新型車にDMS搭載義務化へ、2031年9月から 国交省が「ながら運転」と居眠り対策
2026年8月25日 22:52
国土交通省は、運転者の脇見や眠気を検知して警告するドライバーモニタリングシステム(DMS)を、自動車の新たな安全基準として義務付ける方針だ。新型車には2031年9月から、継続生産車には2033年9月から適用する予定で、国産車だけでなく輸入車も対象となる。
国連の自動車基準調和世界フォーラムで採択された国際基準を国内に取り入れるもので、国土交通省は2026年9月下旬に道路運送車両法に基づく保安基準を改正する予定だ。一部の車種については、適用時期を引き続き調整している。
■新型車は2031年、継続生産車は2033年から
義務化の対象は、乗用車、トラック、バスなどの自動車だ。二輪車、側車付き二輪車、三輪車、被けん引車などは対象外となる。日本で販売される輸入車にも同じ基準が適用される。
国土交通省の計画では、2031年9月以降に新たに型式指定を受ける新型車にDMSの搭載を求める。すでに型式指定を受けて生産が続いているモデルには、2033年9月から適用する予定だ。
制度の技術的な基礎となるのは、2026年3月に国連の自動車基準調和世界フォーラムで採択された二つの国際基準である。運転者の眠気や注意力低下を警告するUN-R182と、長時間の脇見を警告するUN-R183を国内基準に取り入れる。
■手元への視線を速度に応じて検知
脇見警報は時速20km以上で作動する。国土交通省が示した要件では、時速50km以上で運転者が手元付近を3.5秒間見続けた場合に警告する。時速20kmを超えて50km未満の場合は、6秒間の注視が警告の基準となる。
ここでいう手元付近とは、運転者から見て前方左右55度以内にあり、下方30度より下の領域を指す。スマートフォンに限らず、この領域を一定時間見続けている状態を検知する設計である。
眠気警報は、主として時速70kmから130kmの範囲で作動する。まぶたや眼球の動き、顔や頭部の状態、ハンドル操作といった情報から、眠気が一定の水準に達したとシステムが判断すると運転者へ警告する。
DMSにはカメラなどを用いる方式が想定されているが、基準が中心的に定めるのは、特定のカメラ方式やセンサーではなく、運転者の状態を検知して必要な警告を出す機能である。車種やメーカーによって、検知方法や警告の表現が異なる可能性がある。
■スマホ関連の死亡・重傷事故は2025年に148件
義務化の背景には、運転中の携帯電話やスマートフォンの使用に伴う事故が再び増えていることがある。
警察庁によると、携帯電話などの使用に起因する自動車の死亡・重傷事故は、2025年に148件発生した。2015年の集計開始以降で最も多く、2021年以降は増加傾向が続いている。
携帯電話などを使用していた事故では、事故全体に占める死亡事故の割合が、使用していなかった事故の約3.4倍だった。人的要因では前方不注意が約9割を占めており、通話そのものだけでなく、画面などを見るために前方から視線を外す行為が大きな危険につながっている。
時速60kmで走る車は2秒間に約33.3メートル進む。短時間の画面確認でも、その間に歩行者が道路を横断したり、前方の車が停止したりすれば、危険の発見やブレーキ操作が遅れる可能性がある。
一方、2025年の交通事故死者数は2,547人で、統計が残る1948年以降の最少となった。交通事故による死者数が長期的に減る中でも、携帯電話使用に伴う死亡・重傷事故は増加しており、車両側から注意を促す対策が導入されることになった。
■2019年の罰則強化後も事故は増加傾向
運転中の携帯電話使用については、2019年12月施行の改正道路交通法で罰則が強化された。携帯電話を手に持って通話したり、画面を注視したりする「保持」の違反は、6カ月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象となる。普通車の反則金は1万8,000円、基礎点数は3点である。
携帯電話の使用によって交通上の危険を生じさせた場合は、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金となり、基礎点数は6点で、反則金制度の対象にはならない。
罰則強化や取り締まりを受け、携帯電話使用に起因する事故は2020年に大きく減少した。しかし、2021年以降は再び増加傾向にある。DMSの義務化は、違反を事後的に取り締まる対策に加え、危険な視線や眠気を車内で検知し、その場で運転者に注意を促す仕組みを広げるものとなる。
