ビットコイン、米インフレ指標の連続下振れで数週ぶり6万5000ドル突破 ショートスクイーズが上昇を増幅

2026年7月18日 07:29

ビットコインは米CPIとPPIが市場予想を下回ったことを受け、数週間ぶりに6万5000ドルを上回った。もっとも、上昇の一部はデリバティブ市場の強制的な買い戻しに支えられており、持続性は原油価格や次回のインフレ指標、ETFの資金フロー次第である。次の重要日程は7月29日のFOMCと、8月12日に公表予定の7月CPIだ。

■インフレ指標の連続下振れでビットコインが上昇

ビットコインは15日、米労働統計局(BLS)が6月の生産者物価指数(PPI)を発表した後、数週間ぶりに6万5000ドルを上回った。6月PPIは前月比0.3%低下と、市場予想の横ばいを下回った。卸売物価の月次低下としては2025年8月以来、最も大きかった。

火曜日の消費者物価指数(CPI)に続き、水曜日のPPIも予想を下回ったことで、ビットコインは一時6万5494ドルまで上昇した。CMEのFedWatchによると、7月の米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ確率は13%前後まで低下し、PPI公表後30分で追加の約1億ドル相当のレバレッジをかけたショートポジションが解消された。

2日間に公表された2つの指標が示したのは、インフレ鈍化がエコノミストの予想より速いということだ。ただし、水曜日の上昇を押し上げた主因は投資家の自発的な買いではなく、証拠金不足に伴う強制買いだった。このラリーを手放しで評価する前に、その持続性を慎重に見極める必要がある。

■CPIはエネルギー安が押し下げ要因

その前の金曜日時点で、ビットコインは6万1600ドル近辺で推移していた。米国の対イラン空爆でホルムズ海峡の封鎖が強まり、原油は1バレル87ドルへ戻る動きを見せていた。FRBのクリストファー・ウォラー理事は、インフレ指標が再び強い内容になれば、連邦公開市場委員会(FOMC)が近く利上げを検討せざるを得なくなると警告していた。だが、米東部時間7月14日火曜午前8時30分(日本時間同日午後9時30分)に公表された6月CPIが、その見方を約90秒で変えた。

BLSによると、6月の都市部消費者物価指数(CPI)は季節調整済み前月比0.4%低下し、単月では2020年4月以来最大の下落となった。総合インフレ率は前年比3.5%と、市場予想の3.8%を下回り、複数年ぶりの高水準だった5月の4.2%から大きく鈍化した。食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比横ばい、前年比2.6%で、予想の2.8%を下回り、5月の2.9%から減速した。

エネルギー指数は5.7%下落し、ガソリン単独では9.7%下落した。この月次変動の大半をガソリンが占めた。Nansenのシニアリサーチアナリスト、ジェイク・ケニス氏はCryptoSlateに対し、この結果は「持続的なディスインフレが確認されたというより、予想より弱い数字だった」と述べた。エネルギーは消費者物価を構成する項目の中でも変動が大きく、反転しやすい。同じ日に米国がイランに対する海上封鎖を再開し、ブレント原油が再び1バレル85ドルを上回ったことは、まさにその性質を示している。

■CPI後の急伸はショートスクイーズが増幅

7月14日のCPI公表前、ビットコインはホルムズ海峡の閉鎖と原油高を背景に6万1600ドル近辺で上値の重い展開となっていた。だが、弱いCPIを受けて流れは数分で変わり、日中安値からおよそ4%上昇して6万4832ドルを付けた。

この値動きは、現物市場の自発的な買いだけによるものではなかった。価格チャートだけでは見えない部分だ。

暗号資産のデリバティブ市場では、原資産を保有せずに価格変動へのロングまたはショートのエクスポージャーをレバレッジ付きで持てる無期限先物(パーペチュアル先物)が利用される。BitMEXが2016年にXBTUSDで初めて導入したこの仕組みでは、無期限先物価格を現物価格に連動させるため、8時間ごとにロングとショートの間で資金調達率に基づく支払いが発生する。レバレッジが5倍から125倍に及ぶ場合、小幅な価格変動でも損失が差し入れた証拠金を超えかねない。その時点で取引所の自動システムがポジションを閉じるための成行注文を執行し、それが追加の価格圧力となって、次のポジションの清算を連鎖的に引き起こすことがある。

