米JPモルガン、予測市場ポリマーケットとの銀行取引を終了―IPO主幹事には含み
2026年8月18日 11:23
JPモルガン・チェースは2025年、規制上の懸念を理由に予測市場ポリマーケットとの銀行取引関係を終了した。一方、急成長する同社との関係を全面的に断ったわけではなく、将来の新規株式公開(IPO)で主幹事業務を獲得する可能性も視野に入れている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が事情に詳しい関係者の話として報じたところによると、JPモルガンは2025年10月、ポリマーケットに対し、別の銀行を探す必要があると通知した。ポリマーケットはその後、銀行取引を別の金融機関に移したが、移管先は明らかになっていない。
この決定は、ポリマーケットにとって規制上の微妙な時期に下された。同社は2022年、未登録のデリバティブ取引施設を運営したとして米商品先物取引委員会(CFTC)の処分を受け、米国居住者に不適合な市場へのアクセスを提供することを禁じられていた。
ポリマーケットはその後、CFTCに登録された取引所QCXと清算機関QCクリアリングを買収した。QCXは「ポリマーケットUS」の名称でCFTCの指定契約市場として運営され、2025年12月に米国内向けの規制対象取引所を開設した。
もっとも、CFTCがポリマーケットに対して別の広範な調査を進めていると、CNBCなどが2026年6月に関係者の話として報じている。CFTCとポリマーケットはいずれも調査についてコメントしておらず、調査の開始時期や具体的な対象は公表されていない。
銀行取引関係を終了した後も、JPモルガンはポリマーケットと完全に距離を置いたわけではない。同行は2026年2月、マイアミで富裕層のプライベートバンキング顧客向けに開いた会議に、ポリマーケットのシェイン・コプラン最高経営責任者(CEO)を講演者として招いた。コプランCEOは元米プロフットボールリーグ(NFL)選手のトム・ブレイディ氏とともに登壇した。
JPモルガンは、ポリマーケットが将来IPOに踏み切った場合、引受業務を担うことにも関心を示しているという。ただし、ポリマーケットがIPOの実施を正式に発表した事実は確認されていない。
ポリマーケットに近い関係者はFTに対し、「JPモルガンはすべての橋を焼き払いたいわけではない」と語った。JPモルガンはFTの取材にコメントを控えた。
一方、ポリマーケットは両社の関係が広範に断絶したとの見方に異議を唱え、他の分野ではJPモルガンとの取引を続けていると説明した。
ポリマーケットは「複数の法人、業務上の連携、顧客資金フローの相当部分の取り扱いを通じ、JPモルガンとの緊密で活発な関係を維持している」と表明した。そのうえで、「これと異なる見方は、両社の関係を根本的に誤って描写している」とした。
予測市場は急速に拡大している。FTが引用した暗号資産分析基盤Dune上の利用者作成データによると、2026年の想定元本ベースの取引高はこれまでに2500億ドルを超えた。ただし、この数値は公式統計ではなく、集計対象となる取引所や取引量の数え方によって結果が異なり得る。
市場の拡大に伴い、規制当局や州政府による監視も強まっている。全米の十数州以上で、ポリマーケットまたは競合するカルシを巡る訴訟、差し止め命令、営業停止要求などの法的紛争が生じている。州側はスポーツ関連のイベント契約について、事実上の無許可スポーツ賭博に当たると主張している。
これに対し両社は、自社は伝統的なブックメーカーとして顧客の賭けを引き受けているのではなく、反対のポジションを取る取引参加者同士を結び付ける取引所を運営していると主張している。イベント契約に対するCFTCの連邦管轄権と、州の賭博規制権限のどちらが優先されるかが、法廷闘争の中心となっている。
機密情報に接する人物が予測市場を利用して利益を得る可能性への懸念も浮上している。
米司法省は2026年4月、ベネズエラのニコラス・マドゥロ前大統領を拘束する米軍作戦の計画と実行に関与した米陸軍特殊部隊のギャノン・ケン・バン・ダイク曹長を起訴した。起訴状によると、バン・ダイク被告は機密の非公開情報を利用し、ポリマーケットでマドゥロ氏の拘束に関連する契約を取引して、40万4000ドルを超える不正な利益を得たとされる。
バン・ダイク被告は2026年4月28日の罪状認否で無罪を主張した。起訴内容は検察側の主張であり、有罪が確定したものではない。
JPモルガンによるポリマーケットとの銀行取引終了は、米国で「デバンキング」を巡る政治的対立が続くなかで明らかになった。デバンキングとは、規制対応、法令順守、リスク管理などを理由に、銀行が顧客の口座を閉鎖したり、金融サービスを制限したりする行為を指す。
米司法省はJPモルガンやバンク・オブ・アメリカなど大手銀行に召喚状を出し、政治的理由で顧客口座を不当に閉鎖したことがなかったかについて情報を求めていると、ロイター通信が関係者の話として報じた。
ドナルド・トランプ米大統領はこれとは別に、JPモルガンとジェイミー・ダイモンCEOを提訴し、同行が政治的理由で自身や関連企業の口座を閉鎖したと主張している。JPモルガンは政治的または宗教的理由で口座を閉鎖することはないと反論し、訴訟には根拠がないとしている。