米アップル、中国向け独自AIをアリババと開発―Qwen併用でApple Intelligence展開へ

2026年8月16日 16:13

アップルがアリババの技術支援を受け、中国市場専用の大規模言語モデル(LLM)を学習させたとロイターが報じた。中国版「Apple Intelligence」では、この独自モデルとアリババのQwen、百度(バイドゥ)の技術を併用する計画とされる。ただし、各モデルがどの処理を担当するのかや、クラウド処理に送られるデータの扱いなど、具体的な構成は明らかになっていない。

■外資初となる独自AIモデルの提供へ

ロイターが事情に詳しい3人の関係者の話として2026年8月14日に報じたところによると、アップルはアリババと共同で中国市場専用のLLMを開発し、同社の支援を受けて学習させたという。アップルとアリババは取材要請に回答していない。

中国向けモデルの開発は、現地企業のAIモデルに全面的に依存する従来の計画からの転換となる。独自モデルを持つことで、アップルは中国で提供するAI機能や利用体験に対する制御を強められる可能性がある。

Apple Intelligenceは、今後数カ月以内にiOSのソフトウェアアップデートを通じて中国で提供される見通しだ。ただし、一般向けの正式な開始日は発表されておらず、独自モデルと中国企業のモデルがどのように使い分けられるかも公表されていない。

中国国家インターネット情報弁公室(CAC)は2026年7月15日、Apple Intelligenceを含む7件のスマートフォン端末側生成AIサービスについて、登録情報を公表した。登録主体はApple Technology Development (Shanghai) Co., Ltd.で、これにより中国本土での提供に必要な主要な規制上の手続きが進んだことになる。

ロイターによると、計画どおりに提供されれば、アップルは中国で独自の生成AIモデルを一般向けに提供することを認められた初の外国企業になるという。ただし、CACの公表は登録情報であり、サービスの提供開始日や全機能の承認を示すものではない。

■アップル独自モデルとQwen、百度技術を併用

中国版Apple Intelligenceでは、アップル独自モデルに加え、アリババのQwenと百度の技術を組み合わせる計画だと報じられている。関係者は、独自モデルと第三者モデルを併用する仕組みを「デュアルトラック戦略」と説明している。

アップル独自モデルのパラメータ数、学習データ、モデル構成は公表されていない。また、独自モデルが担当する機能や、どの範囲まで端末内で処理されるかも明らかになっていない。端末内だけで完結する処理は、通常、入力データを外部サーバーへ送信せずに実行できるが、中国版で具体的にどの処理が該当するかは確認できていない。

アリババは、Qwenが中国の利用者向けApple Intelligenceに統合され、テキストや画像の理解、コンテンツ生成などに利用されることを明らかにしている。アップルが一時公開した中国語の案内では、MacでQwenをSiriや作文ツールと連携させる際、Qwenアカウントへのサインインが必要とされていた。

同案内では、利用者がQwenへ情報を送信するかを制御でき、アリババはApple Intelligenceから送られたリクエストをモデルの改善や学習に利用できないと説明されていた。一方、案内はその後アップルのサイトから削除され、正式な提供条件や対象OSは確定していない。

百度もアップルと中国向けAI機能を開発しており、検索関連機能に関与すると報じられている。ただし、Qwen、百度、アップル独自モデルの詳細な役割分担や、リクエストを振り分ける仕組みは公表されていない。このため、現時点で中国版を確定的な「3層構造」と位置付けることはできない。

■クラウド処理時のデータ管理は未確定

中国以外で提供されているApple Intelligenceは、可能な場合には端末内で処理し、より大規模なモデルが必要な処理にはアップルの「Private Cloud Compute(PCC)」を利用する。PCCでは、リクエストに必要なデータだけを処理し、処理後に保持せず、アップルの担当者も内容へアクセスできないよう設計されている。

中国版ではQwenや百度のインフラが利用される可能性があるが、これらの処理にPCCと同等の仕組みが適用されるかは公表されていない。Qwenアカウントへのサインインを求める案内も確認されているため、利用者データがどのアカウントやシステムと関連付けられるかは正式なプライバシー文書で確認する必要がある。

中国の国家情報法第7条は、組織と国民に対して、法律に基づき国家情報活動を支持、支援、協力するよう求めている。ただし、この規定だけで企業があらゆる利用者データを常時、または無条件で当局へ提供することになるとは限らない。

サイバーセキュリティ法による国内保存義務は、主として重要情報インフラ運営者が中国国内で収集・生成した個人情報や重要データを対象とする。データセキュリティ法などもデータの分類、保護、調査への協力を定めているが、具体的な義務は事業者の区分、データの種類、処理方法によって異なる。

