スズキ初の軽乗用EV「e SKY」、26kWh電池で航続310kmを目指す 2026年秋に正式発表
2026年8月25日 21:27
スズキは2026年8月24日、同社初の軽乗用電気自動車(EV)「e SKY」の先行情報を公開した。日本では2026年秋に正式発表する予定だ。公開されたプロトタイプの参考値では、容量26kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載し、一充電走行距離310km、交流電力量消費率97Wh/kmを掲げている。価格やグレード構成、市販車の最終仕様は明らかになっていない。
■26kWhの電池で航続310kmを目指す
e SKYの開発コンセプトは「Easy to Switch! いつもの軽から、無理なくEVへ。毎日を変えずに、走りを変える。」だ。ガソリン軽自動車から乗り換える利用者に特別な操作や大幅な生活様式の変更を求めず、通勤、買い物、送迎などの日常用途で使いやすいEVを目指した。
プロトタイプのバッテリー容量は26kWhで、一充電走行距離は310km、交流電力量消費率は97Wh/kmとされる。いずれも現段階の参考値であり、市販時には変更される可能性がある。
比較対象となるBYDの軽EV「BYD RACCO」は、上位2グレードに35.84kWhのバッテリーを搭載し、一充電走行距離は320km、WLTCモードの交流電力量消費率は124Wh/kmである。e SKYのプロトタイプは、RACCOの上位モデルより9.84kWh小さいバッテリーで、10km短い航続距離を目標としている。
バッテリー容量だけで単純に車両全体の優劣を決めることはできない。両車は全高や車両重量、装備、車体形式が異なるためだ。それでも、電池を大型化するよりも、車体の軽量化や駆動系の効率改善によって必要な航続距離を確保するe SKYの設計方針は明確である。
■軽EV専用プラットフォームで重量を抑制
e SKYには、軽乗用EV向けに新開発した「HEARTECT e」プラットフォームが採用される。床下にバッテリーを配置し、低重心化と車体剛性の確保を図りながら、軽量な車体に仕上げた。
フロントには、モーター、インバーター、減速機を一体化したeAxleを搭載する。複数の機能を一つのユニットにまとめることで、省スペース化と軽量化を進め、駆動時のエネルギー損失を抑える構成だ。
プロトタイプの車両重量は1,030kg。ボディーサイズは全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,625mm、ホイールベース2,460mmで、最小回転半径は4.4mとされている。全長と全幅は日本の軽自動車規格に収まり、住宅街や市街地での取り回しにも配慮した。
スズキは商品上の特徴として、「少ない電気でたくさん走る」「走りも快適」「ちゃんと“使える”」の3点を掲げる。小型・軽量な車体、高効率なeAxle、空力性能の改善を組み合わせ、電池容量と日常的な航続距離のバランスを取る考え方だ。
■LFP電池を採用、数値は市販前の参考値
駆動用電池にはリン酸鉄リチウムイオン電池、いわゆるLFP電池を採用する。LFPは、正極材料に鉄とリンを用いるリチウムイオン電池の一種で、熱安定性や耐久性、原材料コストの抑えやすさを特徴とする。一方、一般にニッケルなどを用いる三元系電池よりエネルギー密度が低くなりやすい。
e SKYでは、電池容量を増やすだけで航続距離を伸ばすのではなく、車両重量や消費電力を抑えることで、26kWhという容量から日常利用に余裕を持たせる設計を採った。車両価格は未発表だが、電池容量を抑える設計は、重量だけでなく製造コストを管理するうえでも重要になる。
なお、26kWhという電池の総電力量、一充電走行距離310km、交流電力量消費率97Wh/kmなどはプロトタイプの参考値である。正式な認証値やグレード別の仕様は、2026年秋の正式発表を待つ必要がある。
■普通充電と急速充電に対応
プロトタイプで示された充電時間の目安は、充電警告灯が点灯した状態から満充電まで、3kWの普通充電で約8時間、6kWでは約4.5時間となる。50kWの急速充電器を利用した場合は、同じ状態から約25分で充電率80%に達するとされる。
実際の充電時間は、充電開始時の残量、外気温、電池の温度、充電器の出力などによって変わる。自宅に普通充電設備があれば、夜間の駐車時間を利用して充電する運用が基本となりそうだ。
車内には10.1インチのディスプレイオーディオを採用する。ナビゲーションには、交通情報だけでなくバッテリー残量などを考慮して経路を提案する機能を盛り込み、初めてEVへ乗り換える利用者の充電に対する不安を減らす。
