中国Unitree、科創板上場初日に460%高 時価総額約509億ドル、実用化への期待を映す

2026年8月24日 19:38

中国・杭州のロボットメーカー、Unitree Robotics(宇樹科技)が2026年8月19日、上海証券取引所の科創板(STAR Market)に上場した。初日の終値は公開価格を460.3%上回る845元となり、時価総額は約3,418億元(約509億ドル、約8兆931億円)に達した。人型ロボットへの強い期待を映す一方、株価は上場2日目に18.7%下落しており、今後は研究・教育向け中心の販売を産業現場での継続的な利用へつなげられるかが問われる。

■上場初日の終値は公開価格の5.6倍

Unitree株は公開価格150.80元に対し、初値が1,100元と629.4%上昇した。その後は上げ幅を縮め、845元(約126ドル、約2万円、1ドル=159円換算)で初日の取引を終えた。発行後の総株式数を基にした終値時価総額は約3,418億元となった。

同社は今回、発行後株式の10%に当たる約4,045万株を新規発行し、約61億元(約9億700万ドル、約1,442億円)を調達した。上海証券取引所の資料によると、公開価格時点の時価総額は約610億元だったため、初日の取引だけで市場評価が5倍以上に膨らんだことになる。

個人投資家向けのオンライン申込は8,000倍を超える高倍率となった。公開株式が発行後株式の10%に限られ、戦略投資家向けの割当株にもロックアップ期間が設けられたことから、上場直後に売買できる株式の少なさが値動きを大きくしたとみられる。

もっとも、この上昇をそのまま企業価値の確定と捉えることはできない。中国の新規上場銘柄では、需給の偏りによって初日に大幅な値上がりが生じる例があり、Unitree株も上場2日目の8月20日には18.7%安の687元まで下落した。それでも時価総額は約2,779億元を維持しており、人型ロボット産業の将来に対する市場の期待は依然として大きい。

■黒字化と高い成長率が投資家の関心を集める

Unitreeは2016年、王興興氏が杭州で設立した。王氏が上海大学在学中に開発した4足歩行ロボットを出発点とし、現在は4足歩行ロボット、人型ロボット、関節部品、制御システム、具身AIモデルなどを手掛けている。

同社の2025年売上高は約17億元で、前年から335%増加した。親会社株主に帰属する純利益は約2億7,800万元、非経常項目などを調整した利益は約5億9,000万元だった。粗利益率は約60%に達し、多くの人型ロボット企業が研究開発段階にあるなか、売上規模と黒字を両立している点が上場時の評価材料となった。

成長を支えているのは、モーター、減速機、関節モジュール、センサー、制御器など主要部品の自社開発である。ハードウェアと制御ソフトウェアを一体で設計することで、製品価格を抑えながら、走行や跳躍、姿勢制御といった動作性能を継続的に改良してきた。

2025年には人型ロボットの売上高が約8億6,800万元となり、4足歩行ロボットを上回って同社最大の事業になった。人型ロボットの出荷台数は5,500台を超えたが、販売先の中心は研究機関、教育機関、開発者などである。工場などの産業用途はまだ売上高の1割未満で、量産実績と現場での生産性向上との間には開きが残る。

■時価総額は現在の利益より将来の市場を反映

公開価格時点の評価は、2025年利益を基準としたPERが約219倍、売上高に対する倍率が約36倍だった。初日終値では、親会社株主に帰属する純利益を基準とするPERが約1,230倍、調整後利益を基準としても約579倍となる。売上高に対する倍率は約201倍に達した。

この水準は、現在のロボット販売から得られる利益だけでは説明しにくい。投資家は、Unitreeが将来の人型ロボット市場で主要メーカーとなり、研究用機器の販売から工場、物流、サービス業などで継続的に使われる製品へ移行する可能性を株価に織り込んでいる。

一方、2026年1~3月期の売上高は前年同期比68.5%増の約4億2,300万元となったものの、非経常項目を除く利益は52.6%減少した。研究開発や販売促進への支出拡大が利益を圧迫しており、急成長と高い利益率が今後も同時に続くかは確認が必要となる。

