ドルの基軸通貨シェアは25年で15ポイント低下 JPモルガンCEOが警告する次の25年

2026年8月11日 23:29

世界で最も影響力のある銀行経営者の一人が、多くの金融モデルが示唆しながらも、金融業界で公然と語られることは少ない問題を指摘した。米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、ドルの基軸通貨としての地位は恒久的なものではないと警鐘を鳴らした。実際、世界の外貨準備に占めるドルの割合は、2001年の約72%から2026年第1四半期には57.13%まで低下している。一方、ダイモン氏が訴える米国内の産業再建は、世界へのドル供給を減らし、かえってドルの地位低下につながる可能性もはらんでいる。

ジェイミー・ダイモンCEOは、8月9日に放送されたPBSの番組「Firing Line with Margaret Hoover」のインタビューで、ドルの長期的な支配力を米国の軍事的・経済的優位性と直接結びつけた。「25年後に我々が最強の軍事力と最強の経済力を持っていなければ、基軸通貨の地位も失うだろう」と同氏は語り、「世界は分断され、我々にとって非常に危険な状態になる」と述べた。

この警告に説得力を与えているのは、ダイモン氏の経歴だけではない。その背後にあるデータと、同氏が提案する解決策でもまだ解消されていない、ドルの仕組みそのものが抱える構造的なパラドックスである。

■ドルの外貨準備シェアは2001年から15ポイント低下

ドルは王座を失ってはいないが、その地位は以前ほど盤石ではない。2026年7月1日に公表されたIMFのCOFER(公的外貨準備の通貨別構成)データによると、2026年第1四半期における世界の外貨準備に占めるドルのシェアは57.13%で、2001年のピーク時の約72%から低下した。BestBrokersのデータによれば、世界の輸出取引で請求通貨として使われるドルのシェアは54%、外国為替取引高に占めるドルの割合は89%に達している。

ただし、57%という数字は文脈とともに見る必要がある。IMFのCOFERデータはこの数字を裏付けているが、単純な衰退という見方には修正も迫る。ドルのシェアは、2025年第4四半期の56.42%から2026年第1四半期の57.13%へ、実際にはわずかに上昇した。2025年には、外貨準備資産全体に占める金の割合が初めて米国債を上回った。これはドルの崩壊というより、外貨準備管理者がどのような資産への分散を進めているかを物語る節目である。

ブルッキングス研究所で経済研究担当シニアフェローを務めるロビン・ブルックス氏は、2026年2月に同じIMFデータを分析し、過度な警戒論にも楽観論にも単純には当てはまらない状況を明らかにした。中国や日本などの政府が保有する外貨準備ポートフォリオを運用する担当者は、入手可能な最新データの時点では、積極的にドルから離れてはいなかった。ブルックス氏は2026年2月の分析で、基軸通貨としての地位が大きく低下するまでのハードルは依然として極めて高いと結論づけ、その理由の一つに有力な代替通貨が存在しないことを挙げた。

■脱ドル化は進行中、ただし一般的な見出しとは異なる形で

より重要な変化は、四半期ごとのCOFERデータではなく、各国が互いに支払いを行う仕組みの長期的な変化として起きている。

アナリストの推計によると、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカに加え、サウジアラビア、UAE、イラン、エジプト、エチオピア、インドネシアなどの新たな参加国を含むBRICS諸国は、現在、購買力平価ベースで世界のGDPの約40~45%を占めている。域内の貿易決済の形も大きく変わり、加盟国はドルではなく自国通貨で取引するケースを増やしているという。

SWIFTに代わる、ドルに依存しない主要な決済手段である中国の人民元国際決済システム(CIPS)は、2025年12月までに直接参加者193、間接参加者1,573に達した。2024年の年間取扱額は26兆ドル(約4,134兆円、1ドル=159円換算)を超えた。香港、タイ、UAE、サウジアラビア、中国を中央銀行デジタル通貨で結ぶデジタル決済ネットワーク「Project mBridge」は、2025年11月までに累計取引額が554億9,000万ドル(約8兆8,229億円、同換算)に達した。いずれもAtlantic Councilの「Dollar Dominance Monitor」に基づく数字である。

中央銀行も、ここ数十年で見られなかったペースで金を購入している。ワールド・ゴールド・カウンシルは、2026年の公的部門による金購入量を750~850トンと予測している。これは、2024年まで年間購入量が1,000トンを超えていた複数年にわたる動きに続くものだ。

