暗号資産を金融商品に位置づけの法改正、韓国では国家保有資産の管理対象に
2026年7月17日 15:23
2026年7月15日、日本と韓国の双方で、暗号資産(仮想通貨)の法的位置づけを大きく変える動きがあった。日本の国会が暗号資産を正式に「金融商品」と位置づける法改正を可決した同日、韓国政府は、政府が保有する暗号資産を国家資産として管理するための新法案を発表した。主要20カ国・地域(G20)に属する2つの民主国家が、異なる法体系を通じて暗号資産を正式な金融・行政システムに組み込もうとしている。
■韓国が発表した「国家資産基本法」の狙いと実態
2026年7月15日、韓国の企画財政部は「国家資産基本法」を発表した。これは、政府が公的資産を管理する法的基盤を76年ぶりに抜本的に見直し、初めてデジタル資産をその対象に含める法案である。成立すれば韓国は、暗号資産を単なる課税・規制対象の投機的商品としてではなく、土地や建物、知的財産と並び、政府が法的な管理義務を負う「財産」の一類型として国家資産管理法制に組み込むことになる。
この姿勢の転換は、暗号資産が制度的な市場へ全面的に統合される前段階となる可能性がある。また、韓国政府の発表は、日本の国会が暗号資産規制の大幅な見直しを完了してから数時間以内に行われた。日本にとっては、マウントゴックス破綻後に資金決済法が整備されて以来、暗号資産規制の枠組みにおける最も重要な改革となる。G20に属する2つの民主国家が同じ取引日に、暗号資産を正式な制度の中により恒久的に位置づける判断を示した形だ。
ただし、国家資産基本法は、政府によるビットコインの購入・保有を目的とした「ビットコイン準備金」制度ではなく、あくまで国家資産の管理法である。この区別は重要だ。
大統領府(青瓦台)のブリーフィングで、具潤哲(ク・ユンチョル)副首相兼企画財政部長官が発表したこの法案は、1950年に制定された「国有財産法」に代わるものである。現行の枠組みは、政府の保有資産がほぼ不動産のみだった戦後経済を前提に作られており、知的財産はもとより、デジタル資産の管理を想定したものではなかった。
法案が成立・施行されれば、国が没収などを通じて暗号資産を保有することになった場合、暗号資産を想定していない法律の下で場当たり的に対応するのではなく、他の国家資産と同様に管理するための正式な法的枠組みが整備される。政府関係者は、この改革を「保存から価値創造への転換」と表現しており、国家資産は単に保管するだけでなく、積極的に管理されるべきだとしている。
この法律が対象とする資産の規模は大きい。韓国の国家資産は、2001年の188.3兆ウォンから、現在では1,400兆ウォンを超え、約9,380億ドルに達している。1ドル=162円で換算すると約152兆円となる。今後は官民合同のタスクフォースが具体的な実施細則を策定し、対象資産の範囲を定める予定だが、現時点で詳細な実施規則は公表されていない。
重要な留保として、この法案はまだ成立していない。国家資産基本法が実際に効力を持つためには、韓国国会を通過する必要がある。
■「管理法」と「市場法」:韓国市場を理解するための構造的ギャップ
国家資産基本法(NABA)は、韓国におけるデジタル資産関連の法整備の一方にすぎない。韓国市場で事業を行う、あるいは同市場を注視するうえでは、もう一方の法案との違いを理解することが重要だ。
もう一方の「デジタル資産基本法(DABA)」は、民間企業や市民が暗号資産市場で活動する際のルールを規定する法案である。発行、取引、保管、監督、ステーブルコインのライセンス、準備金要件などを対象とする。DABAではデジタル資産を「一般型」と「資産連動型」に分類しており、ステーブルコインなど、現実の資産価値に連動する商品に対しては、ライセンス基準、流通量の100%を超える準備資産、償還義務など、より厳格な要件を課す内容となっている。
しかし、DABAの成立は繰り返し延期されている。2025年6月に与党・共に民主党が国会に初めて提出して以降、「誰に韓国ウォン連動型ステーブルコインの発行を認めるべきか」という問題を巡り、交渉は早い段階で行き詰まった。
