SpaceX株、上場後初のIPO価格割れ ロックアップ解除とAI部門の巨額赤字を警戒

2026年7月16日 21:42

SpaceX(Nasdaq:SPCX)の株価は米国時間7月15日、日本時間16日にIPO価格の135ドルを初めて下回った。極端に少ない浮動株、7月下旬から8月上旬にも始まる段階的なロックアップ解除、xAIやCursorを含むAI部門の巨額赤字が重なり、売り圧力は構造的との見方が出ている。

米国時間16日に予定されるStarship Flight 13の打ち上げで技術面の懸念が和らぐ可能性はあるが、株価の流れを変える新たな材料になるかどうかは不透明だ。


■公開価格割れで上場後の熱狂に陰り

SpaceX(Nasdaq:SPCX)の株価は米国時間7月15日、IPO価格の135ドルを初めて下回り、取引時間中に132.15ドルまで下落した。これにより、世界最大規模のIPOに公開価格で参加した投資家は全員、含み損を抱える状態となった。

下落は4営業日連続となった。翌16日に予定されるStarship Flight 13の打ち上げを前にしても、流れを止める明確な材料は見当たらない。

Interactive Brokersのチーフ市場ストラテジスト、Steve Sosnick氏は、現在の状況について「市場が、そもそもなぜSpaceXを買ったのかを自らに言い聞かせることをやめてしまった状態」だと述べた。

同社は6月11日、過去最大となる860億ドル(約13兆9320億円、1ドル=162円換算)のIPO価格を1株135ドルに決定し、翌12日に150ドルで取引を開始した。その後、6月16日には225.64ドルの最高値を付けた。

同日は、AIコーディング新興企業Cursorを600億ドル(約9兆7200億円、同)相当の全株式交換で買収すると発表した日でもあった。以後は下落基調が続き、7月半ばにかけて下げが加速した。

最高値から15日の安値までで、SPCXは約41%下落した。現在のおおよその時価総額を基準にすると、約8500億ドル超(約137兆7000億円、同)の時価総額が、およそ1カ月で失われたことになる。

■下落要因は単発の悪材料ではなく構造的な売り圧力

今回の下落に対する最も単純な説明は、同時に最も構造的なものでもある。SpaceXの総株式の約95~96%はロックアップされて売買できず、市場で流通している株式は4~5%にすぎない。

浮動株がこの規模にとどまる場合、流動性を求めるIPO前の株主からまとまった売りが出るだけで、通常の浮動株比率を持つ企業より株価が大きく動きやすい。

Fortuna Investmentsの最高経営責任者(CEO)、Justus Parmar氏は、この構図を率直に説明している。非公開企業だった時期の資金調達ラウンドでSpaceX株を積み上げてきた初期株主にとって、現在は初めての本格的な換金機会であり、その売り圧力は構造的なものだという。1回の悪い取引日で終わるものではないとの見方だ。

Capital.comのシニア市場アナリスト、Daniela Hathorn氏は、3つの要因が重なっているとみる。

第1は、IPO前により低い非公開市場の評価額で取得していた投資家による利益確定売りだ。

第2は、IPOをめぐる熱狂が落ち着いた後も、2025年売上高186億7000万ドルに対して、およそ90~100倍という評価が維持可能なのかという再検討である。

第3は、企業の基礎的な財務内容ではなく、大型上場をめぐる期待を前提に積み上がった投機的な買い持ちの解消だ。

■Starlinkは稼ぐが、AI部門の資金消費を埋め切れない

SpaceXの基礎的な財務内容には、投資家が警戒するだけの理由がある。同社は2025年通期にGAAPベースで49億3700万ドルの純損失を計上し、2024年に達成した黒字から赤字に転落した。2026年第1四半期だけでも純損失は42億8000万ドルに拡大した。

2002年の創業以来の累積赤字は413億ドルに達する。

2026年第1四半期の設備投資は総額101億ドルで、このうち77億ドルがxAI、Grok、Cursorコーディングプラットフォームで構成されるAI部門に向かった。四半期全体の設備投資の約75%に相当する。

このAI事業は、同じ四半期に25億ドルの営業費用を計上した。

利益を生み出している主要部門は、衛星ブロードバンドサービスのStarlinkだ。2026年第1四半期時点で164カ国に1030万人の契約者を持ち、この四半期だけで部門営業利益12億ドルを計上した。調整後EBITDAマージンは63%だった。