重要なのは、金がドルに取って代わるということではない。金には利回りがなく、現代の外貨準備に必要とされる規模では流動性にも乏しいため、ドルを代替することはできない。重要なのは、外貨準備管理者が、米国の管轄権にさらされない資産を意図的に積み増している点である。

その管轄権への懸念は、ある出来事に直接つながっている。2022年2月、米国とG7のパートナー国は、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシア中央銀行の資産約3,000億ドル(約47兆7,000億円、同換算)を凍結した。

制裁を受けたことがなく、今後も受けない可能性のある国の外貨準備管理者にとっても、この措置は、世界のどこで保有されていてもドル建て資産が米国の法的権限の対象になり得ることを示した。その後の米連邦準備制度理事会(FRB)の研究では、2022年以降、ドル準備からの劇的な資金流出は確認されず、その動きは緩やかで目立たないものだった。しかし、Atlantic Councilが2026年3月版の「Dollar Dominance Monitor」で示したように、この出来事がもたらした心理的変化は、構造的な影響として定着しているとみられる。

■トリフィンのジレンマ:問題の解決が脱ドル化を加速させる可能性

ダイモン氏の処方箋は、国内製造業の再建、重要なサプライチェーンの国内回帰、レアアースやアルミニウム、戦略的重要性を持つ鉄鋼の中国依存低減である。これは、多くの経済学者がダイモン氏と同じ理由から提唱してきた対策でもある。

同氏はPBSの番組で、「我々はそうしたものを中国に依存することはできない。重商主義的な行動を許すこともできない。国内で生産する必要がある。我々は間違いを犯した」と語った。

しかし、この処方箋には、ダイモン氏の警告だけでは解決できない構造的な緊張関係がある。ベルギー系米国人の経済学者ロバート・トリフィンが1960年代に指摘した問題である。

「トリフィンのジレンマ」または「トリフィンのパラドックス」は、自国通貨が世界の基軸通貨として使われる国に生じる利害の衝突を説明する。世界が外貨準備や貿易決済に必要とするドルを供給するため、米国は継続的な貿易赤字を計上しなければならない。輸出を上回る輸入を続け、事実上、商品と引き換えにドルを世界へ送り出す必要があるためだ。

これは偶然でも政策の失敗でもない。世界が機能するために必要なドルを手に入れる仕組みである。こうした赤字がなければ、世界におけるドルの流動性は縮小する。

ダイモン氏が挙げる中国の製造業への過度な依存、継続的な経常収支の不均衡、不十分な国内生産能力は、構造的に見れば、トリフィンのジレンマが目に見える形で現れたものだ。米国が継続的な貿易赤字を計上してきた理由の一つは、基軸通貨を供給する立場にあることだ。

米国が重要産業の国内回帰に成功し、貿易赤字を縮小して海外の供給元への依存度を下げれば、世界に供給されるドルも減る。その結果、長期的には、他国が大規模なドル準備を維持する能力が低下する可能性がある。外貨準備管理者が自らドル離れを選ぶからではなく、保有可能なドルそのものが減るためである。

これは、ダイモン氏の処方箋に対する反論ではない。国内の産業基盤を再建することは、基軸通貨への影響とは別に、正当な戦略目標である。しかし、ダイモン氏の挙げた25年という期間では、「米国が強さを維持すれば、ドルの支配力も維持できる」という単純な構図より、はるかに複雑な変化が進む可能性がある。

■JPモルガンはすでに資金を投じている

ダイモン氏は単に警鐘を鳴らしているだけではない。JPモルガンは、自らの分析に基づいて実際に資金を投じている。

2025年10月、同行は「Security and Resiliency Initiative」を立ち上げた。これは、同行が米国の経済安全保障に不可欠とみなす産業を対象に、10年間で1兆5,000億ドル(約238兆5,000億円、同換算)を投融資する取り組みである。最大100億ドル(約1兆5,900億円、同換算)の直接出資およびベンチャーキャピタル投資も含まれる。この取り組みは、JPモルガンの公式プレスリリースで発表された。

