【決算分析】米ウォルマート、第2四半期は広告38%増 関税還付を値下げに回し通期見通しを上方修正
2026年8月20日 20:37
米小売り大手ウォルマートは2026年8月20日、2027年度第2四半期決算を発表した。売上高は前年同期比5.9%増の1879億ドル(約29兆8761億円、1ドル=159円換算)、調整後1株利益は0.81ドルとなり、事前の市場予想である売上高約1868億ドル、調整後1株利益0.74ドルを上回った。
世界のEC売上高は23%、広告事業は38%それぞれ増加した。会員費収入も17%伸び、従来の店舗小売りに加えて、EC、広告、会員、マーケットプレイスなどの事業が成長を支える構図が鮮明になった。ウォルマートは通期の売上高と調整後営業利益、調整後1株利益の見通しを引き上げた。
■売上高は5.9%増、調整後EPSは0.81ドル
第2四半期の売上高は1879億ドルで、為替変動の影響を除くと5.1%増加した。営業利益は前年同期比28.8%増となり、為替一定の調整後ベースでは17.4%増えた。調整後1株利益は0.81ドルで、前年同期の0.68ドルを上回った。
営業利益には関税還付による押し上げが含まれる。ウォルマートによると、為替一定の調整後営業利益の伸びには関税還付による750ベーシスポイントの純効果があり、その影響を除いた基礎的な伸びは、会社が事前に示していた7〜10%増の上限に達した。
同社は約29億ドル(約4611億円)のIEEPA関連の関税還付を受け、価格引き下げを優先したとしている。関税還付は当四半期の利益を押し上げた一方、今後も価格施策へ振り向ける方針であり、今回の利益成長をそのまま恒常的な収益力とみなすのではなく、基礎的な事業成長と分けて見る必要がある。
■広告は38%増、ECは23%増
世界の広告事業は前年同期比38%増加した。米国の広告事業も38%伸び、買収したVIZIOの影響を除くWalmart Connectの成長率は43%だった。
Walmart Connectは、ウォルマートのウェブサイトやアプリ、店舗などで広告枠を提供するリテールメディア事業である。購買接点とデジタル広告を組み合わせられる点が特徴で、店舗での商品販売とは異なる収益源として存在感を高めている。
世界のEC売上高は23%増加した。米国ではEC売上高が24%伸び、店舗からの配送は40%増、マーケットプレイスの流通総額は50%以上増えた。米国事業の売上高に占めるECの比率は約23%となった。
マーケットプレイスで販売された商品のうち、約半分がウォルマートのフルフィルメントサービスを利用した。出店者を増やすだけでなく、物流や配送サービスも提供することで、マーケットプレイスの拡大を周辺収益につなげる構造が整いつつある。
世界の会員費収入は17%増加した。広告、会員、マーケットプレイス、フルフィルメントサービスは、ウォルマートが既存の店舗網やデジタル基盤を活用して収益源を広げるうえで重要な役割を担っている。
■米国既存店売上高は2.6%増
米国事業の既存店売上高は、燃料を除いて2.6%増加した。医薬品の価格上限に関する制度変更がヘルス・アンド・ウェルネス分野を押し下げ、既存店売上高に80ベーシスポイントのマイナス影響を与えた。
会社資料では、薬局分野の影響を125ベーシスポイントとして調整すると、既存店売上高の基礎的な伸びは従来の傾向を維持したとしている。市場シェアは所得層を問わず拡大した。
第1四半期の米国既存店売上高は4.1%増だったため、表面的な成長率は鈍化した。それでも、ECやマーケットプレイス、店舗配送の伸びは続いており、実店舗をデジタル注文の受け渡しや配送拠点として活用する戦略が成長を下支えした。
米国の店舗では第2四半期に1万1000件を超える「ロールバック」と呼ばれる値下げを実施した。物価や燃料費の上昇で家計の負担が続くなか、同社は関税還付の一部を価格投資に回し、低価格を重視する姿勢を強めている。
■海外事業とSam's Clubもデジタル販売が伸長
ウォルマート・インターナショナルの売上高は、為替変動の影響を除くと7.9%増加した。EC売上高は19%増え、中国、インド、カナダを中心にEC事業の採算も改善した。海外の広告事業は、Flipkart Adsにけん引されて20%増加した。
米会員制倉庫店のSam's Clubでは、燃料を除く既存店売上高が4.4%増加した。EC売上高は26%伸び、店舗からの配送やモバイル決済機能「Scan & Go」の利用が拡大した。会員口座数と上位会員プランの構成比も上昇した。
世界全体で見ると、EC、広告、会員サービスの成長率は店舗売上高を上回っている。今回の決算は、ウォルマートの成長が店舗数や商品販売量だけでなく、顧客との接点を活用したデジタルサービスにも広がっていることを示した。
■関税還付を価格引き下げへ
今回の決算では、約29億ドルの関税還付が利益を大きく押し上げた。調整後営業利益の伸びには還付の効果が含まれており、同社は残る還付分についても価格引き下げへ振り向ける方針を示した。
