米アンソロピックの大型IPO、2028年売上高予測で算定―現状の約3倍・2000億ドルを想定
2026年8月18日 10:47
米人工知能(AI)開発のアンソロピック(Anthropic)の大型新規株式公開(IPO)を巡り、ウォール街は異例の長期予測に基づく企業価値の算定を進めている。同社は2028年の年間売上高を約1900億~2000億ドル(約30兆2800億円~約31兆8800億円)と見込んでいる。
ロイター通信がAnthropicの財務状況やIPO手続きに詳しい複数の関係者の話として報じた。銀行や投資家は現在の利益や翌年の売上高だけでなく、2年先の売上高予測に企業価値・売上高倍率を適用し、Anthropicの評価額を算定している。
Anthropicは5月、足元の事業ペースを年換算した売上高ランレートが470億ドル(約7兆4900億円)を超えたと発表していた。その後、7月末時点では650億ドル(約10兆3600億円)を超えたと、事情に詳しい関係者がロイター通信に明らかにした。2028年の売上高が2000億ドル近くに達するには、最新の年換算水準から約3倍に拡大する必要がある。
十分な利益率を確立していない急成長ソフトウエア企業の評価に売上高倍率を使うことは珍しくない。一方、数年先の業績予測に倍率を適用する手法は一般的とは言いにくい。
最近では、AI半導体を手がけるセレブラス・システムズが2026年にIPOを実施するのに先立ち、投資家が2028年の売上高予測を評価材料とした。イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXについても、6月の上場前に2029年までの業績予測が用いられた。
Anthropicを巡っては、適切な比較対象となる上場企業の選定も進んでいる。ロイター通信によると、同社のアナリスト説明会を前に、クラウドフレア、パランティア・テクノロジーズ、スペースXなどが企業価値評価の比較対象として検討されている。
これらの企業の評価倍率は高い。LSEGのデータによると、パランティアは2026年の予想売上高の約53倍で評価され、スペースXとクラウドフレアはいずれも同年の予想売上高の約41.6倍で取引されている。
各社はそれぞれ異なる比較材料となる。パランティアはAI関連事業への関与が大きい急成長企業として、クラウドフレアは成長率の高いソフトウエア・インフラ企業として位置付けられる。スペースXは、足元の財務状況だけでなく、将来の事業規模に対する期待も企業価値に織り込まれる例となっている。
Anthropicにとっての中心的な問題は、現在の巨額投資が将来の大幅な利益率改善につながるかどうかである。AI企業はGPUなどの計算資源、モデルの学習と推論、人材採用に多額の資金を投じる必要があり、こうした費用が業界各社の利益率を圧迫している。AI投資の規模に対する投資家の懸念にもつながっている。
一方、Anthropicの成長は急速である。売上高ランレートは2025年末の約90億ドル(約1兆4300億円)から、2026年5月には470億ドル(約7兆4900億円)超、7月末には650億ドル(約10兆3600億円)超へ拡大した。
同社の2026年第2四半期の暫定売上高は115億ドル(約1兆8300億円)を超え、前年同期の7億8700万ドル(約1250億円)から約14倍に増えた。第1四半期の売上高は約47億~48億ドル(約7490億円~約7650億円)だった。第2四半期には調整後営業利益も黒字となったが、最終的な業績は確定前で、変更される可能性がある。
Anthropicは、2026年初めまでの3年間、売上高ランレートが各年で10倍超に拡大したとしている。こうした成長軌道が、投資家が現在のIPO評価に2028年の業績予測を用いる理由の一つとなっている。
技術の進歩によってモデルの学習と推論が効率化し、人件費などの営業費用が売上高より緩やかな伸びにとどまれば、事業規模の拡大に伴って利益率が大幅に改善する可能性がある。ただ、投資家は現時点では実現していない将来の成長を先取りして評価することになる。
投資会社アレフ・インベストメンツのデービッド・マーケル氏はロイター通信に対し、Anthropicが2兆ドルの評価額を得る可能性はあると指摘する一方、「その水準を長期にわたって維持できるかは疑問だ」と述べた。
マーケル氏は、AIが現在の巨額な期待を正当化できるほど生産性を向上させるのかが、Anthropicの評価を検討するうえで重要な問いになるとの見方を示した。