2025年通期のStarlinkの売上高は114億ドルで、利益率で見れば世界でも有数の収益性を持つブロードバンド事業の1つとなっている。

ただし、その利益でも、xAIとCursorを含むAI部門の資金消費を相殺するには程遠い。AI部門は2025年通期で63億5500万ドルの営業損失を計上し、2026年第1四半期だけで77億ドルの設備投資を必要とした。

Morningstarの株式アナリスト、Nicolas Owens氏は、SpaceXの適正価値を1株62ドルと評価した。これは、すでに下落している現在の株価の半分未満に相当する。

同氏はxAI部門について「価値破壊の重大な脅威」になり得ると表現した。さらに、現在の評価額が前提とする2つの節目、すなわち2028年までにStarshipの迅速な再利用と軌道上データセンターの商業的競争力が実現するシナリオについて、確率を7%と評価している。

Morningstarの最も楽観的なシナリオでも、SPCXの評価額は1株169ドルであり、これはつい先週まで株式が取引されていた水準を下回る。

■Nasdaq-100採用は買い支えではなく分配の機会になった

売りの一因として見落とされがちなのが、指数採用そのものの構造だ。

SpaceXは7月7日、Nasdaq-100に採用された。米国の主要株価指数としては過去最速の採用で、背景には2026年5月1日に発効したNasdaqのルール変更がある。

時価総額上位40社について、採用に必要な上場期間が従来の最低90日から15営業日に短縮された。また、少なくとも10%の株式が公開市場で取引されていなければならないという従来の条件も撤廃され、SPCXの4~5%の浮動株でも十分と判断された。

JPMorganは、Invesco QQQ Trustを含む指数連動ETFから約43億ドル(約6966億円、1ドル=162円換算)の機械的な買い需要がSPCXに流入すると試算しており、実際にその買いは入った。

ただし、指数採用を強気材料とする見方は、浮動株の少ない銘柄に価格を問わない大口買い手が現れた際の市場構造を見落としていた。

こうした需要は、IPO前から株式を保有する投資家に対し、価格を選ばずに買う資金へ株式を売却する機会を与える。今回の指数採用は、株価の下支えというよりも、既存株主の売却を受け止める仕組みとして機能した。

Investing.comがまとめたデータによると、2022年以降にNasdaq-100へ新規採用された35銘柄のうち、指数構成銘柄となった初日に上昇したのは12銘柄にとどまる。2024年12月に採用されたPalantirも、採用後の数週間で約23%下落した。

SPCXは7月7日の指数採用当日に約6%下落した。同じ朝にはIPO後25日間のクワイエット期間が終了し、19本のアナリストレポートが一斉に公表された。その大半は強気の内容だった。

■注目すべきは135ドルより8月のロックアップ解除

現在注目を集めている数字はIPO価格の135ドルだが、SPCX株主が日程として意識すべきなのは、7月下旬から8月上旬に見込まれる最初の大規模なロックアップ解除だ。

SECに提出された目論見書で開示された段階的なロックアップ構造によると、標準的な180日ロックアップ対象株の約20%に相当する最初の大きな区分が、上場後初の四半期決算発表後に売却可能になる予定だ。決算発表は7月下旬から8月上旬と見込まれている。

この仕組みは、一般的なIPOに見られる単一の「ロックアップ解除の崖」を避けるために設計されている。潜在的な売却可能株を2026年末まで複数回に分けて市場へ供給する構造だ。

上場からおよそ70日、90日、105日、120日、135日の時点でも、時間経過に基づく解除区分が予定されている。さらに、2026年第3四半期決算説明会の後には、対象株の追加28%が売却可能になる可能性がある。

標準的な180日ロックアップは2026年12月9日に満了する。Elon Musk氏個人に適用される別の366日ロックアップは、2027年6月13日まで満了しない。

価格条件による前倒し解除条項もある。SPCXの終値が、連続する10営業日のうち5営業日でIPO価格135ドルを30%以上上回る約175.50ドル以上となった場合、対象となるロックアップ株の追加10%を早期に解除できる。

株価が135ドルを下回っている現時点では、この条件は満たされていない。

Swissquote Bankのアナリスト、Silvia Ozkardeskaya氏はNasdaq-100採用時、SPCXの組み入れについて「Nasdaq-100の変動性を高め、指数が基礎的な経済・財務の実態を表す能力に疑問を投げかけ、信頼性を損なう可能性がある」と警告していた。

指数採用後の数週間に過去最安値の更新が続いたことを踏まえると、この懸念は結果的に先を見通していたようにも映る。

■Starship Flight 13は技術面では重要だが、株価材料としては不透明

SpaceXの大型ロケットStarshipは、米東部時間7月16日午後6時45分から90分間の打ち上げウィンドウで、テキサス州StarbaseのOrbital Launch Pad 2から13回目の統合飛行試験を予定している。