上場によって得た資金や知名度は、研究者の採用、製品開発、部品調達、販売網の整備に活用できる。ただし、企業価値を持続的に支えるには、出荷台数だけでなく、導入先での稼働率、作業成功率、保守費用、再購入といった実用面の指標を積み上げる必要がある。

■課題は未知の環境に対応する「汎化能力」

王興興氏は8月20日、北京で開かれた世界ロボット大会で、人型ロボットのソフトウェアが大きく進歩する時期について、順調なら2~3年、進展が遅ければ5~10年を要する可能性があるとの見方を示した。

王氏が人型ロボットにおける「ChatGPTモーメント」の目安として挙げたのは、初めて訪れる家庭などの未知の環境で、音声や文章による指示だけを受け、約80%の環境で約80%の作業を完了できる状態である。現在のロボットは、特定の場所と作業に合わせて十分に学習させれば高い成功率を実現できるが、対象物や配置が変わると再調整が必要になることが多い。

とりわけ難しいのが、対象物に手を近づけた後の数cmから数mmの操作である。カメラと言語モデルから得た情報を基に、何をどこへ運ぶかを判断できても、実際につかむ段階では位置のずれ、接触力、物体の硬さや滑りやすさなどに応じた細かな補正が求められる。

この問題は、視覚情報と言語指示をロボットの行動へ変換するVision-Language-Action(VLA)モデルの研究とも結び付く。入力された映像と言葉を解読し、腕や指の動きとして出力する情報処理の流れに加え、接触後の触覚情報を使って動作を修正する仕組みが、汎用的な作業能力を高める鍵となる。

NVIDIAが2026年6月に発表した研究用の人型ロボット参照設計でも、Unitreeの「H2 Plus」に、5本指の触覚ハンド、ロボット向けコンピューター「Jetson Thor」、開発基盤「Isaac GR00T」を組み合わせている。人型の身体、視覚と言語の処理、触覚をともなう操作を一つの開発環境へ統合する構成は、業界の研究が高速走行だけでなく、物を確実に扱う能力へ向かっていることを示す。

■高速動作の実演と実用的な作業能力は別の評価軸

Unitreeは上場直前、新型試作機「Superman」を公開し、同社測定で最高速度12.66m/s、立った状態からの跳躍高2mを記録したと発表した。開発開始から3カ月余りの試作機で、販売時期や価格、連続稼働時間などは公表されていない。

こうした実演は、関節の出力、全身の姿勢制御、着地時の安定性など、運動制御技術を確認する機会になる。一方、工場や物流施設で求められるのは、速度だけでなく、物体を安全につかみ、長時間にわたって同じ作業を繰り返し、環境の変化にも対応する能力である。

走る、跳ぶ、姿勢を立て直すといった運動性能と、視覚や言語による指示を理解して物を扱う能力は、人型ロボットを構成する異なる要素だ。Unitreeの市場評価を左右するのは、注目を集める動作性能を、稼働時間や生産性として測定できる業務能力へ結び付けられるかどうかとなる。

■米国では新規モデルの認証に制約

米連邦通信委員会(FCC)は2026年7月28日、海外で製造された一定の先進ロボット機器をCovered Listの対象に追加した。対象には、センサーや通信機能を備えた人型ロボットや4足歩行ロボットなどの移動型機器が含まれる。

この措置により、対象となる新規モデルや未認証モデルは、原則として米国での輸入、販売、マーケティングに必要な新たな機器認証を取得できない。国防当局による条件付き承認の仕組みは設けられている。すでに取得済みの機器認証や、消費者が所有する製品の継続利用は今回の措置だけで直ちに禁止されない。

Unitreeは上場資料で、米国向け売上高が2025年売上高の13.3%を占めたと開示している。既存製品の一部は規制導入前に米国の認証を取得しているが、将来の新製品が同市場で販売できない可能性は、海外展開上のリスクとなる。

米国防総省は2026年6月、Unitreeを米国で活動する「中国軍事企業」のリストに掲載した。この指定は一般消費者による購入を直ちに禁止する制裁とは異なるが、米政府や防衛産業の調達、取引先によるリスク審査に影響する可能性がある。