7月14日は、CPI公表でビットコイン現物価格が数%跳ね上がった結果、市場価格が清算価格を上回ったショートポジションが、成行買いによって自動的に決済された。複数のメディアが報じたCoinGlassのデータによると、CPI公表後60分で約1億3400万ドルのショートポジションが清算され、ショートとロングの清算額には1810%の偏りが生じた。強制買いが価格をさらに押し上げ、次のショートポジション群の清算を誘発したことで、典型的な垂直上昇のローソク足が形成された。

CoinGlassのデータによると、24時間全体では8万5000人超のトレーダーにまたがり、暗号資産市場全体で3億7600万ドルが清算された。うちビットコインは1億1300万ドルで、その約1億500万ドルがショート側だった。イーサリアムでは1億2700万ドルが清算され、こちらも主にショート側だった。

この種のショートスクイーズは、投資家が自ら買いに向かったことで生じる上昇とは構造が異なる。清算対象となるポジションがすべて清算され、強制買いが一巡すれば、買いを支えていた同様の機械的な力はなくなる。その後に自発的な需要が続けば上昇は維持され得るが、きっかけとなったマクロ要因の信頼性が崩れれば、上昇が消失する可能性もある。今回は、そのマクロ要因であるエネルギー主導のディスインフレが、データ公表当日からすでに反転し始めていた。

■PPIも予想を下回り、6万5000ドルを突破

ビットコインは夜間に6万4466ドル近辺を保った後、米東部時間7月15日水曜午前8時30分(日本時間同日午後9時30分)の6月PPI公表を迎えた。結果は2日連続の予想下振れで、総合PPIは前月比0.3%低下と市場予想の横ばいを下回り、前年比も5.5%で予想の6.2%を下回った。前月比での低下は2025年8月以来初めてだった。

物価押し下げの大半は、卸売段階でガソリンが12%下落したことを背景とする財価格の1.4%低下によるものだった。一方、サービス価格は0.2%上昇し、前日のCPIと同様に、エネルギー価格は低下しているものの、それ以外の物価は粘着的という構図を示した。

ビットコインは発表後数分で数週間ぶりに6万5000ドルを超え、一時6万5494ドルまで上昇した。その後30分でさらに約1億ドルのショート清算が発生した。CME FedWatchでは、7月29日の利上げ確率が火曜日のCPI公表前の40%超から、水曜午前中には10~13%程度まで低下した。暗号資産予測市場Polymarketでも、PPI公表後の7月利上げ確率は4%だった。

■FRB議長ウォーシュ氏は慎重姿勢を崩さず

FRBのケビン・ウォーシュ議長は、5月にジェローム・パウエル前議長の後任に就いて以降初めてとなる半期証言のため、火曜日のCPI公表から約90分後に下院金融サービス委員会に出席した。その姿勢は意図的に慎重だった。朝の指標について問われると、ウォーシュ氏は安心材料とは考えていないとし、「今朝のデータを見て『任務完了だ』と言う向きもあるかもしれない。しかし、それは私の見方ではない」と述べた。

Quartzが報じたところによると、ウォーシュ氏は議長就任後、政策金利を3.50~3.75%に据え置いており、これで4会合連続の据え置きとなる。同氏は、委員会には「高止まりするインフレを容認する考えはない」とし、「物価安定の回復に断固として取り組む」と述べた。さらに、AI投資を「現在の経済で最も目立つ特徴」と表現し、データセンターインフラや半導体への需要急増が、すでに民生用電子機器の価格上昇につながっていると指摘した。CNNの証言に関する報道でも、こうした動きが今後数カ月のディスインフレを複雑にする可能性が確認された。

ウォーシュ氏は水曜日に上院銀行委員会にも出席したが、両委員会を通じて、7月29日のFOMC判断について具体的なフォワードガイダンスを示さなかった。これは、前任者より明示的なシグナルを減らすという自身の方針に沿うものだ。

ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁はCPI公表前、年内を通じてコアインフレが前月比0.2%のペースで推移すれば、FRBは利上げを回避できる可能性があると述べていた。6月のコアCPIの前月比横ばいは、少なくとも現時点ではそのシナリオと整合的だ。

■原油の再上昇が6月の安心感を揺るがす

6月のデータがもたらした安心感には、有効期限があるかもしれない。

原油価格の落ち着きをもたらし、6月のガソリン価格9.7%下落を通じてCPI下振れの主因となった米国とイランの一時停戦は崩れた。新たなミサイル応酬を受けて米国はイランに対する海上封鎖を再開し、ブレント原油は水曜朝までに1バレル85ドルを超え、2営業日で10%以上上昇した。

GasBuddyの石油分析責任者、パトリック・デハーン氏は、6月の統計を「バックミラー」と表現した。この下落は数週間前のガソリンスタンドでの価格を反映したものであり、直近の緊張激化はすでに原油価格と小売燃料コストを再び押し上げていると指摘した。

エネルギー価格が7月も高止まりすれば、8月12日公表予定の7月CPIは、6月に見られた総合インフレ率の低下分のかなりの部分を取り戻す可能性が高い。持続的なディスインフレへの道筋を左右するのはエネルギーではなくコアインフレである。6月のコアCPIの前月比横ばいは前向きな材料ではあるものの、前年比2.6%はなおFRBの2%目標を上回る。

CoinExのチーフアナリスト、ジェフ・コー氏は、ビットコインは「マクロヘッジではなく、依然として金利に敏感なリスク資産だ」とし、6月の数字は「当面の下押し圧力を弱めたが、持続的な上放れを作り出したわけではない」と整理した。同氏は、次の本格的なマクロ上の試練として9月のFOMC会合を挙げている。

■2026年のビットコインはインフレ指標に強く反応

火曜日の反応は、2026年に入って6回連続となる、CPIを起点とした2桁または2桁に近い値動きだった。複数のアナリストが記録したパターンでは、2月は5.77%下落、3月は8.41%上昇、4月は4%下落、5月は27.6%急落した。6月CPIに対する7月14日の反応では、公表前の安値から約10.85%上昇した。

このパターンは偶然ではない。ビットコインの取引構造が変わったことを反映している。2026年4月に単月で24億ドルを超える資金流入を記録したBlackRockのiShares Bitcoin Trust(IBIT)を筆頭とする現物ビットコインETFは、ビットコインを株式と同じリスクオン・リスクオフの仕組みに組み込んだ。ロイターが伝えた分析によると、ビットコインと株式市場の相関係数は2026年4月に過去最高の0.96に達し、ビットコインの値動きの分散の約92%が株式市場の動きで説明できる状態になった。

CPIやPPIが公表されると、ビットコインを高ベータのリスク資産として扱う機関投資家は、ほかのマクロ指標の予想外の結果に対する場合と同じように反応する。政策リスクが和らげば買い、強まれば売る。ETFの仕組みは、直接的かつ機械的な連動を通じてこの反応を増幅する。解約時には、認定参加者が投資家に現金を返すため現物ビットコインを売却する必要があり、自動的な売り圧力が発生する。資金流入時には逆に現物ビットコインを買う必要があり、自動的な買い圧力となる。こうした仕組みに無期限先物の清算連鎖が重なることで、ファンダメンタルズに基づく3~4%の値動きが、10%規模の変動へ増幅される。

■7月29日までに注視すべき3つの変数

ビットコインが7月29日のFOMCまで6万5000ドルを上回る水準を維持できるかどうかは、3つの変数に左右される。

第1は原油だ。PPI公表日と同じ日にブレント原油が85~87ドルへ戻ったのは偶然ではない。6月のインフレ鈍化をもたらしたのと同じ要因が、すでに逆方向へ動き始めている。7月を通じて原油が80ドル台半ばで推移すれば、7月CPIは3.7~4%程度へ戻る可能性が高く、6月のデータによって後退した利上げ観測が再び強まることになる。