対象は4分野にまたがる。重要鉱物、医薬品原料、ロボット工学などのサプライチェーンおよび先端製造、防衛・航空宇宙分野の自律型システム、ドローン、次世代通信、蓄電設備や電力網インフラを含むエネルギー自立・強靱化、そして人工知能、サイバーセキュリティ、量子コンピューティングなどの先端・戦略技術である。同行は、この4分野を造船、ナノ材料、原子力エネルギーなど27の具体的な領域に分類した。

立ち上げに際し、ダイモン氏は、米国が重要物資について信頼できない海外の供給元に依存し過ぎていることが「痛いほど明らか」になったと述べた。この表現は、資産規模で米国最大の銀行であるJPモルガンが、地政学的リスクを単なる背景要因ではなく、主要な投資テーマとして捉えるようになった変化を示している。

ダイモン氏のテクノロジーに対する姿勢は、この1兆5,000億ドルの取り組みにとどまらない。JPモルガンの投資家向け説明会での開示によると、同行は2026年にテクノロジー分野へ約198億ドル(約3兆1,482億円、同換算)を投じる予定で、前年から10%増加する。また、リスク管理、不正検知、株式ヘッジ、顧客対応などにAIを導入している。

ロイターの報道によると、8月上旬時点でダイモン氏は、金融サービス、エネルギー、水道、公益事業、通信、航空、鉄道など、重要インフラ分野の40社を超える企業のCEOに自ら参加を呼びかけていた。業界横断型のAIリスクガバナンス団体「Alliance for Critical Infrastructure」の拡大版に加わるよう働きかけていたという。

■ドル支配を実際に終わらせるものとは

基軸通貨の交代は、歴史的にゆっくりと進む。英ポンドが世界的な支配的地位を失う過程は、1918年の第一次世界大戦終結から1960年代のブレトンウッズ体制後の時代まで、およそ40年にわたって進んだ。米国の経済的優位性は、正式な制度移行よりはるかに前から明らかになっていた。

ドルが真に基軸通貨としての地位を失うには、外貨準備に占めるシェアが低下するだけでは足りない。信頼でき、流動性が高く、制度面でも信用される代替手段が登場する必要がある。現時点で、そのような代替手段は存在しない。

中国の人民元は、資本規制と中国金融市場の相対的な厚みの不足によって、依然として制約を受けている。世界の外貨準備の約20%を占める第2位の基軸通貨であるユーロには、米国債に匹敵する統一的な安全資産がない。米国債は、市場に十分な厚みと流動性があり、法的な予測可能性も備えているため、ドル準備を理論上の存在ではなく、実際に機能するものにしている。いずれの課題も、Atlantic Councilの「Dollar Dominance Monitor」に記録されている。

OMFIF(公的通貨金融機関フォーラム)が中央銀行を対象に実施した2026年版「Global Public Investor」調査によると、外貨準備管理者は平均して、今後10年間でドルの比重が約50%まで低下すると予想している。さらなる低下ではあるものの、それでもドルは他のどの基軸通貨より2倍以上の規模を維持することになる。

多くの独立系アナリストがより可能性の高い展開とみているのは、ドル後の世界ではなく、より多極化した世界である。ドルは縮小しながらも支配的な地位を保ち、その下で複数の通貨、地域決済システム、商品に裏付けられた金融手段が分散して並存するという構図だ。

この展開は、ダイモン氏が「分断された」と表現する世界と一致する。しかし、分断されることと、ドルが別の通貨に置き換えられることは同じではない。

■米国の投資家や貯蓄者にとっての意味

基軸通貨の地位は、米国の家計にとって抽象的な問題ではない。米国が他の主要経済国より低い金利で世界から資金を借りられる仕組みそのものだからだ。国家債務、住宅ローン、自動車ローン、学生ローンの市場は、世界がドル建て資産の保有を選好することで押し下げられた金利の恩恵を受けている。

MRV Associatesのマネージング・プリンシパルで、ニューヨーク連邦準備銀行の元外国為替アナリストであるマイラ・ロドリゲス・バジャダレス氏は、U.S. Newsに掲載された分析で、完全な脱ドル化は、それに備えていない投資家に壊滅的な影響を与える可能性があると述べている。

その影響は米国債利回りを通じて波及する。米国債に対する海外需要が大幅に落ち込めば、利回りが上昇し、経済全体の借入コストが増える。米国の消費者が何十年も享受してきた構造的な金利面の優位性も縮小し始める。