韓国銀行は、既存の支払い能力要件やマネーロンダリング防止要件を満たす金融機関だけが安定性を確保できるとして、ステーブルコイン発行体に銀行が51%以上出資することを求めた。これに対し、金融委員会(FSC)は、そのような規則はテクノロジー企業をステーブルコイン発行から事実上締め出し、競争を抑制すると警告した。FSCは反例として、認可を受けたステーブルコイン発行体の多くが銀行ではなく電子マネー機関である、欧州連合(EU)の暗号資産市場規制(MiCA)を挙げている。DABAの可決目標は2026年後半とされているが、2026年4月時点でもステーブルコインを巡る対立は解決しておらず、予定どおりに進むかはその解決にかかっている。
DABAが国会を通過するまでは、政府が法律に基づいて仮想資産を正式に管理する一方、民間市場は自身に適用されるルールを待ち続けるという隔たりが生じる。このギャップが、2026年末まで注視すべきポイントとなる。
■グローバル暗号資産市場における韓国の規模
今回の政策発表の重要性は、世界のデジタル資産市場における韓国の大きな取引規模と切り離して考えることはできない。
調査会社Kaikoによると、2026年に入ってから、世界の暗号資産現物取引量の30%をウォン建て取引が占めており、米ドル建て市場に次ぐ第2位となっている。人口約5,200万人の韓国では、週間の暗号資産取引高が260億ドル(1ドル=162円換算で約4兆2,120億円)に達している。
また、CoinGeckoの市場分析によると、韓国の成人人口のおよそ3分の1に相当する約1,600万人が、デジタル資産市場に参加している。この参加率は、暗号資産政策が国内選挙の主要な争点となり得るほどの規模だ。
韓国の取引構成にも構造的な特徴がある。Kaikoによると、韓国国内の暗号資産取引の85%をアルトコインが占め、ビットコインは9%、イーサリアムは6%にとどまる。これは多くの欧米市場とはほぼ逆の構成だ。また、UpbitとBithumbの2大取引所が、韓国国内の暗号資産取引量の約96%を扱っている。
個人投資家の存在感が大きい一方で、市場構造には変化もみられる。CoinGeckoのデータによると、2025年第4四半期から2026年第1四半期にかけて、取引高は125.2兆ウォンから98.1兆ウォンへ21.7%減少した。資金が個人による投機から、機関向けの決済インフラへ移ったためとされる。
同じ期間には、利用可能な流動性としてのステーブルコインの使用が大きく増えた。ウォン建て取引高に対するステーブルコイン時価総額の比率は2.8倍から3.6倍へ上昇しており、ステーブルコインが投機商品というより、必要に応じて利用できる流動性として使われる傾向が強まっていることを示している。
■日本も同日に法改正を可決、すでに成立
韓国の発表と同日、日本の参議院は金融商品取引法(金商法)の改正案を可決した。これにより、衆参両院での審議が完了し、暗号資産を決済手段ではなく金融商品として位置づける法改正が成立した。
この再分類がもたらす実務上の影響は大きい。従来の日本では、暗号資産は主に資金決済法の下で、投資商品ではなく決済手段として規制されていた。今回の金商法改正により、ビットコイン、イーサリアム、XRPなどは、株式や債券と同じ金融商品としての法的カテゴリーに移される。
新たな枠組みでは、従来は伝統的な金融市場に適用されていた複数の規制が導入される。未公表情報に基づくインサイダー取引の禁止、トークン発行体による年次開示の義務化、無登録業者に対する罰則の大幅な強化などだ。無登録業者に対する最高刑は懲役3年から10年へ、罰金の上限は300万円から1,000万円へ引き上げられる。
また、この法律は、国内における暗号資産現物ETF(上場投資信託)の導入を妨げていた主要な構造的障壁を取り除く。ただし、この法改正によって具体的なETF商品が承認されたわけではない。
これとは別に、日本の国会議員は、暗号資産に対する最高55%の税率を、株式の譲渡益と同水準の一律20%へ引き下げる枠組みを承認した。適用は2028年1月からの予定だ。
韓国の法案とは異なり、日本の改革はすでに法律として成立している。改正法は近く公布され、1年以内に施行される見通しで、実務上の導入の多くは2027年に行われることになる。
