インテル、ファウンドリ事業でFortinetとの契約を発表 「Intel 4」ノード採用の次世代ASIC製造へ

2026年7月24日 18:44

インテルは、ネットワークセキュリティ大手のFortinetが次世代セキュリティプロセッサ「SP6」の製造および先進パッケージングをインテルの「Intel 4」プロセスノードで実施すると発表した。Intel 4において外部顧客名が公表されたのは初となり、地政学的リスクを背景にしたサプライチェーン分散の動きを反映している。ただし、インテルの本格的な業績回復にはより先進的な「18A」ノードでの顧客獲得が不可欠との見方もあり、第2四半期決算発表に向けて市場の注目の集まりどころとなっている。

■Intel 4の現在地:技術的特徴と先進ノードとの違い

Fortinetは2026年7月21日、同社のFortiGateファイアウォール製品群に搭載されるカスタムASIC「Security Processor 6(SP6)」の設計・製造・先進パッケージングを、インテルの「Intel 4」プロセスノードで実施すると公表した。同ノードがインテル自社製品専用に量産を開始してから約3年が経過するが、インテルが外部のIntel 4顧客名を公表したのは今回が初めてである。また、リップブー・タン(Lip-Bu Tan)氏が2025年3月にCEOに就任して以来、顧客名を明かした初のファウンドリ獲得案件となった。

この発表当日、インテルの株価は8.6%急伸して105.45ドル(約1万7,294円、1ドル=164円換算)で取引を終え、過去12ヶ月間で300%を超える上昇を記録した。市場の好反応は、顧客の公表に乏しかったインテルファウンドリが、ついに次世代製品を自社工場のラインに乗せる確定顧客を開示した事実を反映している。これがパイプライン全体の活発化を示すのか、一回限りのディールかは、本日2026年7月23日午後5時(米国東部時間 / 日本時間7月24日午前6時)から予定されている2026年第2四半期決算の電話会見で投資家が注視する点である。

Intel 4は、極端紫外線(EUV)リソグラフィ技術を採用した7nmクラスのプロセスである。アイルランドのレイクスリップにあるFab 34にて2023年9月に量産が開始され、主にインテルのPC向けプロセッサ「Core Ultra(開発コード名:Meteor Lake)」の計算タイル製造に用いられてきた。

一方で、Intel 4はインテルの最先端プロセスではない。最先端ノードは全周ゲート(GAA)構造の「RibbonFET」や裏面電源供給技術「PowerVia」を備えた「18A」であり、TSMCへの対抗軸と位置づけられている。Intel 4は18Aよりも一世代古く、消費電力あたりの性能面での強みをもたらす構造改革を欠く。アナリストが指摘するように、Fortinetとの提携は18Aではなく、完全にIntel 4に関するものである。

さらにインテルの開示内容も複雑さを示している。2024年度の年次報告書では外部顧客向けプロセスとして18A、Intel 3、Intel 7、Intel 16、およびUMCと共同開発する12nmが挙げられていたが、Intel 4は含まれていなかった。また、2026年4月の規制当局への提出書類において、インテルは最も先進的な製造プロセスにおける「重要な」顧客を獲得できていないと開示していた。インテルはTom's Hardwareに対し、今回のFortinetとの提携はカスタムネットワークASICのサポート計画を含む「数年前に提示したIntel 4の戦略を反映したもの」と説明している。ただし、2021年のロードマップ発表時点では外部ファウンドリ利用の目標としてIntel 4は明記されていなかった。

■なぜFortinetはTSMCに頼る既存のサプライチェーンから切り替えたのか

Fortinetの強みは自社開発のカスタムASICにある。第6世代となる「SP6」プロセッサは、暗号化トラフィックの検査やレイヤー7のセキュリティ機能を、ソフトウェア処理による性能低下を伴わずに高速処理する。同社は20年以上にわたりASIC開発を続けており、約600万台のFortiGate機器を出荷してエンタープライズ向けファイアウォール市場で約55%の最大数量シェアを誇る。

現行の「SP5」は2023年に投入された7nmベースのモノリシックシステムオンチップ(SoC)である。Fortinetの2025年年次報告書によると、同ASICの受託製造企業としてルネサス エレクトロニクスや東芝アメリカがあげられており、TSMCまたは受託製造企業が直接運営する台湾および日本のファウンドリを利用してきた。SP6の製造をアイルランドのFab 34におけるIntel 4へ移管することは、主要セキュリティチップをTSMC主導の製造フローから、欧州域内にある米国企業のファウンドリへと切り替えることを意味する。

