SpaceXのDragon運用見直し、NASAの低軌道商業化に輸送の課題
2026年10月1日 21:54
SpaceXが有人宇宙船クルードラゴンの運用を2030年以降も続けるかどうかが、NASAと民間宇宙ステーション事業者の課題になっている。同社は国際宇宙ステーション(ISS)向けの飛行を2030年まで支える一方、その後は機体を退役させる意向だと報じられている。NASAはボーイングのスターライナーの開発を支援し、輸送手段の確保を進める。
■NASAが目指す低軌道の商業化
NASAは約20年前、民間企業によるISSへの貨物輸送を後押しし始めた。その後、有人輸送や民間宇宙ステーション、研究、製造、宇宙観光へと構想を広げ、NASA自身もサービスを購入する顧客の一つになる方針を掲げている。
クルードラゴンは、この構想から生まれた有人輸送手段だ。2020年にNASAの認証を受け、ISSへの定期的な乗員輸送を担ってきた。日本の宇宙飛行士も利用しており、JAXAは諏訪理宇宙飛行士が2027年3月以降に予定される運用14号機へ搭乗すると発表している。
NASAはISSの運用終了を2030年ごろに予定し、民間が所有・運営する宇宙ステーションへの移行を進めている。新たなステーションの利用には、乗員を往復させる宇宙船も必要になる。
■Dragonの運用方針と既存の契約
Ars Technicaは、SpaceXがNASAに対し、2030年ごろまでにクルードラゴンの運用を終える意向を伝えたと報じた。同誌によると、同社はAxiom Space、Voyager Space、Vast Spaceにも、各社が計画する民間ステーション向けのDragon飛行を新たに発注できないと伝えている。NASA長官のジャレッド・アイザックマンも、SpaceXがスターシップに注力し、Falcon 9やDragonから移行する意向に言及した。
一方、ISS向けの飛行は続く。NASAは2026年9月、SpaceXにCrew-15からCrew-17までの3飛行を追加発注し、契約上の飛行数を計17回とした。追加契約額は関連サービスを含め9億4600万ドルで、契約期間は2030年までとなっている。
Ars Technicaによると、NASAがクルードラゴンの開発と認証に投じた額は約31億ドルに上る。SpaceXは当初の契約で定められた飛行回数を超えて運航してきたが、追加発注分を含む現在の契約は引き続き履行する必要がある。
SpaceXの事業の重点も変化している。同社の開示資料では、2025年の売上高の過半をStarlinkが主導する通信事業が占めた。同社はスターシップを使う衛星打ち上げや、軌道上での計算処理を将来の事業構想に挙げている。
■スターライナーの再飛行計画
NASAはもう一つの契約先であるボーイングのスターライナーについて、ISSと将来の商業宇宙ステーションへの輸送に使う方針だ。ただ、2024年の有人試験飛行では推進系などに問題が生じ、機体は乗員を乗せずに帰還した。スターライナーは2026年9月末時点で、ISSへの定期的な乗員交代飛行を実施していない。
NASAが2026年9月28日に示した計画では、次のStarliner-1を無人でISSへ飛行させ、改修の効果を検証する。飛行時期は2026年12月か2027年1月を見込み、続くStarliner-2での有人飛行は2028年までを目標とする。NASAはさらに、既存のAtlas Vに代わり、Vulcanロケットでスターライナーを打ち上げるための認証作業を進める。
Ars Technicaによると、NASAがスターライナーの開発に投じた額は約51億ドル。AP通信は、機体の改修とVulcanの認証にNASAがさらに3億5900万ドルを充てると報じた。
輸送価格も民間ステーションの事業性を左右する。Ars Technicaが示したNASA向けの1座席当たりの価格は、Dragonが初期の約5500万ドルから近年の約7880万ドル、ISS運用期のスターライナーが約9000万ドルだ。これらはNASA向け契約の価格であり、2030年代の民間ステーション向け価格は、各社の契約条件によって決まる。
■ほかの有人輸送機の開発状況
SpaceXのスターシップは大量輸送を目指す機体だが、地上から低軌道へ乗員を運び、帰還させる運用には開発と安全性の確認が必要になる。NASAは同機をアルテミス計画の月面着陸船としても開発支援している。
Blue OriginもNew Glennロケットで打ち上げる有人宇宙船を開発している。Ars Technicaは、与圧室やパラシュート、熱防護、生命維持装置の開発が進み、有人飛行は早くても2031年になるとの関係者の見方を報じた。インドのガガンヤーンと欧州のThe Exploration Companyの宇宙船も開発段階にある。
NASAは商業化を通じて複数の輸送事業者が活動する市場を目指してきた。ISSの後継となる民間ステーションが乗員を迎える時期に、利用できる宇宙船とその価格がどうなるかが、研究や観光を含む事業計画の重要な条件となる。
元記事: NASA’s Low-Earth Orbit Economy Faces Crisis as SpaceX Moves Beyond Crew Dragon: Here’s Why