■異なる法的アプローチで同じ目標を目指す日韓
両国のアプローチの違いは、「現代国家の正式な金融・法的構造において、暗号資産をどこに位置づけるべきか」という根本的な問いに対する、それぞれの回答を示している。
日本は暗号資産を投資商品に関する法体系に組み込み、金商法の下で株式や債券と並べた。一方、韓国は暗号資産を公的資産管理の枠組みに組み込み、1950年制定の国有財産法に代わる新法の下で、土地、建物、知的財産と並べようとしている。どちらもデジタル資産を正式な経済制度により深く統合する動きだが、法的・構造的に異なる経路を取り、その後の影響も異なる。
日本の手法は、証券法制を基礎とする開示義務、投資家保護、市場行為規制を課すものであり、発行体、取引所、機関投資家が関わる取引可能な投資商品を前提とした枠組みだ。これに対し、韓国の手法は、国家資産管理法制を基礎とする保管、評価、管理基準を課すものであり、政府が保有・管理し、法的に説明する義務を負う資産を前提とした枠組みである。
この違いは、機関投資家にとって重要だ。日本の金商法の枠組みは、ETFや登録ファンドなどの機関投資家向け商品と、義務的な情報開示の仕組みを支える法的インフラを構築する。一方、韓国の国家資産基本法は、没収された暗号資産を含め、政府がすでに保有している資産を厳格に管理する法的インフラを整備するものだ。韓国はこれと並行して、トークン化国債の実証実験やステーブルコイン法制の整備も進めている。両国はそれぞれ異なる国家レベルの統合モデルを示しており、アジア地域の他国政府もこうした動向を注視している可能性が高い。
■韓国の構想を支える技術インフラ「プロジェクト・ハンガン」
7月15日の発表は、国家資産基本法に限られるものではない。政府の「2026年後半経済成長戦略」の一環として発表され、トークン化された国債と韓国銀行のCBDC(中央銀行デジタル通貨)を連携させる2027年の実証実験も盛り込まれた。
このインフラは、韓国銀行のホールセールCBDCシステムである「プロジェクト・ハンガン(Project Hangang)」のアトミック決済アーキテクチャを基盤とする。これはパブリックブロックチェーンではなく、許可型分散台帳上で動作し、中央銀行デジタル通貨とトークン化された商業銀行預金を組み合わせたものだ。
2027年の実証実験では、このアーキテクチャがアトミックDVP、すなわち証券の引き渡しと代金の支払いを同時に行う決済を支えられるかどうかが検証される。スマートコントラクトを通じて、トークン化国債の移転と対応する支払いを同時に実行し、従来の国債市場にある決済上の摩擦を解消する仕組みだ。
韓国銀行は、このシステムに伴うリスクも明示している。高速で継続的な決済は、市場のストレスを参加者間により速く伝える可能性があるほか、スマートコントラクトやデータオラクルに関するリスク、流動性管理の複雑化をもたらす。必要な品質水準を満たす信頼性の高いデータオラクルが存在しない可能性もある。
さらに韓国銀行は、プロジェクト・ハンガンのデジタル台帳と中央銀行の既存決済システムが、現時点では相互にリアルタイムで連携していないことも認めている。2027年の実証実験を設計どおりに機能させるには、このギャップを解消する必要がある。
国債の実証実験と並行して、韓国で最も人口の多い広域自治体である京畿道(キョンギド)は、2026年8月から8カ月間にわたり、ZKryptoのゼロ知識証明技術を用いたステーブルコインの実証実験を行うことを明らかにした。このプロジェクトでは、基礎となるデータを開示せずに取引を検証できるゼロ知識証明暗号技術を使い、地域の公共決済におけるステーブルコインの発行、流通、決済をテストする予定だ。
■韓国の暗号資産投資家が注視する課税問題
推定1,326万人の韓国の暗号資産投資家にとって、直近で最も大きな影響を及ぼす動きは、資産管理法ではなく税制である。
企画財政部は2026年5月、年間250万ウォン(約1,800ドル、1ドル=162円換算で約29万円)を超える暗号資産の利益に対し、22%のキャピタルゲイン課税を2027年1月1日から実施することを確認した。当初の提案以降、度重なる延期を経て、韓国で暗号資産の利益が初めて課税対象となる。この税率は、20%の国税と2%の地方税で構成される。