ジョン・デイビッド・レイニーCFOは、消費者は引き続き燃料費や食品価格による負担を感じているものの、支出自体は底堅さを保っているとの認識を示した。ウォルマートは牛肉を含む複数の商品分野で価格を引き下げ、値頃感を重視する顧客の取り込みを図る。
一方、同社は2027年度に燃料価格の上昇による追加コストが20億ドルを超えると見込んでいる。関税還付による一時的な利益押し上げと、燃料費などの継続的なコスト負担を分けて評価することが、今後の収益性を見るうえで重要になる。
■通期見通しを上方修正
ウォルマートは2027年度通期の為替一定ベースの売上高成長率予想を、従来の3.5〜4.5%から4〜5%へ引き上げた。調整後営業利益の成長率予想も従来の6〜8%から7〜8.5%へ引き上げた。
通期の調整後1株利益予想は、従来の2.75〜2.85ドルから2.80〜2.87ドルへ上方修正した。第3四半期については、為替一定ベースの売上高を3〜3.75%増、調整後営業利益を2〜4%増、調整後1株利益を0.62〜0.64ドルと見込んでいる。
第3四半期の利益成長率が第2四半期より低く設定されている背景には、関税還付を価格引き下げへ振り向ける方針がある。今回の上振れを短期的な利益確保だけに使わず、価格競争力と顧客基盤の強化へ再投資する戦略だ。
■キャッシュフローと投資余力
上半期の営業キャッシュフローは197億ドル(約3兆1323億円)、フリーキャッシュフローは55億ドル(約8745億円)となった。第1四半期には設備投資の増加を背景にフリーキャッシュフローがマイナス19億ドルだったが、上半期ではプラスへ転じている。
ウォルマートは物流拠点やフルフィルメントの自動化、店舗配送、デジタル基盤への投資を続けている。これらの投資は短期的には現金支出を増やす一方、注文処理や配送の効率化を通じて、成長するEC事業の採算改善を目指すものとなる。
過去12カ月の投下資本利益率は15.4%となり、第1四半期時点の14.9%から上昇した。在庫は前年同期比6.7%増、為替一定では6%増となった。会社は、戦略的な在庫施策とインフレが増加の要因だとしている。
■高い株価評価を支える事業構成の変化
ウォルマートの広告、会員、マーケットプレイス、フルフィルメントサービスは、店舗小売りとは異なる収益構造を持つ。今回の決算では、世界の広告が38%、会員費が17%、ECが23%伸び、こうした事業構成の変化が続いていることが確認された。
一方で、営業利益の伸びには関税還付という特殊要因が含まれる。今後は広告やECの高い成長率を維持できるか、関税還付を原資とする値下げが顧客数や市場シェアの拡大につながるか、自動化投資が物流コストの改善として表れるかが焦点となる。
米国の7月の小売・外食売上高は前月比0.6%減だったものの、前年同月比では5%増加した。消費全体が一方向に悪化しているとは言い切れないなか、ウォルマートの決算は、価格に敏感な消費者が増える一方で、利便性や迅速な配送への需要も続いていることを映し出した。
今回の結果は、広告やECを軸とするデジタル事業がウォルマートの成長を支えていることを示した。関税還付による利益押し上げを差し引いても、基礎的な営業利益は会社予想の上限で成長した。今後の評価を左右するのは、一時的な還付効果よりも、デジタル事業の拡大と価格投資を持続的な利益成長へ結び付けられるかどうかである。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断にあたっては、最新の開示資料を確認し、必要に応じて専門家に相談する必要がある。
■決算の注目点Q&A
●ウォルマートの2027年度第2四半期決算はどのような内容でしたか?
売上高は前年同期比5.9%増の1879億ドル、調整後1株利益は0.81ドルでした。いずれも事前の市場予想を上回り、会社は通期見通しを引き上げました。
●広告事業とEC事業はどの程度成長しましたか?
世界の広告事業は38%、EC売上高は23%増加しました。米国のEC売上高は24%増え、VIZIOの影響を除くWalmart Connectは43%成長しました。
●営業利益が大きく増えた主な理由は何ですか?
事業の基礎的な成長に加え、約29億ドルの関税還付が利益を押し上げました。為替一定の調整後営業利益の伸び17.4%には、関税還付による750ベーシスポイントの純効果が含まれています。
●ウォルマートは通期予想をどのように変更しましたか?
為替一定ベースの売上高成長率を4〜5%、調整後営業利益の成長率を7〜8.5%へ引き上げました。調整後1株利益の予想も2.80〜2.87ドルへ上方修正しました。
●今後の決算で確認すべきポイントは何ですか?
広告、EC、マーケットプレイスの成長が続くか、関税還付を使った値下げが市場シェアの拡大につながるか、燃料費の上昇や価格投資を吸収しながら利益成長を維持できるかが焦点です。
元記事: Walmart Earnings Preview: Advertising Flywheel Faces $42 Billion Thursday Test