楽天、独Helsingの日本展開を支援 陸自が攻撃型ドローン「HX-2」を9月末まで試験

2026年8月18日 14:27

楽天グループが、ドイツ・ミュンヘンを拠点とする防衛テック企業Helsingと連携し、同社の無人システムの日本導入を支援していることが分かった。陸上自衛隊は現在、Helsingの攻撃型ドローン「HX-2」を試験しており、評価は2026年9月末まで続く予定だ。現時点で正式な調達契約は発表されておらず、陸上幕僚監部は報道機関の取材に対して事実関係を確認中としている。

■楽天が防衛スタートアップの日本参入を支援

楽天は、Helsingと政府機関との調整や、日本の防衛調達制度への対応を支援する立場となる。楽天の向井秀明社長室長は、スタートアップが複雑な調達制度、政府機関との連携、長期にわたる調達サイクルといった構造的な課題に直面していると説明し、楽天の知見やネットワークを生かして先端技術と政府機関の需要を結び付ける考えを示している。

Helsingによると、同社は日本政府によるシステム利用に向けた「初期的な合意」に達しており、日本国内のパートナー企業が関与している。楽天によれば、陸上自衛隊はHX-2の試験結果を踏まえて導入の可否を検討する。試験の用途、評価項目、想定する調達規模などは明らかになっていない。

楽天はこれまでにも、防衛分野のスタートアップと日本市場をつなぐ取り組みを進めてきた。2025年5月には、ウクライナ政府が設立した防衛技術支援組織「Brave1」と共同で、ウクライナのスタートアップによる日本進出や政府機関などとの連携を支援する取り組みを発表した。防衛・安全保障展示会「DSEI Japan 2025」では、Brave1が支援する6社の出展を後押ししている。

楽天モバイルも2026年初めの日米共同演習で、米Capeとともに携帯通信の実証に参加した。楽天モバイルはOpen RANによる基盤を提供し、日米の部隊が連携する指揮・通信環境で接続性や耐障害性などを検証した。

■AIを搭載する攻撃型ドローン「HX-2」

HX-2は、Helsingが2024年12月に発表した電動推進のX翼型攻撃ドローンである。同社の公表値では、重量は12キログラム、最高速度は時速220キロメートル、最大射程は100キロメートル。砲兵、装甲車両、建造物などの軍事目標に対応する複数の弾頭を搭載できるとしている。

機体には、測位信号や継続的な通信が利用しにくい環境で任務を続けるためのAIが搭載されている。Helsingによると、機上AIが目標を探索、再識別、追跡することで、GNSSの妨害や通信の途絶に対する耐性を高めている。もっとも、「電子戦に対して免疫がある」といった表現は同社による性能説明であり、妨害の種類や運用条件を問わず影響を受けないことを意味するものではない。

HX-2は、Helsingの偵察・攻撃ソフトウェア基盤「Altra」と連携し、複数機を協調運用できる設計になっている。同社は、標的への攻撃を含む重要な判断には人間のオペレーターを関与させる方針を掲げている。

これらの仕組みは、機体上で情報を処理して外部通信への依存を抑え、複数の無人機をソフトウェアで統合するという、近年の軍用無人システムに共通する構造を持つ。陸自の試験では、公表仕様だけでなく、妨害環境での航法、目標認識、操作性、信頼性などを含む総合的な評価が焦点になるとみられる。

■演習結果とウクライナでの評価

HX-2は2026年、リトアニアで行われた米陸軍の実験演習「Project Flytrap 5.0」でも試験された。専門メディアCalibre Defenceは、業界関係者の説明として、米兵が17回運用し、15回が目標への直撃、2回が至近弾だったと報じた。米陸軍の最高技術責任者は、機上のコンピュータービジョンにより、妨害下でも目標を発見、追跡できたと説明している。

一方、ウクライナでの運用を巡っては異なる評価も報じられた。2026年1月の報道では、発進時の不具合や、試験機に予定された一部機能が実装されていなかったとの指摘が伝えられたほか、前線付近の電子妨害によってオペレーターとの通信に問題が生じたとされた。

