サムスン、AIデータセンター冷却機器の強化に約270億円投資―光州でCDU・HVAC機器を生産へ
2026年8月22日 00:35
サムスン電子は韓国・光州事業所に約2,400億ウォン(約275億円)を投じ、傘下の空調大手FläktGroup(フレクトグループ)のHVAC製品を生産する新ラインを建設する。
新ラインでは、AIデータセンターの液冷システムに使われる冷却水分配装置(Coolant Distribution Unit、CDU)に加え、ファンウォールユニット(FWU)、コンピュータールーム用空気処理装置(CRAH)、大型建築物向け空気調和機(AHU)を製造する。CDUを含む製品の生産は2028年初頭に始まる予定だ。
■光州事業所に37年ぶりの大規模生産設備投資
新ラインは光州事業所の第3キャンパスに建設され、延べ床面積は2万1,800平方メートルとなる。サムスン電子、FläktGroup Korea、地元自治体は2026年8月19日、光州庁舎で投資協定を締結した。
光州事業所は1989年に設立され、現在は「Bespoke AI Family Hub」冷蔵庫や「Bespoke AI Combo」洗濯乾燥機、「Bespoke AI WindFree」エアコンなどを生産している。今回の計画は、同事業所の設立以来37年ぶりとなる大規模な生産設備投資だ。
サムスンは既存の生産インフラと製造技術を活用し、光州事業所をAI家電と業務用HVACの双方を担う世界的な生産拠点に育成する方針である。新ラインはFläktGroupにとって世界15番目の生産施設となる。
FläktGroupは米国、欧州、アジアなどで14の生産施設と8つの研究拠点を運営し、データセンターや製造施設、ホテル、空港、博物館などに中央空調設備を供給している。サムスン電子は2025年5月に15億ユーロで全株式を取得する契約を結び、同年11月に買収を完了した。
■CDUは建物側とサーバー側の冷却系統をつなぐ
CDUは、建物の冷房設備であるチラーと、サーバー内部のGPUやCPUに取り付けられたコールドプレートとの間に置かれる装置だ。冷却水の温度や圧力、流量を制御し、不純物を除去しながらサーバー側の冷却ループへ供給する。
コールドプレートを流れる冷却水はプロセッサーから熱を受け取り、CDUの熱交換器へ戻る。そこで建物側の冷却系統へ熱を渡し、再び冷却されて循環する。建物側とIT機器側の流体を分離することで、サーバー側に適した水質や圧力を維持できることもCDUの重要な役割である。
AIサーバーでは、GPUなどの高性能部品を高密度に搭載する構成が増え、空気による冷却を補完する直接液冷の重要性が高まっている。例えばNVIDIAのラックスケールシステム「GB200 NVL72」は、72基のBlackwell GPUと36基のGrace CPUを1ラックに収容し、液冷を採用する。
製品構成によって必要な冷却能力は異なるが、GB200 NVL72を使用した一部のラック製品では最大消費電力が132kWとされ、250kW級のCDUが組み合わされている。こうした高密度システムの普及が、CDUをはじめとするデータセンター向け冷却設備の需要を押し上げている。
FläktGroupのCDUには、電力効率を高める設計のほか、冗長化機能や異常信号の検知機能が採用されている。新ラインでは液冷製品だけでなく、データセンター内の空気を循環、処理するFWUやCRAHも生産し、液冷と空冷を組み合わせた設備需要に対応する。
■インドに続きアジアの生産体制を拡充
FläktGroupは2026年8月、インド西部プネーでも新たな生産施設を稼働させた。プネー工場は、サムスンによるFläktGroup買収完了後に稼働した最初の新工場で、AHU、FWU、CRAHなどを年間最大約6,500台生産する計画である。
プネー工場がインド国内とアジア太平洋地域への供給を担う一方、光州の新ラインは韓国市場への本格展開を支える戦略拠点と位置付けられている。サムスンは韓国国内外のAIデータセンターや先端製造施設を対象に、FläktGroupのHVAC製品の供給を拡大する考えだ。
光州での生産には、韓国市場への供給体制を強化し、顧客への対応速度を高める狙いがある。もっとも、生産能力やCDUの年間生産台数、具体的な供給先については公表されていない。
■空調設備とビル管理基盤の連携を狙う
サムスンはFläktGroupの中央空調技術と、自社の企業向け接続・統合制御基盤「SmartThings Pro」、ビル統合ソリューション「b.IoT」を組み合わせる計画だ。空調設備の運転状況を一元的に把握し、建物全体のエネルギー管理や設備制御につなげる構想である。
サムスン電子のデジタルアプライアンス事業を率いる金哲基副社長は、HVAC事業を将来の成長分野として拡大し、2030年までに世界市場の先導企業を目指すとしている。今回の光州生産ラインを、そのための事業基盤と位置付けた。
サムスンは半導体メモリやサーバー関連製品も手掛けているが、今回発表された計画の中心はFläktGroupのHVAC製品を韓国で生産し、冷却設備と建物管理基盤を組み合わせた提案力を高めることにある。既存のデータセンター向け冷却事業者が強い顧客基盤を持つなか、製造体制の拡張が受注へどのようにつながるかが今後の焦点となる。
■注目ポイントQ&A
●光州の新ラインはCDU専用工場ですか?
いいえ。AIデータセンターの液冷に使うCDUに加え、空冷用のFWUやCRAH、大型建築物向けのAHUも生産する計画です。
●CDUはどのような役割を担いますか?
建物側のチラーとサーバー側のコールドプレートをつなぎ、冷却水の温度、圧力、流量や水質を管理します。熱交換器を介して両側の冷却系統を分離しながら、サーバーから回収した熱を建物側へ移します。
●新ラインはいつ稼働しますか?
CDUを含むHVAC製品の生産を2028年初頭に開始する予定です。詳しい月や年間生産能力は公表されていません。
●投資額はいくらですか?
約2,400億ウォンです。サムスンの公式発表では1億5,800万ドルで、1ドル=159円で換算すると約251億円です。
●サムスンはFläktGroupをいつ買収しましたか?
2025年5月に15億ユーロで全株式を取得する契約を締結し、規制当局の承認などを経て同年11月に買収を完了しました。
元記事: Samsung Commits $170M to Gwangju CDU Factory as AI Cooling Demand Exceeds Supply