Apple新CEOジョン・ターナス氏が就任、折りたたみiPhoneとGemini戦略が最初の試金石に
2026年9月3日 11:16
2026年9月1日、ジョン・ターナス氏がAppleの最高経営責任者(CEO)に就任した。25年にわたって同社のハードウェア開発に携わってきたエンジニア出身の経営者で、ティム・クック氏は取締役会のエグゼクティブ・チェアマンに移った。
新体制が最初に迎える大舞台は、米国時間9月9日に開かれるAppleの新製品発表イベントだ。初の折りたたみiPhoneとされる未発表モデルやiPhone 18 Proシリーズの登場が予想される一方、GoogleのGeminiを基盤に採用したAI戦略、製品価格の上昇、政策当局との関係など、ターナス氏が引き継ぐ課題も多い。
■ハードウェア開発を歩んだApple第8代CEO
ターナス氏はペンシルベニア大学で機械工学を学び、VRヘッドセットを開発していたVirtual Research Systemsを経て、2001年にAppleの製品デザインチームへ加わった。2013年にハードウェアエンジニアリング担当バイスプレジデント、2021年に同部門のシニアバイスプレジデントとなり、iPhone、iPad、Mac、Apple Watch、AirPodsなどの開発を幅広く統括してきた。
Appleによると、ターナス氏はiPadやAirPodsを含む新たな製品ラインの導入に深く関わり、製品の信頼性や耐久性、材料設計、修理性の向上にも取り組んだ。Apple Siliconへの移行を含め、チップ、筐体、ディスプレイなどを一体で最適化する同社のハードウェア戦略を支えてきた人物でもある。
ターナス氏は、マイケル・スコット、マイク・マークラ、ジョン・スカリー、マイケル・スピンドラー、ギル・アメリオ、スティーブ・ジョブズ、ティム・クックの各氏に続くApple第8代CEOとなる。ハードウェアエンジニアとして長く製品開発の中核を担った人物が経営トップに就くことで、製品設計と独自半導体の統合を重視するAppleの方向性が一段と明確になる可能性がある。
■クック氏が築いた事業基盤と新体制
クック氏は2011年から2026年までCEOを務めた。在任中にはApple Watch、AirPods、Apple Vision Proなどの新しい製品カテゴリーが加わり、iCloud、Apple Pay、Apple TV、Apple Musicをはじめとするサービス事業も大きく成長した。
Appleの2025会計年度の売上高は4161億6100万ドルに達し、サービス部門の売上高は1091億5800万ドルとなった。サービスは端末販売の変動を補う継続的な収益基盤へと成長しており、ターナス氏は巨大なハードウェア事業とサービス事業の双方を率いることになる。
一方、パーソナライズされたSiriの一部機能は、2024年の発表時に示された予定から遅れた。関連する広告表示をめぐる米国の集団訴訟では、Appleが不正を認めないまま2億5000万ドルの和解に合意している。新CEOには、Apple Intelligenceの機能拡充と、発表した機能を予定どおり製品へ落とし込む実行力が問われる。
■クック氏は会長として政策対応を支援
クック氏のエグゼクティブ・チェアマン就任は、Appleからの完全な退任ではない。同社は、クック氏が世界各国の政策立案者との関係を含む一定の業務でAppleを支援すると説明している。
Appleは反トラスト法、アプリ配信、プライバシー、AI規制、関税、サプライチェーンなど、複数の政策課題に直面している。クック氏はCEO時代に各国政府や規制当局との対応を担ってきたが、ターナス氏は主に製品開発部門を歩んできたため、こうした領域に関する公的な発言や実績は限られている。
新体制では、日常の経営と製品戦略をターナス氏が率い、クック氏が取締役会と政策対応の面から支えることになる。両氏の役割分担がどのように機能するかは、ターナス体制のガバナンスを見極める重要な要素となる。
■9月9日のイベントが最初の大舞台
Appleは米国太平洋時間9月9日午前10時、日本時間10日午前2時から「Surprise and shine」と題したイベントを開催する。ターナス氏がCEOに就任してから初めての大規模な新製品発表となる。
