米国でバックカメラ関連リコールが約2800万台、車載ソフトと共用コンピューターが焦点に

2026年8月18日 20:36

米国でバックカメラに関連するリコールが相次いでいる。米道路交通安全局(NHTSA)のデータを基にしたブルームバーグの分析では、2018年の搭載義務化以降に対象となった乗用車は約2100万台に上り、レクリエーション車両や小型バスなどを含めると約2800万台に達する。

不具合の原因はカメラ本体に限らない。映像を処理する制御モジュール、配線、ソフトウェア、インフォテインメント画面など、カメラ映像をドライバーへ届ける経路のどこかに問題が生じる例が多い。複数の機能を共通のコンピューターで処理する現代の車両では、一つの障害がバックカメラや運転支援機能へ同時に影響することもある。

■義務化後に増えたバックカメラ関連リコール

米国では、後退する車両による事故を減らすため、2018年5月以降に製造される一定の新車へ後方映像システムの搭載が義務付けられた。根拠となる連邦自動車安全基準FMVSS No.111は、後退時に車両後方の所定範囲を確認できる映像を表示することなどを求めている。

ブルームバーグの分析によると、義務化以降にバックカメラ関連でリコールされた乗用車は約2100万台だった。対象範囲をレクリエーション車両や小型バスなどへ広げると約2800万台となり、2025年だけでも約584万台、2026年は7月1日までに約293万台が対象となった。

CARFAXは2026年5月、バックカメラ関連の未改修リコールを抱える車両が米国内に約700万台あると発表した。同社の集計では、テキサス州が約69万6000台、カリフォルニア州が約54万5000台、フロリダ州が約49万2000台と多い。

リコール対象になった車両がすべて実際に故障しているわけではない。対象範囲には、不具合が生じる可能性のある仕様や部品を搭載した車両が含まれる。それでも、映像が表示されない、フリーズする、古い映像が残るといった症状は、後退時の危険認識を妨げる可能性がある。

■カメラ映像を支える複数の部品とソフトウェア

バックカメラの映像は、カメラ、配線、制御モジュール、映像処理ソフトウェア、ディスプレイなどを経て表示される。そのため、画面が暗転した場合でも、原因がカメラ本体にあるとは限らない。

近年の車両では、インフォテインメントシステムや映像処理モジュールが、ナビゲーション、音声、通信、車載ディスプレイ、バックカメラなど複数の機能を処理している。共用するモジュールが過熱したり、ソフトウェアが停止または再起動したりすれば、カメラ映像も表示できなくなることがある。

コンシューマー・レポートのジェイク・フィッシャー氏は、バックカメラ自体ではなく、映像を扱う車載コンピューター側で問題が起きている例があると指摘している。ただし、リコールの原因はソフトウェア、制御モジュール、配線、カメラ筐体への浸水など多様であり、すべてをインフォテインメントシステムだけに帰することはできない。

J.D.パワーが2026年6月に公表した米国初期品質調査では、評価対象となった10分野のうち、前年より不具合指摘件数が増えたのはインフォテインメントだけだった。100台当たりの指摘件数は2025年の42.6件から2026年には44.4件へ増え、Apple CarPlayやAndroid Autoなどの接続問題が悪化の大きな要因となった。

同調査は新車購入後90日間のオーナー7万8514人から得た回答に基づく。車両全体では100台当たりの指摘件数が前年の192件から175件へ減少しており、インフォテインメント以外の9分野は改善した。

また、注意散漫を経験したと回答したドライバーのうち、46%がインフォテインメントシステムまたはタッチスクリーンを要因に挙げた。運転支援機能の警告を挙げた割合は18%だった。これはバックカメラの故障件数を直接示す数字ではないが、車載画面とソフトウェアの使いやすさや安定性が、車両品質を左右する重要な要素になっていることを示している。