サプライチェーンの安定性と製造国の透明性は、政府機関や重要インフラ事業者、防衛関連企業といった顧客層において重要度を増している。特に台湾海峡における地政学的リスクへの懸念から、製造拠点のロケーションに対する監視が強まっている。Fortinetのケン・シー(Ken Xie)CEOはサプライチェーンの強靭化を戦略目標に掲げており、SP6の発表でも「強靭で多様化された」サプライチェーンという言葉が用いられている。

また、SP6に関するインテルの発表文には「分離型(disaggregated)半導体設計と先進パッケージング」との記載がある。これはSP5のモノリシック設計から離れ、複数のダイを先進パッケージングで結合するチップレット構造を採用していることを強く示唆している。両社はチップレット構造について直接言及していないものの、Tom's HardwareやThe Registerのアナリストは同様の分析を行っている。

■インテルの狙い:アイルランドFab 34の稼働率維持と収益構造

この案件は顧客獲得の開示という側面だけでなく、インテルにとって経済的な意味合いも大きい。

Intel 4が稼働するFab 34は、インテルが欧州に有する最大の製造施設である。インテルは2024年6月にFab 34の株式49%をアポロが管理するファンドに112億ドル(約1兆8,368億円、1ドル=164円換算)で売却したが、2026年4月に142億ドル(約2兆3,288億円、1ドル=164円換算)で買い戻した。外部顧客を受け入れるにあたり、ウェハ経済性の利益を自社で全額取り込むための全株取得であった。

買い戻しの投資を回収するには、Fab 34のEUVアセットの稼働率維持が欠かせない。Meteor Lakeの世代交代が進み、2026年にかけて18Aベースの「Panther Lake」へ移行する中で、Intel 4のラインには稼働率のギャップが生じる。ファイアウォール向けASICのような長期間にわたるプログラムは、成熟した歩留まりと需要の安定性を求める顧客に適合し、工場稼働率の埋め合わせとして論理的な選択肢となる。

なお、インテルは2026年7月13日にレイクスリップのキャンパス拡張に向けて50億ユーロ(約57億ドル / 約9,348億円、1ユーロ=1.14ドル、1ドル=164円換算)の投資を発表している。これは主にAIサーバー用プロセッサ需要に対応するものだが、Fortinetとの案件はFab 34が外部案件を引き付けている証拠となり、欧州投資全体に向けたビジネスケースを強化するものとなる。

■決算数値から見る短期的な業績への影響

アナリストらは、Fortinetとの提携が短期的な業績数値に与える影響については冷静な見方を示している。

インテルファウンドリの2025年度の外部売上高は3億700万ドル(約503億円、1ドル=164円換算)であり、2024年の1億5,900万ドル(約261億円、1ドル=164円換算)から増加したものの、ファウンドリ事業全体の売上高178億ドル(約2.92兆円、1ドル=164円換算)や営業損失103億ドル(約1.69兆円、1ドル=164円換算)と比較すると小規模にとどまる。2026年第1四半期の外部売上高は1億7,400万ドル(約285億円、1ドル=164円換算)であった。

Fortinetのハードウェア事業は年間約20億ドル(約3,280億円、1ドル=164円換算)規模であり、SP6はその中の1つのチップに過ぎない。ハイパースケーラーによる大量のAIチップ注文と同等の規模ではなく、2026年や2027年初期のインテルのファウンドリ収益を大きく動かすものではない。しかし、信頼性の高い企業が製造委託を公表したという実績(社会的証明)は、今後の顧客交渉において好材料となる。

また、IDCの調査(2023年初期時点)によると、Fortinetはファイアウォール機器の出荷台数シェアで48%を獲得し首位となっている。SP6はエントリー層から中位層のFortiGate製品に幅広く搭載される予定であり、一回限りの取引ではなく持続的な生産ボリュームをもたらす。

■将来のモデルケースか、それとも例外案件か

本日午後に行われる第2四半期決算発表の電話会見(米国東部時間7月23日午後5時 / 日本時間7月24日午前6時)において、リップブー・タンCEOが直面する問いは、Fortinet案件が今後の潮流の始まりなのか、それとも単発の案件にすぎないのかという点である。