DMSは運転操作を自動的に代行する装置ではなく、運転者へ警告して注意を前方へ戻すことを助ける安全装置である。警告を受けた運転者が適切に反応することを前提としている。
■欧州ではADDWがすでに義務化
欧州連合では、先進注意散漫警告システム(ADDW)が、2024年7月から新たに型式認証を受ける車両に義務付けられた。2026年7月7日からは、EU市場に投入、登録、または使用開始されるすべての新車へ対象が広がっている。
EUの基準も、運転者の視覚的な注意が運転に向けられているかを判断し、長時間の脇見を検知した場合に警告することを求めている。作動は原則として時速20kmを超えると開始され、時速50km以上では3.5秒、時速20km以上では6秒が警告時間の基準となる。
EU基準は技術中立を掲げており、車内カメラの使用を認めているものの、カメラだけを唯一の検知方法として義務付けてはいない。日本の制度も国際基準との調和を進めるため、自動車メーカーは複数市場で共通化できるDMSの開発を進めやすくなる。
■データの扱いは制度と車種ごとの確認が必要
運転者を継続的に検知する装置では、取得した情報の扱いも重要になる。
EUのADDW基準は、乗員を一意に特定するための生体個人データに依存せずに機能することを求めている。カメラの使用自体を禁じているわけではないが、ADDWによる本人確認には使用できない。また、システムの作動に必要なデータだけを継続的に記録・保持し、閉じたシステム内で処理するよう設計することを定めている。
日本については、国土交通省が公表している義務化資料には、映像や検知データの保存期間、外部送信、他用途への利用といった詳細な取り扱いまでは示されていない。購入時には、搭載されるシステムの機能だけでなく、メーカーが定める車種ごとのプライバシーポリシーやデータ利用条件を確認する必要がある。
■DMSが捉えるのは主に眠気と長時間の視覚的な脇見
今回の基準が対象とするのは、眠気と、手元付近を一定時間見続けるような長時間の視覚的注意散漫である。短時間の断続的な脇見や、視線を前方に向けたまま別のことを考えている認知的注意散漫まですべて判定する仕組みではない。
ハンズフリー通話などでは、手や視線が運転に向けられていても、会話による認知負荷が運転行動に影響することが研究されている。こうした注意散漫は、視線や頭部の向きを中心に監視する現在の警報基準では捉えにくい。
DMSの義務化は、運転者の視線や眠気を検知し、事故につながる前に注意を促す安全対策を新車全体へ広げるものだ。罰則や取り締まりに代わる制度ではなく、運転者による安全確認、適切な休憩、走行中にスマートフォンを操作しない行動を補完する技術として位置付けられる。
■注目ポイントQ&A
●ドライバーモニタリングシステムとは何ですか?
カメラなどのセンサーを使い、運転者の視線、顔や頭部の向き、まぶたの状態などを確認し、長時間の脇見や眠気を検知すると警告する安全装置です。メーカーや車種によって検知方式や警告方法は異なる可能性があります。
●日本ではいつから義務化されますか?
予定では、新型車には2031年9月から、継続生産車には2033年9月から適用されます。一部の車種については、適用時期が引き続き調整されています。
●どの車両が対象になりますか?
乗用車、トラック、バスなどが対象で、輸入車にも適用されます。二輪車、側車付き二輪車、三輪車、被けん引車などは対象外です。
●必ず車内カメラを搭載することになりますか?
カメラなどを使う方式が想定されていますが、基準は特定のセンサー方式だけを指定するのではなく、運転者の眠気や脇見を検知し、必要な警告を出す機能を求めています。
●撮影された映像は保存されますか?
日本の義務化資料では、保存期間や外部送信などの詳細なデータ取り扱いは示されていません。実際の扱いは、今後の国内基準と各メーカーの設計、プライバシーポリシーを確認する必要があります。
●DMSですべての「ながら運転」を検知できますか?
いいえ。今回の基準は、主に長時間の視覚的な脇見と眠気を検知するものです。短時間の断続的な脇見や、前方を見ながら会話などに意識を奪われる認知的注意散漫は、検知できない場合があります。
元記事: Japan Mandates Cabin-Facing Cameras on All Cars From 2031 as Smartphone Bans Fail