■フォードの事例が示す共用基盤の影響

2026年3月、フォードは「ブロンコ」と「エッジ」の計84万9310台を対象にリコールを届け出た。対象車では、SYNC 4インフォテインメントシステムのAPIMと呼ばれるモジュールが高温になると、一時的な熱保護停止が起き、後退時にバックカメラ映像を表示できなくなる可能性がある。

NHTSAへ提出された資料によると、APIMが特定の車両構成と高い車内温度の組み合わせで摂氏105度に達し、電子部品を保護するため最長5分間停止する場合がある。対策はAPIMソフトウェアの更新で、販売店またはOTAによって無償提供される。

同月には、フォードとリンカーンの計25万4640台を対象とした別のリコールも届け出られた。「エクスプローラー」「アビエーター」「ナビゲーター」「ノーチラス」の一部が対象で、映像処理モジュールIPMAが繰り返し再起動し、バックカメラ映像や複数の運転支援機能が一時的または継続的に利用できなくなる可能性がある。

フォードの報告では、車両や歩行者が多い環境で多数の移動物体を追跡した際、IPMAの処理負荷が高まることが原因とされている。影響を受ける機能には、衝突被害軽減支援、車線維持支援、死角監視などが含まれる。対策はIPMAのソフトウェア更新である。

これらの事例は、複数機能を共通の演算基盤に集約する設計の特徴を表している。電子制御ユニットを機能ごとに分ける構成と比べ、ハードウェアを共用すれば、OTA更新や機能連携を進めやすい。一方、共用モジュールの停止や再起動が、そこに接続された複数の表示機能や運転支援機能へ同時に及ぶ可能性がある。

■原因はソフトウェアだけではない

バックカメラ関連の不具合は、自動車業界全体で確認されている。トヨタは2025年10月、複数車種を対象に、後方映像が一時的に表示されない、またはフリーズする可能性があるとしてリコールを届け出た。対象車にはパノラミックビューモニターを制御する特定の駐車支援ECUが搭載されており、対策としてソフトウェアを更新する。

トヨタは2026年1月にも、米国の「タンドラ」と「タンドラ・ハイブリッド」計16万1268台を対象に関連リコールを届け出た。カメラ表示を切り替えた際、映像が特定の表示で停止したり、黒い画面になったりする可能性があるという。

ホンダは2026年5月、「プロローグ」とアキュラ「ZDX」の計5万9887台を対象にリコールを届け出た。この事例では、カメラ筐体の接着が不十分で、水分が内部へ入り、電気部品の腐食によって映像がぼやける、乱れる、表示されなくなる可能性がある。原因は中央コンピューターではなく、カメラ部品の製造工程にあった。

リコールごとに原因と改修方法は異なる。ソフトウェア更新で対応できる場合もあれば、カメラや配線などの交換が必要になる場合もあるため、所有者は車種名だけで判断せず、車両識別番号で対象状況と修理内容を確認する必要がある。

■未改修リコールはVINで確認

米国では、NHTSAのリコール検索で17桁の車両識別番号を入力すると、その車両に未改修の安全リコールがあるか確認できる。CARFAXも車両識別番号またはナンバープレートを使った無料の検索サービスを提供している。

一般的な安全リコールの修理はメーカーの負担で行われる。もっとも、リコールの発表直後など、対象となる車両識別番号や部品、修理用ソフトウェアの準備が完了していない場合もある。該当する可能性がある場合は、メーカーまたは正規販売店の案内を確認することが重要だ。

CARFAXのファイサル・ハサン氏は、バックカメラが正常に作動しなければドライバーが確認できる後方範囲が狭まるとして、未改修リコールの確認と早期の修理を呼びかけている。

■リヤガラスを持たないポールスター4

バックカメラや車載ディスプレイの信頼性は、リヤガラスを持たない車両の登場によって、さらに重要な設計課題となっている。

ポールスター4は、従来のリヤガラスを設けず、ルーフに取り付けた高解像度カメラの映像をデジタルルームミラーに表示する。ポールスターは、通常のリヤガラスより広い視野を確保するとともに、後席の空間を広げられることを設計上の利点として説明している。

