QPS研究所、H3ロケットでSAR衛星3機を相乗り打ち上げへ
2026年9月16日 19:45
レーダー衛星を開発するQPS研究所は2026年9月14日、小型SAR衛星「QPS-SAR」3機の打ち上げについて、三菱重工業とH3ロケットによるライドシェア打ち上げ輸送サービス契約を締結したと発表した。今後予定されるH3のライドシェアミッションに3機を同時搭載し、主要顧客の一つとして地球低軌道へ投入する。打ち上げ時期などの詳細は決定後に公表する。
契約は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する宇宙戦略基金の補助を受けて締結された。1回の飛行で3機を一括投入することで、衛星コンステレーションの構築を加速する狙いがある。
■H3でQPS-SAR衛星3機を一括投入
QPS研究所はこれまで、米Rocket Labの小型ロケットElectronなどを利用し、主に衛星を1機ずつ軌道へ投入してきた。Electronによる専用打ち上げは、投入軌道や日程を個別のミッションに合わせやすい。一方、H3のライドシェアでは複数の衛星を同時に搭載できるため、一度に投入できる衛星数を増やせる。
H3は、JAXAと三菱重工業がH-IIAの後継として開発した日本の基幹ロケットである。複数の機体形態が用意されており、このうち第1段にLE-9エンジン3基を搭載し、固体ロケットブースターを使用しない30形態は、太陽同期軌道へ4トン以上を投入する能力を持つ。
30形態は2026年6月12日のH3ロケット6号機で初めて飛行した。ロケットは計画通り飛行し、第2段機体を所定の軌道へ投入したほか、搭載した小型副衛星への分離信号送出などが確認された。今回のQPS-SARに使用するH3の機体形態は発表されていない。
■天候や時間帯を問わず観測できるSAR衛星
QPS-SARは、合成開口レーダー(SAR)を搭載した小型地球観測衛星である。SARは地表へマイクロ波を照射し、反射して戻ってきた信号の強さや位相を解析して画像を生成する。衛星の移動を利用して実際のアンテナよりも大きな開口を合成することで、高い空間分解能を得る仕組みだ。
太陽光を利用する光学センサーと異なり、夜間でも観測でき、雲に覆われた地域についても画像を取得できる。この特性は、災害状況の把握、インフラ監視、船舶の観測など、天候や時間帯に左右されにくい継続的な観測に適している。
QPS研究所は、収納性の高い軽量な大型展開式アンテナを開発し、約100kg級の衛星に搭載している。同社によると、QPS-SARは高精細モードで46cmの分解能を実現している。これは同社が公表している性能値である。
■2028年5月末までに24機体制を目指す
QPS研究所は、世界中のほぼ任意の地域を平均10分間隔で観測する「準リアルタイムデータ提供サービス」を目標としている。2028年5月末までに24機を整備し、その後は当初計画していた36機を上回る大規模なコンステレーションへ拡張する方針だ。
同社は2026年7月、Rocket LabとQPS-SAR衛星3機分の追加打ち上げ契約を締結した。この契約と既存契約を合わせ、今後11機をElectronで1機ずつ打ち上げる計画としている。
さらに同年9月10日には、フランスのMaiaSpaceと複数回の打ち上げ機会に関する基本合意を締結した。打ち上げは2029年から始まる予定で、軌道やミッション構成の異なる複数の機会を活用し、衛星群の拡張と強化につなげる。
H3、Electron、MaiaSpaceは、それぞれ契約内容や利用開始時期が異なる。複数の打ち上げ事業者との契約は、必要な打ち上げ機会を広く確保し、特定のロケットの日程変更などがコンステレーション全体の整備計画に与える影響を抑える手段となる。もっとも、MaiaSpaceによる打ち上げ開始は2029年の予定であり、2028年5月末までの24機体制に直接利用されるとは発表されていない。
■宇宙戦略基金が衛星の量産を支援
宇宙戦略基金は、民間企業や大学などによる宇宙分野の技術開発を、最大10年間にわたって支援する制度である。QPS研究所は「商業衛星コンステレーション構築加速化」の技術開発テーマに対し、「小型SAR衛星の量産加速化及び競争優位性確立に向けた機能強化」を提案し、採択された。
同社が開示した当初の交付金額は、2027年3月までで84億6500万円である。2027年4月以降についても支援上限額が設定されており、今回のH3による打ち上げ契約も同基金の補助対象となっている。
基金による支援は、衛星の開発と量産だけでなく、打ち上げ機会の確保にも活用されている。今回の契約では、国内企業が開発する商業地球観測衛星を、日本の基幹ロケットで複数機同時に打ち上げる計画が具体化した。
■H3の運用実績と今後の焦点
H3では、2025年12月22日に打ち上げられた8号機で第2段エンジンの2回目の燃焼が正常に立ち上がらず、準天頂衛星「みちびき5号機」を予定軌道へ投入できなかった。JAXAは原因究明と対策を進め、2026年7月までに調査結果と是正策を取りまとめた。
一方、30形態試験機として打ち上げられた6号機は2026年6月に所定の飛行を完了した。今後、H3が商業衛星のライドシェア需要を継続的に取り込めるかは、打ち上げ時期、搭載条件、運用実績などに左右される。
QPS研究所にとっては、衛星の量産と並行して打ち上げ枠を確保し、軌道上で運用する衛星数を着実に増やすことが次の焦点となる。H3による3機一括打ち上げは、そのための新たな選択肢となる。
元記事: Japan’s H3 Rocket Lands First Commercial SAR Constellation Customer in Government-Backed Deal