第2はコアインフレの月次推移だ。6月のコアCPIの前月比横ばいは前向きなデータだったが、1カ月だけではトレンドは確立されない。7月にコアインフレが再び前月比0.2%以上となれば、総合指数の結果にかかわらず、9月FOMCでの利上げが現実的なリスクとなる。

第3はビットコインETFの資金フローだ。CPIとPPIの下振れ後も機関投資家からの継続的な資金流入が見られれば、それは強制清算の連鎖が終わっても消えない自発的な需要を意味する。年初来では、現物ビットコインETFは個別の日に大きな流入を記録することがある一方、累計では54億ドルの純流出となっている。この流れの反転は、ショートスクイーズだけによる上昇よりも持続性のあるシグナルになる。

次の試金石は、BLSが7月CPIを公表する8月12日だ。それまでの構造的な焦点は、6月の安心感を生んだのと同じエネルギー要因が、すでに6月のインフレ低下分を取り戻しつつあるのか、そして1バレル85ドルを上回るブレント原油が、その答えを統計より先に示しているのかという点にある。

■注目ポイントQ&A

●なぜ6月のCPIとPPIの後にビットコインが上昇したのですか?

両方のインフレ指標がエコノミストの予想を大きく下回ったためです。6月CPIは前月比0.4%低下し、単月では2020年4月以来最大の下落となりました。6月PPIも、市場予想が横ばいだったのに対して前月比0.3%低下しました。これらの結果を受け、7月29日のFOMCでの利上げ確率は、CME FedWatchで40%超から10~13%程度へ低下しました。利上げ観測の後退で、ビットコインのような無利回り資産を保有する機会費用が下がり、自発的な買いが入りました。さらに、2回の取引セッションを通じて合計約2億3000万ドルのショート清算が重なり、上昇が増幅されました。

●暗号資産のショートスクイーズとは何ですか?

価格上昇によって、価格下落を見込んでいたショートポジションの保有者が損失の出ているポジションを閉じるために買い戻しを迫られ、その買いがさらに価格を押し上げる現象です。暗号資産の無期限先物市場では、この過程が自動化されています。各取引所はポジションの証拠金を監視し、損失が差し入れた担保に近づくと、強制的な成行買いを執行します。7月14日はCPI公表後60分で、ショートの強制買い戻し額がロングの強制決済額の約18.1倍に達し、清算の連鎖によって急速な価格上昇が生じました。

●6万5000ドル超えは持続的な上昇と見てよいですか?

現時点では断定しにくいです。上昇のかなりの部分がデリバティブ清算に伴う強制買いであり、その買いは証拠金不足による清算が一巡すれば止まります。その後も自発的な現物需要が続かなければ、価格は反落する可能性があります。加えて、インフレ鈍化の主因だった一時停戦に伴うガソリン安はすでに反転しています。米国がホルムズ海峡の封鎖を再開し、7月15日にブレント原油が1バレル85ドルを上回ったため、原油高が続けば8月12日公表予定の7月CPIで、6月のインフレ鈍化分の多くが打ち消される可能性があります。

●FRBの金利政策はビットコインにどう影響しますか?

ビットコイン自体は利回りを生まないため、金利が上がると短期国債などの安全資産を保有する場合と比べた機会費用が上昇します。FRBが利上げしたり、利上げの可能性を示したりすると、ビットコインを高ベータのリスク資産とみる機関投資家は保有を減らしやすくなります。ETFから資金が流出する場合は、認定参加者による現物ビットコインの売却も生じます。逆に据え置きや利下げの見通しが強まると、反対方向の動きが起こりやすくなります。2024年1月の現物ビットコインETFの登場以降、機関投資家の資金フローがビットコインの現物価格へ直接反映されやすくなりました。2026年4月にはビットコインとナスダック100の相関係数が過去最高の0.96に達しており、短期的な価格変動の多くを暗号資産固有の出来事ではなく、マクロ経済指標が左右する状態になっています。

元記事: Bitcoin Breaks $65K on Dual Inflation Miss: Short Squeeze Amplified the Move

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