Apple、折りたたみiPhone用Pencilを試作か―画面への跡と収納が課題で発売見送りの模様
2026年9月1日 11:51
Appleが、開発中とされる折りたたみiPhone向けに小型のApple Pencilを試作し、社内でテストしていたとBloombergのMark Gurman記者が報じた。ただし、デリケートな内側画面に跡を残す可能性や、本体を開いたときの収納方法が課題となり、初代モデルと同時に発売される可能性は低いという。
Appleは米国時間9月9日、日本時間9月10日午前2時から新製品発表イベント「Surprise and shine.」を開催する。発表製品は明らかにしていないが、折りたたみiPhoneや「iPhone 18 Pro」シリーズの登場が有力視されている。「iPhone Ultra」は折りたたみモデルの正式名称として確認されたものではなく、現時点では報道などで使われている呼称である。
■折りたたみiPhone向けに短いPencilを試作
Gurman氏のニュースレター「Power On」によると、Appleは折りたたみiPhoneに合わせ、既存のiPad向け製品より短いPencilを試作した。端末の側面に磁力で取り付け、収納と充電を行う設計が検討されていたという。
折りたたみiPhoneは、開くと小型タブレットに近い画面サイズになると予想されている。手書きメモや文書への注釈、描画といった用途を考えれば、Apple Pencilとの組み合わせは自然な発想といえる。
一方、端末を閉じた状態では通常のスマートフォンより横幅が広く、縦方向が短い形になるとみられている。側面にPencilを取り付けると、本体を開く際に邪魔になったり、Pencilを使わないときの持ち方や収納が複雑になったりする。Gurman氏は、この収納上の問題を発売の可能性が低い理由の一つに挙げている。
もう一つの課題が、折りたたみ式の内側画面である。Gurman氏によれば、Apple Pencilのような先端の細い入力機器を使うと、デリケートな画面に目立つ跡が残る可能性がある。Appleが試作とテストを行ったことは報じられているものの、同社が計画の中止や、その技術的理由を公式に発表したわけではない。
■折りたたみ画面とペン入力の両立
一般的なスマートフォンの表面には強化ガラスが使われるが、折りたたみ端末の内側画面には、折り曲げられる超薄型ガラスや柔軟な保護層が用いられる。画面を繰り返し折り曲げられる柔軟性と、傷や局所的な圧力に耐える表面強度を同時に確保することが、材料設計上の課題となる。
学術誌「FlexMat」に2025年に掲載された研究でも、折りたたみディスプレイのカバー材料として使われる超薄型ガラスには脆さが、無色ポリイミドには硬度の低さがあると説明されている。研究チームは、ガラスに近い硬さとポリマーの柔軟性を組み合わせた複合材料を提案しており、折りたたみ画面の表面材料が現在も研究対象であることを示している。
スタイラス入力では、細いペン先から画面の狭い範囲に力が加わる。折りたたみ画面でペン入力を採用するには、画面表面の保護だけでなく、ペン先に過大な力が加わらない設計や、ペンの位置と筆圧を検出する仕組みを端末側に組み込む必要がある。
Apple Pencilは、対応するiPadとの組み合わせにより、高精度な位置検出、低遅延、傾き検知、モデルによっては筆圧検知などを提供する。単に指のタッチを再現する一般的なタッチペンとは異なり、こうした機能にはPencilとディスプレイ、OS、アプリの連携が欠かせない。
■Samsungは専用Sペンで画面を保護
折りたたみ端末と高精度なペン入力の両立には、Samsungが先行して取り組んできた。同社は2021年発売の「Galaxy Z Fold3 5G」で、Foldシリーズとして初めてSペンに対応した。
Samsungは折りたたみ画面向けに「S Pen Fold Edition」と「S Pen Pro」を用意した。これらは丸みのある引き込み式のペン先を採用し、一定以上の力がかかったときにペン先が引っ込むことで、画面への過度な圧力を抑える設計になっている。同社は、Fold向けに設計されていないSペンやスタイラスを使うと画面を損傷する可能性があるとして、対応製品だけを使用するよう案内している。
Sペン対応は「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Fold6」まで続いたが、2025年の「Galaxy Z Fold7」では非対応となった。Samsungの日本向けサポート情報でも、Galaxy Z Fold7はS Pen Pro、S Pen Fold Editionを含む各Sペンに対応していない。
Galaxy Z Fold7では、ペンの位置を検出するためのデジタイザー層を省くことで、端末の薄型化が図られたと報じられている。Samsungはその後も、より薄い構造でデジタイザーとSペンを組み合わせる技術を検討しており、将来のFoldシリーズでSペン対応が復活する余地は残している。
この経緯は、折りたたみ端末の設計において、ペン入力、画面保護、本体の薄さと重量が相互に影響することを示している。Appleが試作したとされるPencilも、ペン単体の完成度だけでなく、端末全体の形状やディスプレイ構造を含めて判断されるアクセサリーとなる。
■初代モデルでの発売は可能性が低い
今回の報道から確認できるのは、Appleが短いPencilを社内で試作・テストし、発売を検討したものの、初代の折りたたみiPhoneとともに提供する可能性は低いという点である。「Apple Pencil Ultra」といった製品名や、正式な発売計画が存在したことは確認されていない。
また、Appleが折りたたみ画面への圧力試験で具体的な損傷を確認し、その結果だけを理由に計画を正式に棚上げしたとまでは報じられていない。確認されている懸念は、Pencilが画面に目立つ跡を残す可能性と、側面に取り付けたPencilが端末を開く際の妨げになるという二点である。
Appleは現在、Apple Pencil Pro、Apple Pencil(USB-C)などをiPad向けに展開している。上位モデルでは、高精度な描画、低遅延、傾き検知、筆圧検知、パームリジェクションなどを利用できる。折りたたみiPhone向けに同等の体験を提供するには、柔軟な画面を保護しながら、端末側に必要な検出機構を収める設計が求められる。
折りたたみiPhone自体も、名称、仕様、価格、日本での発売時期を含め、Appleから正式には発表されていない。9月のイベントで端末が披露された場合も、Pencil対応の有無は発表内容や製品仕様を確認する必要がある。
■ジョブズ氏の発言後に登場したApple Pencil
Steve Jobs氏は2007年に初代iPhoneを発表した際、スタイラスを取り出さなければ操作できなかった当時の携帯端末と対比し、指によるマルチタッチ操作を強調した。この発言は、スタイラスという道具そのものを将来にわたって否定するというより、基本操作に専用ペンを必要としないインターフェースを示すものだった。
Appleは2015年、初代iPad ProとともにApple Pencilを発売した。Apple Pencilは基本操作に必須の入力機器ではなく、手書き、描画、注釈などで精密な入力を行うためのオプションとして位置付けられている。
開くとタブレットに近い画面を持つ折りたたみiPhoneは、Apple Pencilの用途をiPhoneへ広げる候補になり得る。一方で、今回報じられた試作は、画面の素材、本体の薄さ、Pencilの収納場所、入力精度を一つの製品として成立させる難しさも浮き彫りにした。
Appleでは9月1日付でJohn Ternus氏がCEOに就任し、Tim Cook氏は取締役会のエグゼクティブチェアマンに移る。新体制で最初の製品発表イベントとなる9月9日の「Surprise and shine.」では、折りたたみiPhoneが実際に発表されるか、その名称や仕様とともに注目される。
元記事: Apple Built iPhone Ultra Pencil, Tested It, Found Display Glass Too Soft