2026年5月、タンCEOはCNBCの番組内で、複数の顧客と交渉中であるとしつつもポリシーを理由に顧客名の公表を控えていた。デビッド・ジンズナーCFOも同年3月に、2026年後半から2027年初頭にかけてファウンドリ事業の成果がより具体的になると述べていた。今回の発表はその予告期間内の初の成果となる。今後12〜18ヶ月の間に他のネットワーク・セキュリティASIC企業が追随すれば、Intel 4は単なる工場の穴埋めから商業的なカテゴリへと成長することになる。

Fortinetは、自社ASICプログラムを持ち、サプライチェーンの透明性を重視し、TSMC依存からの脱却を目指すという明確なプロファイルを有している。同様のニーズを持つネットワーク機器・インフラ企業は他にも存在し、インテルがこれらの評価案件を受注に結びつけられるかが市場拡大の鍵となる。

■「18A」なしの受注はファウンドリの復活を証明できるか

技術的な視点において最も重要な区別は、採用されたノードの世代差である。

KeyBancの分析(ASMLの検証による)で約85%の歩留まりが確認されたとされる「18A」は、TSMCの「N2」ノードに対抗するための最先端プロセスである。18Aは全周ゲート構造のRibbonFETや裏面電源供給技術PowerViaを備えており、大手AIチップデザイナーからの18A受注こそがインテルファウンドリに対する市場の真の評価となる。

一方、今回採用されたIntel 4は2023年に立ち上がった成熟プロセスであり、新規の構造革新を含まない。ネットワークASIC向けには適しているが、TSMCの最先端プロセスと競合する製造能力を証明するものではない。2026年4月のインテルの規制開示でも、最先端プロセスにおいて「重要な」顧客を獲得できていないと明記されており、Intel 4での受注はこの根本的な状況を変えるものではない。

ただし、成熟した歩留まりのIntel 4と先進パッケージングの組み合わせは、コスト意識が高く供給の安定性を重視するネットワーク・セキュリティ市場において有益な選択肢となる。2025年度のファウンドリ事業における103億ドル(約1.69兆円、1ドル=164円換算)の営業損失を削減するには、こうした領域での収益拡大が不可欠となる。

■注目ポイントQ&A

●Intel 4とはどのようなプロセスであり、インテルの最先端プロセスと何が異なりますか?

Intel 4は極端紫外線(EUV)リソグラフィを用いた7nmクラスの製造プロセスで、2023年9月にアイルランドのFab 34で量産が開始されました。一方、インテルの最先端プロセスは全周ゲート構造の「RibbonFET」や裏面電源供給「PowerVia」を採用した「18A」です。Fortinetが採用したのはIntel 4であり、最先端の18Aではありません。Intel 4は歩留まりが成熟しておりコスト効率に優れる一方、TSMCの最先端2nm級ノードと競合するのは18Aとなります。

●Fortinetとの提携はインテルのファウンドリ事業にどのような影響を与えますか?

短期的な収益への影響は限定的です。インテルファウンドリの2025年度の外部売上高は3億700万ドル(約503億円)で、100億ドルを超える営業損失を計上しています。Fortinetのハードウェア事業全体の規模から見ても、即座に業績を急回復させるものではありません。しかし、Intel 4で外部顧客名を正式に公表した初の事例であり、プロセス品質の実証や今後の顧客獲得交渉における信頼性向上という大きな意味を持ちます。

●セキュリティASICとは何ですか?なぜFortinetは専用チップを使用するのですか?

ASIC(特定用途向け集成回路)は特定の処理に特化して設計された半導体です。Fortinetの場合、暗号化ネットワークトラフィックの検証やレイヤー7でのファイアウォール処理を、汎用CPUに負荷をかけず高速に行うために自社開発のASIC(SPシリーズ)を使用しています。これにより、ソフトウェア処理主体の競合製品に比べ、高い処理能力と電力効率を実現しています。

●エンタープライズ企業のIT担当者や調達担当者は、今回の製造移管をどう捉えるべきですか?

現行のFortiGate製品(SP5搭載)には直ちに影響はありません。SP6搭載モデルは将来の製品であり、発表時期は未定です。調達面での主な意義はサプライチェーンの分散です。新チップは台湾や日本主導のファウンドリではなく、欧州(アイルランド)にある米国企業の工場で製造されるため、地政学的リスクへの配慮や製造国の証明が求められる組織にとって利点となる可能性があります。

元記事: Intel Foundry Breaks Customer Silence With Fortinet Deal as Q2 Earnings Approach

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