アクセル操作によって加速と減速を調整しやすくする運転機能や、AC100V・最大1,500Wの電源コンセントも用意される。家庭用電気機器などへ給電できるため、日常のレジャーから停電時の非常用電源まで幅広い使い方が考えられる。
■BYD RACCOなど軽EVの選択肢が拡大
日本の軽EV市場では、日産「サクラ」と三菱「eKクロス EV」が20kWhのバッテリーで一充電走行距離180kmを実現している。BYDは2026年7月28日、日本専用に開発した「BYD RACCO」を発売し、海外メーカーとして軽EV市場へ本格参入した。
BYD RACCOは3グレード展開で、メーカー希望小売価格は214万5,000円から249万7,000円。エントリーモデルの「RACCO 200」は22.40kWhのバッテリーで210km、上位の「RACCO 300 Plus」と「RACCO 300 Premium」は35.84kWhで320kmの一充電走行距離を持つ。
e SKYとRACCOは、同じ軽EVでも車体の方向性が異なる。RACCOは全高1,800mmのスーパーハイトワゴンで、両側電動スライドドアと広い室内空間を特徴とする。これに対してe SKYは全高1,625mmのトールワゴンで、ヒンジ式の後席ドアを採用し、軽量化と空力性能を重視している。
e SKYの価格がどの水準に設定されるかは、競争力を左右する大きな要素となる。航続距離だけでなく、車内空間、乗降性、装備、車両重量、充電性能を含め、利用目的に応じて選ぶ市場になりそうだ。
■欧州投入は報道段階、国内仕様を秋に正式発表
e SKYをベースとする小型EVについては、2027年に英国や欧州各国へ輸出する計画があると複数の自動車・経済メディアが報じている。欧州の公道では、市販車に近いとみられる左ハンドルの試験車両も確認されている。
英国で2万ポンドを下回る価格を目指すとの見方もあるが、スズキが8月24日に公開した国内向け先行情報では、欧州での発売時期や価格は発表していない。日本仕様と欧州仕様では、安全規制や認証、装備などが異なる可能性があり、現時点で国内向けプロトタイプの数値をそのまま欧州仕様に当てはめることはできない。
EUでは、全長4.2m以下の小型EVを対象とする「M1E」カテゴリーと、EU域内生産車に対するCO2規制上の優遇措置が提案されている。ただし、詳細な制度設計や法制化には今後の手続きが残っている。日本生産のe SKYがどの制度に該当するかについても、正式な欧州投入計画と規則の確定を待つ必要がある。
まず注目されるのは、2026年秋に予定される日本での正式発表だ。市販車の認証値、価格、グレード構成、標準装備が明らかになれば、スズキが26kWhの電池と軽量設計をどのような商品価値へ結び付けたのか、より具体的に評価できる。
■注目ポイントQ&A
●スズキ「e SKY」の航続距離は310kmで確定していますか?
現段階ではプロトタイプの参考値です。スズキは一充電走行距離310km、交流電力量消費率97Wh/kmを示していますが、市販車の正式な認証値は2026年秋の発表を確認する必要があります。
●BYD RACCOより38%少ない電池で走れるのですか?
e SKYの26kWhは、BYD RACCO上位モデルの35.84kWhより9.84kWh小さく、RACCO側の容量はe SKYより約38%大きくなります。一方、e SKYがRACCOより38%少ないという計算ではなく、その場合の差は約27%です。両車は車体形状や重量も異なるため、電池容量だけで性能全体を比較することはできません。
●日本での発売時期と価格は決まっていますか?
スズキは2026年秋に正式発表する予定です。8月24日の先行情報公開時点では、具体的な発売日、価格、グレード構成は発表されていません。
●充電にはどのくらい時間がかかりますか?
プロトタイプの参考値では、充電警告灯点灯後から満充電まで3kWの普通充電で約8時間、6kWで約4.5時間です。50kWの急速充電では約25分で80%に達するとされています。実際の時間は気温や電池残量、充電器の状態によって変わります。
●欧州でも発売されますか?
欧州投入計画は複数のメディアが報じていますが、スズキが公開した国内向け先行情報では、欧州での発売日や価格は正式発表されていません。今後の公式発表を確認する必要があります。
元記事: Suzuki e SKY Gets 193 Miles From 26 kWh as BYD Racco Needs 38% More Battery