元DJI技術者が開発する自律追尾カメラ「RocXZoom」、最大2000mm相当域で時速72kmの被写体を追尾

2026年8月15日 15:57

民生用ドローンやアクションカメラなどを手掛ける中国DJIの製品開発に携わったエンジニアらによるスタートアップFarseerTechが、手持ち型ロボットズームカメラ「RocXZoom」のKickstarterプレローンチページを公開した。同社は、最大2,000mm相当のズーム域で高速移動する被写体を自動追尾できるとうたっている。

本体重量は400gで、VIP向けの早期出資価格は449ドル(約7万1,000円、1ドル=159円換算)から。ただし、追尾速度や最大望遠時の画質はメーカーの公称値であり、製品版を使った独立検証はまだ行われていない。キャンペーンの詳細や出荷時期も未発表のため、出資前には今後開示される情報を確認する必要がある。

■元DJIの技術者が手掛ける400gのロボットズームカメラ

FarseerTechによると、同社の中核メンバーはDJIで「Inspire」シリーズ、「Osmo Pocket」、「Ronin 4D」などの研究開発や量産に携わった経験を持つ。RocXZoomは、50倍ハイブリッドズーム、電動パン・チルト機構、コンピュータービジョンによる被写体認識を小型筐体に統合した製品だ。

ズーム域はフルサイズ換算40~2,000mm相当で、光学20倍ズームとデジタル処理による2.5倍の拡張を組み合わせている。本体重量は400gで、カメラバッグのサイドポケットにも収められるサイズをうたう。

メーカー公称では、動く鳥や動物、人物などを0.01秒で捕捉し、秒速10~20m、時速換算で約36~72kmの被写体を追尾できるという。認識システムは300種を超える動物のほか、人物やユーザーが指定した対象にも対応するとされる。

CES 2026では、ラジコン車両に載せた模型の鳥を手持ち状態で追尾する試作機のデモが行われた。カメラが電動機構によって向きを変える基本的な動作は確認されたが、制御されたデモ環境での結果であり、野生動物やスポーツを撮影する実環境で同等の性能を発揮できるかは明らかになっていない。

■閉ループ制御で被写体の方向と大きさを自動調整

RocXZoomは、ライブ映像から被写体の位置を検出し、画面中央とのズレに応じてカメラの向きを修正する閉ループ制御を採用する。水平方向のパンと垂直方向のチルトを担当するモーターを動かし、カメラの光軸を被写体へ向け続ける仕組みだ。

同時に、ズーム制御が画面内における被写体の大きさを監視する。被写体が近づいた場合はズームアウトし、遠ざかった場合はズームインすることで、一定に近いフレーミングの維持を目指す。「検出・方向制御・ズーム」の処理を組み合わせ、撮影者が手作業で行ってきた追尾と画角調整を自動化する。

同社は追尾システムの応答時間を0.01秒としているが、公開資料からは、この数値が映像上の被写体検出から制御指令を出すまでの時間なのか、モーターが実際に動くまでを含む応答時間なのか判別できない。製品版における測定条件や遅延の定義は、出資判断の前に確認すべき項目となる。

■小型センサーと50倍ハイブリッドズームの実力

RocXZoomは1/2.5型のイメージセンサーを搭載する。小型センサーは、超望遠レンズを含むカメラ全体を小さく軽く設計しやすい一方、一般に大型センサーよりも暗所でノイズが目立ちやすく、背景を大きくぼかした表現にも制約が生じる。

レンズの明るさはF1.8~F3.9とされている。日中の野鳥観察やスポーツ撮影では小型・軽量という利点を生かせる可能性があるが、朝夕など光量の少ない環境における画質は、製品版の実写サンプルで確認する必要がある。

「50倍」は40~800mm相当の光学20倍ズームに、デジタル処理を組み合わせて最大2,000mm相当まで拡張した値だ。800mm相当を超える領域では画像の切り出しやアップスケーリングが使われるため、最大望遠時の解像感は処理アルゴリズムに左右される。製品版で撮影された独立したサンプルは公開されておらず、2,000mm相当で得られる実際の画質は未確認である。

動画記録は4K/30fps、1080p/30fpsおよび60fpsに対応する。5インチ有機ELディスプレイ、Wi-Fi、Bluetooth、USB-C出力、アルミニウム削り出し筐体を備え、防じん・防滴性能はIP54相当、バッテリー駆動時間は公称4時間となっている。

公開されている仕様にはLogガンマや10bit記録、1080p/60fpsを超えるハイスピード撮影は含まれていない。映画制作のメインカメラというより、被写体の発見と自動追尾、超望遠撮影を一体化した撮影支援機器として位置付けられている。

■米国のドローン規制は直接の対象外

米連邦通信委員会(FCC)は2025年12月22日、外国で生産された無人航空機システムと、その重要部品などをCovered Listに追加した。対象となる新しい機器は原則としてFCCの機器認証を取得できず、米国での輸入や販売が制限される。一方、それ以前に認証された機器や、すでに購入された機器の利用が一律に禁止されたわけではない。

