Apple Wallet対応は全米15州に、デジタル運転免許証の普及を左右する州ごとの事情
2026年8月30日 18:17
バージニア州車両管理局(DMV)は2026年8月26日、州発行の運転免許証と身分証明書をApple Walletに追加できるサービスを開始した。これにより、対応する米国の州は15州となった。一方、残る35州の多くでは開始時期が示されておらず、普及は州ごとの制度やシステム整備の進展に左右されている。
■バージニア州が15番目の対応州に
バージニア州の住民は、州発行の運転免許証または身分証明書をiPhoneやApple WatchのApple Walletに追加し、対応する場所で本人確認や年齢確認に利用できるようになった。
利用者は対応する読み取り機にiPhoneまたはApple Watchを近づけ、要求されている情報を画面で確認したうえで、Face IDまたはTouch IDを使って共有を許可する。端末を係員や店舗スタッフに手渡す必要はない。
バージニア州では、全DMV拠点、一部の州営酒類販売店、州警察、対応する企業や娯楽施設などで利用できる。空港では、TSAがデジタルIDを受け付ける全米250カ所以上の空港で提示できるが、対応状況は保安検査場によって異なるため、旅行前の確認が必要だ。
Apple Walletで州発行の運転免許証や身分証明書を利用できるのは、アリゾナ、アーカンソー、カリフォルニア、コロラド、ジョージア、ハワイ、イリノイ、アイオワ、メリーランド、モンタナ、ニューメキシコ、ノースダコタ、オハイオ、ウェストバージニア、バージニアの15州とプエルトリコである。
■州ごとに異なる制度とシステム
米国の運転免許証と州発行IDは各州が管理している。このため、Apple Walletへの対応も全国一括ではなく、それぞれの州が発行システムや本人確認手続き、技術仕様、運用ルールを整備して進める形になる。
連邦政府はモバイル運転免許証を空港などで受け入れるための枠組みを設けているが、各州にApple Walletへの対応を義務付けているわけではない。州が独自アプリだけを提供する場合もあれば、Apple Wallet、Google Wallet、Samsung Walletなど外部のウォレットにも対応する場合がある。
バージニア州では、州議会が2017年に電子的な認証情報に関する基準の整備をDMVに求めた。その後、DMVは2025年11月に州独自の「Virginia Mobile ID」を導入し、2026年8月にApple Walletへの対応を開始した。
もっとも、バージニア州の経緯から、すべての州で同程度の期間が必要だとは限らない。既存システム、法制度、予算、委託先、採用する技術方式などの条件は州ごとに異なる。
ノースカロライナ州は2026年12月に州独自の「NC Wallet」でモバイルIDを提供し、Apple Walletなどへの対応を2027年初めに予定している。コネチカット州、ケンタッキー州、ミシシッピ州、オクラホマ州、ユタ州も将来の対応候補に挙げられているが、Apple Walletでの正式な開始日は確認されていない。
このため、「残る35州すべてに予定がない」というより、未対応州の進捗には大きな差があり、多くの州で具体的な開始日が公表されていないというのが実情だ。
■必要な情報だけを共有する仕組み
モバイル運転免許証では、物理カードの表面をそのまま画面に表示して見せるのではなく、対応する読み取り機との間でデジタルデータをやり取りする。
Apple WalletでIDを提示すると、利用者の端末には相手側が要求している情報が表示される。利用者が内容を確認し、Face IDまたはTouch IDで承認した場合に限り、その情報が共有される。
たとえば年齢確認では、氏名、住所、生年月日のすべてを提示する代わりに、顔写真と「21歳以上である」という確認結果だけを共有できる場合がある。取引に必要な項目だけを渡せる「選択的開示」が、物理的な身分証明書との大きな違いとなる。
運転免許証や身分証明書のデータは端末上で暗号化される。Appleと発行当局は、利用者がいつ、どこでIDを提示したかを確認できないとしている。
TSAの保安検査場では、デジタルIDから提供された顔写真と、その場で撮影した旅行者の写真を照合して本人確認に利用する。デジタルIDへの参加や顔認証の利用は任意であり、TSAは旅行者に、利用可能な物理的身分証明書も携帯するよう求めている。
■物理的な免許証は引き続き携帯
Apple WalletのIDは、物理的な運転免許証や身分証明書を全面的に置き換えるものではない。対応する場所や読み取り機が限られているため、バージニア州DMVは、特に車を運転するときには物理的なIDを予備として携帯するよう案内している。
州警察との一部のやり取りでApple WalletのIDを利用できるとしても、すべての法執行機関や店舗、施設がモバイルIDを受け付けるとは限らない。年齢確認が必要な店舗でも、対応する読み取り環境がなければ物理カードを提示する必要がある。