日本時間では7月17日午前7時45分からの90分間となる。

今回は、Booster 20とShip 40を使用するVersion 3構成の2回目の飛行で、いずれもRaptor 3エンジンを搭載する。

今回のミッション計画は、5月22日のFlight 12の失敗を受けて修正された。Flight 12では、段分離時にBooster 19が予期しない方向へ押し出され、熱による損傷を受けた。その後、一部のエンジンが再点火しなかったため、ブーストバック燃焼と着陸燃焼に失敗した。

SpaceXのエンジニアは、この異常を段分離時のエンジン点火タイミングシーケンスの不具合によるものと特定した。重要な局面でブースターが誤った方向にずれたとされ、Flight 13に向けて点火シーケンスを再設計した。

Flight 13では、Booster 20は発射台への帰還・キャッチではなく、制御されたブーストバック燃焼の後、メキシコ湾への着水を試みる。Ship 40は準軌道飛行を行う。

Starshipは今回初めてペイロードを搭載し、次世代Starlink V3衛星20基を運ぶ。衛星は太陽電池アレイとアンテナを展開し、既存の衛星群および南アフリカの地上局との間で高容量レーザーリンクを試す予定だ。

衛星のうち6基には、飛行中にStarshipの耐熱シールドを撮影するカメラが搭載される。これは初めての診断試験となる。

ただし、衛星はStarshipと同じ準軌道の飛行経路をたどり、展開後まもなく大気圏へ再突入する。運用目的の衛星配備ではなく、能力実証である。

Flight 13が成功した場合の技術的な意義は大きい。ブーストバック燃焼と制御着水が成功すれば、点火タイミング修正の有効性が確認され、Starshipが商業的に成立するために必要な、発射地点への完全帰還に近づく。

ただし、株価への影響はそれほど明確ではない。Sosnick氏が指摘したように、投資家に当初の強気シナリオを思い出させる明確な「新たな材料」は見当たらない。

計画通りの海上着水で終わる準軌道試験は、たとえ完全に成功しても、停滞した投資家の期待を再び動かす材料にならない可能性がある。

■アナリストの大勢は強気だが、評価レンジは異例に広い

SPCXをカバーするアナリストの80%超は、買いまたはアウトパフォーム評価を付けている。12カ月のコンセンサス目標株価はおよそ240ドルで、15日の取引水準を約80%上回る。

公表済みの目標株価で最も強気なのはRaymond Jamesの800ドルだ。Starshipの商業的優位、Starlinkの拡大、xAIが将来競争力を得るという長期的な見通しに基づく。

ただし、Morningstarの62ドルとRaymond Jamesの800ドルの差である738ドルは、通常のアナリスト間の見解の相違とはいえないほど大きい。

この幅は、SpaceXが現在の評価額に織り込まれた期間内に、Starshipの迅速な再利用と軌道上データセンターの収益化という、工学面と商業面の2つの節目をほぼ同時に達成できるかについて、確率の見積もりが根本的に異なることを表している。

Morningstarは、このシナリオの実現確率を7%としている。一方、Raymond Jamesは、ほぼ確実に実現するとの前提に近い。

現在SPCXを買うか、保有を続けるか、売るかを判断する投資家が選んでいるのは、単なる価格ではない。どの確率モデルを信じるかを選んでいることになる。

■影響はSpaceXだけにとどまらない

SpaceXのIPO後の値動きは、同社の株主だけに関係するものではない。AnthropicとOpenAIはいずれも、この夏にSECへIPO目論見書を非公開で提出している。

Anthropicの直近の評価額は、2026年5月の資金調達で約9650億ドルだった。OpenAIは早ければ2026年9月の上場を目指しており、協議されている評価額は1兆ドルを上回る水準が中心となっている。

Goldman Sachsは、2026年のIPOによる調達総額が約1600億ドルに達する可能性があると予測している。2025年の約4倍であり、これら3社がその大半を占めるとみられている。

SPCXへ流入した機関投資家の資金は、年末までにさらに2社の1兆ドル規模のAI企業の上場を吸収するよう求められる資金基盤と同じだ。

SpaceX株が公開価格を下回ったまま軟調に推移しても、それだけでAnthropicやOpenAIの上場が頓挫するわけではない。

ただし、クワイエット期間終了後にIPO直後の熱狂が薄れ、本格的なファンダメンタル分析が始まった際、AI関連企業の評価額がどのように見直される可能性があるかを、機関投資家の資産配分担当者に示すシグナルにはなり得る。

