SpaceXの帰還カプセル「Starfall」、欧州2社が2028年・2029年のミッションを契約

2026年9月24日 13:24

SpaceXの無人帰還カプセル「Starfall」を利用する商用ミッションを、欧州のSpace Cargo UnlimitedとExolaunchが相次いで契約した。両社は複数顧客の実験装置や製造設備を集約し、微小重力環境で運用した後、最大1,000kgのペイロードを地球へ持ち帰るサービスを計画している。

Space Cargo Unlimitedのミッションは2028年、Exolaunchのミッションは2029年を目標とし、いずれも大型宇宙輸送システム「Starship」での打ち上げを予定する。ただし、両年の実施日はSpaceXの正式な打ち上げ予定として確定したものではなく、Starshipが商業運用に移行することが前提となる。

■2028年に1トン級の宇宙工場を計画

ルクセンブルクに本拠を置くSpace Cargo Unlimitedは2026年9月15日、Starfallを利用する専用ミッションについてSpaceXと契約したと発表した。2028年にStarshipで打ち上げ、同社の「BentoBox」プラットフォームを搭載した1トン級の宇宙工場を運用する計画だ。

BentoBoxは、微小重力環境での実験や製造に必要な装置を収容し、軌道上で自律運用するための標準化されたペイロード基盤である。Space Cargo Unlimitedは、顧客によるペイロードの設計から打ち上げ準備、軌道上運用、地球への帰還までを一括して支援する。

同社は、従来の100kg級プラットフォームから1トン級へ能力を拡大し、Starfallが設計上回収できる最大1,000kgのペイロード容量を活用する方針だ。企業は宇宙船や帰還システムを自ら開発せずに、共有型のミッションへ実験装置や製造設備を搭載できる。

Space Cargo Unlimitedによると、100を超える企業や団体と協議を進めており、このうち約40%がライフサイエンスとバイオテクノロジー分野に属する。医薬品、バイオテクノロジー、先端材料などを主な対象として、複数顧客のペイロードを一つのミッションに集約する。

■Exolaunchは2029年の帰還ミッションを契約

ドイツに本社を置くExolaunchも2026年9月、SpaceXとStarfallミッションの契約を結んだ。2029年以降のStarshipによる打ち上げを目標とし、Exolaunchが複数顧客のペイロードを取りまとめるインテグレーターを務める。

対象として想定するのは、製薬、バイオテクノロジー、ライフサイエンス、先端材料の企業に加え、政府機関や研究機関である。Exolaunchは顧客との契約、技術調整、物流、宇宙機への搭載、ミッション運用、規制対応、帰還後のペイロード引き渡しまでを管理する計画だ。

Exolaunchはこれまで、複数顧客の小型衛星を一つのロケットに搭載する相乗り打ち上げで実績を重ねてきた。今回の契約は同社にとって初のStarshipミッションであり、従来の衛星打ち上げ・放出支援から、軌道上での実験や製造、地球への回収までを扱うサービスへの拡張となる。

一般的な衛星相乗りミッションでは、軌道へ投入した宇宙機を地上へ戻すことは想定されていない。Starfallを利用する計画では、Exolaunchが打ち上げ前の統合だけでなく、軌道上運用から再突入、回収までを含む一連のミッションを取りまとめる。

■最大1,000kgを回収する円盤型カプセル

Starfallは、低軌道で実験や製造を行ったペイロードを地球へ戻すためにSpaceXが開発した、円盤型の無人再突入カプセルである。米連邦航空局の環境評価資料では、直径約3.1m、高さ約0.75m、ペイロードを除く質量は約2,100kgとされ、最大1,000kgを搭載できる。

機体上部の構造にはペイロードのほか、飛行制御装置や圧縮窒素を使う姿勢制御系などが収められる。大気圏再突入時には炭素繊維製の熱シールドで機体を保護し、再突入後に熱シールドを分離する。その後、パイロットシュート、ドローグシュート、メインパラシュートを順次展開して減速し、太平洋へ着水して船舶で回収する設計だ。

Starfall自体は軌道離脱用のロケットエンジンを搭載していない。打ち上げ機側が帰還に必要な軌道操作を担う構成で、Falcon 9とStarshipの双方に対応することが想定されている。

Starfallの初実証ミッションは2026年6月23日、米フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地からFalcon 9で打ち上げられた。SpaceXはStarfallの軌道投入と太平洋への帰還・回収を実施したが、搭載物や軌道上での運用内容など、ミッションの詳細は限定的な公表にとどまっている。

米連邦航空局はStarfallについて、太平洋への再突入、着水、回収が環境へ及ぼす影響を評価し、2機の再突入を対象とするSpaceXの運用許可変更に関する手続きを進めた。環境評価は運用に必要な規制手続きの一部であり、個々の将来ミッションには安全性や飛行条件に応じた許認可が必要となる。

■微小重力を利用した研究・製造を支援

微小重力環境では、重力に伴う沈降や浮力対流の影響が小さくなるため、地上とは異なる条件で物質の移動や結晶成長を調べられる。医薬品候補となる化合物やタンパク質の結晶化、光ファイバー、半導体材料などの研究・製造への利用が検討されている。

一方、微小重力を利用すれば直ちに高品質な製品を量産できるわけではない。得られる結果は対象物質、温度管理、振動、実験装置、軌道上での運用期間などに左右される。商業化には、地上では得にくい特性や研究上の価値が、打ち上げ、運用、帰還にかかる費用を上回る用途を見いだす必要がある。

Starfallの特徴は、最大1,000kgという回収能力により、多数の実験や比較的大型の製造設備を一度に搭載できる可能性があることだ。Space Cargo UnlimitedとExolaunchは、複数顧客の需要を集約することで、この容量を共有型の商用サービスとして提供しようとしている。

ただし、2028年と2029年の計画はいずれもStarshipの商業運用開始を前提としており、具体的な打ち上げ日や顧客ペイロードの最終構成は公表されていない。両契約は、Starfallを使った大容量の地球帰還サービスに向けた計画が具体化し始めたことを示す一方、実施時期は今後のStarship開発や規制手続きに左右される。

元記事: SpaceX Starfall Cargo Capsule Wins Two European Commercial Missions

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