米国で販売される2026年モデルのポールスター4は、メーカー希望小売価格が5万6400ドルからとなっている。1ドル159円で単純換算すると約897万円で、配送料、税金、各種手数料は含まない。

この車両では、後方確認をカメラとディスプレイに依存する割合が従来車より高い。そのため、映像の遅延や停止だけでなく、汚れ、降水、着氷、画面への目の焦点移動なども、使用感を左右する要素となる。カメラとセンサーによって視野を広げられる利点と、映像システムを安定して稼働させる必要性が、同じ設計の中に共存している。

ジャガーも、2026年8月に内装を公開した市販化準備中の電動4ドアGT「JAGUAR Type 01」で、車体後方の映像を表示するデジタルClearSightリアビューディスプレイを採用している。こうした車両の増加は、カメラを駐車時の補助機能としてだけでなく、日常的な視界を構成する装置として評価する必要があることを示している。

一方、ポールスターは2026年7月、実用性を高めた派生モデル「ポールスター4 SUV」を発表した。販売開始は同年9月2日の予定だが、同社の発表ではリヤガラスの有無など、後方視界システムの詳細は明らかにされていない。

■統合が進むほど障害時の設計が重要に

車載機能の統合は、部品点数の削減、機能間の連携、OTAによる修正や機能追加などにつながる。問題の焦点は統合そのものではなく、共用するコンピューターやソフトウェアに障害が生じた際、安全に関係する機能をどのように維持または速やかに復旧させるかにある。

一連のリコールでは、熱保護停止、処理負荷による再起動、起動時のソフトウェアエラー、カメラ筐体への水分侵入など、異なる故障要因が確認されている。「バックカメラの不具合」という共通の症状だけを見ても、原因や必要な対策を一つに絞ることはできない。

2026年のJ.D.パワー調査では、新車全体の初期品質は大きく改善した。その一方でインフォテインメントだけは悪化しており、車載ソフトウェア、通信、ディスプレイの完成度が相対的に大きな課題として残った。

バックカメラは、後退時にドライバーが確認できない領域を補う安全装置である。車両の所有者にできる最も具体的な対応は、車両識別番号で未改修リコールを確認し、対象であればメーカーや正規販売店の案内に従って改修を受けることだ。

■注目ポイントQ&A

●バックカメラの画面が暗転したりフリーズしたりするのはなぜですか?

原因は車両によって異なります。カメラ本体の故障だけでなく、配線、映像処理モジュール、インフォテインメント画面、ソフトウェアの停止や再起動、カメラ内部への水分侵入などでも映像が表示されなくなることがあります。

●自分の車がリコール対象か調べるにはどうすればよいですか?

米国仕様車は、NHTSAのリコール検索で17桁の車両識別番号を入力すると、未改修の安全リコールを確認できます。メーカーや正規販売店のサイトでも確認できる場合があります。

●バックカメラのリコールが出ている車は運転できますか?

リコールごとに不具合の内容やメーカーからの指示が異なるため、対象車の通知を確認してください。改修までの間はカメラ映像だけに依存せず、周囲を直接確認して慎重に後退し、可能な限り早く修理を予約することが重要です。

●リコールの修理には費用がかかりますか?

米国の安全リコールに指定された不具合の改修は、原則としてメーカー負担で行われます。対象車両、改修方法、部品やソフトウェアの準備状況は、メーカーまたは正規販売店へ確認してください。

●リヤガラスのない車では、どのように後方を確認するのですか?

ポールスター4やJAGUAR Type 01では、車体に設置したカメラの映像を車内のデジタルディスプレイへ表示します。従来のガラス越しの視界とは異なる広い視野を得られる一方、カメラ、映像処理、ディスプレイを安定して作動させる設計が重要になります。

元記事: Backup Camera Recall Crisis: 28 Million Vehicles, Infotainment Computers to Blame

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