「Mighty Morphin Power Rangers」初期13号がコンパクト版に、トミーと別世界の物語を一冊で

2026年9月24日 12:16

BOOM! Studiosのコミック「Mighty Morphin Power Rangers」の初期13号を収めた「Mighty Morphin Power Rangers Compact Comics Edition Vol. 1」が、2026年9月22日に発売された。第0号から第12号までの3つのストーリーアークを、5.56×8.5インチ(約14.1×21.6センチ)、全288ページのペーパーバックにまとめている。

米国での価格は14.99ドル(約2400円、1ドル=158円換算)。脚本はカイル・ヒギンズ、主な作画はヘンドリー・プラセチャが担当し、ソニー・サイラスやジョナサン・ラムらも参加している。リタ・レパルサの支配から解放されたトミー・オリバーの葛藤から、別世界のトミーであるロード・ドラッコンにつながる物語までを収録する。

■欧米コミックを手に取りやすくする小型判

DC Comicsは2023年に「DC Compact Comics」を発表し、2024年6月から刊行を始めた。判型は5.5×8.5インチ(約14×21.6センチ)で、一般的な北米のコミック単行本より小さく、価格は1冊9.99ドルに設定された。

最初のラインアップには、アラン・ムーアとデイブ・ギボンズの「Watchmen」や、グラント・モリソンとフランク・クワイエットの「All-Star Superman」などが選ばれた。2024年に刊行された10作品はすべて増刷され、「Watchmen」は同年9月に第3刷が発行された。

DCはこのシリーズについて、一般書やマンガに近い大きさと価格によって、欧米コミックを初めて読む人にも手に取りやすくする狙いを示している。その後、同様の小型判はMarvelやBOOM! Studiosなどにも広がった。

BOOM! Studios版「Mighty Morphin Power Rangers」は、DCのコンパクト版より高い14.99ドルだが、全288ページをフルカラーで収録する。従来の大型単行本や豪華版に代わるものではなく、持ち運びやすさと一冊当たりの収録量を重視した入門版という位置付けだ。

■支配から解放されたトミーの葛藤

物語は、グリーンレンジャーのトミー・オリバーが、リタ・レパルサの支配から解放されてパワーレンジャーに加わった直後から始まる。支配されていた間に仲間を攻撃した記憶が残るトミーは、チームから信頼されることだけでなく、自分自身を信じ直すことにも苦しむ。

この葛藤は、敵の洗脳を打ち破ればすべてが解決するという単純な構図では描かれない。リタの影響がなお意識に入り込み、トミーは自分の判断や仲間との関係に不安を抱える。ヒギンズは、ヒーローチームへの加入を、過去の行為と向き合いながら信頼を築き直す過程として描いている。

やがてレンジャーたちは、ブラックドラゴンと呼ばれる巨大な機体に直面する。ブラックドラゴンは単に強力な攻撃を仕掛けるだけでなく、レンジャーとモーフィンググリッドのつながりを妨げ、その力を封じようとする。

ブラックドラゴンの背後には、別世界のトミー・オリバーであるロード・ドラッコンがいる。ドラッコンは、リタの側を離れて仲間になったトミーとは異なる選択をし、パワーレンジャーを倒して自らの世界を支配した存在だ。主人公と同じ人物から分岐した敵を置くことで、トミーが何を選び、どのように仲間との関係を築くかが物語の中心に浮かび上がる。

■モーフィンググリッドが結ぶ複数の世界

モーフィンググリッドは、レンジャーに力を与えるエネルギー源であると同時に、異なる世界や時間線を結ぶ物語上の基盤として描かれる。ブラックドラゴンがレンジャーとグリッドの接続を妨害する場面では、能力が身体だけに備わっているのではなく、外部の基盤との相互作用によって成立するという構造が示される。

この構図には、空間に広がる場と、その場との相互作用によって性質を得る存在という量子場理論のイメージを重ねられる。現代物理学では、基本粒子は対応する量子場の励起として記述され、ヒッグス場との相互作用は一部の素粒子が質量を持つ仕組みに関わっている。

もっとも、モーフィンググリッドが特定の量子場やヒッグス場に直接対応しているわけではない。共通するのは、個々のヒーローが単独で力を内蔵するのではなく、世界全体に関わる基盤との接続によってレンジャーとしての性質を得るという情報処理上の構造だ。

物語に登場する並行世界は、ある時点で異なる結果が生まれた別の歴史として描かれる。量子力学の多世界解釈も分岐する世界を扱うが、その「世界」が何を意味するかについては研究者の間でも見解が分かれている。この理論はドラッコンの世界を説明する設定ではなく、選択によって異なる結果が併存するという作品の発想を読み解く補助線になる。

ブラックドラゴンにも、離れた場所にいる操作者の意図を機体の動作へ変換する遠隔身体という共通構造がある。脳活動から使用者の運動意図を読み取り、カーソルやロボットアームを操作するブレイン・コンピューター・インターフェースの研究を重ねると、ドラッコンが別世界から力を及ぼす描写を、意図の入力、信号の解読、機械の出力という流れから捉えられる。

■ロード・ドラッコン物語の導入部を収録

第1巻に収録されるのは「Mighty Morphin Power Rangers」第0号から第12号までで、ロード・ドラッコンをめぐる物語全体ではなく、その導入部に当たる。トミーとビリーが別世界へ引き込まれ、ドラッコンの正体と世界の一端が明かされるところまでが中心となる。

その後のドラッコンとの対決や、複数の作品を横断する「Shattered Grid」の物語は、第12号より後へ続く。このため本書は長編全体の完結巻ではないが、トミーの加入、ブラックドラゴンとの戦い、並行世界の登場という初期シリーズの重要な展開をまとめて読める。

全288ページには3つのストーリーアークが収録される。小型化によって原版より絵の表示面積は狭くなるものの、フルカラーの物語を一冊にまとめ、一般的な大型コミック単行本より携帯しやすくした点が特徴となる。

電子書籍版も2026年9月22日に発売され、日本では英語版が電子書籍ストアで販売されている。紙版についても日本の販売サイトで洋書として取り扱われているが、価格や在庫、配送時期は販売店によって異なる。

■新規読者が初期シリーズへ入るための一冊

すでに従来版の単行本を所有している読者にとって、内容面で大きな追加がある商品ではない。一方、初めてBOOM! Studios版「パワーレンジャー」を読む人には、シリーズ初期の13号を一冊で追える入口になる。

この巻で描かれるのは、トミーが仲間として受け入れられるまでの物語だけではない。同じ人物が異なる選択をした世界を対置し、力を与えるモーフィンググリッドを複数の世界にまたがる仕組みへ広げることで、後のシリーズを支える構造が形づくられていく。

量子場や多世界解釈との比較は、作品設定の科学的正しさを判定するものではなく、力の入力と出力、外部基盤との接続、選択から分岐する世界という構造を考える手掛かりになる。コンパクト版第1巻は、トミーの心理的な葛藤と、後の大規模な並行世界物語の出発点を、持ち運びやすい一冊にまとめた作品である。

元記事: Compact Comics Arrive for Power Rangers: Higgins Multiverse Runs Stranger Than Monsters

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