新たな制度に基づく最初の申告期限は2028年5月となる。韓国国税庁はすでに、主要5取引所のUpbit、Bithumb、Coinone、Korbit、Gopaxと、制度実施に必要なインフラについて調整している。
これに対し、最大野党の国民の力は、暗号資産投資家を一般の個人株式投資家より不利に扱うものだとして、暗号資産課税の廃止法案を提出している。ただし、この法案はまだ可決されていない。
■暗号資産市場にとって「国家資産としての位置づけ」が意味すること
暗号資産が国家資産管理法制に正式に組み込まれることは、政府がビットコインを直接購入することと同義ではない。しかし、前例として歴史的な意味を持つ。
政府が単に民間保有を認めたり、取引利益に課税したりするだけでなく、暗号資産を国家が保有し得る資産の一類型として正式に採用すると、その資産の規制を巡る政治経済的な力学が変化する。政府内部に、その資産クラスの安定性、評価、管理基準に利害を持つ組織が生まれ、資産を扱うための行政インフラも構築されるためだ。
さらに、トークン化債券、現物ETF、ステーブルコインの枠組みといった次の統合策を、従来の制度から外れた例外ではなく、既存制度の延長として構築するための法的な土台ができる。
Kaikoによると、韓国は2026年を通じ、通貨別では米ドルに次ぐ世界第2位の暗号資産取引市場となっている。世界の暗号資産現物取引量の30%を占める市場を抱える国の政府が、自ら直接保有する暗号資産を正式な法的枠組みの下で管理することは、暗号資産を外部から規制するだけの場合とは質的に異なる。国家資産基本法が可決されれば、その管理は任意の対応ではなく、法的義務となる。
■注目ポイントQ&A
●韓国の「国家資産基本法」が成立すると、政府がビットコインを購入するようになるのですか?
いいえ。国家資産基本法は国家資産の管理制度を改革する法律であり、政府がビットコインを買い入れる「ビットコイン準備金」制度ではありません。1950年制定の国有財産法に代わり、不動産だけでなく、知的財産や仮想資産も扱える枠組みを整備するものです。没収などを通じて政府が暗号資産を保有した場合、保管、評価、処分などについて定められた基準に基づき、厳格に管理する法的義務を課します。政府に暗号資産の購入権限を与えるものではありません。
●日本の新しい法律と、韓国の取り組みにはどのような違いがありますか?
日本は金融商品取引法を改正し、暗号資産を株式や債券と同じ金融商品に関する法体系へ組み込みました。インサイダー取引規制や発行体の開示義務が導入され、現物ETFを可能にする法的基盤も整備されます。一方、韓国は国家資産基本法を通じ、政府が保有する暗号資産を、土地、建物、知的財産などと同じ公的資産管理の枠組みに位置づけようとしています。日本の法改正はすでに成立していますが、韓国の法案は国会を通過していません。
●「デジタル資産基本法(DABA)」とは何ですか?いつ成立しますか?
DABAは、韓国の民間暗号資産市場を規律する別の法案です。取引所やステーブルコイン発行体に対するライセンス、取引ルール、保管基準、準備金要件などを定めます。韓国銀行が銀行主導のコンソーシアムと銀行による51%以上の出資を求める一方、金融委員会はそれがイノベーションを抑制すると主張しており、この対立のため審議が停滞しています。政府は2026年後半の可決を目指していますが、対立の解消が前提となります。
●日韓が同日に動いたことにはどのような意味がありますか?
一国だけの孤立した決定ではなく、世界的な制度統合の動きの一部とみることができます。台湾は2026年6月30日に暗号資産法を可決し、EUのMiCAは同年7月1日に全面施行されました。米国ではCLARITY法案が上院で審議されています。日韓が同日に動いたことで、議論は暗号資産を正式な法体系へ統合するかどうかではなく、どの法的な枠組みを用いて統合するかという段階へ移っていることが、より明確になっています。
元記事: South Korea Folds Crypto Into National Asset Law as Japan Passes Its Own Reform