イベントで発表される製品名や仕様は明らかにされていない。複数の報道では、iPhone 18 ProとiPhone 18 Pro Maxに加え、Apple初の折りたたみiPhoneが登場すると予想されている。折りたたみモデルには「iPhone Ultra」という名称が取り沙汰されているが、正式名称は発表されていない。
折りたたみモデルはブック型で、外側に約5.3~5.5インチ、開いた内側に約7.6~7.8インチのディスプレイを備えると報じられている。チタン製フレームや電源ボタン一体型のTouch IDを採用し、米国での開始価格は1999ドル前後になるとの予測もある。1999ドルは1ドル=159円で単純換算すると約31万8000円だが、日本での製品名、価格、発売日、販売方法はいずれも発表されていない。
標準モデルのiPhone 18、iPhone 18e、次世代iPhone Airは2027年春に回り、2026年秋は上位モデルを中心とした構成になるとも報じられている。これが事実なら、AppleはiPhoneの発表時期を秋と春に分けることになり、例年の販売サイクルにも変化が生じる。
■折りたたみ画面とペン入力をめぐる設計
折りたたみiPhone向けには、短いApple Pencilの試作品が社内でテストされたとも報じられている。試作品は本体側面に磁力で取り付け、保管と充電を行う設計だったという。一方、初代モデルと同時に製品化される可能性は低いとみられている。
この報道は、Appleが折りたたみ端末を単に大画面のスマートフォンとしてではなく、手書きや細かな入力にも使える小型の作業端末として検討してきたことをうかがわせる。展開時の画面でメモ、描画、文書への書き込みができれば、iPadとiPhoneの用途が部分的に重なるためだ。
同時に、折りたたみディスプレイでは、曲げられる薄いガラスや保護層と、ペン先から加わる局所的な力との両立が設計課題になる。報道では、画面に跡が残る懸念や、本体に取り付けたペンが開閉時の扱いやすさに影響する可能性が挙げられている。試作品の存在は、大画面と携帯性、入力精度、耐久性をどのように組み合わせるかという、折りたたみ端末特有の設計判断を示す材料となる。
■iPhone 18 Proには2nm世代のチップ搭載が予想
iPhone 18 Proシリーズには、2nmプロセスで製造されるA20 Proチップが搭載されるとの観測が出ている。Appleが正式に性能を公表したものではないが、事前情報では前世代に比べて処理性能や電力効率が向上すると予測されている。
報じられている性能向上率は、完成したiPhoneを比較した実測値ではなく、製造プロセスや未発表チップに関する予測を含む。実際の処理速度、消費電力、バッテリー駆動時間は、Appleの発表と製品発売後の検証を待つ必要がある。
Apple Watch Series 12やApple Watch Ultra 4などもイベントで発表される可能性がある。いずれの製品についても、日本での価格や発売日は正式発表後に明らかになる見通しだ。
■Geminiを採用したAppleのAI戦略
AppleとGoogleは2026年1月、GoogleのGeminiモデルとクラウド技術を次世代のApple Foundation Modelsの基盤として採用する複数年の提携を発表した。刷新されたSiriや将来のApple Intelligence機能にもGeminiが利用される。
契約の金額とモデルの詳細は両社から公表されていない。これに先立つ報道では、Appleが約1.2兆パラメータのカスタムモデルを利用し、Googleに年間約10億ドルを支払う計画だと伝えられていた。年間10億ドルは1ドル=159円で約1590億円となるが、正式に開示された契約額ではない。
この提携により、AppleはGoogleの大規模モデルを利用しながら、自社のハードウェア、OS、プライバシー技術とAI機能を統合する構成を取る。端末上で処理できる機能と、より大きな計算資源を必要とする機能を分担させることが基本的な考え方となる。
