Amazon、米国でEchoやKindleを最大60%値上げ―メモリ高騰が低価格戦略を圧迫

2026年8月25日 23:46

Amazonは2026年8月、米国でEcho、Kindle、Fire TV、eeroの複数製品を値上げした。最大の上昇率はEcho Dotの60%で、同社はメモリとストレージ部品の大幅なコスト上昇を理由に挙げている。日本で同様の価格改定が実施されたことは、8月24日の記事公開時点では確認されていない。

今回の改定は、手頃な端末をサービスやコンテンツへの入り口としてきたAmazonのデバイス戦略にも影響を与えそうだ。ただし、同社が低価格戦略の終了や全面的な事業転換を公式に表明したわけではない。

■米国でEcho Dotが49.99ドルから79.99ドルに

米国での価格変更は8月21日から22日にかけて確認された。Amazonは事前に広く告知していなかったが、広報担当者は複数の米メディアに対し、家電業界がメモリとストレージ部品の大幅なコスト上昇に直面していると説明した。同社は可能な限り上昇分を吸収してきたものの、製品ラインの価格を調整したとしている。

エントリー向けスマートスピーカーのEcho Dotは49.99ドルから79.99ドルへ上昇した。日本円では約7,950円から約1万2,720円に相当する。Kindle Paperwhiteの16GBモデルは159.99ドルから199.99ドルへ引き上げられ、約2万5,440円から約3万1,800円に相当する。円換算はいずれも1ドル159円による概算で、米国価格を日本での販売価格に置き換えたものではない。

Ringのカメラやビデオドアベルなどは今回の値上げ対象に含まれず、Echo Studioも価格が据え置かれた。対象外となった理由や、今後の価格方針についてAmazonは明らかにしていない。

■製品別の主な価格改定

確認された米国での主な価格変更は次の通りだ。

Echo Dotは49.99ドルから79.99ドルへ60%、Echo Dot Maxは99.99ドルから119.99ドルへ20%、Echo Show 11は219.99ドルから249.99ドルへ約14%、Echo Show 21は399.99ドルから499.99ドルへ25%上昇した。

電子書籍リーダーでは、Kindleの16GBモデルが109.99ドルから149.99ドルへ約36%、Kindle Paperwhiteの16GBモデルが159.99ドルから199.99ドルへ25%上昇した。

Fire TVシリーズでは、Fire TV Stick HDが34.99ドルから39.99ドルへ約14%、Fire TV Stick 4K Selectが39.99ドルから49.99ドルへ25%、Fire TV Stick 4K Plusが49.99ドルから69.99ドルへ40%、Fire TV Stick 4K Maxが59.99ドルから84.99ドルへ約42%上昇した。Fire TV Cubeは139.99ドルから199.99ドルへ約43%値上がりし、金額では60ドルと、確認された製品の中で最大の上げ幅となった。

メッシュWi-Fiシステムでは、eero 7の3台セットが349.99ドルから399.99ドルへ、eero Pro 7の3台セットが699.99ドルから799.99ドルへ上昇した。いずれも上昇率は約14%となる。

■低価格端末を入り口にしてきたAmazon

Amazonは長年、デバイス単体の利益だけでなく、端末を通じた電子書籍、映像配信、広告、サブスクリプションなどの利用拡大を重視してきた。かつて同社幹部は、端末を販売する時点で利益を出す必要はないとの趣旨を説明している。

米紙Wall Street Journalは2024年、社内資料や関係者への取材を基に、Echoなどを含むデバイス事業が2017年から2021年に250億ドル以上の損失を計上したと報じた。この数字について、Amazonは部門別の公式決算として公表していない。

低価格のEchoやFire TVは、AlexaやPrime Videoを利用し始める際の負担を抑える役割を担ってきた。Kindleも、電子書籍やKindle Unlimitedなどのサービスと結び付いた専用端末である。今回の値上げは、こうした入り口となる製品の購入価格を引き上げる。

一方で、価格改定だけを根拠に、Amazonが端末をサービスへの入り口とする戦略を全面的に廃止したとは判断できない。同社は年内を通じて各製品のセールを実施する方針も示しており、通常価格とセール価格を組み合わせた販売が続くとみられる。

■AIインフラ需要がメモリ市場を圧迫

メモリ市場では、AI向けデータセンターの拡大に伴い、高帯域幅メモリ(HBM)や大容量のサーバー向けDRAMに需要が集中している。HBMは複数のDRAMダイを積層し、AIアクセラレータなどが必要とする大容量データを高速に転送するためのメモリである。

IDCは、メモリメーカーがAI向けの高採算製品を優先することで、PCやスマートフォンなどに使われる汎用DRAMやNANDフラッシュの供給が制約されていると分析している。単なる短期的な需給変動ではなく、限られた半導体生産能力がAIインフラ向けへ戦略的に再配分されている可能性も指摘している。