■公開価格の回復は保証されない

大型テックIPOの過去の値動きを見る限り、必ずしも楽観はできない。

2024年の分析によると、上場後90日以内に公開価格を割り込んだ大型テックIPOのうち、12カ月以内にその価格を回復したのは約半数だった。24カ月後も約4分の1が公開価格を下回っていた。

SpaceXは典型的な大型テックIPOではない。売上高倍率、浮動株の仕組み、累積赤字、ロックアップ構造はいずれも極端な水準にあり、直接比較できる事例は存在しない。

それでも、135ドルを下値として意識すべきか、さらに下落する可能性のある水準と見るべきかを判断する投資家にとって、過去の傾向は注目に値する。

Morningstarの62ドルという適正価値は、現在の株価からさらに50%超下落しても、大手独立系調査会社の1社が妥当とみる水準に収まることを意味する。CFRAは現在、目標株価115ドルで売り評価を付けている。

一方、およそ240ドルのコンセンサス目標株価は、現在の事業構造の下でGAAPベースの黒字を示していない企業が、複数年にわたる事業計画をほぼ完璧に実行することを前提とする水準だ。

■注目ポイントQ&A

●なぜSpaceX株はIPO価格を下回ったのですか?

単一の悪材料ではなく、複数の構造的な要因が重なったためです。

総株式のうち市場で売買できるのは約4~5%にすぎず、IPO前から株式を保有していた投資家の売りが出ると、値動きが大きくなりやすい状況にあります。

加えて、7月7日のNasdaq-100採用では、指数連動ETFによる約43億ドルの機械的な買い需要が発生しました。一方、この需要はIPO前からの株主にとって売却機会にもなりました。

さらに、SpaceXが2026年第1四半期だけで42億8000万ドルの純損失を計上し、同四半期にAI部門へ77億ドルを設備投資したことも、年間売上高の90倍超という評価の見直しにつながっています。

●ロックアップ解除はいつで、なぜ重要なのですか?

SpaceXのロックアップは、一括解除ではなく段階的に解除される仕組みです。

最初の大きな区分は、標準的な180日ロックアップ対象株の約20%です。上場後初の決算発表後、7月下旬から8月上旬に売却可能になると見込まれています。

その後も秋にかけて複数の解除日程があり、標準的な180日ロックアップは2026年12月9日に満了します。Elon Musk氏個人のロックアップは2027年6月13日まで続きます。

ロックアップ解除が重要なのは、それまで売却できなかった株式が潜在的な売り供給に変わるためです。総株式の約95%が現在もロックされているため、その一部が市場へ出るだけでも、4~5%しかない現在の浮動株に対して大きな規模となる可能性があります。

●アナリストの目標株価はどの程度で、見方は割れていますか?

20人超のアナリストによる12カ月のコンセンサス目標株価はおよそ240ドルで、15日の株価水準を約80%上回ります。80%超のアナリストが買いまたはアウトパフォーム評価を付けています。

ただし、見方の開きは非常に大きく、Raymond Jamesの目標株価は800ドル、Morningstarの適正価値は62ドルです。Morningstarの最も楽観的なシナリオでも169ドルで、CFRAは目標株価115ドルで売り評価を付けています。

違いの核心は、Starshipの迅速な再利用やxAIの商業的な収益化が、現在の評価額が前提とする期間内に実現する確率をどう見積もるかにあります。

●Starship Flight 13は株価の流れを変える可能性がありますか?

技術面では重要ですが、株価の流れを変える決定打になるかどうかは不透明です。

Flight 13は、5月22日のFlight 12で発生した、段分離時のエンジン点火タイミングの不具合が修正されたかを検証する意味を持ちます。ブーストバック燃焼と制御着水が成功すれば、完全再利用に向けた前進を示せます。

また、Starlink V3衛星20基を使った初めての展開試験も行われます。ただし、今回は準軌道飛行であり、衛星も運用目的で配備されるのではなく、能力実証後に大気圏へ再突入します。

成功すれば短期的な技術リスクは低下しますが、それ自体が新たな買い材料になるとは限りません。反対に、部分的な失敗や異常が発生した場合は、最初のロックアップ解除を控えた局面で技術的な不確実性が増す可能性があります。

元記事: SpaceX Falls Below IPO Price for First Time: Lock-Up Cliff and AI Losses Test Bulls

関連記事

最新記事