Private Cloud Computeは、Apple Siliconを使用する専用サーバーで複雑な処理を実行し、ユーザーのデータを保存せず、Appleからも処理内容へアクセスできないよう設計された仕組みだ。Geminiとの提携によって具体的な処理経路がどのように構成されるかは、Appleが今後示す技術情報を見極める必要がある。
■AI部門ではすでに組織再編
AppleのAI部門では、ターナス氏のCEO就任に先立って組織再編が進んだ。機械学習およびAI戦略担当シニアバイスプレジデントだったジョン・ジャナンドレア氏は職務を退き、顧問を経て2026年春に退職した。
アマル・スブラマニヤ氏はAI担当バイスプレジデントとして2025年にAppleへ加わり、Apple Foundation Models、機械学習研究、AIの安全性と評価を担当している。同氏はMicrosoftでAI担当コーポレートバイスプレジデントを務める前にGoogleへ16年間在籍し、Gemini Assistantのエンジニアリング責任者を務めた。Appleではソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのクレイグ・フェデリギ氏に直属する。
ハードウェア部門では、ジョニー・スルージ氏が2026年4月に最高ハードウェア責任者へ就任した。ターナス氏が率いていたハードウェアエンジニアリングと、スルージ氏が担当してきた半導体などのハードウェア技術部門を統括し、新CEOに直属する。
こうした体制により、ターナス氏はハードウェア、ソフトウェア、基盤モデル、クラウド処理をまたぐAI戦略を経営レベルでまとめる立場となった。Geminiとの提携をどこまで拡大するのか、自社モデルや端末上の処理能力をどのように強化するのかが、中長期的な判断事項となる。
■製品価格の上昇も課題に
Appleは2026年6月、米国をはじめとする市場でMacやiPadなどの価格を引き上げた。製品や構成によって上昇幅は異なり、とりわけメモリやストレージ容量の大きなモデルでは値上げ額が大きくなった。
背景には、AIデータセンター向け需要の拡大などを受けたメモリとストレージ部品のコスト上昇がある。DRAM、NAND、高帯域幅メモリは用途や市場が同一ではないものの、メーカーの設備投資や生産配分を介して、パソコンやスマートフォンの部品価格にも影響を与え得る。
折りたたみiPhoneや2nm世代のチップは、従来とは異なる部品や製造工程を必要とする。9月の発表では、新製品の機能だけでなく、米国価格と日本価格、ストレージ構成、発売時期も重要な焦点となる。
■エンジニア出身CEOに求められる経営判断
ターナス氏の強みは、独自半導体、材料、ディスプレイ、熱設計、筐体、製造工程を組み合わせて製品を成立させてきた経験にある。Apple Siliconへの移行は、ハードウェアとソフトウェアを一体で設計するAppleの戦略が、性能と電力効率の改善につながった代表例だ。
CEOとしての責任は製品開発だけにとどまらない。GoogleとのAI提携を管理し、Apple Intelligenceの機能とコストのバランスを取りながら、規制当局、各国政府、部品供給企業、通信事業者、開発者との関係を調整する必要がある。
9月9日のイベントで発表される製品の多くは、ターナス氏がハードウェア部門を率していた時期に開発されたものだ。したがって、イベントは新CEOが短期間で生み出した成果を披露する場ではなく、自らが深く関わってきた製品を、経営トップとしてどのような戦略の中に位置づけるかを示す最初の機会となる。
折りたたみiPhoneとGeminiを採用したAIは、いずれもAppleが既存の強みを保ちながら新しい製品形態や外部技術を取り込む試みである。エンジニアとして培った統合設計の発想を、価格、提携、政策、サービスを含む会社全体の判断へ広げられるかが、ターナス体制を左右することになる。
元記事: John Ternus Is Apple’s New CEO: Gemini Deal He Didn’t Negotiate, Foldable iPhone in Eight Days