セキュリティ面では、4足歩行ロボット「Go1」のファームウェアに、CloudSailを介した非公開の遠隔接続機能があるとしてCVE-2025-2894が登録されている。また、Go2、B2、G1、H1などでは、Bluetooth Low Energyを利用して管理者権限を取得できる脆弱性がCVE-2025-35027として報告された。導入企業には、機種とファームウェアの確認、ネットワーク分離、不要な外部通信の制限、更新情報の継続的な確認が求められる。

■日本では空港業務などの実証が始まる

日本航空、JALグランドサービス、GMO AI&ロボティクス商事は2026年5月から、空港のグランドハンドリング業務に人型ロボットを活用する実証を開始した。使用する機体にはUnitreeの「G1」とUBTECHの「Walker E」が含まれる。

実証は、手荷物や貨物を載せるコンテナの移送に必要なレバー操作、コンテナを押す作業、設備のペダル操作などを段階的に検証する計画である。将来的には手荷物の搭載、機内清掃、地上支援車両の操作なども想定されているが、現時点では開発と安全性評価を進める初期段階にある。

ZEALSも2026年3月、筑波大学附属病院でUnitree G1を使った実証を行い、自律歩行、障害物回避、音声による案内、物品運搬などを検証した。同社が8月に発表した屋内向けロボット「D1」は別の製品であり、この病院実証で使用したG1と同一機体ではない。

日本での事例は、人型ロボットを直ちに人間の代替とするものではなく、既存設備を人が使うのと近い方法で操作できるかを確かめる取り組みである。特定の作業を選び、動作の安定性、安全性、所要時間を測定することが、研究用ロボットを業務用システムへ移行させるための重要な段階となる。

■調達資金で研究開発と量産体制を強化

Unitreeは調達資金を、知能ロボット向けモデルの研究、ロボット本体の開発、新製品の開発、製造拠点の整備に充てる計画だ。新たな製造拠点では、年間7万5,000台の人型ロボットと11万5,000台の4足歩行ロボットを生産できる体制を目指している。

これは現在の出荷規模を大きく上回る計画である。生産能力の拡大が実際の販売や稼働につながるかは、産業向け需要、製品の信頼性、保守体制、ソフトウェアの汎化能力によって決まる。

上場初日に形成された約3,418億元という時価総額は、人型ロボット市場に対する一つの公開市場評価となった。しかし、その価格が長期的に定着するかは、デモ映像や出荷台数だけでは判断できない。各機体が現場で何時間稼働し、作業をどの程度正確に完了し、試験導入後の追加発注につながるかが、次の評価基準となる。

●Unitree株は日本の個人投資家でも購入できますか?

Unitreeは上海証券取引所の科創板に上場しており、取引には科創板と中国A株へ対応した証券口座や所定の投資資格が必要です。日本の一般的な証券口座から直接購入できるとは限らないため、各証券会社の取扱銘柄と接続市場を確認する必要があります。ETFを利用する場合も、Unitree株の組み入れ状況と比率を最新の運用報告書で確認してください。

●上場初日に460%上昇したのはなぜですか?

8,000倍を超える申込需要に対し、新規発行株が発行後株式の10%に限られていたことや、戦略投資家の保有株にロックアップが設定されたことが影響しています。人型ロボット市場への期待も買いを集めましたが、上場2日目には18.7%下落しており、初日の価格には強い需給要因が含まれています。

●Unitree製ロボットを業務で使う場合、何を確認すべきですか?

使用機種、ファームウェアのバージョン、外部サーバーとの通信、BluetoothやWi-Fiの設定、更新プログラムの提供状況を確認する必要があります。重要なネットワークから分離し、不要な通信機能を無効化するなど、一般的なIoT機器と同様のセキュリティ管理も重要です。

●約509億ドルの時価総額は現在の事業規模に見合っていますか?

初日終値は、2025年の親会社株主に帰属する純利益に対して約1,230倍、売上高に対して約201倍に相当します。現在の業績だけでなく、人型ロボットが将来、工場や物流、サービス業で大規模に利用されるとの期待を強く織り込んだ評価です。今後は稼働率、作業成功率、再購入、保守費用などの実績が重要になります。

元記事: Unitree IPO Closes 460% Up, Valued at $50 Billion: First Real Price for Humanoid Robotics

関連記事

最新記事