SK hynixは2025年10月、DRAM、NAND、HBMについて2026年分の生産枠が顧客によって確保されたと説明した。Micronも、AIデータセンター向け需要の増加を背景に、一般消費者向けメモリブランド「Crucial」の事業を終了している。

市場調査会社の予測では、メモリ価格は2026年を通じて高い水準が続く。IDCは供給上の課題が2026年いっぱい続き、2027年にも及ぶ可能性が高いとみている。Gartnerも、DRAMとSSDの価格上昇がPCやスマートフォンの販売価格と出荷台数に影響すると予測している。

■AmazonはAI投資を拡大

Amazonは、メモリ価格上昇の影響を受ける一方で、AIインフラへの投資を大幅に拡大している。アンディ・ジャシーCEOは2026年7月の決算説明で、同年の設備投資額が約2,200億ドルに達するとの見通しを示した。従来予想は2,000億ドルで、引き上げ要因の一つとしてメモリ価格の上昇を挙げた。

Amazon Web Servicesの2026年第2四半期売上高は422億ドルで、前年同期比37%増となった。Amazonの公式発表によると、18四半期ぶりの高い成長率である。AIサービスと自社設計チップに対する需要が、クラウド事業の成長と設備投資の双方を押し上げている。

Microsoft、Google、Meta、Amazonなどの大手クラウド事業者によるAI設備投資は、HBMやサーバー向けメモリの需要を拡大させる重要な要素となっている。ただし、Amazon単独の投資と個々のデバイスの値上げ幅を直接結び付けることはできない。今回の価格改定についてAmazonが明示した理由は、業界全体におけるメモリとストレージ部品のコスト上昇である。

■日本の販売価格への直接的な影響は未確認

今回報じられた価格改定は米国市場のものだ。日本のAmazonでは記事公開時点で、Echo Dot第5世代が7,480円、Echo Dot Maxが1万4,980円で販売されており、米国での新価格を為替換算した金額とは異なる。

米国向けに存在する製品が日本では販売されていない場合や、名称、構成、容量が異なる場合もある。このため、米国の製品一覧や値上げ率を、そのまま日本向けの価格改定として扱うことはできない。

日本で今後値上げが行われるかについて、Amazonから正式な案内は確認されていない。国内の購入者は、Amazon.co.jpの商品ページに表示される価格や、Amazonによる正式な発表を確認する必要がある。

■購入時は販売地域とセール価格を確認

米国では新しい通常価格が適用されているが、Amazonは年内に製品ライン全体でプロモーションを行うとしている。実際の購入価格は、通常価格だけでなく、セールの時期や対象製品によって変わる可能性がある。

一方、9月22日から24日に開催されるAmazon Accelerateは、Amazonで商品を販売する事業者を対象としたカンファレンスである。現時点で、この催しに合わせてEcho、Kindle、Fire TVの新製品が発表されるという公式情報は確認されていない。

購入を急がない場合はセールを待つ選択肢があるものの、改定前の価格へ戻ることや、近く後継機が発売されることを前提に判断するのは避けた方がよい。特に日本の購入者は、米国価格の動きと国内価格を分けて確認することが重要となる。

■注目ポイントQ&A

●なぜAmazonはEchoやKindle、Fire TVを値上げしたのですか?

Amazonは、家電業界でメモリとストレージ部品のコストが大幅に上昇しているためと説明しています。AI向けデータセンターの拡大により、HBMやサーバー向けメモリへの需要が増え、民生機器向け部品の供給と価格にも影響が及んでいます。

●60%値上げされた製品はどれですか?

米国のEcho Dotです。通常価格が49.99ドルから79.99ドルへ引き上げられました。ほかのEcho、Kindle、Fire TV、eero製品でも、製品ごとに異なる価格改定が確認されています。

●値上げされなかったAmazon製品はありますか?

今回確認された改定では、RingのカメラやビデオドアベルなどとEcho Studioは価格が据え置かれました。対象外となった理由や、今後も価格を維持するかどうかは発表されていません。

●日本でも同じ値上げが実施されたのですか?

記事公開時点で、米国と同じ価格改定が日本で実施されたことは確認されていません。米国価格を円換算した金額は参考値であり、日本での販売価格ではありません。

●Amazonの低価格ハードウェア戦略は終了したのですか?

Amazonは戦略の終了を公式には発表していません。ただ、購入しやすい価格の端末を各種サービスへの入り口とする従来の仕組みは、部品コストと通常価格の上昇によって運用しにくくなっています。

●今すぐ購入すべきですか?

必要な時期、販売地域、現在の価格、セールの有無を基に判断することになります。Amazonは年内のプロモーションを予定していますが、改定前価格への復帰や近く後継機が発売されることは確認されていません。

元記事: Amazon Hikes Device Prices Up to 60%, Ending Ecosystem Bet That Built Its Hardware Empire

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