AI向けメモリ好調のサムスン電子、最大12.6兆円規模の株主還元へ―韓国企業で過去最大
2026年8月22日 14:58
サムスン電子は8月21日、2026年の株主還元総額が90兆~110兆ウォン(約10兆3000億~12兆6000億円)になるとの見通しを発表した。韓国企業として過去最大の規模で、同社が2020年に記録した20.3兆ウォン(約2兆3300億円)の約5倍に当たる。
第3四半期には定期配当を含む約30兆ウォン(約3兆4400億円)の現金配当を予定しており、1株当たりの金額などは10月の取締役会で決める。残る還元額は2026年通期の業績を確認したうえで、2027年1月の取締役会で決定する方針だ。
■韓国企業で過去最大となる株主還元
サムスン電子は2024~2026年の3年間を対象に、フリーキャッシュフローの50%を株主へ還元する方針を掲げている。今回の計画は、この方針に基づく2026年分の還元を具体化したものだ。
同社は2024年と2025年に、年間9.8兆ウォン(約1兆1200億円)、合計19.6兆ウォン(約2兆2500億円)の定期配当を実施した。2025年には1.3兆ウォン(約1500億円)の特別配当に加え、8.4兆ウォン(9600億円)規模の自社株買いと消却も行っている。
2026年の計画を含めると、2024~2026年の3年間における株主還元総額は120兆~140兆ウォン(約13兆7000億~約16兆円)に達する見通しだ。サムスン電子は、企業の成長を株主が実感できる利益へつなげ、成長と株主価値向上の好循環を目指すとしている。
今回の発表に先立つ8月19日には、SKハイニックスも40兆ウォン(4兆5900億円)規模の自社株買いと、取得株式の全数消却を決定した。同社によれば、韓国の上場企業による自社株消却として過去最大となる。
■約30兆ウォンの配当と15兆ウォンの自社株買い
サムスン電子は2026年第3四半期に、定期配当を含む約30兆ウォン(約3兆4400億円)の現金配当を実施する予定だ。具体的な1株当たり配当額などは、10月の取締役会で確定する。
取締役会はこのほか、従業員への報酬に使用する約15兆ウォン(約1兆7200億円)の自社株買いも承認した。同社は、この自社株買いも株主価値の向上に寄与するとの見方を示している。
残る還元には、追加の現金配当や自社株買い、取得した株式の消却が含まれる。最終的な内容と総額は、2026年通期の財務実績が確定した後、2027年1月の取締役会で決める。
このため、90兆~110兆ウォン(約10兆3000億~12兆6000億円)という金額は現時点での見込みであり、上限の110兆ウォンがすでに確定したわけではない。第3四半期以降の業績とフリーキャッシュフローが、最終的な還元規模を左右する。
■AI向け需要が半導体部門の記録的業績を支える
大規模な株主還元の背景には、サムスン電子が2026年第2四半期に記録した大幅な増収増益がある。同四半期の全社売上高は171.5兆ウォン、営業利益は89.5兆ウォンで、いずれも四半期として過去最高となった。
半導体事業を担うDS部門は、売上高127.5兆ウォン(19兆6700億円)、営業利益89.2兆ウォン(10兆2300億円)を計上した。売上高に対する営業利益の比率は約70%となる。ただし、DS部門にはメモリだけでなく、システムLSIやファウンドリーなどの事業も含まれる。
サムスン電子は、限られた生産能力のなかでサーバー向け製品を優先し、AI関連需要に対応したことに加え、メモリ価格が業界全体で上昇したことが記録的な業績に寄与したと説明している。HBM4の販売拡大も、メモリ事業の製品構成を高付加価値品へ移す要素となった。
2026年下半期については、AIインフラへの設備投資やエージェンティックAIの導入拡大を背景に、サーバーDRAM、企業向けSSD、HBMの需要が加速すると同社は見込んでいる。一方、モバイル機器やパソコン向け需要には一部鈍化を想定している。
■HBM4が広げるAIアクセラレータのメモリ帯域
HBMは複数のDRAMダイを垂直に積層し、シリコン貫通電極などを使って相互接続する高帯域幅メモリだ。AIアクセラレータなどの演算チップに近接して配置し、広いインターフェースを通じて大量のデータを並列に転送する。
HBM4の業界標準では、インターフェース幅が前世代の1,024ビットから2,048ビットへ拡張された。JEDEC規格は最大8Gbpsの転送速度と、1スタック当たり最大2TB/sの帯域幅を定めている。
サムスン電子が量産するHBM4は、同社発表で通常時11.7Gbps、最大13Gbpsの転送速度に対応し、1スタック当たり最大3.3TB/sの帯域幅を実現するという。これらは同社が公表した製品仕様である。
HBMは、同容量の一般的なDRAMに比べて多くのウェハー面積を必要とし、積層や接合を伴う高度な製造工程も求められる。その一方、AIアクセラレータが必要とする大容量データの高速転送に適しており、メモリメーカーにとって高付加価値製品としての位置付けが強まっている。
HBMを演算チップの近くに配置する構造では、完成後にパソコン用メモリーモジュールのように利用者が交換することは想定されていない。ただし、個々のHBMの価格や採算は、契約条件、生産歩留まり、製品世代、需給環境など複数の要因によって決まる。
■供給制約が続くなかで最終額を判断
サムスン電子は、生産拡大に取り組んでもメモリの供給制約が当面続くとの見通しを示している。2026年下半期も高付加価値製品を中心に需要へ対応し、用途別の需要や顧客の意見に応じて製品構成を最適化する方針だ。
今回の株主還元は、旺盛なAI向け需要とメモリ価格の上昇によってキャッシュ創出力が大きく改善した時期に発表された。一方、2027年1月に決まる最終額は、2026年下半期の需要、価格、生産状況を含む通期業績に基づいて判断される。
上限の110兆ウォンに達するかどうかだけで、HBM市場の構造変化や需要の持続性を断定することはできない。それでも、配当と自社株買いを合わせた今回の計画は、AI向けメモリを含む半導体事業の記録的業績を株主へ還元する、サムスン電子として過去最大の取り組みとなる。
■注目ポイントQ&A
●今回の株主還元はすべて確定していますか?
総額90兆~110兆ウォンは現時点での見込みです。第3四半期に約30兆ウォンの現金配当を予定していますが、残る還元額と手段は2026年通期業績の確定後、2027年1月の取締役会で決まります。
●第3四半期の配当額はいつ決まりますか?
1株当たりの具体的な配当額などは、2026年10月の取締役会で確定する予定です。実際の支払時期は、その後の手続きに従って決まります。
●HBM4にはどのような特徴がありますか?
複数のDRAMダイを垂直に積層し、2,048ビットの広いインターフェースを利用して大量のデータを並列転送するメモリです。JEDEC規格では1スタック当たり最大2TB/s、サムスン電子の公表仕様では最大3.3TB/sの帯域幅に対応します。
●半導体部門の営業利益率は本当に70%ですか?
DS部門の2026年第2四半期の売上高127.5兆ウォンと営業利益89.2兆ウォンから計算すると、約70%です。ただし、DS部門にはメモリのほか、システムLSIやファウンドリーなども含まれます。
元記事: Samsung Returns Record $80 Billion as AI Chip Windfall Rewrites Korean Corporate History