【決算分析】米Semtech、AIデータセンター向け売上が91%増―1.6T対応製品で次四半期も大幅増収を予想

2026年8月29日 18:55

米半導体メーカーのSemtechは2027年度第2四半期に過去最高となる3億4,190万ドル(約547億円)の売上高を記録した。データセンター向け売上は前年同期比91%増の1億ドル(約160億円)に達し、同社は次四半期の売上高を4億1,000万ドル(約656億円)前後と予想している。AI計算基盤の高速化に伴い、光・銅インターコネクトの消費電力を抑える同社製品の需要が拡大している。

■過去最高の四半期売上、データセンター向けは1億ドル

Semtechは2026年8月25日、2027年度第2四半期(2026年7月26日までの3カ月間)の売上高が、前年同期比33%増、前四半期比17%増の3億4,190万ドル(約547億円)になったと発表した。同社の四半期売上高として過去最高となる。

データセンター向け売上は前年同期比91%増の1億ドル(約160億円)に達した。800G対応製品の需要が堅調に推移したほか、1.6T対応の光・銅インターコネクト製品が立ち上がったことが成長を支えた。

Semtechが手掛けるのは、データセンター用の大型スイッチASICやGPUそのものではない。光トランシーバーで電気信号と光信号を変換するレーザードライバーやトランスインピーダンスアンプ(TIA)、銅線上の高速信号を整えるリニアイコライザーなど、信号品質を維持するアナログ・ミックスドシグナル半導体を供給している。

AIデータセンターでは、多数のGPUやスイッチを高速に接続する必要がある。通信速度が800Gから1.6Tへ高まるにつれ、インターコネクト部分の消費電力や発熱もシステム設計上の重要な制約になる。Semtechは、光通信向けの「FiberEdge」「DirectEdge」と銅線接続向けの「CopperEdge」を、この課題に対応する製品群として展開している。

■LPOがトランシーバーの消費電力を抑える仕組み

高性能な光トランシーバーでは一般に、モジュール内のデジタル信号プロセッサ(DSP)が信号の再整形やタイミング調整、誤り訂正に関わる処理を担う。DSPを内蔵する方式は伝送路の劣化に対応しやすい一方、モジュールの消費電力と発熱が増える。

Linear Pluggable Optics(LPO)は、モジュール内のDSPを省き、ホスト側のスイッチASICに備わるSerDes回路と、トランシーバー内のアナログ部品を組み合わせて信号を伝送する方式だ。モジュール側には主にTIA、レーザードライバーなどを搭載する。

Semtechは、同社のDirectEdgeを利用するLPOについて、従来のDSPベースのモジュールに比べて消費電力を最大40%削減できるとしている。到達距離や伝送路の設計条件との調整は必要になるが、短距離接続が多く、高い帯域密度と電力効率を求めるAIデータセンターに適した選択肢の一つとなる。

同社のFiberEdgeは、800Gおよび1.6T光ネットワーク向けのTIAやレーザードライバーを含む製品群だ。DirectEdgeは、そのアナログ技術を基にLPO向け製品を提供する。Semtechはさらに、1チャネル当たり400Gの次世代技術を開発し、将来の3.2Tモジュールに備えている。

CopperEdgeは、アクティブ銅線ケーブル(ACC)や基板上の接続に使用するリニアイコライザー製品群である。同社公表値では、400G当たりの消費電力を0.75ワット未満、遅延を10ピコ秒未満に抑え、112G PAM4で最大5メートルの接続に対応する。

光と銅で伝送媒体は異なるものの、必要な距離や帯域に応じてアナログ回路で信号を補償し、インターコネクトの消費電力と遅延を抑えるという点で両製品群は共通している。

■売上高と調整後利益がともに拡大

2027年度第2四半期の売上高は3億4,190万ドルで、前年同期の2億5,760万ドル、前四半期の2億9,100万ドルを上回った。

GAAPベースの営業利益は5,580万ドル(約89億円)となり、前年同期の1,620万ドルの営業損失から黒字へ転換した。純利益は1億6,010万ドル(約256億円)で、前年同期は2,710万ドルの純損失だった。当四半期の純利益には、1億140万ドルの法人税等利益が大きく寄与している。希薄化後1株当たり利益は1.59ドルだった。

調整後営業利益は8,360万ドル、調整後営業利益率は24.4%となった。前年同期の調整後営業利益率は18.8%だった。調整後希薄化後1株当たり利益は、前年同期の0.41ドルから0.71ドルに増加した。

調整後EBITDAは9,110万ドル、同マージンは26.6%だった。営業キャッシュフローは6,890万ドル、設備投資額を差し引いたフリーキャッシュフローは6,140万ドルとなった。

