サム・アルトマン氏創業のWorld Network、5250万ドルを追加調達 人間であることの証明需要の拡大に照準

2026年7月25日 13:43

米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が支援するデジタルID事業「World Network」は、5250万ドル(約85億7000万円)の追加資金を調達した。ボットやなりすまし、ディープフェイクへの懸念が高まる中、オンライン上での人間であることを証明する事業を拡大する。

資金調達の発表は、各国政府とテクノロジー企業が人工知能(AI)のオンラインエコシステムへの影響への対応を迫られる中で行われた。AI生成コンテンツの氾濫を受け、ソーシャルメディアや金融サービス、企業向けプラットフォームにおける本人確認、デジタル信頼、認証ツールをめぐる議論が改めて活発化している。

プロトコルを運営する非営利団体のWorld Foundationが25日に発表したところによると、今回の資金はロックアップ付きトークンの戦略的投資家向け販売を通じて調達した。CoinDeskによると、ラウンドはパンテラ・キャピタルが主導し、ベイン・キャピタル・クリプトとEightco Holdingsが参加した。

World Networkは、調達資金を企業やAIエージェント向けの本人確認技術の拡大に充てるとしている。同団体はオンラインで対話する利用者が自動システムではなく人間であることを証明するためのインフラとしての位置付けを一段と強めている。

パンテラ・キャピタルのゼネラル・パートナー、コスモ・ジャン氏はCoinDeskが公表した声明で「AI開発の加速に伴い、『Proof of Human(人間であることの証明)』の必要性が急速に明確になっており、企業からの引き合いの増加にそれが表れている」と述べた。

旧称「Worldcoin」の同プロジェクトは、「Orb(オーブ)」と呼ばれる独自ハードウエア機器を用いて個人を認証し、利用者のプライバシー保護に配慮しながらデジタル認証情報を発行する。同社は自社ネットワークを、自動化が進むデジタル環境で人間とボットを区別する手段と位置付けている。

発表によると、これまでにWorld Networkに参加した人数は3900万人を超え、Orbを通じて本人確認を済ませた個人は1800万人を上回った。同団体によると、サービス開始以降、そのインフラは4億7500万件を超える「World ID」認証を処理してきたという。

World Networkは過去1年、暗号資産(仮想通貨)を起点とする事業からの多角化に注力してきた。同社は4月、「World ID」の過去最大のアップグレードと位置付ける施策を発表し、同技術を消費者・企業・AIシステム向けの「フルスタックの人間認証」インフラとして打ち出した。

同事業は支持と精査の双方を集めてきた。複数の国の規制当局は従来、Orbスキャンに伴う生体認証データ収集の手法について懸念を示してきた。一方、支持派はAI生成コンテンツと人間が作ったコンテンツの区別が難しくなる中で、本人確認の重要性が一段と高まると主張している。

ロイター通信によると、ケニア当局は今年に入り、同社が現地のデータ保護要件の順守に同意したことを受け、Worldの事業停止措置を解除した。同プロジェクトは欧州でも規制当局の審査対象となっており、スペインとポルトガルのデータ保護当局からも調査を受けている。

オープンAIのサム・アルトマンCEOは、2023年の立ち上げ以来、同プロジェクトの最も著名な支援者の1人であり続けている。アルトマン氏はWorld Foundationの日常業務には関与していないが、同氏との結び付きが、AI時代のデジタルアイデンティティーをめぐる広範な議論に注目を集めるきっかけとなってきた。

今回の資金調達は、ディープフェイクやオンラインでのなりすまし対策を目的としたツールへの投資をテクノロジー企業が続けている局面で実施された。The Vergeによると、今年に入り複数の大手プラットフォームが、デジタルメディアへの信頼向上を狙ったコンテンツ認証の新たな取り組みを発表している。

Eightco Holdingsの取締役でBitmine会長を務めるトム・リー氏は、Worldの技術がデジタル認証で重要な役割を担い得ると指摘した。

リー氏はCoinDeskが引用した声明で「Worldの技術やproof of humanおよびその派生技術は、デジタル化が一段と進む世界で相互作用を安全にし、検証するための最も重要な構成要素の1つだ」と述べた。

World Foundationは、今回の資金調達は優先順位がネットワークの構築から、より幅広い用途への実用性拡大へと移行していることを反映するものだと説明した。

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