この措置はDJIだけを名指しして同社の全製品を禁止したものではなく、外国製のドローンとドローン用重要部品を対象とする枠組みだ。RocXZoomは独立した企業が開発する手持ちカメラであり、ドローンそのものではないため、この規制が直ちに適用されるとは限らない。

ただし、RocXZoomはWi-FiとBluetoothに対応し、専用モバイルアプリから操作できる。現時点では、アプリが収集するデータの種類、保存場所、送信先、保存期間などの詳細や、第三者によるセキュリティ監査の実施状況は、公開されている製品情報から確認できない。利用者は、キャンペーン開始後に示されるプライバシーポリシーやアプリの権限、データ処理方針を確認する必要がある。

■既存カメラを自動追尾させる「RocXZoom Pro」

FarseerTechは、利用者が所有するミラーレスカメラやシネマカメラを載せられる高トルク仕様の「RocXZoom Pro」も予告している。

同社の「Master Suite」構成では、被写体の位置を認識する小型トラッキングカメラを既存カメラの上部に取り付け、その情報を下部の電動雲台へ送る。トラッキングカメラの単体価格は249ドル(約4万円、1ドル=159円換算)とされている。

この構成が実用化されれば、手持ちのカメラとレンズを自動追尾システムとして利用できる可能性がある。ただし、重い望遠レンズを載せた場合の最大積載量、焦点距離が長い状態での追尾精度、対応するカメラやレンズの範囲は明らかになっていない。

■価格、キャンペーン日程、未確定の情報

RocXZoomのVIP向け早期出資価格は449ドルからで、1ドルの予約金を支払った利用者には、最大50%の割引を含む先行購入枠を提供すると案内している。

カメラ、ジンバル、三脚、収納バッグ、バッテリー4個を組み合わせたオールインワン構成も用意される予定だ。ただし、通常販売価格、Kickstarterの全リワード構成、対応する出荷地域、製品の発送予定時期は、正式なキャンペーン開始まで公表されていない。

出資前に確認したいのは、2,000mm相当で撮影した製品版の画像や動画、不規則に動く野生動物に対する追尾性能、アプリのデータ取り扱い、RocXZoom Proの最大積載量と対応機種などだ。

FarseerTechはCES 2026で試作機を展示し、製品や工場の画像も公開している。一方、同社にとって初の消費者向け製品であり、試作機が動作していることだけで、予定通りの量産や出荷が保証されるわけではない。

■Kickstarterで出資する前に確認したいこと

Kickstarterのプロジェクト支援は一般的な製品購入とは異なり、予定通りの配送を保証するものではない。特に初めてハードウェアを量産する企業のプロジェクトでは、配送の遅れや仕様変更、製品が完成しない可能性も考慮する必要がある。

RocXZoomのプレローンチページは公開されているが、正式なキャンペーン開始日は発表されていない。出資を検討する場合は、量産と配送のスケジュール、最大望遠で撮影した独立サンプル、アプリが収集・処理するデータ、FarseerTechの法人情報や登録地域が正式に示されているかを確認したい。

ドローン向けの自動追尾技術を400gの超望遠カメラに統合するという発想は、単独で野鳥やスポーツを撮影する利用者にとって魅力的だ。449ドルからの価格で、公称通りの追尾性能と画質が実現すれば注目すべき製品となるが、最終的な評価には製品版を使った第三者の検証が欠かせない。

■注目ポイントQ&A

●一般的なオートフォーカス追尾カメラとRocXZoomは何が違うのですか?

一般的な被写体追尾機能は、被写体にピントを合わせ続ける一方、カメラの向きや構図は撮影者が調整します。RocXZoomは電動パン・チルト機構でカメラ本体の向きを変え、距離の変化に合わせてズームも調整するため、被写体の検出、方向の追尾、画角調整を一体的に行う点が異なります。

●米国のDJIに対する規制はRocXZoomに影響しますか?

FCCが2025年12月に導入した措置は、外国で生産されたドローンやドローン用重要部品などを対象としています。RocXZoomはドローンではなく、FarseerTechもDJIとは別の企業であるため、規制が直接適用されるとは限りません。ただし、米国で必要となる機器認証の取得状況や販売条件は、キャンペーン開始後に確認する必要があります。

●1/2.5型センサーで2,000mm相当の野生動物撮影は実用になりますか?

明るい環境では、小型センサーと超望遠を生かした撮影が可能と考えられます。ただし、暗所ではノイズやダイナミックレンジの制約が表れやすくなります。また、最大2,000mm相当のうち800mm相当を超える部分はデジタル処理による拡張であるため、実際の画質は製品版のサンプルで確認する必要があります。

●Kickstarterでの出資にリスクはありますか?

あります。ハードウェアのクラウドファンディングでは、製造や配送の遅れ、試作段階からの仕様変更、製品が届かない可能性があります。試作機の存在だけで量産や配送が保証されるわけではないため、出荷予定、返金条件、製品版の実写サンプルなどを確認してから判断することが重要です。

元記事: Ex-DJI Engineers Launch RocXZoom: Robotic Zoom Camera Tracks Wildlife at 45 mph

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