このシナリオは、短期または中期の時間軸では依然として推測にすぎない。一方、方向性は推測ではない。IMFのデータは、四半世紀にわたって進んできた緩やかな低下を示している。

72%から57%への15ポイントの低下は、一度の地政学的ショックによって生じたのではない。外貨準備管理者が金を積み増し、人民元建て資産に投資し、ドルのインフラを迂回する二国間決済システムを構築するという、数多くの小さな判断が積み重なった結果である。

ダイモン氏の「25年」という警告が注目されるのは、無視されかねないほど抽象的だった変化に、人が実感できる時間軸を与えたからだ。現在40歳の人は、ドルが依然として支配的でありながら、その支配力が、米国人が当然視してきた借入面での優位性をもはや同じようには支えない世界で退職を迎えるかもしれない。

■注目ポイントQ&A

●ドルが基軸通貨の地位を失うと、実際に何が起こりますか?

最も直接的な影響は、米国の借入コストの上昇です。現在、世界はドル建て資産、特に米国債の保有を選好しているため、米国は本来の財政状況から想定されるより低い金利で資金を借りられています。

こうした資産に対する海外需要が大幅に減少すれば、米国債利回りが上昇し、住宅ローン、自動車ローン、企業の借入コストも上がります。既存債務の利払いが増えるため、連邦財政赤字も拡大します。

移行が長期化すれば、米国の地政学的な影響力も低下します。敵対国をドル基盤の決済システムから排除する能力は、ドルが世界の商取引の中心であり続けることに依存しているためです。

●脱ドル化は実際に起きていますか? そのスピードはどのくらいですか?

はい。ただし、進行は緩やかです。IMFのCOFERデータによると、世界の外貨準備に占めるドルのシェアは、2001年の約72%から2026年第1四半期の57.13%へ低下しました。25年間で15ポイント、1年当たりでは約0.6ポイントの低下です。

中央銀行は金準備を積み増し、代替決済インフラに投資しています。一方、ブルッキングス研究所のロビン・ブルックス氏が2026年2月に発表した分析によると、トランプ政権2期目の特に変動の大きかった時期にも、外貨準備管理者はドルへの配分を積極的には減らしていませんでした。

脱ドル化はゆっくりと進み、その方向性は定まっていますが、ドルを大規模に代替できる信頼性の高い通貨はまだ存在しません。

●トリフィンのジレンマとは何ですか? なぜダイモン氏の警告に関係するのですか?

1960年代に経済学者ロバート・トリフィンが指摘した「トリフィンのジレンマ」は、自国通貨が世界の基軸通貨となっている国が直面する構造的なパラドックスです。その国は、世界に自国通貨を供給するため、継続的な貿易赤字を計上する必要があります。しかし、その赤字は最終的に通貨への信頼を損ないかねません。

ダイモン氏の提案する国内産業の再建、中国のサプライチェーンへの依存低減、国内生産能力の強化が成功すれば、米国の貿易赤字は縮小します。米国の貿易赤字が縮小すれば世界に流通するドルも減り、他国が外貨準備として保有できるドルの供給量も減ることになります。

ダイモン氏が指摘する脆弱性への対処が、同氏の警告する結果そのものにつながる可能性があります。これは意志の不足ではなく、基軸通貨制度の仕組みから生じるパラドックスです。

●BRICS諸国はドルに代わる本格的な通貨を作れますか?

近い将来には難しく、ダイモン氏が挙げる25年という期間内でも、おそらく実現は困難です。BRICS諸国は、中国のCIPS、Project mBridge、BRICS Payの試験的プラットフォームなど、重要な決済インフラを構築してきました。

しかし、単一のBRICS通貨で、世界の基軸通貨に必要とされる深い資本市場、法の支配、自由な資本移動、外貨準備管理者が安全に保有できる流動性の高い長期債務商品という条件を満たすものはありません。

中国の人民元には、中国内外への自由な資金移動を制限する資本規制があります。BRICS自体も内部の結束を欠いており、インドの外相は反ドル的な姿勢から距離を置く考えを公に示しています。

より現実的なのは、ドルが支配的な地位を維持しながら、より多くの取引が代替的な決済網を通じて行われ、ドルのネットワーク効果が周辺部分から徐々に弱まっていく多極的なシステムです。

元記事: Dimon Warns Dollar Reserve Status at Risk Within 25 Years: Triffin Paradox Lurks

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