CEOのHong Hou氏は、重点分野で記録的な売上高を達成し、売上高を上回るペースで利益が伸びたほか、事業ポートフォリオの最適化も進んだと説明した。また、受注の加速と過去最高の受注残を背景に、新たな収益源による成長の見通しが次年度まで及んでいるとの認識を示した。

■LoRa対応製品も前年同期比58%増

低消費電力・広域通信用の無線技術「LoRa」に対応する製品の売上高は、前年同期比58%増の5,800万ドル(約93億円)となった。

LoRaはSemtechが保有する物理層の無線変調技術で、LoRaWANはLoRaを利用する低消費電力広域ネットワークのオープン規格である。少量のデータを比較的長い距離へ低消費電力で送信できるため、スマートメーター、設備監視、農業用センサー、資産追跡などに利用される。

Semtechは2026年8月、LoRa Plus製品群にトランシーバー「LR2022」と「LR2012」を追加し、量産を開始した。両製品は第4世代のLoRa IPを採用し、既存のLoRaWAN機器との後方互換性を備える。LR2022は複数の周波数帯と衛星通信を利用する機器、LR2012は主にサブGHz帯を使うセンサーなどを対象としている。

第4世代LoRa IPでは、対応する変調方式やデータレートが拡張されており、エッジ側で処理した画像、音声、センサーデータなどを送信する用途にも対応範囲を広げている。機械学習の推論処理そのものは、用途に応じて別のプロセッサーやセンサー側の回路が担い、LoRa Plusは処理結果を低消費電力で送信する通信部分を受け持つ。

■次四半期は売上高4億1,000万ドルを予想

Semtechは2027年度第3四半期の売上高を4億1,000万ドル(約656億円)、変動幅をプラスマイナス500万ドルと予想している。予想中央値を達成した場合、第2四半期から約20%の増収となる。

調整後営業利益率は31.0%、調整後EBITDAマージンは32.8%、調整後希薄化後1株当たり利益は1.05ドルを見込む。いずれも一定の変動幅を伴う会社予想であり、実績を保証するものではない。

CFOのMark Lin氏は、幅広い分野での受注の強さが、持続的な売上高、利益率、利益の成長につながると見込んでいると述べた。

同社は、800G製品の需要に加え、1.6T対応のFiberEdge、DirectEdge、CopperEdge製品群を今後の成長要因に挙げている。AIデータセンター関連需要への集中度が高まる一方、半導体市場の循環性、顧客構成、供給能力、新製品の立ち上がりなどによって業績が変動する可能性もある。

■セルラーモジュール事業をCompalに売却へ

Semtechは2026年8月13日、セルラーモジュール事業を台湾のCompal Electronicsへ現金6,200万ドル(約99億円)で売却する契約を締結した。取引は規制当局の承認などを条件に、Semtechの2027年度第4四半期に完了する見通しだ。

対象事業は、Semtechが2023年1月に買収を完了したSierra Wirelessの事業の一部である。Semtechは売却によって事業構成を簡素化し、半導体を中心とする利益率の高い分野に経営資源を集中させる方針だ。

第2四半期の全社調整後粗利益率は54.5%だった。会社予想では、第3四半期の調整後粗利益率は58.3%前後、売却予定のセルラーモジュール事業を除いた場合は63.9%前後となる。63.9%は売却完了後の実績値ではなく、対象事業を除外して算出した将来の非GAAP指標である。

2026年7月26日時点の現金および現金同等物は2億410万ドル(約327億円)、長期債務は3億4,940万ドルだった。これとは別に、1年以内に返済期限を迎える長期債務の流動部分が1億4,340万ドル計上されている。総資産は16億4,700万ドルとなった。

■1.6Tから3.2Tへ開発を継続

Semtechは2026年10月15日、米カリフォルニア州サンノゼでデータセンター事業に関する投資家向け説明会を開催する予定だ。CEOのHou氏、シグナルインテグリティ製品グループ責任者のImran Sherazi氏、CFOのLin氏らが登壇し、データセンター向け製品と今後の技術戦略を説明する。

焦点となるのは、1.6T対応の光・銅インターコネクト製品の立ち上がりと、3.2T世代へ向けた開発の進捗だ。AI計算基盤では通信帯域の拡大と同時に、接続部分の電力、発熱、遅延を抑える必要がある。Semtechはアナログ信号処理を軸に、その要件へ対応する製品群を広げようとしている。

元記事: Analog Bets Pay Off: Semtech Shatters Records as AI Data Center Demand Hits $100M

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