(日本時間同日午後11時20分)に帰還中継を始め、午前10時46分(同午後11時46分)に軌道離脱噴射を行う。着水予定は午前11時34分で、時刻は宇宙船や回収チームの準備状況、海域の天候などによって変わり得る。NASAは帰還の模様をNASA+などで配信する。
ISSから分離したドラゴンは、地球を周回しながら帰還の機会を待つ。軌道離脱噴射で速度を落として大気圏に再突入し、パラシュートで減速して着水する。着水後はSpaceXの回収チームが宇宙船と搭乗員を収容する予定だ。
■2月の打ち上げからCrew-13への交代まで
Crew-12は2月13日、フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍施設からファルコン9で打ち上げられ、翌14日にISSへドッキングした。メイアとフェジャエフにとっては2回目、ハサウェイとアドノーにとっては初めての宇宙飛行だった。4人は第74次長期滞在に加わり、7月に始まった第75次長期滞在にも参加した。
メイアは2019年、NASAのクリスティーナ・コック宇宙飛行士と女性だけによる初の船外活動を実施した。今回の滞在中にはISSの船長を務め、10月4日にロスコスモスのピョートル・ドゥブロフ宇宙飛行士へ指揮を引き継いだ。ハサウェイは米海軍のテストパイロット経験を持ち、アドノーはフランスの元ヘリコプター・テストパイロット、フェジャエフは2023年のCrew-6にも搭乗した。
後任のCrew-13は10月1日に打ち上げられ、同日ISSに到着した。搭乗員はNASAのジェシカ・ワトキンスとルーク・デラニー、カナダ宇宙庁のジョシュア・クトリク、ロスコスモスのセルゲイ・テテリャトニコフの4人だ。NASAによると、打ち上げからドッキングまでの7時間55分は米国の宇宙船として最短で、到着後のISS滞在者は一時11人となった。
SpaceXのジュリアナ・シャイマンはSpace.comに対し、ISSの位置と軌道上の条件が短時間での到着に適していたと説明した。宇宙船がISSへ向かう時間には、打ち上げ時の両者の位置関係が関わる。Crew-13の到着後に任務を引き継いだCrew-12の4人は、帰還に向けて貨物や研究試料をドラゴンへ積み込んだ。
■宇宙で取り組んだ医療研究
NASAが紹介した研究の一つは、微小重力下で飲用水から静脈内輸液用の食塩水を必要に応じて作る小型装置の試験だ。既製の輸液には使用期限があり、搭載量にも限りがある。NASAは、補給が難しい長期ミッションで医療資源を確保する技術として、この装置を研究している。
宇宙飛行中の血流を調べる研究にも搭乗員が参加した。微小重力では血液などの体液が頭部側へ移動し、循環の状態が変わる。NASAの研究では、頸静脈の超音波画像や血圧、血液試料などを使い、体液の移動と血栓の危険性を調べる。
肺炎の原因菌である肺炎球菌が心臓の組織に与える影響を調べる実験では、幹細胞から作った心臓組織の模型を用いた。NASAによると、研究者は宇宙環境で感染に伴う細胞の反応を観察し、心臓への影響を詳しく調べている。宇宙での健康管理と、地上の感染症・心血管疾患の研究に関わるテーマだ。
■植物、材料、基礎科学にも広がる実験
Crew-12は、植物の健康状態の自動監視や、植物と窒素固定微生物の相互作用を調べる研究にも携わった。窒素固定微生物は、植物が利用できる形の窒素を供給する。NASAはこうした研究を、将来の宇宙ミッションで食料を育てる方法の検討につなげている。
ISSではこのほか、医薬品に関わる結晶の成長、極低温の原子を観察する量子科学、骨や軟骨の組織、金属部品の3Dプリントなども研究した。Crew-12の搭乗員も実験装置の操作や試料の扱いを担った。成果は地上での分析を経て、長期宇宙滞在や地上の医療・ものづくりに役立てることが期待される。
■ISSへの有人輸送を続けるNASA
Crew-12は、NASAの商業乗員輸送プログラムでSpaceXが担当する12回目のISS乗員交代ミッションだ。NASAは9月、Crew-15からCrew-17までの追加3ミッションをSpaceXに発注したと発表した。契約変更額は9億4600万ドル(約1495億円、1ドル=158円換算)で、打ち上げから帰還・回収までの関連サービスを含む。
NASAはボーイングのスターライナーについても飛行再開に向けた開発を進めている。ドラゴンによる追加飛行の発注は、ISSへの定期的な乗員輸送を維持するための措置だ。Crew-12の帰還後はCrew-13の搭乗員ら7人がISSに残り、研究とステーションの運用を続ける。
元記事: SpaceX Crew-12 Undocks Wednesday; Eight Months of Mars Medical Research Returns