そのため、中国版Apple Intelligenceのプライバシーを評価するには、どの処理が端末内で完結し、どの処理がアップル、アリババ、百度のサーバーへ送られるのかを確認する必要がある。アップルは中国版に固有のルーティング方法や、包括的なプライバシー文書をまだ公表していない。

■ファーウェイとの競争が導入を後押し

アップルが中国向けAIの導入を急ぐ背景には、ファーウェイをはじめとする現地メーカーとの競争がある。

IDCの暫定集計によると、2026年第2四半期の中国スマートフォン市場で、ファーウェイの出荷シェアは前年同期の18.1%から22.6%へ上昇した。アップルも13.9%から18.1%へ伸ばし、出荷台数は前年同期比24.4%増となった。一方、市場全体の出荷台数は前年同期比4.3%減少した。

アップルの2026会計年度第3四半期における大中華圏の売上高は、前年同期比約22%増の188億1,600万ドルだった。1ドル=159円で換算すると約2兆9,917億円となる。中国でApple Intelligenceがまだ一般提供されていない時期の業績であるため、この増収をAI機能の効果とみなすことはできない。

アップルは中国向けのAIパートナーを決める過程で、アリババのほか、百度、DeepSeek、バイトダンスなどとも協議したと報じられている。アリババとの提携については、同社のジョー・ツァイ会長が2025年2月に、アップルが中国の複数企業を検討したうえでアリババを選んだと明らかにしていた。

■QwenをめぐるAnthropicの主張

Qwenをめぐっては、AIモデルの出力を別のモデルの学習に利用する「モデル蒸留」に関する指摘も出ている。

2026年6月、Anthropicは米上院銀行委員会への書簡で、アリババおよび同社のAI研究組織と関係する運営者が、約2万5,000件の不正アカウントを使い、4月22日から6月5日までにClaudeと約2,880万回やり取りしたと主張した。Anthropicは、これをClaudeの能力を抽出するための無許可の蒸留行為と位置付けている。

これはAnthropic側の主張であり、裁判所や規制当局によって認定された事実ではない。報道時点で、アリババは具体的な主張への回答を示していない。Qwenのどのモデルや機能が対象になったか、中国版Apple Intelligenceに統合されるモデルへ影響したかも確認されていない。

米議会では、懸念国の組織による米国製AIモデルの不正抽出に対処する法案が提出されているが、2026年8月15日時点では成立していない。アップルとアリババの提携が現行の米国法に違反すると認定された事実もない。

中国版Apple Intelligenceの評価でより直接的に重要なのは、アップル独自モデル、Qwen、百度の間で処理を振り分ける仕組みと、それぞれのデータ管理条件である。正式な提供開始までに、アップルが対応端末、対象OS、プライバシー条件、外部モデルへ送られる情報の範囲をどこまで明らかにするかが焦点となる。

■注目ポイントQ&A

●中国でApple Intelligenceはいつから利用できるようになりますか?

一般向けの正式な提供開始日は発表されていません。ロイターは、iOSのアップデート後、今後数カ月以内に提供される見通しだと報じています。CACによる登録情報の公表は規制上の重要な手続きですが、提供開始日そのものを示すものではありません。

●中国版のApple Intelligenceと他国版ではプライバシー面にどのような違いがありますか?

中国以外のApple Intelligenceでは、複雑な処理にアップルのPrivate Cloud Computeを利用できます。中国版ではQwenや百度の技術も利用される予定ですが、どの処理が各社のシステムへ送られるのかや、PCCと同等の保護が適用されるのかは公表されていません。端末内で完結する処理ではデータを外部サーバーへ送信する必要はありませんが、中国版での具体的な対象機能は未確定です。

●アップルはなぜすべての処理をアリババに任せず、独自モデルを開発したのですか?

ロイターによると、中国専用の独自モデルを持つことで、アップルはAI機能や利用体験に対する制御を強められる可能性があります。ただし、アップル自身は中国向けモデルを開発した理由や、Qwenとの具体的な役割分担を公式に説明していません。

●Anthropicはアリババに対して何を主張していますか?

Anthropicは2026年6月、アリババと関係する運営者が多数の不正アカウントを使い、Claudeの能力を抽出する目的で約2,880万回のやり取りを行ったと米上院銀行委員会に申し立てました。これはAnthropicによる未確定の主張であり、中国版Apple Intelligenceで使われるQwenに影響したかは確認されていません。

元記事: Apple Trained Its Own AI for China With Alibaba, Winning Unprecedented Beijing Clearance

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