Helsingはこうした報道の一部を否定し、ウクライナ軍の複数部隊から追加導入の要望があると説明している。ウクライナとドイツの当局から、追加発注の状況を詳細に確認できる公式発表は出ておらず、報道と企業側の説明には隔たりがある。

ドイツでは2026年2月、連邦議会予算委員会が中距離徘徊型弾薬の調達を承認し、HelsingとSTARK Defenceへの初回発注にそれぞれ約2億7,000万ユーロを充てる枠組みが報じられた。追加発注には改めて議会の承認が必要とされ、正式な受け入れ試験なども調達の条件となる。

■日本で進む無人装備の導入

防衛省は、無人装備を危険な環境や長時間の任務に活用し、隊員の危険や負担を軽減する手段と位置付けている。2025年度には、空中を飛行しながら目標を捜索して車両などを攻撃する小型攻撃用UAVの取得を予算に盛り込んだ。2026年版防衛白書でも、無人装備やAIを活用した新しい戦い方について独立した章を設けている。

日本政府は2026年4月、防衛装備移転三原則の運用指針を改正し、完成品の輸出を救難、輸送、警戒、監視、掃海に限定していた「5類型」を撤廃した。これは主に日本から海外への防衛装備移転に関する制度変更であり、Helsing製品の国内調達や楽天の仲介を直接可能にした規制緩和と位置付けることはできない。一方、日本が防衛産業基盤の強化や海外企業との協力を重視していることを示す政策転換の一つではある。

HX-2の試験は、こうした無人装備の導入拡大と、民間テック企業やスタートアップの技術を防衛分野に取り込む動きの中に位置付けられる。楽天とHelsingの連携は、従来の大手防衛企業や商社だけでなく、民間テック企業が海外の防衛スタートアップと政府機関をつなぐ事例として注目される。

■正式採用と国内生産は未定

9月末までの試験が完了した後、陸上自衛隊はHX-2の導入の可否を検討する。試験はあくまで評価段階であり、正式採用、調達数、価格、配備時期はいずれも決まっていない。

日本国内での生産についても複数の報道があるが、具体的な計画や協議の進展は確認されていない。国内量産を将来の選択肢として伝える報道がある一方、楽天が現時点ではHelsingと量産について協議していないと説明したとの報道もある。このため、国内生産の方針が決定した段階とはいえない。

今回の取り組みでまず問われるのは、HX-2が陸自の運用要求を満たすかどうかである。同時に、民間テック企業が海外スタートアップと防衛省・自衛隊の間に入り、技術評価や調達手続きを円滑に支援できるかを示す事例にもなる。

■注目ポイントQ&A

●HelsingのHX-2はGPSが妨害された環境でも運用できますか?

Helsingは、機上AIによる航法や目標の探索、再識別、追跡により、GNSS信号や継続的なデータ接続が利用できない環境でも任務を続けられると説明しています。ただし、具体的な耐妨害性能は、妨害の種類や強度、通信環境などの条件によって評価する必要があります。

●楽天はHX-2を製造するのですか?

現時点で、楽天がHX-2を製造するとの発表はありません。楽天はHelsingの日本展開を支援し、政府機関との連携や調達制度への対応を橋渡しする役割を担っています。

●HX-2の陸上自衛隊への導入は決まっていますか?

決まっていません。陸上自衛隊は2026年9月末まで試験を行い、その結果を踏まえて導入の可否を検討する予定です。正式な契約や調達規模は発表されていません。

●日本国内での量産は決まっていますか?

決まっていません。国内生産を将来の選択肢として伝える報道はありますが、具体的な生産計画や両社間の協議は確認されていません。

●防衛装備移転ルールの改正が今回の試験を可能にしたのですか?

2026年4月の改正は、主として日本から海外への防衛装備移転に関する規則の見直しです。海外製品の国内調達や、民間企業による仲介を新たに解禁した制度ではないため、今回の試験を直接可能にした改正とは位置付けられません。

元記事: Japan Opens Its Arms Market: Rakuten Tests Helsing Strike Drones for GSDF

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