国交省、Archerの空飛ぶクルマ「Midnight」の型式証明申請を受理 日本で5件目
2026年8月26日 00:43
国土交通省は2026年8月21日、米Archer Aviationが開発するeVTOL(電動垂直離着陸機)「Midnight(M001型)」について、航空法に基づく型式証明の申請を受理した。空飛ぶクルマとして国内で申請が受理されたのは5件目となる。
申請受理は、安全性や環境適合性を確認する型式証明審査の開始を意味する。国土交通省は、機体の開発状況に合わせて米連邦航空局(FAA)と連携し、設計や製造過程などの審査を進める方針だ。現時点で型式証明の取得時期や、日本での商用運航開始日は確定していない。
■日本で5件目となる型式証明申請
国土交通省がこれまでに受理した空飛ぶクルマの型式証明申請は、SkyDriveの「SD-05」、米Joby Aviationの「Joby S4」、独Volocopterの「VC2-1」、英Vertical Aerospaceの「VX4」に続き、Midnightで5件となった。
型式証明は、航空機の設計が安全性と環境適合性に関する基準を満たしているかを国が審査・検査する制度である。申請の受理だけで旅客運航が認められるわけではなく、型式証明に加えて、個々の機体の耐空証明や運航事業者に必要な許可などを取得する必要がある。
Midnightの審査では、米国を設計国とする航空機として、日米航空安全協定に基づく協力が想定される。FAAと国土交通省航空局は2022年10月、アドバンスト・エア・モビリティ(AAM)の認証や運航などに関する協力宣言に署名している。両当局は情報や知見を交換し、認証・検証に関する協力を進める。
国土交通省は今回の発表で、FAAと連携して審査を進めるとしている。このため日本での認証時期は、Midnightの機体開発とFAA、国土交通省双方の審査状況に左右される。
■5人乗りの電動垂直離着陸機
Midnightは、パイロット1人と乗客4人が搭乗する5人乗りのeVTOLである。主翼前側に角度を変えられる6基の電気推進ユニット、後ろ側に6基の固定式ユニットを備え、合計12基で垂直離着陸と前進飛行を行う。
国土交通省が公表した機体概要によると、開発中の機体は最大離陸重量約2,950kg、最高速度約240km/h、航続距離約160kmとされる。航続距離などは試験中の数値で、気象条件や搭乗者数によって変わり、今後変更される可能性がある。
Archerは、短距離の連続運航を想定し、約32kmの飛行後に約10分間充電する運用を設計上の目標として掲げている。最大積載量は約454kgとしているが、いずれも同社が示す目標値であり、最終的な性能は認証過程で確認される。
低騒音も重要な開発目標の一つだ。複数の比較的小型な推進ユニットを使い、巡航時には前方のユニットを進行方向へ傾ける構造は、ヘリコプターとは異なる音響特性を生み出す。Archerは、上空約610mを巡航する際の地上騒音について約45dBAを設計目標としている。都市部での運航を検討するうえでは、今後の試験や認証で実際の騒音特性がどのように評価されるかが焦点となる。
■Soracleが大阪で運航拠点と整備基地を準備
日本では、日本航空と住友商事が2024年6月に設立した運航事業会社Soracleが、Midnightを事業に使用する有力候補として準備を進めている。
Soracleは2024年、Archerと日本での商用運航に向けた戦略的関係の構築について基本合意し、最大100機のMidnightを購入できる権利を取得した。Archerの発表では、購入した場合の総額は最大約5億ドルとされる。1ドル159円で換算すると約795億円に相当するが、確定発注ではなく、所定の条件やマイルストーンに基づく購入権である。
大阪では、Soracleが大阪府および大阪市と空飛ぶクルマのビジネス化に関する連携協定を締結している。2026年3月にはOsaka Metroと基本合意書を結び、同社が整備・管理する大阪港バーティポートを将来の運航拠点として活用するための検討と準備を開始した。
また、Soracleは小川航空との間で、大阪ヘリポートの格納庫と付帯施設に関する賃貸借契約を締結した。大阪港バーティポートを運航拠点、大阪ヘリポートを整備基地として活用する構想で、商用運航に必要な体制づくりを進めている。
Soracleは、機体開発や型式証明の取得状況を見極めながら、2028年度以降の社会実装を目指すとしている。運航開始には型式証明だけでなく、耐空証明や航空運送事業に必要な許可、離着陸場と運航体制の整備などが必要になる。
■東京都の実装プロジェクトにもMidnightを採用予定
東京都は2025年10月、「空飛ぶクルマ実装プロジェクト」I期の実施事業者として、日本航空を代表事業者とするコンソーシアムを採択した。株式会社Soracle、住友商事、NEC、日本空港ビルデング、大成建設などが参加し、使用予定機体にはMidnightが挙げられている。
プロジェクトI期は2025年から2027年までを対象とし、離着陸場や拠点の確保、管制・通信システムの調整、運航支援、評価・検証などを進める。臨海部と河川上のエリアで実証飛行を行う計画だが、具体的な飛行内容は型式証明や耐空証明の取得状況を踏まえて決定される。
東京都は2030年の市街地での商用運航を目標としている。これはMidnight単独の就航確定時期ではなく、複数の事業者や機体を含む都の実装プロジェクト全体の目標である。
■米国での認証作業も継続
Archerによると、同社はFAAの4段階からなる型式証明プロセスのうち、審査計画や適合性確認手法に関係するフェーズ3を完了し、試験や解析によって適合性を示すフェーズ4を進めている。同社はeVTOL企業として初めてフェーズ3を完了したとしている。
一方、日本と米国のどちらでもMidnightの型式証明はまだ交付されていない。日本での商用運航時期は、FAAと国土交通省による審査、機体の試験、運航事業者の許可、地上インフラの準備など複数の条件に左右される。
日本では、型式証明審査と並行して、大阪での運航・整備拠点の準備や、東京都による実装プロジェクトが進んでいる。今回の申請受理により、Midnightは日本での事業化に必要な認証プロセスの正式な入り口に立った。
■注目ポイントQ&A
●申請が受理されたことで、すぐにMidnightへ乗れるようになりますか?
いいえ。申請受理は型式証明審査の開始を意味します。旅客運航には型式証明のほか、耐空証明、航空運送事業に必要な許可、運航・整備体制の確立などが必要です。
●日本での商用運航開始時期は決まっていますか?
確定していません。Soracleは2028年度以降の社会実装を目指しており、東京都はプロジェクト全体として2030年の市街地での商用運航を目標にしています。いずれも認証や機体開発などの進捗が前提です。
●大阪ではどのような準備が進んでいますか?
Soracleは大阪港バーティポートを将来の運航拠点、大阪ヘリポートを整備基地として活用する構想を掲げ、施設運営者などとの合意や契約に基づいて準備を進めています。
●Midnightの騒音はどの程度ですか?
Archerは、上空約610mの巡航時に地上で約45dBAとなることを設計目標に掲げています。これは同社の目標値であり、実際の騒音特性は今後の試験や認証で評価されます。
元記事: Japan Formalizes Archer’s Air Taxi Path: Osaka Vertiport and Tokyo Pilot Program Already Secured