利用先を広げるには、州やウォレット事業者だけでなく、空港、行政機関、店舗、アプリなど受け入れ側の対応も必要になる。州がApple Walletに対応した時点で、州内のあらゆる場所で利用可能になるわけではない。
■バージニア州での追加方法
バージニア州の運転免許証または身分証明書を追加するには、対応するiPhoneでWalletアプリを開き、画面上部の追加ボタンをタップする。「運転免許証または州発行ID」からバージニア州を選び、画面の指示に従って手続きを進める。
利用には、iPhone 8以降またはApple Watch Series 4以降と、最新バージョンのiOSまたはwatchOSが必要だ。Face IDまたはTouch IDを有効にし、2ファクタ認証を設定したApple Accountにサインインしていることなども条件となる。
登録時には、物理的な運転免許証または身分証明書の表裏を撮影する。続いて、セルフィーの撮影や、場合によっては顔や頭を動かす確認手続きが求められる。申請内容は発行元であるバージニア州DMVが審査し、承認後にWalletで利用できるようになる。
提示時には、読み取り機に端末を近づけ、要求された情報を画面で確認する。共有を承認するまで情報は送信されない。
■未対応州でも使えるパスポート由来のDigital ID
州発行IDがApple Walletに対応していない場合でも、有効な米国旅券を持つ利用者は、旅券情報からAppleの「Digital ID」を作成できる。
この機能は2025年11月に提供が始まり、米国内の250カ所以上の空港にある対応TSA保安検査場で、国内旅行時の本人確認に利用できる。州ごとに発行されるモバイル運転免許証とは別の仕組みである。
Digital IDの作成には、有効な米国旅券、iOS 26.1以降を搭載したiPhone 11以降、またはwatchOS 26.1以降を搭載したApple Watch Series 6以降などが必要となる。旅券の顔写真ページと内蔵チップをiPhoneで読み取り、セルフィーや顔の動きによる確認を行う。
旅券由来のDigital IDは米国内の対応する本人確認に使うためのもので、国際旅行や国境通過で物理的な旅券の代わりにはならない。また、州発行の運転免許証として運転資格を証明するものでもない。
■全国展開は複数の仕組みが並行
米国のデジタルIDは、Apple Walletだけで全国を統一する形では進んでいない。州独自アプリ、Apple Wallet、Google Wallet、Samsung Wallet、旅券情報を使うDigital IDなど、複数の仕組みが並行している。
連邦政府は、所定の要件を満たすモバイル運転免許証をTSAや連邦機関が受け入れるための制度を整備している。一方、どのウォレットを採用し、州民にどのような形で提供するかは、引き続き各州の判断に委ねられている。
バージニア州の参加によりApple Walletの対応地域は広がったが、残る州が一斉に加わる日程は示されていない。今後の普及は、各州の発行システムと制度整備に加え、空港、行政機関、企業など受け入れ側の対応がどこまで広がるかにも左右される。
■注目ポイントQ&A
●現在、どの州がApple Walletの運転免許証に対応していますか?
2026年8月26日現在、アリゾナ、アーカンソー、カリフォルニア、コロラド、ジョージア、ハワイ、イリノイ、アイオワ、メリーランド、モンタナ、ニューメキシコ、ノースダコタ、オハイオ、ウェストバージニア、バージニアの15州とプエルトリコが対応しています。
●Apple WalletのIDだけを持って運転できますか?
物理的な免許証も携帯してください。モバイルIDの法的な扱いや受け入れ環境は州や機関によって異なり、すべての警察機関や施設がApple WalletのIDに対応しているわけではありません。
●未対応州でも空港でAppleのデジタルIDを使えますか?
有効な米国旅券を持ち、対応端末などの条件を満たしていれば、旅券情報からDigital IDを作成し、米国内の対応するTSA保安検査場で利用できます。州発行の運転免許証とは別の機能で、国際旅行では物理的な旅券が必要です。
●IDを提示すると、カードに記載された情報がすべて送られますか?
いいえ。相手が要求する情報が端末に表示され、利用者が確認して承認した項目だけが共有されます。年齢確認では、対応する環境であれば、生年月日や住所ではなく、一定年齢以上であることだけを示せます。
●なぜ州によって対応時期が異なるのですか?
運転免許証と州発行IDは各州が管理しているためです。発行システム、本人確認手続き、技術仕様、制度、予算、採用するウォレットなどを、それぞれの州が整備する必要があります。
元記事: Apple Wallet Digital ID Reaches Virginia: Why 35 States Have No Timeline